Category Archives: スピーカー関係 - Page 6

AR Limited Model 3

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 リミテッド・モデル3は、マーク・レビンソンやジョージ・セクエラの両氏らが参加して開発されたARのリミテッド・シリーズのスピーカーシステムだ。静電型SPの魅力をダイナミックがたで具現化する構想は、そのデザインにも表われている。低域エンクロージュア上部の、2個のドーム型間に高域を配したレイアウト浅いよう。前面はパンチングメタルで覆われ、音の拡散に使われる。ナチュラルで、キメ細かく豊かな音は雰囲気が良く、音楽ファンには好適だ。

アコースティックリサーチ

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 現在、ブックシェルフ型と呼ばれているスピーカーシステムはかなり幅広い範囲で使われているが、これは本棚に横位置で収納できる程度の小型エンクロージュアで、フロアー型に勝るとも劣らぬ低域再生能力を持たせることに成功した、米ARの創始者エドガー・M・ヴィルチュア氏の発明による、AR1をその最初の製品としたアコースティック・エアーサスペンション方式が原点である。
 小型エンクロージュアに、低域共振を可聴周波数以下にしたユニットを組み込み、小型ユニットで優れた低域再生能力を持たせようとする発想は、AR以前に東京工大の西巻氏により提唱され、細い木綿糸などで振動系を支持する糸吊りサスペンションが、一時期国内のアマチュア間で盛んに行われたことがある。これを30cm級のウーファーを使い、コーン振幅が大きくなる分だけ、磁気回路のプレート厚の2〜3倍の巻幅をもつロングボイスコイルと、それに対応するエッジ、スパイダーを組み合わせ、完全に気密構造のエンクロージュアに密閉して、内部の空気そのものを振動系のサスペンションとする方式が、ARの特徴だ。
 幅広ボイスコイル採用だけに能率は激減し、この低下に見合う強力なアンプが必要となる。時代は折よく半導体アンプの登場期で、真空管と比べ圧倒的にハイパワーが低価格で可能となったことがこの方式の確立に大きく寄与している。
 ARの代表作は64年発売の30cm3ウェイ機のAR3aで、20cm2ウェイ機AR4x,25cm3ウェイ機AR5などがラインナップされ、独自な形態のAR−LSTがその頂点に立つシステムであった。約30年の歳月が経過し、ARはこれも超高級スピーカーで高名なジェンセン・グループに属しているが、AR3aの復刻版が限定発売され、再びハイファイマーケットで、かつての名声が復活しつつある。

BOSE 214, 314

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 新製品の214は、左右スピーカーの内側前面に、音響心理学に基づく独自のレイアウトしたステレオ・ターゲティング・トゥイーターを取り付け、広い範囲で正しいステレオイメージが得られるようにしたシステムだ。314は、214に加えて、後方側面にコンサートホールの空間を再現する為の7・5cmダイレクト・リフレクティング・トゥイーターをマウントすることで、間接音成分を増やすとともに、シャープな音像定位をも実現させる新技術が導入された、いかにもボーズらしい新製品だ。

BOSE 101MM

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 101MMは、’82年の誕生以来のロングセラーを誇る、ボーズ小型高性能スピーカー原点と考えられるモデルだ。901系の11・5cm全域型は、人間の可聴周波数帯域をカバーする最小のサイズとして決定された口径だ。ボイスコイルボビンはアルミ材で、その表面は特殊表面処理により絶縁されている。ボイスコイルには、縦横比4:1の四角断面をもつ米国特許のヘリカルボイスコイルを採用。磁気ギャップ内の磁気エネルギーの利用率が非常に高く、放熱効果も優れており、独自開発の高耐性接着剤のバックアップもあって、フルレンジの常識を破る強大なダイナミックレンジを実現している。また、国内特許が認められたLCRを組み合わせたパッシヴEQは、スムーズなfレンジを確保している。
 101MMは、業務用途に多用されているため、製品間のバラツキは極度に少ない。たとえば数年前のユニットと現在のユニット間でも、音質的な相違は皆無に等しいそうだ。また、各種アクセサリー類も完備しており、自由に屋外も含めた自由空間でオーディオを楽しめるパートナーとして、仕様の異なる101MMG/VM/SDVMなどとともにアクティヴに楽しめるシステムだ。

