グランツのカートリッジGMC10E、G60EX、GMC55EXの広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)
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オーディオテクニカ AT160ML/G, AT150E/G, AT140E/G, AT130E/G, AT120E/G, AT37E, AT34EII, AT33E, AT32EII, AT31E/G, ATH-0.1, ATH-0.2, ATH-0.2F, ATH-0.4, ATH-0.6, AT666EX, etc…
シュアー V15 TypeV
ソニー XL-MC1
ヤマハ A-500, T-500, MC-4
エクセル PRO81MC, ES-10
フィリップス GP400III, GP401III, GP406III, GP412III, GP420III
オルトフォン MC2000
オルトフォン SPU
菅野沖彦
オーディオアクセサリー 27号(1982年11月発行)
「MCカートリッジの原点 オルトフォン・SPUストーリー」より
オルトフォンからSPUカートリッジが誕生したのが1959年。ステレオレコードが売り出されたのが1957〜58年ころだから、ほんとうにステレオの初期に開発されたカートリッジである。しかも、誕生いらい20数年を経た現在、いまだに現役のカートリッジとして活躍しているということに驚く。
しかも、たんなる骨董品としてではなく、いろいろなカートリッジを使っていながら、レコードを聴くという原点に立つとき、やはりSPUに返ってしまうというファンがたくさんいるという現実、これはまさにオーディオ界の神話といってよいだろう。
とくに、私がSPUカートリッジに深い思い入れを感じるのは、たんにロングライフであるだけではなく、オルトフォンという会社が、SPUのみならず、音の歴史の中で非常に技術的に見て、先駆的な役割を果してきたということによる。
もちろん、エジソンが録音再生の原理を実用化し、ベルリーナがそれをさらにリファインするというレコード音楽の歴史の中で燦然と輝く先駆者の名も出てくるわけだが、それらに優るとも劣らない数々の先駆的なテクノロジーを確立してきたのが、このオルトフォンという会社なのである。
ここで簡単にオルトフォンの歴史を振り返ってみよう。オルトフォンはピーターセン、プールセンという2人のエンジニアによって、デンマークのコペンハーゲンで1918年に創立されている。
そして、映画のトーキー撮影を成功させたのは他ならぬこのオルトフォンの創立者ピーターセンとプールセンなのである。
したがって、大体第2次大戦までは、オルトフォンという会社はずうっとトーキー関係の機械をつくってきた会社であった。そして第2次大戦中に、この2人の優秀な技術者は、いろいろな開発を手がけ、まずレコードのカッターヘッドの開発を行った。ムービングコイル型のカッターヘッドの誕生である。
ムービング型カッターヘッドをつくったら、やはりムービングコイル型のカートリッジをつくらなくてはということでもちろんモノラルではあるが、カートリッジをつくっている。
こうしてオルトフォンは第2次大戟後は、レコード産業に非常に積極的に参入することになる。
こうした先駆的テクノロジーをつぎつぎと生んだオルトフォン。そしてオルトフォンを生み、育んできたデンマーク。
この、国としてのデンマークも私は好きだ。
昔は海賊=バイキングの国だが、その民族性は非常に秀れている。総人口がわずか500万人。東京の人口の約半分である。そして国全体がフラットで、北欧ではあるが、メキシコ湾流という暖流のおかげで、気候は比較的温暖。牛や豚を飼い、チーズ、ミルク、バターの、世界でも有数の産出国でもある。そういった農業国でありながら、前述のように最新のエレクトロニクス・テクノロジーを持っている。そしてまた、超モダンなデザインの国でもある。インテリアデザインに関してはデンマークは世界をリードしているほどだ。
