Category Archives: アナログプレーヤー関係 - Page 23

ビクター TT-101+UA-7045+CL-P1D

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 このカートリッジは、このプレーヤーシステムに、あまりあっていないかもしれない。音像はふくれぎみで、そのために鮮明さという点で、多少ものたりなさを感じなくもないからだ。

●デンオンDL103Sで聴く
 このプレーヤーシステムの明るい性格と、このカートリッジの冷静なキャラクターがうまくマッチしたというべきだろう。あいまいにならず、くっきりしたひびきをきかせる。ひびきのゆたかさへの反応もいい。

●シュアーV15/IVで聴く
 いきいきとしたひびきが魅力だ。音像は幾分大きめだし、ピッチカートのひびきなどもふくれがちだが、ひびきが陽性のためか、さして気にならない。たっぷりしたひびきだが、ひびきの輪郭はあいまいにならない。

デンオン DL-103S

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●デンオンDL103Sの基本的性格
 味もそっけもない──という否定的ないい方も、多分、不可能ではないだろう。ことさらひびきの表情をきわだてるタイプのカートリッジではないからだ。ただ、このカートリッジのきかせる音は、いつでも、大変に折目正しい。いつまでたっても、足をくずさずに、正座しつづける男のようだ。しかし、語尾を笑いであいまいにしてしまう男のはなしより、しっかりした声でいうべきことを、しかも感情をおさえぎみにはなす男の方が信用できると思うこともなくはない。しっかりしていて、あいまいさを残さない。どちらかといえば寒色系の音で、ひびきの角をしっかり示す。見事なカートリッジだ。

デンオン DP-7700

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 声のなめらかさはかなりのものだ。きつくなりすぎないよさがある。音像は、幾分大きめだが、気になるほどではない。はった声も、硬くも、薄くもならない。ピッチカートも、たっぷりひびくが、ふくらみはない。

●デンオンDL103Sで聴く
 実に鮮明だ。細部の見通しということでは、他のふたつのカートリッジよりはるかにまさる。それにここでのひびきには、つきはなしたようなそっけなさがない。はずみのあるひびきへの対応もいい。

●シュアーV15/IVで聴く
 音像はきりりとひきしまり、ひろびろとした音場感を感じる。すっきりとしていて、とてもききやすい。誇張も、ねじまげも、無理もない。相反するひびきが、それなりに自然に提示される。

マイクロ DQX-1000+MA-505S

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 音像は大きめだ。声のなめらかさをよく示すものの、表情が大きくなりがちだ。弦楽器によるピッチカートのひびきにしても、たっぷりひびいて、幾分ふくらみぎみだ。リズムのきれも甘めである。

●デンオンDL103Sで聴く
 このカートリッジのひびきとしては異色なことだが、音像は大きい。クラリネットのひびきのなめらかさなどよく示すが、もうひとつひきしまったひびきがきけたら、全体としてのまとまりはさらによくなっただろう。

●シュアーV15/IVで聴く
 たっぷりしたひびきへの反応はいい。ただ、おしむらくは、少しふくれぎみになることだろう。鋭いひびきも、とりわけ低い方でのものが、まろやかになるので、おっとりした印象だ。

オルトフォン MC20

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20の基本的性格
 非常にいいところをもっているカートリッジだが、そのよさをいかすのには、なかなかむずかしいところがありそうだ。プレーヤーシステムによっては、音像が肥大することがある。それはおそらく、このカートリッジの持味のひとつであるひびきのなめらかさと無関係ではない。したがってこのカートリッジにおけるなめらかさは、諸刃の剣というべきかもしれない。暖色系の音で、なめらかで、まろやかで、だから、そのよさがそのまま示されたときにはいいが、音像を肥大させる方向に働くと、ひびきは、メリハリがたたなくなり、あつくるしくなる。よさをひきだすには、充分に慎重に使うべきだろう。

