Category Archives: オーディオテクニカ - Page 2

オーディオテクニカ AT-1501III

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 当初は民生用の発売を考えず、放送業務用として企画、開発きれたAT1500シリーズは、NHKをはじめ民放各社で採用されて以来民生用にも発売され、既に十数年の超ロングセラーを誇っている。今回3度めの改良を受け、より一段と一般的な使用にマッチしたMKIIIに改良された。主な改良点は㈰コレットチャック型ヘッドコネクター ㈪加圧リングに固定ネジの新設 ㈫着脱式SME型インサイドフォースキャンセラー ㈬アーム高さ固定にレバーと連動する黄銅製偏芯ローラーが真円でなくローラーとあわせて3面でシャフトを支えるローラーチャツキング型タイトロック方式のBTS型3点取付けのアームベース ㈭カウンターウェイトの大径化 ㈮リアアームと軸受部間に大型ゴムダンパーを介した質量分離型の採用 ㈯センターシャフトの直径を増し水平方向のベアリングを大型化し耐久性の向上を計った点 ㉀出力コードの抜け止めリング新設 ㈷アームパイプ内側にテフロン被覆の純銀線を平行配線しクロストーク、ストレイキャパシティを減少 ㉂アルミブロック削り出し防振材付の純銀リッツ線をリード線とするLT12ヘッドシェルを標準装備としたことである。

オーディオテクニカ AT-34

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

シェル一体型の繊細さのなかに暖かさがある新しい魅力がある。

2万円未満のカートリッジのベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「読者の質問に沿って目的別のベストバイを選ぶ」より

 カートリッジは、コンポーネントシステムの音の入り口にあるため、トータルのシステムの音にかなりの変化を与えるものである。実際に複数個のカートリッジを用意し、聴いてみれば、容易にバランス、音色、表現などの変化を聴きとることができる。
 ここてテーマとなっている「グレイドアップのワンステップとして……」ということになると、そのベースとなるプレーヤーシステムがどのランクの製品であるかが最大の問題点である。単に、音色の変化などを楽しむということであれば、それなりの他紙の身は味わえるが、確実にグレイドアップをしただけのクォリティ的な改良が得られる、という条件にこだわると大変に難しい。それに、価格的制限が2万円までとなるとなおさらである。ここでは、プレーヤーシステムとして平均的と考えられる、4万円台から6万円台を対象としてみよう。
 カートリッジの価格を2万円までとすると、国内製品ではオーディオテクニカAT14E、FRのFR5E、グレースF8L10、少し範囲をこすか、テクニクス205CIISが考えられる。これらの製品は、発電方式がMM型で使いやすく、音色や表現力の変化というよりは、優れた物理特性をベースとした、付属カートリッジとは一線を画した純度の高い音が得られる。最近、とくに注目されているMC型では、デンオンDL103、サテンM117Eがあり、103はこの場合、最近のアンプには付属していることが多いMC型用ヘッドアンプを使うことになる。ともに、MC型らしい鮮鋭な音と明瞭な個性をもった定評あるモデルである。
 海外製品では、ADC・QLM36/II、AKG・P6E、エンパイア2000E/II、フィリップスGP401II、ピカリングXV15/750E、シュアーM95ED、スタントン600EEなどに注目したい。これらは、国内製品にくらべ個性が明瞭であり、クォリティというよりは音色、表現力の差を楽しむという使い方になる。海外製品には他にも同価格帯、それよりもかなり下の価格帯に興味深い製品があるが、使用するプレーヤーの基本性能、とくに安定にカートリッジを支持できるアームを使うことが前提となる。
 整理すると、素直にクォリティアップを望むなら国内製品のMM型、よりシャープで解像力の優れた音を求めれば、国内製品のMC型、音色の変化や音に対する反応や表現力の変化を期待すれば、海外製品ということになる。
 ここでは、表示価格を2万円までとしたが、実際に購入する価格として考えれば、対象となる製品の幅は飛躍的に広くなり、本格的なカートリッジによるトータルシステムのグレイドアップが可能になるはずだ。

