トリオのスピーカーシステムKL5060、プリメインアンプKA2600、チューナーKT3000、アナログプレーヤーPC250、オープンリールデッキTT10の広告
(スイングジャーナル 1970年3月号掲載)
Category Archives: プリメインアンプ - Page 35
JBL SA600
瀬川冬樹
ステレオ 3月号(1970年2月発行)
「世界の名器」より
プリメイン・アンプというと、ふつう一般にはプリアンプ、パワーアンプを独立させたセパレート・タイプにくらべて一段下の性能とみられることが多い。たしかに、アクセサリーの豊富さや、とり扱いの面ではセパレート型が勝るかもしれないが、音質だけに限っていえば、JBL・SA600は、第一級のセパレート型のアンプに対して、全くひけをとらないどころか、現在得られる内外のオーディオ・アンプの中でも群を抜いて素晴らしい音質を聴かせてくれるアンプなのだ。
昨年9月号のこの欄でご紹介した、同じJBあるのセパレート・タイプ、SG520型プリアンプとSE400S型パワーアンプを、それぞれ僅かずつ簡素化して一体に(インテグレートに)まとめたものがSA600で、その音質は、JBL以外のアンプからは得られない独特の、華やいで繊細な、キリッと小股の切れ上ってぴりりと神経の張りつめた、透明で、シャープで、明るく小粋な音を響かせる。
「電波科学」誌68年8月号で、海外著名アンプのブラインドテストの席上で、菅野沖彦氏が(むろんブラインドだからSA600とは知らずに)おもしろい発言をしておられる。「──にくいアンプですね。非常ににくいアンプだと思います。だけどそれが果して自分で持っていて毎日聴いて、どこかでぶつかってきやしないかと思うのです。──」
*
SG520とSE400Sの組合せを常用アンプとして、3年間聴いてキたひとりとして言わせて頂くのだが、全く菅野氏の予言どおり、こういう張りつめた音に、ときたまふっといや気がさすことがある。それでいて、三日もこの音を聴かずにいると、もう無性にスイッチをいれたくなる。これは窮極の麻薬なのかもしれない。
*
JBLの製品は、音質ばかりでなく物理特性が優れていることでもよく知られ、いろいろな研究所やメーカーで実際に測定してみると、常にカタログに公称している以上の性能が出ることに驚異の目を見張る。中でも、SE400SおよびSA600のパワーアンプ部分の、差動増幅器による全段直結というJBLのオリジナル・サーキット(JBLではこの回路を、Tサーキットと名づけている)は、,トランジスターによるオーディオ・アンプの将来のありかたを示唆したものとして、専門家のあいだでも高い評価を受けている。差動増幅回路以後の三段に亘る完全対称型の電力増幅回路は、原理的に偶数次の調波ひずみがゼロになるという優れたもので、直流領域から高調波領域にまで亘る広い周波数帯域と、大きな出力を極度に少ないひずみで広帯域に亘って確保できるズバ抜けたパワーバンド・ウィズスは、今に至るまでこれを凌駕するものが殆んど無いほどのものだ。この優れたパワー・キャラクターのためか、あらゆるスピーカーを接続してみて、他のアンプとのあまりにも違う抜けの良い音質に、いったい幾たびおどろかされたことだろう。
差動・直結回路をJBLが完成したのは一九六五年のことで、それから五年を経たいま、回路構成こそ違うがこの方式がアンプメーカー各社によって次々と採用され、開発されはじめたことをみても、JBLのアンプ設計技術が、いかに卓抜なものであったかと改めて思い知らされる。
*
しかしこのアンプを〝名器〟といわせるのは、決して回路構成や音質の優秀さばかりではなく、そういう内容を包んでいるデザインの素晴らしさも、また特筆する必要がある。
フロント・パネル面は淡いゴールド・アルマイトで、光沢を抑えたヘアライン仕上げは、光線の具合によっては、やや若草色がかかってもみえる。そして、大胆な面の分割と、アンプの人間工学を十二分に消化した操作ツマミ類の簡潔な整理。さりげなく置かれたJBLのマークの一部がパイロットランプを兼ねて光るというしゃれたアイデア。パネルに続く両サイドのウォールナット板は、化粧張りなどしていない本もののムク板で、チークオイルでみがき込むと、だんだんと渋い深みのある濃いウォールナット色に変わってゆく。
正面や側面もさることながら、このアンプはおそらく世界一のバックシャンでもある。精度の良いアルミ・ダイカストの厚板で、フロントパネル以上にきびしい分割面を持った、完璧にヴィジュアライズされた見事な作品で、ここにスピーカー端子とACプラグ、それにヒューズ・ホルダーだけがさりげなく配置されている。実はこのパネルは、パワー・トランジスターの放熱器(ヒートシンク)で、エナージャイザーとしてスピーカー・キャビネットに組み込むためのSE408では、これはもともと前面パネルなのだと知れば、この背面パネルらしからぬ美しい処理にも納得がゆく。
そこでSA600では、入力端子のピン・ジャック類を、シャシー底面に置いている。しじゅうコードを抜き差しするといったマニアには不便このかたない場所に違いないが、このアンプそのものが、そういう目的に作られたものではない。