ラックス PD441+フィデリティ・リサーチ FR-64S

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 声のつやがましたということと、音が積極的に前におしだされているということで、シュアーV15タイプIVより、まさる。低域のひびきに、さらに力が加われば、よりこのましいのだろうが。

●デンオンDL103Sで聴く
 このカートリッジの折目正しさに正直に反応しているというべきか。ひびきの輪郭をくっきりと示して、あいまいさがない。全体的なバランスに乱れはないものの、個々のひびきがつきはなされすぎているように感じる。

●シュアーV15/IVで聴く
 もし「ナチュラルなバランス」などという言葉が可能なら、その言葉は、ここでこそ使われるべきかもしれない。ただ、ひびきを、もう少し積極的に前におしだしてもいいのではないかとは思うが。

ダイヤトーン DP-EC1MKII

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 このカートリッジのよさに素直に反応しているといった印象だった。ひびきはきめこまかく、しかし音像のふくらみをおさえていた。はった声が硬くならず、まろやかさをたもっていた。

●デンオンDL103Sで聴く
 鮮明だ。決して消極的ではないが、ひびきははしゃぎすぎていない。細部への見通しは大変いい。ピッチカートなど、ふくらみすぎずに、しかし効果的にひびく。もう少ししなやかさがあればと思わなくもない。

●シュアーV15/IVで聴く
 弦楽器のひびきのきめのこまかさは特徴的だった。すっきりさわやかなひびきだが、それに加えて、いきいきとしたところがあってよかった。ピッチカートなどももう少しくっきり提示されてもいいが。

テクニクス SL-1300MK2

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 ひっそりとしたひびきが特徴的だ。声など、なかなかなまなましい。ただ、リズムのきれが幾分甘く感じられる。とげとげしいひびきを出さないのはいいが、ピッチカートのひびきはふくれぎみだ。

●デンオンDL103Sで聴く
 ひびきの角をシャープに示す。クラリネットとオーボエのひびきの対比など、不自然さがなく、このましい。もう少ししなやかさがあってもいいだろうが、このすっきりした提示は魅力的だ。

●シュアーV15/IVで聴く
 すっきりしたよさがある。音像は小さく、誇張感もない。さまざまなひびきを、余分なものをそぎおとして、提示する。そのために、ひびきのあじわい、ないしはこくに欠けるといえなくもない。

ビクター QL-A7

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 このカートリッジのよさをあきらかにしている。なめらかで、いきいきとしている。総じて、ひびきは、シュアーV15タイプIVのときより、積極的に前にはりだしてくる傾向がある。

●デンオンDL103Sで聴く
 音像はきりっとひきしまっている。誇張感はない。たとえば声などは、もう少ししなやかでもいいと思うが、徒らにふくらまず、すっきりしているのはいい。ひびきの明るさもこのましい。

●シュアーV15/IVで聴く
 音像が小さく、すっきりひろびろとした音場感は、特徴的で、このましい。ひびきのこくとか、つや、それに厚みといったことでは、もう一歩だが、独特のさわやかさがあっていい。

マイクロ DQX-500

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 DDX1000の方向を発展させシステム化した製品。セパレート電源方式採用のクォーツロックPLL方式DD型モーターと、ユニークなストレート型パイプアームの採用はデザイン的にも美しい。

マイクロ DQX-1000

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プレーヤー専業メーカーらしく、意欲的かつオリジナリティがあふれたデザインをもったDDX1000を受継いだ新しいアームレス・プレーヤーシステムである。基本的な構造は、大型のインシュレーター内蔵の3本の脚の上に、リジッドなハウジングをもつフォノモーターを組み込んだタイプで、3本の脚部にはアダプターを使って、3本までのトーンアームが取付け可能である。
 駆動モーターは、FGサーボ付のダイレクトドライブ型で、水晶発振器を基準としたクォーツロックPLLサーボ方式が採用してある。ターンテーブルは、直径31cm、重量2・9kgのアルミダイキャスト製で、外周の重量配分が大きく、慣性モーメントを大きくした設計である。ターンテーブルのダンプは、DDX1000では表面でおこなわれていたが、今回は裏面に変更された。電源部はセパレート型で、カバーは磁性体を排除した木製。クォーツ回路はバイパススイッチで完全にキャンセルできる。これは、クォーツ回路の効果をチェックする目的とのこと。ゴムシートは音の解像力で定評があるSE22を使用している。このシートは、自重700g、中心に向かって6度のテーパーをもちディスクと密着させる設計である。