こうした最新の美感覚と、そして最新のサイエンティフィックなテクノロジーとそして農業が、非常にバランスよく発達していることがデンマークという国がいかにすばらしい国であるかを物語っている。
そして何よりも人間がすばらしい。優秀な頭脳を持ちながら、なおかつ朴訥さを失わない。温かい人柄の国民性を感じるのである。
私はどういうわけかこの国といろいろな縁があって、ずいぶんたくさんの知り合いをもっている。そのひとつにデンマークが私の好きなパイプの生産国であるということがあり、パイプ作家の友人も数多い。
SPUカートリッジがこれほど息長くオーディオファンの心を魅了しつづけてきた理由も、こうした豊かな風土、民族性に大きくかかわっていると私は思う。
その後、オルトフォンにおけるレコード機器関係のビジネスは拡大し、メッキ槽やメッキシステムをほじめ、一貫生産のレコード製造システムを完成させている。こうしたレコード生産技術の高度に蓄積されたノウハウから、SPUカートリッジが生み出されてきた。だからSPUは、ステレオのほんの初期のカートリッジでありながら、いまだにムービングコイル型カートリッジのお手本とされるという先進性をもかねそなえているわけだ。実に多くのMC型カートリッジが、このオルトフォンSPUの原理構造を軸にして発展してきている。
非常にシンプルで巧みな構造で、カンチレバーの支点から針先にかけて、平行にヨークを置き、そして、磁性材をワクに使った2組のコイルを最もカンチレバーの有効なポジションに置き、平行したNSの磁界の中をコイルを動かして、左右の出力を生むというこの基本構造ゆえに、その後、ほとんどのMC型カートリッジはそれをそのまま踏襲するか、あるいは、多少リファイン、ないしはそこからヒントを得た発想を展開してきている。
まさにムービングコイル型カートリッジのルーツなのである。
私が初めてこのカートリッジと出逢ったのは1962〜3年のことだと記憶している。
59年に開発され、60年には日本に輸入され、好きな人たちの間でたいへん評判をとった。しかし、当時としても非常に高価なもので、われわれ若い人間にとってはそれを買うということは夢のまた夢。なにしろ、カートリッジだけではレコードを再生できないから、それ相当のトーンアームが必要だし、ターンテーブルも必要だということで、当時はオルトフォンのトーンアーム、さらには、SMEのトーンアームにオルトフォンのSPUを付けるというのが最高の組合せとして、マニア垂涎の的であった。
ふっくらとした丸味を持った、重厚なSPUのスタイリングが、どれほどわれわれオーディオ好きな人間の心をとらえたかわからない。
いま思い出しても、あの赤いレザー張りの木箱に納められた、真っ黒の立体的なSPUを見るときのゾクゾクした気持ちは一生忘れられない。見るからに、すばらしい音がしそうなカートリッジであった。ヤマハの銀座店などへ、SPUを見によく行ったものだ。
当時のカートリッジというと、マイクログループのレコードができてきて、小型で繊細な感じのカートリッジがふえてゆくなかで、あのSPUのGシェルが、非常に堂々と大きく立体的にこんもりと盛り上がった何ともいえないものであった。とくにSPU−A、SPU−G、SPUーGTとさまざまのバリエーションがあるのも魅力である。
Gシェルはこんもりと盛り上がった丸いシェル、Aシェルは角型の、しかしやはりRのついたふっくらとした角型のシェル、そして、Gシェルの中に昇圧トランスを内蔵したGT。大きく分ければこの3つのバリエーションがあり、それぞれ異った魅力を漂わせる。
とくにトランスがあのGシェルの中に組み込まれたGTの緊密感、密度の高いフィーリングがなんともたまらない魅力だった。しかもオルトフォンのつくったトランスだから、最も相性がいいに違いないという信頼感もあり、私はオルトフォンのSPU−GTを買いたいと思いつづけて、何年かの時を無為にした。それだけに手にしたときの喜びの大きさはたとえようもないほどで、いまだに大切に持ちつづけているほどだ。
買った当時は、レコードを聴いたらすぐはずして、またこの木箱の中へ納め、フタを閉めたかと思うとまた開けて聴く。そうこうするうちに、夜寝るときは枕元へ置いては眺めるというぐらい気に入って、とにかくためつすがめつといった状態であった。
