井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
力強く安定した低音をベースに活気のある音は同社ならではの魅力。
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
力強く安定した低音をベースに活気のある音は同社ならではの魅力。
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
基本設計を着実にリファインしつづけて得られた緻密で高品位の製品。
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
幅広くカートリッジに対応し、個性を引き出す信頼性の高さは抜群。
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
音質が優れたフォノモーターとして、その定評の高さは抜群である。
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
外観、内容ともに高品質、高性能の価値の高い中級機。
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
モノーラルコンストラクションで、二台揃えると価格も相当だが、さすがに音の質感のよさ、緻密さはローコストアンプとは違う。が、おもしろいもので、コントロールアンプにマーク・レビンソンのLNP2Lを組み合わせても、出てくる音にむしろビクターのアンプの性格で聴かせてしまうという面からみると、かなり個性の強い音、といえそうだ。コントロールアンプの(EQ)7070のところにも書いたことと共通しているが、総体に音に明るい華やいだ光沢をつける。それも音全体にというよりも音の輪郭を細い光の線でいろどるという印象で、そのためにいかにも切れ味の鋭さが目立ってくるが、基本的な音の質の高さと透明さゆえにそれを必ずしも嫌味に感じさせない。
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
M7070と比較すると、これは価格も1/4になるのだからとうぜんかもしれないにしても、コントロールアンプの7070と3030の比較とよく似て、こちらはかなり音の切れこみの点で聴き劣りするのはやわをえないところか。ただ、コントロールアンプの場合は7070にくらべて3030が、やや時間を置いて聴いてもおそらくはっきりと聴き分けられるであろう程度の差のあったのに対して、パワーアンプの場合には、同時に聴きくらべれば、という程度の差には追い込まれていて、価格を頭に置いて聴くかぎりは国産として一応の水準には達している。欲をいえば7070のあのスカッと気持のいい切れ味や、彫りの深い立体感や透明感がもっと欲しいという感じ。
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
一聴して基本的なクォリティの高い、よく磨き込まれた緻密さが聴きとれる。音の傾向自体はやや明るく軽く、たとえばオーケストラの斉奏でもディテールのひとつひとつがきらきらと細く光るようなところがあったり、弦楽器では倍音の方に耳の注意力をひきつけたり、アメリンクやキングス・シンガーズやテルマ・ヒューストンなどの声が総体に若づくりになる傾向を聴かせるが、音の支えがしっかりしているのでこうした聴こえ方は不快ではない。ただ音の透明感のすくれている割には、立体感や奥行きがもうひと息増すとなおよいという感じがあった。MCヘッドアンプは低域がやや薄くなる傾向があるがクォリティはかなり高く、中高域以上はかなり美しい音を聴かせた。
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
EQ7070と見た目はよく似ているが、出てくる音はだいぶ違う。7070が明るく軽く透明な音のするのに対して、3030の音は逆に総体におっとりして、7070のような入力ソースに対する反応の早さをあまり感じさせない。音像の前にやや暖色系の薄幕をひいた感じで、総体に音の冴えが物足りなく、もっと透明感が欲しい。細部を見渡したい、という気持にさせる。そのせいもあるのか音像の並び方も平面的で、奥行きや立体感がもっと欲しい。内蔵のMCヘッドアンプも7070とはだいぶ違うらしくDL103Sの場合にはまあまあだが、MC20に対しては音を素気なくする傾向。7070とは価格の差がずいぶんあるのだから仕方ないかもしれないが。
井上卓也
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
反応が早い、シャープで細やかな音をもつアンプである。聴感上での周波数レンジは、かなりワイドレンジ型で伸び切っており、バランス的には、低域が柔らかく少し重いタイプで、中域は少し密度が薄く、中高域には硬質な面が潜在的にあるようだ。表情は、豊かで活気があり、音場感はやや奥に引っ込んでナチュラルに広がり、パースペクティブをもかなり聴かせる。音像はかなりよくまとまり、定位はクリアーである。