BOSE 121WB, 121

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 121WBは、WBシリーズの第一作としてすでに定評の高いモデルだ。モデルナンバー末尾にVが付くモデルはタテ型仕様で、化粧板の位置が異なる。
 121は、高域ユニットとアクースティマス方式の低域が組み込まれた242システムと組み合わせれば、121+242=363のように、363システムにステップアップすることも可能だ。
 また、マイカ混入型の新しいコーンを採用したことで、明解さが加わり、反応が一段とシャープになった。リジッドなエンクロージュアと独自のエアロフレアポートの低域再生能力が相乗効果的に働き、スピーカーの存在感をあまり意識させずに、想像を超えた低域再生能力が楽しめる、ボーズならではの意外性もすごく魅力的である。

ダイヤトーン DS-A3

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS−Aシリーズは、従来までの同社のブックシェルフ型やフロアー型システムとはひと味違ったエンクロージュアづくりを最大の特徴とした、大変に興味深いシリーズである。
 DS−A3は、2S3003系の両サイド・ラウンド形状バスレフ型エンクロージュアを採用。コーン型の振動板として、高域・低域ともにアラミド(ケヴラー)を使用し、物理値的な等音速の利点を活かして音色的な統一性を狙った、ハイクォリティな小型システムだ。バスレフ開口部は楕円型で断面積が大きく、最低音がいかにも開口部から放射されるような、つまりバスレフ開口部が第三のユニット的に動作しているのがわかるような、弾力的で、明るく伸びやかな低音が、このシステムの最大の魅力であろう。

ジョーダン・ワッツ Module Unit, JH1000, JH200

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 英グッドマンのフルレンジユニットの名器AXIOM80や、超小型ブックシェルフ型2ウェイシステムとして世界的にショックを与えたマキシマなどの開発者E・J・ジョーダン氏と、同社の技術マネージャとして活躍していたレスリー・E・ワッツ氏の2人が理想の小型スピーカーの開発を目指し、1964年に創立したユニークなスピーカーメーカーが、ジョーダン・ワッツだ。
 同社の最大の傑作は、10cmアルミ合金コーン、ベリリウム銅線サスペンション、コーン径より大きい磁石を15cm角アルミダイキャストフレームに組み込み、フレームに音響負荷をかけたフルレンジ型のモジュール・ユニットだ。このユニットの全域型らしい、生き生きとした表現力豊かで反応のシャープな音は、非常に魅力的で、1個使用のA12、2個使用のA25、さらに4個使用のB50などで一躍注目を集めたことは記憶に新しく、その音が鮮明に想い出される。
 その後、超小型のジャンボ、一つのエンクロージュアでステレオ再生可能な8個使用のステレオラなどで一段と評価を高めながら、ユニークな陶器製花瓶型システムのフラゴンに至る。
 そして、トゥイーターを加えた2ウェイ型、ドロンコーン採用などのプロセスを経て、80年にはモジュール・ユニットMKIIIとなり現在に至っている。
 JH1000は、口径を12・5cmに拡大した、モジュール・ユニットと同構造の低域と、5・1cmメタルコーン型高域を、450Hz/6dB型で2ウェイ構成としたトールボーイのフロアー型で、現在の同社のトップモデルである。
 JH200は、新開発のダンパーレス特殊サスペンションの9cm全域型を、英国高級エンクロージュアメーカーとして定評の高いR・ホールダーが設計したエンクロージュアに収めた珠玉の小型システムともいえる新製品だ。本機は、全域型ならではの鮮度感が高く、爽やかで生き生きした音が印象的である。