とにかく、そこまで入れ上げて、SPU−GTを使ったわけだが、出てくる音が、血のかよった何んとも暖く、逞しく、ふくよかで、ドッシリとした重量感に加え、艶と輝きに満ちた楽器か何かのような実在感に圧倒される思いであった。
音楽がとにかく豊かに表現力をもってわれわれに迫ってくる。他のカートリッジを持ってしては、逆立ちしても、こういう音は聴き得なかった。もちろん、それまでにはいろいろな国産のカートリッジや、アメリカ製のカートリッジを使っていたが、このオルトフォンのSPU−GTで聴く音の充実感というもの、そして感激はいまだに忘れずに残っている。
その感激は、自分の持っているレコードを全部もう1度聴き直してみたい衝動に駆りたて、実行させるほどだった。脂がのったといおうか、とにかくすばらしい音の世界をくりひろげる魔力を持ったカートリッジである。
毎日がレコードとSPUカートリッジの日々。とにかく、SPUカートリッジを見る、触れるのが嬉しかった。
それを黒々と照り映えるレコードの上にスーッと置いて、ボリュームをスーッと上げた時に出てくるドッシリとした響き、腰のすわった響きがなんとも形容しがたい魅力であった。
だいたい私は、低音が充実して、地に足のついた、ドッシリとした構えの音に惹かれる。音とか、人間の感覚の実の根源はそこにこそあると思う。思想でも、精神でも、美意識でも、すべて大地というものが根源に成り立っていなければよしとはしない。
そういう意味で私はドイツ音楽をとくに好む。ドイツ音楽の和声の特徴というのは、非常にドッシリとした低音の上にバランス良くピラミッド型に積み上げられている。ベートーヴェンのオーケストラのトゥッティなどを聴くと完全にそのとおりで、非常にガッチリとした建築物を思わせるような、安定した堂々とした和音が聴かれる。こういう特徴が、私はオルトフォンのSPUカートリッジにあるように思う。これはノイマンのマイクロホンや、カッティング・イクイップメントにも感じられる共通した特徴である。オルトフォンのカートリッジは長くずっとノイマンなどのプレイバックカートリッジのスタンダードとして使用されていることを見ても、こうした一貫性が見てとれよう。
そのオルトフォンが一方では新しい現代カートリッジを生み出しており、常にカートリッジ界のテクノロジーをリードしている。MC10II、MC20II、MMC30などがそうだが、これはSPUシリーズの流れをくんだサラブレッドである。もちろん細部には多くの改良を施してはいるが、基本的な原理構造はSPUに準じている。いわゆる現代の物理特性にリファインしていっているわけである。
脈々といまだにSPUの基本技術はこれら後継モデルたちに流れ続けているわけである。しかもそのSPUカートリッジがいまだに現役として生きているということは、孫や、ひ孫と一緒に、カクシャクとして活躍しつづける気骨ある祖父といった風情で、実にすばらしい光景といえよう。
私はオルトフォンの技術者とも、様々なカートリッジ議論を重ねたが、その都度、教えられることがある。それは、彼等はただひたすら忠実なカートリッジをつくることに頑固であるということだ。いかに優れた特性のカートリッジをつくろうかということに全力を傾けている彼等の姿勢にいつも心うたれる。
私は、オルトフォンのこうした基本に忠実な姿勢、進歩的であり、かつ保守的であるという、進歩と保守がつつましくバランスしているところに魅力を感じる。
実に大人の魅力であり、老舗のもつシットリとにじみ出てくるような優しさが私は大好きだ。
ピカリング XSV/5000
井上卓也
ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より
米国のカートリッジメーカーとして、かつてのLP時代に高出力MI型カートリッジ、いわゆるピカリング型で一世を風靡した米ピカリング社から、同社のトップモデルに位置づけされるXSV/5000が新製品として発売されることになった。このモデルには二種類が用意され、XSV/5000がカートリッジ単体の製品、XSV/5000Sがヘッドシェル付の製品である。なお、このモデルと同時に従来の625Eに代表される音楽ファンのためのシリーズの新製品としてXEV/3001とXEV/3001Sが発売された。