付属のMC型用ヘッドアンプは、MC20では低域から中低域が豊かで余裕があり、中高域から高域もナチュラルで細やかである。103Sでは、キャラクターが少ない、伸びやかで細部を充分に引き出す音が気持よい。
井上卓也
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
活気がある,華やいだ雰囲気の音をもつコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、あまりワイドレンジ型でないが、かなりナチュラルに伸びており、バランス的には、低域は豊かで柔らかく、少し軟調であり、重さが感じられる。中域は硬質な面があり、低域とバランスしてこのアンプのキャラクターとなっている。
リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せは、やや相乗効果的なミスマッチが感じられ、予想よりも中域が粒立たず、低域が尾を引いたように、鈍く大味で散漫な印象となってしまう。むしろM3030とのペアのほうが、音が決まり、一種の個性的な音となるようである。
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
3030どうしの組合せのところで書いたようなビクターのアンプの二つの傾向の中の、もうひとつの面といえる、明るく輝いた積極的な響きのよさを持ったアンプといえる。音のひと粒ひと粒が、輪郭をきらめかせて輝く感じで、こういう音はもしも基本的なクォリティの低い、音の質感の十分に磨かれていないアンプで鳴らされたとしたらやりきれないのだが、さすがに7070のクラスになれば、緻密で品位の高い質感のよさに支えられて、この明るく張り出す音は、魅力的な個性といえるレベルにまで仕上っていると思う。たとえば「オテロ」の冒頭のトゥッティや、弦楽四重奏、そしてアメリンクの声などクラシック系ではいくぶん派手やかさが目立つけれど、決して不快ではなく、またポップス系ではヴォーカルなど概して若づくりになる傾向もあるが、ともかくかなり楽しませる音がする。いわば自己主張のつよい聴きようによっては押しつけがましさもある音には違いないが、質の良さで聴かせてしまうアンプだ。
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
ふりかえってみてビクターの作るアンプの音には、二つの違った傾向があったと思う。ひとつはプリメインアンプのJA−S41に代表される、かなり抑制の利いた、どちらかといえば音楽の表情をおさえてゆく方向の、おとなしい感じの音。そしてもうひとつは、音像の輪郭をきらめかせて総体に良く響くという感じの傾向。この傾向は以前のセパレートアンプJP−S7/JM−S7にもあった。また国産のアンプでは従前までのサンスイなどにもその傾向があった。3030シリーズの組合せは、どちらかといえば前者の傾向で、総体に穏やかでいくらか暗色系の曇りを感じさせる。ただ音像の芯には意外に硬質なところがあるようで、音の密度は一応しっかりしている。反面もう少し立体感が欲しい。あるいは音像と音像とのあいだに空気を送り込みたい、という感じがする。離れて配置された互いに異なる楽器から出た音が、空間で溶けあってハモリ響く感じをもっと出したいという気分にさせる。
井上卓也
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
シャープで立ち上りの早い、反応の早い音が特長のパワーアンプである。
トータルバランスやエネルギーバランスの面では、EQ7070よりも、むしろこのM7070のほうが一段と優れており、120Wの定格パワーから予想した音よりも、充分にパワーの余裕を感じさせる音である。バランス的にはフラットレスポンス型で、音色は低域から高域に渡ってよくコントロールされた、明るく軽く、細やかなタイプで、音の表情も活き活きとし、鮮度が高い爽やかな音を聴かせる。ステレオフォニックな音場感は、ナチュラルに広い空間を感じさせるタイプで、音像の立ち方もクリアーで、実体感がある。
井上卓也
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
低域ベースの安定した、かなり活気のある音をもつパワーアンプである。
聴感上での周波数レンジは、豊かな低域をベースとした安定感のあるバランスで、高域もハイエンドは少し抑え気味の印象を受ける。低域の音色は、豊かで柔らかく重いタイプで、重心の低いズシッとしたエネルギー感があり、中域は、量的には充分なものがあるが、音の粒子がやや粗粒子型で、滑らかに磨かれてはいるが、引き締ったクリアーさでは今一歩という感じがする。カートリッジは、4000D/IIIや881Sよりも、ピカリング系のソリッドで輝きがあり、クォリティの高いタイプがマッチしそうで、アンプ本来の特長が活かせるだろう。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より