一九六六年に発売されたSA600も、開拓期のTRアンプの宿命か、三年たった昨年(一九六九年)、新型のSA660にモデルチェンジされて、製造中止されてしまった。660は、ほとんど黒に近いブロンズ色のパネルに大きく方向転換し、SA600の若々しい姿から、ちょっぴり分別くさく、ややふてぶてしいパネルフェイスに変わってしまった。40W×2の出力が60W×2と増加したり、左右連動だったトーン・コントロールのツマミが二重型でセパレートされたなど小改良が加えられたが、あの若さに溢れたみずみずしい音質までが、パネルフェイス同様に妙に分別くさく、つまりよくいわれる無色透明型の音質にやや近づいてしまったのは、個人的には残念なのだが、おそらく660の音ならば、菅野氏も「毎日聴いていたら、どこかぶつかってこやしないか」とは仰らないだろう。
ダイヤトーン DS-22B, DA-33U
オンキョー Integra 713
テクニクス SU-2010 (Technics 50A)
オンキョー Integra 713
ビクター MCA-105, MCP-105, MCM-15
ラックス SQ507
サンスイ AU-555, AU-777D, TC-505
ビクター MCA-105
ラックス SQ503
オンキョー Integra 713
サンスイ SP-1001, AU-555, BA-60, BA-90, TC-505, TU-555, CD-5, SR-2020
ソニー TA-1166
岩崎千明
スイングジャーナル 1月号(1969年12月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
コンポーネント・ステレオという言葉が説明なしに通用し、セパレート・ステレオに代って流行してきつつある。そしてステレオ専門メーカーの製品が市場において、ますますその地位を確固たるものとしてきている。
音楽ファンの好みが次第に高級製品に移行してくるに従って、製品のレベルも格段に向上しつつあるこの頃である。
こうした情勢下のハイ・ファイ市場において、最近ソニーがアンプを中心とした一連の製品を発表し注目された。高級アンプにおいて、国産製品はもちろん全世界の製品の中にあっても屈指の水準を誇るソニーのトランジスタ・アンプ、その血統を引いた製品が今回発表されたTA1166なのである。
かつてこの欄で、ソニーの普及型レシーバーSTR6500を試聴したが、ソニー製ということで、あまりにも多くを期待し、肩すかしを感じたことがあった。TA1166については約5万円という佃格を考え、ほぼ同価格の他のアンプと比較対照とすることに努め、期待の過ぎることを戒めさえした。
しかし結論からいうと、これは不要であったようだ。ソニーの技術はTA1120においてみせたその水準の高さは、新製品にはっきりと示されて、5万円弱の製品とは信じられない優秀性をみせたのである。
TA1166は同級製品の中にあって一段と優れた再生を約束してくれるアンプである。くっきりとした音の粒立ち、アタックにおける尖鋭な音、という点でまぎれもなく名作TA1120の流れを引く再生を示してくれたのである。
アンプにおいてトランジスタがよいか、球がよいか、という論争が今でもくり返えされている。しかし、音の解像度、分解能力という点ではよく作られたトランジスタ・アンプがはっきりと優れていることは誰しも認める事実である、そして、少くともジャズという音楽芸術は、楽器のひとつひとつの音に演奏者のすべてをかけているだけに、この瞬間の音こそ忠実に再生することが他の何よりも、例えば全体の響とか、ハーモニーとかよりも重要である。とすれば、その再生にあたって、何よりも分解能力が重要となるであろう。その点で、音の立上りの良さに抜群のソニーのアンプはジャズの再生に対し、この上なく理想的といえる。しかも5万円という価格から予想できる音楽ファンの平均的好みを配慮してか、低音感について力強い迫力と共に、一段と豊かさを加えての音作りが心にくいほどだ。むろん、この低音感は単に低音のみが出るというのではなくそれに対する高域の透明な切れ味があってのものだ。
高域の、冷たいほどにとぎすまされた切れ味は、ソニーの名作TA1120においてすでに十分知らされてきており、それがそのままTA1166に受けつがれて血筋の良さを感じさせているのである。
TA1166のデザインは、今までのソニーのイメージをまったく打ち破ったメカニカルな、現代的な線が強い。一見通信機を思わせる、思いきったシャープな線でかこまれたダーク・グレイの2トーンだ。
このデザインから、初め、若者向けのものという印象を受けたのだが、どうしてどうして単に若者向けに止まる程度のものではなく、音色にも、バランスにもきわめて高い水準を示して、類のないパネルの仕上げの良さが、そのまま内容的にも十分に神経を使った高級品であることを感じさせる製品であった。
ただ、これは個人的な好みなのかも知れないのが、パネル・デザインがあまりに凝りすぎて、例えば、バランス調整のスライド部のまわりなど、繁雑な印象を受ける。せっかく使い良さそうに配された各ツマミは、もう少しスッキリとまとめられていた方が、若い層だけでなくより広い層に支持を受けるのではないだろうか。とはいえ、この価格のアンプにまた魅力いっぱいの製品がひとつ加わったのは、ファンにとっても喜ばしいことにちがいない。























最近のコメント