トリオ KP-7700

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 声はなめらかだ。すっきりしている──といえないこともないが、力強い音に対しての反応で、幾分ものたりないところがあるので、すっきりとしているよさがいかしきれないというべきだろう。

●デンオンDL103Sで聴く
 ここでのきこえ方は、デンオンDL103としては、異色だった。ひびきは他のふたつのカートリッジの場合より、前にはりだした。その分だけ積極的になったということもできなくはない。

●シュアーV15/IVで聴く
 誇張感のないことはよしとすべきだろう。ただ、音像が総じて奥まってしまう。敢ていえば弱さが、気にならなくもない。声とオーケストラの、きこえ方のバランスは、きわめて特徴的で、声は後方からきこえた。

デンオン DP-50M (L)

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 磁気記録スピード検出方式、両方向サーボによる電子ブレーキ付のクォーツロック方式DDモーターを中心とした新製品だ。ターンテーブルは、直径30cm、重量1・5kgのアルミダイキャスト製、トーンアームは、ラテラルバランスとアンチスケートが付いたS字型スタティックバランスタイプで、付属カートリッジはない。レーザーホログラフィ解析を利用したゴムシート、水晶発振器でパルス点灯するストロボを備える。なお、DP50Mはマニュアル機、50Lはオートリフト機能をもったセミオート化が導入されたモデルだ。

ソニー PS-X700

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 ひびきの表情を誇張ぎみだ。音像も、シュアーV15タイプIVとはうらはらに、大きい。その他の点においても、シュアーV15タイプIVとは、まったくちがう。ひびきは、総じて、重く、ねばりぎみだ。

●デンオンDL103Sで聴く
 ひびきの角を鋭く示す。ひびきは、総じて、薄味で、こくに不足するが、あいまいにならないところがいい。軽量級のひびきですっきり提示するのが、ここでの美点というべきかもしれない。

●シュアーV15/IVで聴く
 ぼてっとしたひびきをいさぎよくそぎおとしている。そのためにきわめてすっきりしている。すっきりしすぎているというべきかもしれない。声などに、もう少しなめらかさがほしい。

パイオニア XL-A800

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 ひびきそのものにきめこまかさがあるが、音像は大きい。クラリネットの音などで、なめらかでこのましいものの、声は、すくなからず脂っぽい。リズムは重く感じられる。オーボエの音のかすれが感じとりにくい。

●デンオンDL103Sで聴く
 このカートとリッジの音としては異色なことながら、声が暗くおもい。そして、オーボエの音も脂っぽい。ひびきの輪郭があいまいにならないのはいいが、弦楽器の堂々としたひびきは特徴的だ。

●シュアーV15/IVで聴く
 すべての音がたっぷりひびく。細部へのこだわりをすてて、全体を大きくつかまえた音とでもいうべきか。その意味でなかなか積極的だ。ひびきの表情を拡大して示す傾向がなくもない。

デンオン DK-300

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 DP80用に開発されたプレーヤーベースだが、他のデンオンのフォノモーターDP3000/6000にも使用可能だ。材料には、新しく開発されたインシュライトが使用してある。この材料は、2mm厚のブナ材にに特殊合成樹脂を含浸させ高圧のもとで加熱積層したものでDK300では70mm厚に積層した材料を使用している。
 仕上げは、独特の積層木目を活かしたタイプであり、アームボードは、4本のネジで取付けられていて交換が可能である。なお、シリーズ製品には2本アーム用のDK2300がある。
 DK300とDP80、それに、DA309トーンアームを組み合わせたシステムは、従来方式のターンテーブルを使った場合とはかなり異なった音がする。例えていえば、従来のタイプをやや硬質な、いかにもディスク的な音とすれば、2重構造ターンテーブルは、ラッカーマスターの音に近いと思う。固有の共鳴音が除去されたため、情報量としては一段と増大している印象である。