XSV/5000は、ピカリング製品を分類すると二シリーズあるうちの、いわばラボラトリー・リファレンス的な意味あいの強い高性能シリーズの新製品で、従来の3000や4000の性能を、PCM録音やダイレクトカッティングなどのプログラムソース側のハイレベルカッティングに対応するために、特にトレーシング能力を重点に性能を向上したモデルである。
白とゴールドの対比がシャープな現代的なイメージを抱かせるボディと、特徴的なブラシが付属するボディの内側には、立上がり時間10μsecというトランジュント特性と、10〜50000Hzの広帯域レスポンスをもつ軽量振動系が組み込まれている。
カンチレバー材料などの詳細は公表されていないが、振動系質量に直接関係があるスタイラスには従来のステレオヒドロン針をベースに、一段と軽質量かつ密着性を高めたヌード・ステレオヒドロン針が新採用され、音溝に対する機械的インピーダンスを低減し、ディスクからのエネルギー伝達効率を向上させているとのことだ。
XSV/5000は、シャープで鋭角的に音をクッキリと浮き立たせる特徴と、洗練された雰囲気を備える、ピカリング独特のサウンドキャラクターを受け継ぎながら、一段とローレベルの分解能が向上した抜けのよい、ワイドレンジの音が際立つ製品だ。聴感上のSN比が高いため、ステレオフォニックな音場感は見通しよく拡がり、音像定位も非常にクリアーな新しい魅力が従来にない特長だ。表現力は豊かで、ソリッドで力のある低域をベースに華麗なサウンドを聴かせる。この質感の見事な低域がこのモデルの最大の美点で、柔らかなスピーカーやアンプをキリッと引き締めてくれる。
オルトフォン SPU-GOLD GE
シュアー V15 TypeIV, V15 TypeIII-HE, V15LT, M97HE-AH, M97LT, M95HE, M75HE Type2, MV30HE
ソニー XL-15, XL-30, XL-40, XL-44L, XL-44, XL-50, XL-55pro, XL-70, XL-88, XL-88D
オーディオテクニカ AT1000, AT1000T
井上卓也
ステレオサウンド 61号(1981年12月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より
現時点で最高のMC型カートリッジの座を狙って開発されたAT1000は、すべての基本性能をオーソドックスで妥協のない設計で追求し、最良の音を求めて完成された製品だ。特長といえるのは新素材でも新発電メカニズムでもなく、多年にわたる技術集積の粋と無形のノウハウ、さらに超精密加工精度を集大成したことにある。
発電機構は、左右チャンネル用2個のバナジウム・パーメンダーコアに高純度銅線を巻いた左右独立型コイルを、軽量、高剛性のVCモールド材に埋め込んだ、独自のデュアルムービングコイル方式。カンチレバーは外形0・25mm角、全長4mmの天然ダイア製。上下左右を先端幅0・18mmに2面テーパードカットし、先端にAT33Eに採用した針先より1ランク軽量な0・06mm角楕円チップを剛体接合してある。この振動系と、サマリウムコバルト磁石とバナジウム・パーメンダーヨークの磁気回路により、3・5Ωの低インピーダンスで0・1mVの出力電圧を得ている。
ダンパー構造は、水平方向を2層ダンパーで制御し、垂直方向にはバーチカルスタビライザーを採用して適切なコンプライアンスにコントロールする方式。垂直トラッキング角度は正確に23度にセットしてある。
マウントベースは切削加工アルミ製で、要所に制動材を付加した無共振構造。しかも自重を7gに抑えた軽量設計で、振動系と磁気回路はベースに直接ネジ止のする単純で剛性の高い方法を採用している。金メッキの出力端子はボディ内部に延長した出力リード共用型で、伝送ロスが少ない。カートリッジボディ底面も金メッキ加工され、防振性とシールド効果をもつ。アルミ削り出し表面深層アルマイト処理の専用付属シェルは、セラミックに匹敵する高硬度が特長で左右傾きとオーバーハング調整機構付。