ダイヤトーン DS-600ZX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS600ZXは、DS900EXを信頼感のある安定した兄貴分とすれば、のびのびと陽気で楽しい性格の弟分といった存在だ。基本のユニット構成は高域を除き相似しているが、エンクロージュアがバスレフ型であるため、反応が速く活気のある豊かな低音は、明らかな性格の違いである。27cm低域は、16cm径と比べて約2・8灰の振動板面積があり、空気を確実に捉えて駆動する低音の力強さ、豊かさ、迫力は、とても小口径型では味わえない、いかにも振動板面積の大きいウーファーならではのものだ。

ダイヤトーン DS-900EX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS900EXは、DSシリーズ当初から中核を形成してきた30cm低域ベースの3ウェイブックシェルフ型の系譜を受け継ぐモデルだ。現在の小口径低域全盛時代にあって30cm低域はさすがに大口径だが、小口径型の低音感とは別次元の、本物の低音再生ができることが最大の魅力だ。ソリッドなモニター的性格は皆無に等しく、この程よい開放感と明るい音色は、幅広いプログラムソースに対応可能で大変に使いやすい。

ダイヤトーン DS-1000ZX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS1000ZXは、磁気回路のプレート部でユニットを取り付けるダイレクトマウント方式の中・高域、磁気回路とフレームを強固に結合するDMM構造の低域というように、メカニズム的に従来のユニット構造を大幅に改善したユニットを採用し、’83年登場したDS1000系の最新モデルだ。同じユニット構成で改良に改良を加え、メカニズムとして十分な熟成期間を経ているだけに、一段と豊かさを増した印象だ。3ウェイならではの緻密さとエネルギー感のある中域を中心にした音のクォリティの高さが魅力。聴感上でのSN比も高く、音のディテールの優れた再生能力と奥深く見通しの良い音場感情報の豊かさは、このクラスとしては例外的なパフォーマンスを備えている。華やかさは少ないが、ダイヤトーンらしい信頼性が高いという印象は、まさにベストセラーモデル中のベストセラーと確信させられる。

BOSE 901SS

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 外観や仕上げに家具調を求めなければ、業務用901とでも表現できる901SSをおすすめしたい。これは、両サイドに独自の角度可変型ウィングを備えており、しかも8個のユニット側を前面として使うサルーン・スペクトラム方式と、逆向きにしたダイレクト/リフレクティング方式との使い分けも可能だ。ライヴネスは、ウィングの角度調整により、かなりの幅でコントロール可能という、901WBにはないユティリティの広さが特徴だ。また、強固なエンクロージュアによるソリッドに引き締まった、分解能の高いシャープな音は、これならではの魅力である。

ダイヤトーン DS-205

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS205は、当初Aシリーズの高級機と聞いていたが、型名は伝統的な放送用モニターに準じたものに変った。側面は大きく弧を描く積層合板製で、これをバッフルと裏板で結合し、これに天板と底板を嵌めこむ構造は、簡潔だがかなり高度な木工技術の成果であろう。20cmアラミドコーン型ウーファーは、DS−A3系の振動板とアルニコ・ツボ型磁気回路を採用したもので、明快なサウンドを志向した低域として同社初の設計だ。高域は2S3003系のDS8000出使われた5cmB4Cコーン型。2S3003系を、より豊かに柔らかくパワフルにした印象の音は、清澄な印象もあり、非常に興味深い意欲作だ。

BOSE 901WB

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 現在の901WBは、ウェストボロウ・シリーズの表面仕上げと細部のデザインのマイナーチェンジが施されたモデルで、専用スタンドPS9が別売で用意される。エンクロージュアは、比重が大きく硬度の高いMDF材が新しく採用され、響きが明るく、音の分解能が向上して、全域型独自の生き生きとした表現力豊かな音が楽しめるようになった。外形上は小型なシステムであるが、11・5cmユニット9個の振動板面積の合計は、34・5cm全域型ユニット1個分相当になり、想像以上の空気駆動能力を備えていることがわかるであろう。
 901に好適なリスニングルームは、程よくライヴで響きの美しい部屋が好ましい。そして聴取位置に対しての角度調整や、床からの高さ、両方のスピーカーの間隔などを調整し、最も響きが自然になる設置位置を決めてから、アクティヴEQをプリアンプのテープ系か、外部アクセサリー端子に入れて、サウンドバランスを調整すればよい。セパレート型アンプを使用する場合は、プリアンプとパワーアンプ間に入れる使用方法と聴き比べてみるとよいだろう。
 901WBの発展した使用方法として、小型高密度な特徴を活かして2段重ねにスタック設置にして使うと、一段と豊かなプレゼンスを余裕タップリに楽しむことができるだろう。