オーディオテクニカ AT-1501II

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

アームの基本性能を忠実に追求した信頼性の高い正統派。

オーディオテクニカ AT-15Ea

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

明解で鮮やかな濁りのない音質が魅力の高級機。

オーディオテクニカ AT-1501II

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

業務用として開発された安定度の高さを誇るロングセラーモデルだ。

オーディオテクニカ ATH-3

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 高域のレインジをあまり伸ばさずに、ハイエンドにかけて丸めこんで耳当りの良い音に仕上げてある。その意味でナロウレインジには違いないが、たとえばパイオニアのSE300の場合には、中音域に一種の強調感──というよりは圧迫感──があったためにその両端のレインジのせまさがいっそう目立ったが、ATH3の場合には、中域から低域にかけては、わりあい過不足なくしっかりおさえてあるので、トーンコントロールで高音をやや強調してやれば、高音域の伸びも一応は聴きとれるようになって、ステレオの空間的なひろがりもなかなかよく出てくる。ということはユニットに基本的な特性のかなり良いものが使われている、ということになりそうだ。高域を増強していないためか、音量をかなり上げてもやかましくない点がメリットといえそうだ。かけ心地は非常に良い部類だが、一見した外観が(細部は違うにしても)ヤマハのデザインによく似ている点は一考をうながしたい。

オーディオテクニカ ATH-7

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 今回試聴した国産のコンデンサータイプに共通していえることは、ダイナミックタイプにくらべると音域が広く、フラットによくコントロールされているところが総体に優れた点だが、その範囲でやはり各メーカーに少しずつ音への姿勢の違いが感じられて、オーディオテクニカの音は、中〜高域にいくぶん強調感を持たせた、華やかさ、あるいは明るさを感じさせるところが特徴といえそうだ。上級機種のATH8とくらべると、こちらの方が感度がいくらか高めで、中〜高域の強調感が強く、よく張り出す音に仕上げてある。またそのためか最高音域のレインジ、あるいは繊細な感じにはいま一歩というところがあるが、これはおそらくポップス系に焦点を合わせた作り方のように思われる。クラシックのオーケストラなどでは、少々華やぎすぎのところがあるかけ心地の面では、重量の軽いせいばかりでなく、重さをあまり意識させない点がなかなかよかった。

オーディオテクニカ ATH-5

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 ATH3が中低域に厚みを持たせて高域をおさえた、いわば丸みのある豊かでソフトな音に仕上げていたのに対して、ATH5は、より高価であることを意識してか、高域のレインジをぐっと広げた作り方をして、聴きようによっては、同じメーカーの同じシリーズとは思えにくいほど違う音に仕上げてある。たとえば管弦楽の斉奏などでATH3が音をひとつの固まりのように、言いかえればややモノフォニック的に聴かせたのに対して、ATH5はディテールがよく浮き出して音を空間にひろげて聴かせる。が反面、ヴォーカルなどではATH3よりも肌ざわりが冷たいし、それよりも聴き馴れた歌手の声が少し変って聴こえることから、中〜高域にやや固有の音色のつきまとうことが感じとれる。ATH3は能率がかなり良かったが、こちらはその点では水準なみというところ。デザインやかけ心地についてはATH3のところで書いたことと

オーディオテクニカ ATH-8

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 ATH7とくらべると、こちらの方が意図的な強調感がなくなって、総体にフラットな感じにコントロールされている。が、それを他のメーカーのコンデンサータイプの中に混ぜて聴いてみると、一種明るく軽い華やぎが感じとれて、これがオーディオテクニカのポリシーあるいは個性であることがわかる。しかし、ATH7の音が、ことにクラシック系のプログラムソースの場合にときとして少々華やかすぎる傾向のあるのにくらべると、ATH8は、その明るさは弱点とはならずむしろ良い意味での個性として聴き手を楽しませる。ソニーが一種湿ったような暗色の音でどこか客観的に音楽を分析させるとすれば、テクニカの音は逆に音楽を積極的に聴き手に伝える。ただそこに、もう少し柔らかく自然な表情が出てくれば、この音はさらに高い完成度に仕上るだろうと思った。LEDによるアダプターのパワー表示はおもしろいアイデアだと思った。