AT1000と同時発売のAT1000Tは、3Ωと20Ω/40Ωピンプラグ差し換え式。切替スイッチレス設計の専用トロイダルトランスを左右各2個、合計4個使用した設計が特長で、外部ケースは8kgの自重からわかるように銅メッキ厚肉鋼板製だ。
両者の組合せは、ダイアカンチレバー独特の固有音を抑え、ダイレクトでダイナミックな魅力だけを活かした、完成度の高い音を聴かせる。この正確で実体感のある表現力の高さは、MC型の最高峰を思わせる。
ジュエルトーン JT-RIII
オーディオテクニカ AT1000, AT34EII, AT31E/G, AT33E, AT1000T
アントレー EC-20, ET-100
アントレー EC-20
井上卓也
ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より
MCカートリッジ専門メーカーのアントレーからは、先号で紹介したシェル一体型のトップモデルEC30が発売されたが、これに続いてまたもや新製品EC20が発売になった。EC20のリポートの前に、EC30でその後わかった点を、この欄をかりて報告しておきたい。EC30は、MC型カートリッジが広帯域で繊細な音というイメージが強いなかに、力強く、パワフルな音をもつ製品として印象が強いが、力強く音をいきいきと聴かせる反面、MC型らしい彫りの深いシャープな分解能が不足気味であると思う。この点は、その後連続して使う間に、徐々に生硬さが解消して、フレキシビリティとシャープさが出てくるようだ。メーカーに問合せた結果でも、約10時間ほど使うとエージングができて本来の調子になるとのことで、EC30を使用中の読者は、しばらくエージングして使っていただきたい。MC型カートリッジのエージングの例は、オルトフォンSPUシリーズなどではいわば常識化されている。最初は音が硬く荒々しいが、使う間にスムーズさが出てきてSPU独特の音になる。そして、絶好調の時期が来たら、そろそろ針交換の時期が来たなということでスペアを用意しておくというのが愛用者の共通パターンだ。
さて、新製品のEC20は、アントレー初のカンチレバーにサファイアパイプを採用したモデルだ。ムクの棒に較べて50%軽いサファイアパイプカンチレバーは、剛性が高く、音の伝搬速度が速い利点をもつが反面、硬度が高いだけに狂信が発生しやすい欠点をもつ。これを解決するために、EC20ではアルミパイプをサファイアパイプの基部にインサートしステップド・テーパード状としてQダンプをおこない高域共振を抑え、この固有音がつきやすい宝石系カンチレバーのデメリットを解決している。
磁気回路はサマリウム・コバルト磁石、コイル巻枠は2mm角スーパーパーマロイ使用で3Ω、0・25mVの高出力を得ている。
EC20は、ナチュラルな帯域バランスと、明るくダイレクトな音が特長。宝石系カンチレバー特有の固有音の発生や逆に過制動の印象はなく、芯が強く活気があり、ダイナミックな音を聴かせる。針圧はアームにより微調整が必要。アームはオイルダンプ型より通常型が性質とマッチした。
6万円以上の価格帯の特徴(カートリッジ)
井上卓也
ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より
6万円以上の製品では、実質的には10万円がカートリッジとしての上限である。もちろん、それ以上の価格の製品も存在はするが、カンチレバー材料やボディ部分に、ダイヤモンドやサファイアなどの宝石材料を使用するスペシャリティな製品で、ベストバイの意味では、対象の範囲に入らぬ、特別な需要を満たすためのカートリッジといえるだろう。
6〜10万円の価格帯では、国内・海外製品ともに、各社のトップモデルが置かれるところで、それぞれのメーカーのサウンドポリシーがもっとも強く現われているだけに、その選択は大変に興味深いものがある。何れを選択するにせよ性能が高いだけに、プレーヤーや、MC型では昇圧の方法など、使用するコンポーネントにより音質が大幅に変わるデリケートさをもっているために、各カートリッジに対する使いこなしはかなり時間をかけて取組まないと、せっかくの性能・音質が引出せない点に注意したい。
4万円〜6万円未満の価格帯の特徴(カートリッジ)