ダイヤトーン DS-2000ZX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS2000ZXも、従来のZモデルから全面的にフレッシュアップされた新製品だ。ユニット構成は、伝統的なアラミドハニカムコーン採用の30cm低域、6cmB4C・DUDハードドーム型の中域、2・3cmB4C・DUDドーム型高域と変更はないが、各ユニットは基本的な部分から見直され、かなり大幅にクォリティアップされたようだ。低域は、ややタイトなアラミドハニカム振動板特有の音から、最低域までスローダウンして伸びる密閉型独自の性質がより聴きとれるようになった。特に低域ユニットのネットワークではカット不可能な中域〜中高域成分が巧みに処理され、クリアーさが一段と増しているため、鮮やかで歪みの少ない低域に力が増して、いかにも高級機らしい貫禄のある低音再生となった。
 中域は、低域とのつながりが厚くなり、B4C・DUD型の威力が一段と明瞭に発揮されている。特に分解能に優れ、シャープに付帯音なく伸びるダイナミックレンジ的な余裕度は、前作にないものだろう。中域ユニットとチューニングのリフレッシュで、高域ユニットも細部が改良されているらしく、やや硬質な面があった前作と比べ、しなやかさ、伸びやかさが加わり、固有の鳴きが低減されている点に注意したい。全体的に格段に内容が濃く、音的にもリファインされて完成度が向上。仕上げも美しくなりながら、予想に反して価格は大幅に低減されているのも異例のことで、このモデルに対する想い入れの深さの証であろう。

BOSE 901 Series

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ボーズのフラッグシップモデルとして良い伝統を誇り、同社を代表するモデルが901シリーズである。コンサートホールでの直接音と間接音の比率は、数多くのホールで測定したデータからすると、直接音1に対して間接音が8の比率になることから、リスニングルームでコンサートホールの雰囲気を再現するために、前面に1個、背面に角度を付けて4個1組が2組の計8個をセットした独自のユニット配置法を採用。しかも、そ全ユニットには、ボーズで全域型に最適な口径と決定された11・5cmタイプを採用していることが特徴だ。また、自然な周波数特性を実現するために専用アクティヴEQが付属しており、低域から高域にかけての位相特性、周波数特性をスムーズなものとし、システム全体で見事な音場再生を可能としている。

ダイヤトーン DS-200ZX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ’96年の最新注目モデルは3機種。まずDS200ZXは、DS1000ZX以来、従来モデルに改良を加え、DVDに代表される将来のハイサンプリング・ハイビットのプログラムソースに対応できるようリファインされてきたZXヴァージョン化が、同社のベーシックシステムDS200ZAに及んだ新製品だ。
 全体のデザインは、従来の安定感はあるが地味な存在といった印象が薄らぎ、新鮮な印象が加わったが、基本構成は変らず、ややエンクロージュアの奥行きが伸びただけだ。使用ユニットは、16cm低域、2・5cmDUD型ともに大幅に手が入れられている。特に高域のDUD型は、振動板材料がボロン化チタン材に変更され、その音色は見事な変化を遂げている。エンクロージュアは、前作を受け継ぐバスレフ型だが、木組み構造が変更され、全体に剛性感が高く、響きが明るくなっていることに注目したい。
 また、バスレフ型のチューニングにも手が加えられた。とかくこの種の小型システムは狭い場所に押し込められやすく、予想以上にブーミーでカブリ気味な低音となる点に注意が払われている。これがエンクロージュアの響きと相乗効果的に働き、明るくダイナミックになる低域が、この新モデル固有の美点だ。比較的明るくのびのびとは鳴るが、国内版ポップスなどでは、ややもすると騒々しくなりがちなシステムが多い中にあって、価格を超えた正統派の小型高級システムといった性格は実に小気味がよい。