オーディオテクニカ AT34

オーディオテクニカのカートリッジAT34の広告
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

AT34

オーディオテクニカ AT-14Ea/G

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニカ独自のVMカートリッジも、いまや一連の製品が勢揃いして全く自家薬籠中のものになった印象だが、中で価格と音質のバランスのよいのはこの14Eaあたりのようだ。シュアー型のMMとはひと味違う切れ込みの良い華やかな音質が独特。マグネシウム合金製のMGシェルつきで使いやすい。

オーディオテクニカ AT-3M

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオテクニカのモノーラル専用カートリッジで、モノーラル用のカートリッジが少ない現在、貴重な存在なので取上げた。オーソドックスなMM型で、ステレオカートリッジのモノーラルレコード再生では得られない安定した音質が得られる。モノーラルレコード愛好者は是非一個揃えられるとよい。

オーディオテクニカ AT-14E

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニカのVM型カートリッジは、カッティングヘッドのムーヴメントと再生のそれを基本的に一致させることによって、忠実なリプロダクションを得ようとするアイデアによる。時間をかけてリファインされてきた新しいシリーズは、VM型のよさである明解なセパレーションと、明確な音像の定位感は、今や、位相差や残響時間による、ほのかなプレゼンスの味わいも再生できるまでになった。

オーディオテクニカ AT-3M

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 いまや数少ないモノーラルLP専用のカートリッジとして貴重な存在。針先がステレオの音溝を傷めないよう水平垂直、360度方向にコンプライアンスを持っているので、ステレオレコードをモノ再生するにもいい。音質も音楽性に富む優秀なもの。SP用の交換針に差しかえられる点も点も周到な配慮だ。

オーディオテクニカ AT-1501II

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 現在市販されている、この種のトーンアームとしては、異例に長期間の製品寿命を誇る製品である。基本型は、放送業務用のターンテーブルがステレオ化された時代に業務用のステレオトーンアームとして開発されたために、アーム基部からアンプをつなぐ、専用コードはなかったが、後になって改良され現在のようになっている。付属機構は、目的からいって何もなく、安定した音と長期間にわたる性能維持が狙いの製品である。

オーディオテクニカ AT-14E

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオテクニカのカートリッジは、一連の数多くのモデルがあることに特長があるが、ローコストからトップモデルにいたる音的・性能的な分類とコントロールは、海外製品に勝るとも劣らぬ見事さが感じられるようになった。このAT−14Eは、同社の中心モデルともいえる存在であり、素直に色づけのない音を力強く聴かせてくれるのが大変に好ましい。トーンアームの組合せもクリティカルでなく、バーサタイルに使える製品だ。

オーディオテクニカ AT-20SLa

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 オーディオテクニカのカートリッジは、創業期のAT1からAT7にいたる第一世代の製品にくらべ、VM式と同社で呼ぶ2個のマグネットを2チャンネル方式の左右の音溝専用に使う、デュアルマグネット方式を採用したAT35以来、その市場を国内から世界に拡げ飛躍的に発展した。
 AT20SLaは、一時期、米エレクトロボイス社の最高級カートリッジを手がけた、国際的な実績をベースにしてつくり出された特選品という表現が応わしい同社のトップモデルである。基本的には、AT15Saの選別したタイプとして発表されているように、本来の意味での手工芸品的な魅力があり、精密工作を要求されるカートリッジならではの感覚的な付加価値が大変に大きい。