ダイヤトーン DP-EC3

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 総じて音像は大きくなる。ピッチカートもたっぷりひびくし、声のまろやかさも示されるが、ひびきが重くなりすぎる。はった声も硬くならないのはいいが、もう少し鮮明さがほしい。

●デンオンDL103Sで聴く
 音像はかならずしも小さいとはいえないものの、すっきりきかせるよさがある。ただ、オーケストラのひびきのとけあいより、個々のひびきを分解して示す傾向がある。弦のひびきにこくがほしい。

●シュアーV15/IVで聴く
 音像も大きくないし、誇張感がないのがこのましい。弦楽器によるピッチカートもふくらまない。きいての印象は、幾分消極的だが、すっきりきかせるよさがある。声にももう少しまろやかさがほしい。

ヤマハ YP-D9

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 ここでも音像は大きい。オーケストラより声の方が積極的に前にでる。チェロのひびきが太くなる。リズムの切れは、もう少し鋭くてもいいだろ。低域の反応でいささかのにぶさを感じる。

●デンオンDL103Sで聴く
 一応すっきりした印象を与えるが、やはりここでも、音像は大きめだ。オーケストラの個々のひびきを、分解して提示する。ひびきの角を強調する傾向がなきにしもあらずである。

●シュアーV15/IVで聴く
 音像はふくれぎみだ。音をおしだしてくるような傾向がある。それでひびきの中味が充実すればいいのだろうが、その点で幾分ものたりないところがあるので、表面的な印象をききてに与えてしまう。

デンオン DP-80

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのフォノモーターには、現在DP7000をトップモデルとして、DP6000、DP1700があるが、今回新しくDP80がシリーズに加わることになった。
 このニューモデルは、デザイン的には従来の製品よりもエッジを強調し、リジッドでよりメカニックな印象である。
 駆動用のモーターは、かなり大型の3相交流アウターローターサーボ型であり、当然のことながらDD方式である。このモーターはAC型であるため基本的にトルクムラが少なく、さらには3相モーターとなると逆転方向のトルクに対して働く回転磁界の3の倍数次高調波を打消す特長があって、よりSN比、ワウ・フラッター特性がよく効率も高くなるメリットがある。また、従来の同社モーターより一段とステーターの径を大きくし、この直径に適した極数を8極としたためスロットレスDCモーター同様の高い効率を得ている。
 サーボ方式は、デンオンが初期から手がけているターンテーブル内側に磁気コーティングをし、これに記録したパルスを回転検出用磁気ヘッドで検出するタイプで、これと9MHzの水晶発振器を基準とし分周した信号を位相比較するPLLクォーツロック型である。また、正回転、逆回転方向の駆動制御をしているため磁気ヘッド内部は2ヘッド構成で、方向検出用ヘッドがあることも特長だ。
 ターンテーブルは、直径30・8cm、重量3kgのアルミダイキャスト製だが、レコードをのせる上面ターンテーブルとモーターシャフトで固定される下面ターンテーブルをもった2重構造型で、両者はスプリングとダンピング材で連結してある。つまり、この構造により上面ターンテーブルは、プレーヤーベースから振動的にフローティングされており、上面の質量とスプリングのコンプライアンスでローパスフィルターを形成している。従って、外部振動に対しては、フィルター効果とダンピング材のエネルギー吸収でレコード面に伝わる振動は低減し、音響的なフィードバックにも効果があり、フィードバックマージンを大きくすることができる。
 その他の特長には、電子式ブレーキ、レーザーホログラフィ解析によるゴムシート、電源リレー採用による電源ON・OFFスイッチの除去のほか、プレーヤーベースがDP3000/6000と互換性があることがあげられる。