BOSE

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ボーズのスピーカーシステムはすべてDr.ボーズのユニークな音響理論に基づいて開発されている。その主なものはまず、ダイレクト/リフレクティング理論で、よい音には3要素があり、一つは全周波数のエネルギーバランス、二つめはどの方向からどれだけのエネルギーが来るかの空間的アスペクト、三つめは音源から出た音のエネルギーが聴取者に届くまでの時間である。この3要素をスペクトラル、スペイシャル、テンポラルと呼び、これらが家庭内でどこまで再現できるが、実際の演奏会場での音に近い再生ができるかどうかの鍵になり、そのために、直接音と間接音を調整し複雑に混合することで、自然なエネルギーバランスと方向性を作りだそうというわけだ。つまり、スピーカーの放射パターンを拡散させて間接音成分を増し、自然な音色と立体感を感じさせているわけである。
 次はステレオ・エブリウェア理論。これは、正しいステレオイメージを広範囲な聴取位置で得られるようにするための理論で、最初に到達する音よりも、後から到達する音を大きくしてマスキングさせようという考え方。ボーズではこのため、スピーカーユニットに特定の角度を付けて音響エネルギーと方向性をコントロールし、広いサービスエリアを実現している。
 アクースティマス方式は、小型エンクロージュアで強力な低域再生能力を獲得するボーズ独自の技術だ。共振と共鳴を利用し、低歪みで高いダイナミックレンジが得られる方式で、構造上、方向性を感じさせる高域輻射がなく、設置位置を選ばせない特徴は大きい。
 アコースティック・ウェイヴ・ガイド方式は、長大なチューブの内部に低域ユニットを取り付け、その前後両面に放射されるエネルギーを利用して、共振点の異なる2本のチューブ中の空気を共振させ、3オクターブもの広い帯域の重低音再生を可能とするものだ。
 それぞれの方式論は、米国特許が認められており、ボーズ製品に幅広く活用されている。

AR Model 310HO

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 最新作HOシリーズは、ハイアウトプットを意味する高能率型で、旧インフィニティのケアリー・クリスティ氏が独立した会社でARのために開発した、クリスティ・デザインの叡知を結集した力作で、細部に独自の音響処理が施された最先端技術の成果ともいえる傑作。キメ細かな音とダイナミックな音を巧みにミックスしたサウンドは、さすがに名手の手腕が光る印象だ。

ダイヤトーン DS-A5

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS−A5は、Aシリーズ本来のエンクロージュア構造と材料に凝った魅力の小型高級システムだ。低域13cm、高域4cmの2ウェイ方式バスレフ型で、小粋な音とでも表現できる独特のサウンドが新鮮な味わいだ。

AR AR303a, AR218V, AR338, Limited Model 6

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 AR303aは、AR3aの現代版。平均的な密閉箱となり低域は明るく、独特なソフトドーム型ならではの中・高域は素直。AR218Vは小型2ウェイ型で、フレッシュな鳴り方が魅力。AR338は、20cm3ウェイ型で非常に魅力的な好製品だ。スペクトラルEQのモデル6は、マーク・レビンソン氏が参加した開発だけに調整能力は非常に高く、任意にサウンドコントロールできるEQとして特筆に値するモデルだ。

テクニクス SB-M1000, SB-M500

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 最新のSB−M1000/500は、トップモデルSB−M10000の構想を中堅機に導入した製品で、既発売のSB−M300を含め、フルラインナップがDDD方式低域採用の超広帯域、省設置面積のシステムになった。
 上級のM1000は4ウェイ7スピーカー4パッシヴラジエーター構成、M500は3ウェイ4スピーカー2パッシヴラジエーター型のトールボーイフロアー型である。