スタジオモニター用としてアルテックの604シリーズやタンノイのような同軸型の2ウェイには、至近距離で聴いたときの音像のまとまりのよさ、定位のよさと言う重要なメリットがある。ビクターS3000が、これら同軸型の流れの上に作られたのは、スタジオモニタースピーカーが、概して、ミクシングコンソールのすぐ向う側に、ミクサーの耳にごく近接してセットされることの多い状況から見て納得がゆく。
が反面、モニタースピーカーにも新しい流れがみえはじめて、アメリカではJBL、イギリスではスペンドールやKEF、ドイツではK+H、フランスではキャバスなどそれぞれは、ほとんどが3ウェイでレインジをひろげ、しかもKEFやキャバスはいわゆるリニアフェイズにトライしている。日本のモニターでいえばダイヤトーンのAS4002PやヤマハのNS1000Mが、やはり3ウェイ、4ウェイで周波数レインジをひろげている。
ビクターのS3000はアルテックやタンノイの方向をあえて踏襲して設計方針をとっているので、その音もまた、新しい流れのモニタースピーカーの鳴らす音は少し方向を異にしている。言うまでもなく高音域のレインジは(聴感上だが)広いとはいえない。ことに高域のフラットな、あるいはハイエンドの甘いカートリッジを使うとこの傾向が顕著で、しかし中音域はかなり硬質で強引なところを持っているように聴こえる。念のためお断りするが、今回試聴用に廻ってきたS3000は、本誌45号(290ページ)で聴いた製品とはずいぶん音のイメージが違う。前回の製品は、いかにも作ったばかりのようにトゥイーターの鳴り方が硬かった。が反面、それゆえの高域の明瞭度あるいは明快度の高いおもしろさもあった。ところが今回のサンプルは、すでにかなり鳴らし込まれたものらしく、高域のかどがとれて滑らかに聴こえる。前回はトゥイーターレベルを-3まで絞ったが、今回はノーマルでもむしろいくらか引っこみ気味なほどレベルバランスもちがう。逆に+3近くまで上げた方が前回のバランスにイメージが近づくほどだった。そのためか、前回でもカートリッジをピカリング4500Qにした方がおもしろく聴けたが、今回はそうしなくてはハイエンドの切れこみが全く不足といいたいほどだった。
そうしたバランス上のこととは別に、このスピーカーもプログラムソースの豊富な色あいを、比較的強引に一色に鳴らしてしまう傾向があって、総体に音の表情をおさえてやや一本調子で押しまくるところが感じられる。また音像を散りばめるよりも練り固める傾向が相当に強い。もうひとつ、音量をかなり上げてゆくと、絞ったときの表面的なおとなしさと打ってかわって、ややハードなタイプの音になる傾向がある。あるいはこの方がS3000の素顔かもしれないと思った。
菅野沖彦
ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より
ビクターのS3000は30センチ・ウーファーに同軸トゥイーターをカプリングしたコアキシャルスピーカーで、開発時よりモニターとしての意識で進められた。モニターに対する概念、コンセプションがどういうものであるか、開発者に聞いてみなければ解らぬが、もし、コンシュマーユースより高級、高性能という単純なものだとすれば、それは当っていないのではないか。どうもモニタースピーカーへのコンプレックスを、多くのメーカーもユーザーも持ちすぎている。モニターの資格検定があるわけでもないし、モニターといわれるスピーカーの全てが、コンシュマー用より優れているなどということも決してない。それはともかく、録音時に、製作者が意図を確認する目的や、生演奏直後の再生に大きな違和感を感じさせないためには、モニターは、高品位でタフなスピーカーが要求されることも事実である。コアキシャルは定位がよくて、モニター向きだというのは事実だが、マルチウェイでも定位の確認が出来なくない。このS3000は、いずれにしても、コアキシャルのよさと悪さを併せ持ったしすてむで、音がまとまる反面、おおらかな空気感の再現には同系のスピーカー共通の弱点が出る。しかし、このシステムは国産モニターとして世界の水準に劣らないハイクォリティの製品に仕上げられている。
瀬川冬樹
Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より
中〜高域に一種の華やぎの感じられる音色だが、バランス的には、どのプログラムソースに対してもどこかおかしいというようなことはもなく、周波数レインジも十分とはいえないまでも高・低領域によく伸びている。耐入力は十分あって、かなり音量を上げても音がくずれるようなことがなかった。ただ、この価格ということを頭に置かなくてはいけないのだろうが、どこか品位を欠く音色で、楽器のもっている音色の格調の高さが出にくいのは致し方のないところだろうか。ステレオのひろがりと定位はふつうだが、どちらかといえば「耳もとで鳴っている」感じが強く、音が耳もとを離れて空間に漂うようには鳴ってくれない。もうひとつ、イヤパッドの形が耳たぶをややおさえすぎる感じがあって長時間かけ続けていると疲労感の増す傾向のあることも、音を耳もとに意識させる一因かもしれない。デザイン的には、ヘッドバンドを含めて総体に大げさでない作り方は好ましい。
瀬川冬樹
Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より