デンオン DP-50L

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 音像は大きめで、オーボエよりクラリネットのひびきの方がきわだつ傾向がある。総じて、たっぷりとはひびくし、こえにまろやかさもあるが、細部がさらに鮮明に示されればさらにこのましいだろう。

●デンオンDL103Sで聴く
 音像はほどほどで、ひびきに一種独特のなまなましさがある。このカートリッジのクールな性格がおさえられているのはいいが、もう少し細部が鮮明だと、さらに効果的だったのではないか。

●シュアーV15/IVで聴く
 ひびきそのものは薄味だが、音像がひきしまって、声のしなやかさがあきらかになるのがいい。誇張感がなく、声とオーケストラのバランスもこのましい。ただ、ひびきは、あくまでも薄味だ。

「ブラインドテストを終えて」

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「ブラインドテストで探る〝音の良いプレーヤーシステム〟」より

 ブラインドテストだからといって特別のことはない。使い勝手だとか、あるいはみためのことだとかが問題になる場合ならともかく、そうではないときはいつだって、耳だけをたよりに試聴にのぞんでいるから、たとえプレーヤーシステムが別室にあって、どのプレーヤーシステムの音かわからなくても、どうということもない。
 もし、どのメーカーの製品かわかって、その値段を知って、、そうかなるほどというきき方がもしオーディオの専門家のきき方だというのなら、ぼくのきき方は、ついに専門家のきき方たりえない。ブラインドテスト──という言葉は、ともするとそのときのテスターを、目かくしをされた鬼ごっこの鬼のような気持にさせるのだろうか。鬼は、てぬぐいで目かくしをされているから、手さぐりで、つかまえた相手のあちこちをさわってみて、「あっ、ふとっているから、イサオちゃんだ」といったりする。
 おそらく、そういうあてっこのたのしみのために、ブラインドテストが行われるようだが、この場合はどうだったのだろう。
 すくなくともぼくは、鬼ごっこの鬼どころのはなしではなく、せいぜいモルモットにすぎなかった。聴覚だけをたよりにきいた。ききおぼえがあるものといえば、つかわれたレコードの音と、そしてそこでつかわれたカートリッジの音だけだった。イサオちゃんというプレーヤーシステムだけがふとっていて、腹がぷくっとふくれているかどうかなんて、もともとわからないのだから、それがイサオちゃんかどうかあてられるはずもなかったわけだ。
 ただ、このブラインドテストをして、俺の耳もたいしたことないな──と、もともとわかっていたこととはいえ、それをまざまざとみせつけられて、うんざりしたということはある。ブラインドテストは、二日にわけて行ったが、前日は、このましいプレーヤーシステムだと思い、○印をつけておいて、翌日、どうもものたりないところがあると思い、×印をつけたものがあったからだ。具体的にいえば、ビクターのTT101+UA7045+CL−P1Dだ。一方が○印で、もう一方が△印なら、まあ、ことはいかにも微妙だからと、自分にいいきかせることもできなくはないが、○と×とでは、極端で、自分を納得させるすべがない。
 たしかに、きいたレコードの性格は、少なからずちがっていた。一方はクラシックで、もう一方はジャズといった、それぞれのレコードにおさめられている音楽の性格がちがうということもある。それに、一方のレコードが通常のレコードで、もう一方がダイレクト・カッティングのレコードだったということもある。一方が大編成のオーケストラ・プラス・声のレコードで、もう一方がコンボのレコードということもある。つまり、さまざまな点でちがていた。だから、一方が○で、もう一方が×でもおかしくないんだ──といえばいえなくもないだろうが、どうも釈然としない。