オーディオテクニカ AT-15Ea/G, AT-14Ea/G

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 オーディオテクニカのVM型カートリッジは、発電方式としてはMM型であるが、V字型に配置された2個のマグネットをもつために、同社ではVM型と呼んでいる。このタイプは、1967年の開発以来、カッターヘッドと相似形の動作を理想として数多くの製品が開発され、発展してきたが、今回のニューGシリーズは、従来のモデルをベースとして蓄積された、細やかなノウハウを集めて、一段と完成度を高めたシェル付カートリッジでいずれもオーソドックスな2チャンネルステレオ専用のタイプである。ヘッドシェルは、音質追究の結果から採用されたマグネシュウム合金製のMG10型で、すでに音の良いヘッドシェルとして高い評価を得ているものである。なお、高級モデルのAT15にかぎり、ヘッドシェルなしのタイプも用意されている。
 AT15Ea/Gは、とくに、セレクトされたプレステージモデルであるAT20型を除けば、事実上のオーディオテクニカのトップモデルであり、ニューGシリーズでは最高級製品である。
 カートリッジボディは、軽合金のダイキャスト製で、従来のAT15型の金色から銀色に変わった。また、スタイラスホルダー部分は、ボディカラーの変更にともなって、インディゴブルーとなり、ボディ前面のテクニカのマークの色も同様に変わった。また、新しくスタイラスホルダーのプロテクターの部分に、型番が記されるようになったため、ヘッドシェル装着時にも型番の識別が容易になった。
 振動系は、大幅に改良が加えられているようだ。カンチレバーは、超硬質軽合金と発表されているが、表面の色が、従来のいわゆるアルミ色から、ちょっと見には鉄に見える色に変わっているが、明らかに非磁性体である。テーパード型カンチレバーは、新開発のツイステッドワイアーで支持されるが、ダンパーの色も従来とは異なっている。また、マグネットは、これも従来の円柱状から角柱状に変わっている。
 AT14Ea/Gは、AT15Ea/Gに準じたモデルである。変わっている点は、カンチレバーを支えるワイアーが、金メッキをしたピアノ線となったことと、コイルのインピーダンスが高く、AT15Ea/Gよりも、25%高い出力電圧を得ていることである。ボディフレームは、軽合金ダイキャストと同等なシールド効果をもち、強度を高める硬質メッキ処理が施されている。スタイラスホルダーの色は、エメラルドグリーンで、ボディのシルバーと鮮やかにコントラストをつくっている。
 ニューGシリーズは、振動系が大幅に改良されているために、音質的には、従来のトーンを一段とリファインし、さらに、力強く、粒立ちがカッチリとしたクリアーさが加わっているのが目立つ。音場感的にも、前後方向の奥行きが明瞭に再現され、音像定位が安定で、明快になっていると思う。

オーディオテクニカ AT-11d, AT-13d, AT-14E, AT-14Sa, AT-15E, AT-15Sa, AT-20SLa

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 AT15Eは、ソリッドで力強く、クリアーな音である。粒立ちはこのクラスの標準だが、芯が強くシッカリしているのが目立つ。帯域バランスはナチュラルで、よくコントロールされ、とくに低域がよく伸ぴ、腰が強く引き締まったソリッドな音であることが、国内製品としては珍しい。中域もエネルギーがタップリとあり、薄くならず、高域も必要にして充分な伸びがあり、無理に伸ばした感じがない。表情は、国内製品としては大きくダイナミックであり、押出しがよい。音場感は左右に拡がるがパースペクティブな引きが少なく、音像は前に出てくるタイプだ。中低域の響きがよく、雰囲気もよく出すが、性質はややドライなタイプで、男性的な割り切った魅力がある。
 AT15Saは、15Eとは同系のモデルナンバーをもつが、音的にはまったく異なった製品である。粒立ちは細かく、表情はおだやかで大人っぽさがある。低域は甘口であり、中低域はまろやかに響き、豊かさがある。ヴォーカルは子音をやや強調するが、ソフトで耳あたりよく、ピアノは暖かみがあり、適度の間接音を伴って響く。音場感はスピーカー間の奥深く後に拡がるタイプで、ゆったりと聴くためには相応しい。性質は、15Eとは対照的に、ややウェット型である。
 AT14Eは、15Eよりも粒子は粗くなり、全体の印象では軽く反応が早いキビキビした表情があり、音の鮮度が高いメリットがある。低域は腰は強いが、やや15Eよりも柔らかく量感があり安定している。中域から中高域は、明快で音にコントラストを付け、硬質なストレートな魅力となっている。感覚的にフレッシュで、割り切った音は、力感もあり、リアルで楽しい。
 AT14Saは、粒子を細かくし、線が細くなったAT14Eといってよい。低域から中低域が豊かで柔らかく、中高域は輝く感じがあり、全体の印象はワイドレンジのハイファイ型である。
 AT13dは、15や14系とは異なった、中域を重視した安定感があるバランスの音である。音色の傾向はウォームトーン系で、低域には量感があり柔らかく、中低域も充分にあるため安定感がある。中域以上はやや粒立ちが粗く、高域は適度にコントロールして抑えてある。ヴォーカルはやや大柄になり、音像の立ちかたは平均的水準だろう。適度のスケール感をもち、マクロ的に音をまとめるため、小型スピーカーシステムには適していると思う。
 AT11dは、13dよりも中低域が軽く響き、全体は適度にメリハリが効いたウォームトーン系で、トータルバランスがよく汚れが少ないため、幅広いプログラムソースをこなす特長がある。強調感が少なく、音像はナチュラルに立つタイプだ。
 AT20SLaは、AT15Eのグレイドアップモデルといった音で、低域が締まり、音の芯が強く、充分に洗練された高いクォリティをもっている。音像はクリアーに立ち、音に透明感があり、爽やかで明るい。