同じメーカーの製品だが、ローコストグループに出てきたHP660とは、デザインも構造も全く違うフラットダイナミック型だ。さすがに1万円を超えるクラスになると、ヤマハのHP1でもそうだったが、いろいろなレコードを聴いていて、バランス的にどこかおかしいとか、周波数レインジがせまいなどという欠点は殆ど指摘できなくなってくる。しかしやはりそこにビクターのトーンキャラクターに共通の、どこか華やいだ高域が聴きとれて、たとえばヤマハHP1よりも音場がいくらかひろがったような感じに聴きとれる。インピーダンスが公称65Ωと高めなので、ヘッドフォン端子とスピーカー端子の両方を試してみたが、スピーカー端子からダイレクトにとり出した方が、歪が少なく、鮮度の高い引締った音が得られた。かけ心地は悪くないが、本体がやや重い方なので、パッド圧が強く、長時間かけているとやや疲れそうだ。
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
ビクターの7070シリーズは、単なるセパレートアンプの分野にとどまらず、周辺機器までを含めたシステムプランにより開発されたユニークな製品である。すでに、このシリーズではグラフィックイコライザーSEA7070、エレクトロニッククロスオーバーCF7070が発売されているが、今回、イコライザーアンプEQ7070、モノ構成パワーアンプM7070、FMシンセサイザーチューナーT7070、プラズマインジケーターDS7070がシリーズに加わり、充実した製品のラインナップとなった。
EQ7070は、フォノイコライザーの名称をもつようにディスク優先型のプリアンプで、必要最少限度の機能のみを残した単純機能のプリアンプであり、トーンコントロールはシリーズ製品のSEAを併用することになる。機能は、2系統はMM/MC切替可能となっている3系統のフォノ入力、AUX、チューナーの入力切替、2系統のテープモニタ、CとRのカートリッジ負荷切替などを備える。
MCヘッドアンプは、エキストラ・ローノイズFET採用のICL−DC構成で高SN比をもち、イコライザーアンプは、初段FET同相帰還ダブル差動定電流負荷のICL−DC構成、フラットアンプは初段FETシンメトリー・プッシュプル・ドライブ型ICL−DC構成である。
M7070は、モノ構成の完全なDCアンプである。電源関係を重視した設計であるために、A−B独立電源のBクラス動作をするパワー段には、一般の商用電源を一度DCに整流した後に数10kHzのパルスに変換し、高周波用トランスで変換してから再び整流してDC電源を得るDクラス電源に、制御系にPWM方式を用い応答速度を高めた定電圧電源が使用されている。これにより、電源の内部インピーダンスを高域まで非常に低くすることが可能となり、電源のレギュレーションは、理想の電源と言われた蓄電池をしのぐものとしている。
この強力な電源をベースとして、パワー段には高域特性が優れた素子として注目されているパワーMOS FETを採用し、100kHzにおいても120Wの実効出力を、0・02%の高調波歪率で得ることに成功している。
フロントパネルには、12ポイントのLEDピークパワーインジケーターを備え、0・3Wから200Wまで表示可能であり、入力調整、ヘッドフォン端子、スピーカー切替を備える他にプロ用機器としても使用するために、キャノンコネクターをもつ。
EQ7070とM7070の組合せは、現代アンプらしい伸びきったfレンジと粒子が細やかで透明感のある音をベースとし、反応が速く十分にエネルギー感がある充実したサウンドで、ソフトドーム系や、古いタイプのスピーカーに積極的に働き、活気ある音として聴かせる。
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
セパレート型アンプの2020シリーズを基盤として開発されたプリメインアンプで、ビクターの中心機種の位置にある。構成は、イコライザー、トーンアンプがA級動作のDC構成、パワーアンプがDCアンプのトライDC構成で、電源は、A−B独立型、対数圧縮型パワーメーター、フロントパネルのテープ入出力端子が目立つ。
このモデルは、最新アンプ共通の歪感がなくfレンジが広い、滑らかな粒子の細やかな音をもつ。ビクター製品らしく、音色が明るく、中域に十分な厚みが感じられるのが魅力のポイントである。
黒田恭一
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ
カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶くっきりと示されるピッチカート。木管のひびきにもう少し繊細さがほしい。
❷あいまいにならず、輪郭がしっかり示されるところがいい。音に力がある。
❸特にデリケートとはいえないが、ひびきの特徴によく対応できている。
❹第1ヴァイオリンのたっぷりしたひびきがいい。低音弦もふくらまず。
❺もりあがりに力があり、迫力をよく示す。アタックも充分だ。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像的なまとまりがよく、ひびきに力のあるのがいい。