 それで、俺の耳もたいしたことないな──という。自己嫌悪の色濃厚な独白となる。もともとたいした耳と思っていたわけではないのだが。
 プレーヤーシステムによる音の変り方は、かなり基本的なところでの変り方で、だからききとりやすいということも、また逆にききとりにくいともいえる。たとえばこれがカートリッジなり、スピーカーなりが変ったというのなら、それはレコードが変ることによって、きこえ方が大幅にちがい、こっちでよかったものが、あっちではよくなくなるということもあるが、プレーヤーシステムでの変り方は、もう少し基本的なところでの変り方だから、そういうことはあまり起らないはずである。
 にもかかわらず、一方で○印をつけ、もう一方で×印をつけたというのは、自分ではそれなりの理由がわからなくてもないが、やはり基本的なところでの変化をききのがしたためといわざるをえない。そのための、俺の耳もたいしたこと
ないな──という自己嫌悪の独白だ。
 プレーヤーシステムの音は、基礎の音だと思う。
 地震の際に、造成地にたてられた家が、もろくもこわれて、岩盤の上の家が、内部はそれなりに、棚がおちたり、あちこちこわれたりしているのかもしれぬが、外からみるかぎり、地震の影響などまるでないかのように立っているのをみたりする。さまざまなプレーヤーシステムの音をきいていて思ったのは、そのことだった。いかに立派な家でも、土台というか、基礎がやわでは、いかんともしがたい。
 今回のブラインドテストは、いってみればその普段目にみえるところを同じにして、さてこのおとは 岩盤の上の音か、それとも造成地の上の音かをききわけることを目的としていたのではなかったか。それぞれの音は、ぼくは岩盤の上の音だよ──と、せいいっぱいがんばっていた。しかし、本当に岩盤の上になりたっている音と、そうでない音とは、かなり明確にちがっていた。
 しかし、どこまでが土台に関係した音で、どこからが基礎とは関係のない音なのか、充分に判断できないこともあった。そのために、一方のレコードでは○印をつけ、もう一方のレコードでは×印をつけるというような、つまり混乱が生じたのだろうと思う。
 すぐれたプレーヤーシステムの音には、あぶなっかしさがなかった。ひびきは、すみずみまで、しっかりしていた。
 カートリッジやスピーカーでは、ひびきのキャラクターが、大きな問題になる。むろん、プレーヤーシステムの音にも、それぞれのキャラクターがあるが、カートリッジやスピーカーの場合のようには、問題にならない──というより、そのキャラクターのとわれ方がちかうように思う。あの家の屋根はトタンで、この家の屋根は瓦だというようなことは、誰にもわかるし、屋根をトタンにするか、瓦にするかは、おそらくその家の住人の好みに関係することだろうが、家を岩盤の上にたてるか、それとも造成地の上にたてるかは、好みとは別のところでのことといえるのではないか。
 ただ、プレーヤーシステムの音にも、カートリッジやスピーカーシステムの場合とは意味するところ微妙にちがうとはいえ、キャラクターがあるので、それにとらわれると、その音が岩盤の上の音か、造成地の上の音かを、ききそこなうことになる。
 そして、このブラインドテストに参加して、あらためて思ったのは、やはり、なにはさておいても、プレーヤーシステムに、それなりの投資をしないといけないなという、すでにわかりきったことだった。毎日の生活ということでいえば、岩盤の上の家での生活も、造成地の上の家での生活も、さしてちがいはないように思うが、やはりどこかで微妙にちがってくるのかもしれない。
 ぼくの今住んでいる家は、造成地というわけではないが、それでも前の道を大きなトラックが通ったりすれば、かなりゆれる。だからといって生活に不便をきたすほどではないが、やはりどっしりした家屋に住んでいるとは思いがたい。そういう家に住んでいると、あまり出来のよくないプレーヤーシステムでレコードをききつづけることによる心理的な影響をあなどれないなと思ったりする。