テクニクス SB-M300

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SB−M300は、SB−M10000の新重低音再生方式を驚異的低価格で実現した、同社ならではの思い切りの良い力作だ。

テクニクス SB-M10000

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 テクニクスの第1作「テクニクス1」スピーカーシステム以来、連綿として開発されてきた同社のスピーカーシステム。最近のDDD方式重低音再生を柱にした一連の新スピーカー群は、継続は力なりを具現化した同社の意欲作だ。
 その頂点に位置するSB−M10000は、超広帯域再生の実現に挑戦し、約5年の歳月をかけて完成させた、国難異性品ではヤマハのGF1以外にあまり類例のない、超弩級・超高価格なフロアー型スピーカーシステムだ。
 基礎研究は同社の技術研究所で始まり、目標とした電気・音響トランスデューサーとして完成させてから、次に音楽を聴くためのオーディオ用スピーカーシステムとして音響事業部が製品化するといった、日本の超大型企業ならではのプロセスを経て完成されたことでは、国内製品唯一といってよいビッグプロジェクトと成果だ。
 現在のCDソフトでは、低域は5Hzまで収音されており、これを再生するためには超大型システムとするか、アンプで低域を増強するかの二者択一となるが、同社では新重低音再生方式を開発することで、これをクリアーしている。一方、超高域側は、100kHzの再生を可能とした独自のリーフ型トゥイーターがすでにあるが、本機ではスーパーグラファイト振動板のドーム型で挑戦している。また、超広帯域化により聴感上で歪みが多く感じられることもあるが、エンクロージュア時代の低振動化、振動系各部の改良や駆動源の磁気回路にも新技術が導入されている。
 構成は4ウェイ型で、低域用のパッシヴラジエーター付ケルトン型ウーファーがキーポイントになる。口径は低域22cm、中低域18cmと異なるが、共通の特徴は低歪率型リニア磁気回路、エッジ前後非対称空気排除量を低減する6分割の凹凸プッシュプルエッジ、高域にも採用された振動板外周部に高内部損失材を配したピークレス振動板などの搭載だ。
 注目の新重低音再生方式とは、一個の密閉型エンクロージュアの前面と背面に駆動ユニットを置き、そのまた前後の前面と背面にパッシヴラジエーターを取り付けた密閉型エンクロージュアを設け、同相駆動するという構造を採用。これを同社ではデュアルダイナミックドライブ(DDD)方式と呼んでいるが、この方式は振動の打ち消し能力があり、エンクロージュアの振動を大幅に低減させながら重低音再生を可能としている。この方式により、超広帯域型システムとしては予想外に台形寸法は抑えられているが、さすがに重量は155kgと物凄いスピーカーシステムだ。ただし、運送を考慮し、上下2分割が可能となっている。
 柔らかくゆったりした、しなやかな低域は、重低音という表現とは異質だが十分に伸び切る。この低域と質感が揃った中低域以上はナチュラルで、スムーズなバランスだ。特に中域のエネルギーが十分にある点は素晴らしい。

ダイヤトーン 2S-1601

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 2S1601は、ダイヤトーン50周年を記念して登場した、低域と高域にアラミドコーン採用の等音速2ウェイDS−A3をベースに、ユニットとエンクロージュアを極限までチューンナップし、小スタジオや放送局用小型モニターとして現場の信頼に応えるだけの性能にまで追い込んだ、一種のニアフィールドモニターである。したがって、サウンドキャラクターは、DS−A3の芳醇な音とは異なり、ソリッドで引き締まった質的な高さが特徴だ。

ダイヤトーン DS-8000N

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS8000Nは、クロスオーバー特性可変の独立ネットワーク方式を採用したモデルで、同社初の38cm径紙コーンによる低域と、Aシリーズで開発された新アラミドクロスコーンの中域、2S3003直系のB4Cコーン型高域の3ウェイフロアー型システム。内容は非常に濃く、モニター的にも、家庭内での定音量再生でもバランスを崩さず、伸びやかに鳴る鳴りっぷりの良さは格別だ。なお、クロスオーバー固定型のベーシックモデルも用意されている。