❷これみよがしにならずに、くっきりと示すこのましさがある。
❸「室内オーケストラ」としてのまとまりのよさがある。
❹対応が自然で、誇張のないのがこのましい。
❺とりわけ繊細というわけではないが、さわやかさがある。
J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶定位がいい。人間関係の鮮明な提示はなかなかだ。
❷接近感には多少誇張が感じられるが、不自然ではない。
❸声は硬めながら、オーケストラとバランスは悪くない。
❹セリフでの声も、うたってはった声も、硬くなりがちだ。
❺きわだって鮮明とはいいがたいが、必要充分に各ひびきを示す。
「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶余分なひびきをひきずっていないために、すっきりしている。
❷奥の方でのひびきが、くっきりと、たちあがる。
❸ひびきの細部にあいまいさがない。
❹ソット・ヴォーチェでは、声のキメ細かさの不足が感じられる。
❺のびにしなやかさが不足するものの、誇張がない。
浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンというひびきの硬質な性格がよく示されている。
❷声のまろやかさがもう少し示されることが望まれる。
❸浮遊感ということではもう一歩だ。ひびきがくっきりしすぎる。
❹ひびきの輪郭がつきすぎている。狭くるしさは感じないが。
❺力のある音がもりあがり、迫力のあるクライマックスとなる。
アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひっそりとした気配にいくぶん不足している。
❷この音はもう少しなにげなくひびいてもいいだろう。
❸下の方でひろがっているひびきで、実在感に多少欠ける。
❹かなりきわだつ。ひびきの光り方としては、もう一歩だ。
❺うめこまれているとはいえないが、ききとりにくい。
ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶あいまいにならない。くっきりした提示はこのましい。
❷ひびきの上でのアクセントを充分に示して効果的だ。
❸ひびきはじゅうぶんに乾いている。すっきりしたところがいい。
❹ドラムスのひびきも、言葉のたち方もこのましい。
❺バック・コーラスの効果は充分に発揮されている。
ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像は、ふくらみすぎず、ひびきに力があっていい。
❷オンでとったなまなましさを示し、しかし過剰にはなっていない。
❸消える音の尻尾もよく示し、スケール感をもたらすのに有効だ。
❹細かい音の動きに対しての対応はシャープで、迫力がある。
❺音像的な対比に不自然さがなくていい。
タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきが横にひろがりすぎないので、アタックの強さを感じやすい。
❷つっこみは力があるが、ひびきが刺激的にはなっていない。
❸ひびきが積極的に前にはりだして、効果的である。
❹後方へのひきは充分だ。広々とはしないが、音の見通しはいい。
❺音のエネルギー感をよく示すので、めりはりがつく。
座鬼太鼓座
❶くっきりと左奥から、なまなましさをもってきこえてくる。
❷尺八のひびきに脂っぽさがなくて、すっきり示される。
❸きこえ方はかすかだが、ひびきに輪郭がある。
❹スケール感ということでは、いま一歩だが、力感は充分だ。
❺このひびきの硬質なところがよく示されて、有効だ。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
NS10Mを聴いたあとでこれが鳴りはじめると、やはり音のスケールがぐんと違ってきて、そのことから逆にNS10Mが、ああやっぱり小さなスピーカーだったのだと思えてくる。ただ、ヤマハの全域に抑制の利いた音の音のあとでこれを聴くせいばかりでなく、ビクターのスピーカーが概して持っている(ことに、これと兄弟のSX55N=前号283ページ参照)音をことさらよく響かせるという傾向を、このSX11も持っていて、まず、とても良くなるスピーカー、という感じを抱かせるが、反面、箱の共鳴音のような響きが、長く聴くにつれて少々耳につく傾向がある。中〜高域でややハスキーな音になるが、しかしテストソースのすべてを通じて、レベルコントロールを修整する必要はそれほど感じられない。というよりも、トゥイーターのレベルを絞ると、高域が曇ってしまうので、このままのバランスで聴くべきスピーカーだと思う。ただ、SX55Nのところでもふれたと同じようにこのスピーカーも、低域でどこか粘るような音と、その反面中〜高域ではときとしてはしゃぐ傾向の声質をあわせ持っている。アンプやカートリッジを替えてみると、ラックスやトリオの系統より、ヤマハの淡泊な傾向が合うようで、とうぜんカートリッジもシュアーやアンパイアの系統がよかった。置き方は本誌標準台のままでよかった。
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