井上卓也
ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より
4〜6万円の価格帯も、さらに5万円でボーダーラインを引きたい。5万円未満の価格帯は、特例を沿い手国内製品MC型実質的な高級モデルが数多く存在する。カートリッジは高級モデルになるに従い、軽量振動系を採用したワイドレンジタイプになるが、国内製品の高級MC型がほとんどこのタイプで、繊細さ分解能の高さを聴かせることに較べ、オルトフォン系は重針圧型のダ円針付、と好対照である。一方MM型は、海外製品の高級モデルのそれぞれ魅力的な個性が十分に楽しめる。
5万円以上は事実上のカートリッジのトップモデルが顔を揃える価格帯である。MM型は海外製品が多く、軽質量振動系採用のワイドレンジ型であり、振動系のカンチレバー材料に宝石パイプ採用のモデルも登場しはじめる。MC型はトップモデルの置かれる価格帯で、このクラスとなれば、せびとも専用の昇圧トランスかヘッドアンプを組み合わせたい。
4万円未満の価格帯の特徴(カートリッジ)
井上卓也
ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より
スピーカーシステムのような外形寸法が大きく、重量もあるコンポーネントに比べ、カートリッジは小型軽量であるため、海外製品の実売価格が非常に低く、特例を除いてこの4万円未満で入手できるのが、特長であり、今回のような価格帯別のベストバイを考えるときに大きな問題点になってくる。従って、ここでは、国内製品を中心にして価格帯を考えてみよう。
4万円未満でも2万円と3万円は、さらに、それぞれボーダーラインとなる。
2万円未満はMM型も数あるが、狙うならMC型で古典型から現代型まで数機種が並ぶ。
2〜3万円は高性能で信頼性の高いMM型とMC型の中級機種が存在する価格帯で、MM型の高性能化、MC型の実質的魅力かが選択のキーポイントになるだろう。
3〜4万円は、実売価格が高いデッカ、オルトフォンの製品が存在し、これらは4万円以上と互角の魅力をもっている。
EMT XSD15
瀬川冬樹
ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より
EMTのカートリッジTSDシリーズは、ほんらい、同社のプレーヤーデッキに組合わされるいわばプレーヤーシステムの系の中のパーツであり、単売のカートリッジだと考えないほうがいいが、それでもTSDの魅力の半面なりを味わいたいという向きのために、オルトフォン/SME型のコネクターに代えたXSDが用意されている。この音の魅力を生かすには、アームやプレーヤーシステムの選び方が相当に制限される。
デンオン DL-303
瀬川冬樹
ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より
永く続いた103シリーズのあと、最近のカートリッジ設計の主流ともいえるローマス化をはかって企画されたのが303のシリーズで、現在、301、303、305の三機種が揃っているが、DL−301はヤング層の好みをことさら意識しすぎ、DL−305は303の繊細さに何とか力を加えようと力みすぎ、みたいに(私には)思えて、ことさらの音作り意識の加わっていないDL−303が、やはり最良の出来栄えだと思う。国産MCのベストに推す。
デンオン DL-103
瀬川冬樹
ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より
おそらくオルトフォンのSPUに次いで寿命の長いカートリッジだろうか。永いあいだ1万6千円、その後1万9千円に改訂されたものの、FM放送用として入念に設計され、長期間作り続けられた安定性と信頼性は、その後数多く出現したいわゆる1万9千円MCカートリッジの攻勢を寄せつけない。最新型と比較すれば、音がやや太く重いが、MCとしては出力が大きく扱いやすく、良いアームと組合せれば、この音は立派にひとつの個性だ。
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