ヤマハ PX-1

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 力強いひびきをぐっと前におしだすというタイプのプレーヤーシステムではなさそうだ。しかし、ここできけるさわやかな、よごれをすっかり洗いおとしたようなひびきは、実にチャーミングだ。ここできけるひびきは、ついにぼてっとしたり、ふやけたり、重くひきずったり、あるいはかげったりしない。きいての印象がさわやかなのは、おそらく、そのためと思える。
 その方向で徹底させようというなら、デンオンDL103Sということになるだろう。木管楽器がかさっているところでの、個々の楽器のひびきを、ききてがその気になりさえすれば、充分にききふけることができる。このプレーヤーシステムの音にも、一種独特の品位が感じられる。よごれた音を、まちがってもきかせることはなさそうだ。
 ただそのために、用心深くなりすぎた音になってしまっているということはいえるだろう。これでさらに、一歩ふみこんで力強いひびきをきかせる積極性を身につければ、プレーヤーシステムとしての魅力を倍加させることになるのではないか。

ソニー PS-X9

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 このプレーヤーシステムは、どうやら、中域の音を、しっかり、あいまいにならずに、しかもそのエネルギー感をあきらかに示すところに特徴があるようだ。むろん、中域の音をしっかり示すのは、とてもこのましい。そのためと思うが、このプレーヤーシステムできいた音は、いずれのカートリッジの場合も、あいまいさから遠くへへだたったところにあって、しっかりしていた。
 くっきりしたひびきをきかせてくれたが、できることなら、さらに鮮明であってほしいと思わなくもない。ただ、その点については、デンオンDL103Sでかなりの成果をあげたことを考えあわせると、しかるべきカートリッジをつかうことで、かなりカヴァーできるはずである。ベーシックな部分がいかにもしっかりしているというきいての印象がある。あぶなげは、まったくないし、ひよわさもない。
 オルトフォンMC20でピッチカートが、くっきり示されて、しかも大きくふくらまないあたりに、このプレーヤーシステムの基本性能のよさが示されていたといえるだろう。

テクニクス SP-10MK2 + EPA-100 + SH-10B3

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より
 見事なプレーヤーシステムというべきだろう。それぞれのカートリッジのチャーミング・ポイントを、無理なく、自然に、ひきだしている。このカートリッジには、こういうところもあったのかといったようなこと(たとえば、シュアーV15タイプIVできけた弦楽器のひびきのなめらかさなど)も、思ったりした。
 余分なひびきがまといついてしまうとか、どこかで誇張されるというのは、とりもなおさず、そのプレーヤーシステムに、無理、背のびがあるからだろうが、そういうところをまったく感じさせないプレーヤーシステムだった。ひとことでいってしまえば、それだけプレーヤーシステムとして安定しているからということになるだろう。
 今回試聴したプレーヤーシステムの中で、きわだってすぐれていた。ただ、もし、これで、低い方の音が、もう一歩ふみこんできて、積極的にその力感を示せば、本当にいうことがないのだが、その点で、多少上品にすぎたかなと思わなくもない。このみがきあげられた、よごれのないひびきは、実に魅力的だったということにいささかのためらいもない。

ビクター TT-101 + UA-7045 + CL-P1D

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 なかなか積極的だ。奥の方でひっそりとひびかせるというより、前の方に押しだして、そこで明るくひびかせようとする傾向がある。力の提示にも不足していない。ひびきそのものはあたたかい。決して寒色系ではない。したがって、あたたかい、あるいはまろやかなひびきを持ち味とするカートリッジと組みあわされたときには、そっちの方向に走りすぎて、音像を肥大させかねない。
 こう書いてくると、いかにもくせの強いプレーヤーシステムのように思われかねないが、そうではない。むしろ、積極的にカートリッジのキャラクターをいかすタイプのプレーヤーシステムというべきで、ただ、場合によっては、スギタルハオヨバザルガゴトシになることもないということだ。
 積極的だということは、力強いひびきへの反応にもすぐれているということで、それは、このプレーヤーシステムのきかせる音がしっかりした土台の上になりたっているからと考えることができるだろう。ひびきが幾分肥大しても、ひびきの輪郭があいまいにならないというのは、いいことだ。