オーディオテクニカ AT-11d, AT-13d, AT-14E, AT-14Sa, AT-15E, AT-15Sa, AT-20SLa

岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 同じムービング・マグネット型でも、はっきりした特徴をVM型なりに音の上に示す。高出力かつ緻密な音色は、VM型の技術による確かな結果といえよう。初期の製品において充分に感じられなかった高域の繊細感も新製品では、他社の製品をしのぐほどにもなった。
 AT11dは、8千円という普及価格なのに、堅固なシェルをつけて、使いやすい高出力で、実用上針圧に対してもラフな使い方が許され、まさに一般初心者のすべてに気楽にすすめられる。しかし、全体から受ける印象として帯域の物足りなさ、音の大づかみなところが、高級カートリッジとしての条件に欠ける理由だ。力があって、出力も高いのは、いかにもこのメーカーの特徴を端的に示している。むろん単独商品の価値は充分だ。
 AT13dは、シバタ針をつけて前者を向上させたものだ。しかし針先の変化そのものが、音そのものに強く反映するとは、とても信じられないぐらい変ってしまった。単純に力まかせという感があった11dに比べ、音のメリハリというか、節度がはっきりとそなわって、まるで一桁も二桁も上のクラスのような明解さをもつ。さらに、今までやや不鮮明だったステレオ感もきわだって良くなったのも見逃せない。この価格帯の推選品。
 AT14シリーズは、テクニカがはっきりとその方向を新しい音の路線に求めることを意識したシリーズのように思われる。一口でいうならば、今までのどちらかというとくっきりした音から、もっと耳当りの良さを追うことを考えたのではあるまいか。このシリーズだけがおっとりとした甘さ、ないしは暖かさに通じる、といえばいい過ぎか。ただ高域に関しては広帯域感はかなり強くなる反面、低域の力強い量感が抑えられている。
 AT14Eは、楕円針の標準の状態で出力もやや大きく誰にでも使える良さをもっている。
 シバタ針つきのAT14Saはやや高域のすみきった感じが出てきた。ステレオ用にも良いが、CD−4にも対応できる割安な製品。
 AT15シリーズは、テクニカの目下の高級グループで、15Saは、針を下すやそのスクラッチの静けさと、その広帯域感からいかにも高水準をねらった音がする。非常に細かな繊細感が音楽の中のひとつひとつの音をはっきりと聴かせてくれるのが大きな特徴。
 しかも、こうしたカートリッジがしばしば音のひ弱さと言われてしまうのにテクニカではこれがない。AT15Eは音の鮮明さということばどおりの輝きを保ちながら、つめたくならないのも良くさすがに高級品というイメージをもった音だ。
 AT20SLaは、さすがに高級機種らしく超高域でのステレオ感を安定し、スクラッチの質もよく、音楽のジャマをしないのはさすがだ。

オーディオテクニカ AT-15E/G

オーディオテクニカのカートリッジAT15E/Gの広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

オーディオテクニカ

オーディオテクニカ AT-1503II

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニカのアームの使いよさは、メカの堅牢さに加え、その安定さもおおきな理由となっている。必要以上の高感度と取りかえに実用的丈夫さと機構とが愛用者の支持理由。

オーディオテクニカ AT-15Sa

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 世界にその優秀性をうたわれるテクニカの最高級新型は、クリアな透明感に力強さも感じさせ、今まで以上の優れた安定したつい銃声をもち、高級品たる資格にふさわしい。

オーディオテクニカ AT-VM3

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 やや高域不足ともいえるがバランスの良さと中声部の安定した力強さから、超ロングセラーを続ける製品でとくに音楽を選ばぬ再生ぶりも広く一般用としてふさわしいものだ。