Category Archives: アナログプレーヤー関係 - Page 12

デンオン AU-320

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 AU310の細身で素直な音と比較すると、低域の量感が一段と増加したことと、中高域に少し輝かしいクッキリとコントラストを付けるキャラクターがあり、トータルバランスを形成しているのが異なる点だ。
 MC20IIは、やや薄くシャープでクッキリとした音で、音場感の拡がりも一応の水準にある。しかし本来の音と比べると、中低域の豊かさが減り、中高域が硬質になっているのが判る。
 40Ωに切換えDL305にすると、全体に線が太い絵のように細部が見えず、音場の拡がりも狭くなる。DL103に替えると、低域の力強さと中高域の輝きが巧みにDL103の音にアクセントをつけて効果的に聴かせる。やはり、カートリッジとトランスの製作年代のマッチングの成果であろう。

デンオン AU-310

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 高インピーダンス専用トランスでDL103、103S用に開発された製品。
 DL305では、ナチュラルな帯域バランスと、少し細身のスッキリとしたシャープな音となる。音場感はやや後方に拡がるタイプだが、ホールのプレゼンスは一応の水準で聴かれる。
 ロッシーニは適度に軽快さがあり安心して聴けるが、気をつけて聴くと分解能が不足気味で、反応も少し遅い。ドボルザークとなると中高域に少しキャラクターがあり、ホールの後の席の音だ。峰純子はやや硬めで、小柄なボーカルながらまとまりはよく、カシオペアもそれなりに聴かせる。
 DL103にすると帯域バランスがピタリと決まり、これなら納得という音だ。この変化は大変におもしろい。

コッター Mark2/TypeL

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 低インピーダンス専用で、同社の他のモデルとはトランスが異なった仕様だ。
 聴感上では、トランスとしてはワイドレンジ型で、豊かな低域をベースに、適度に緻密で安定したトランス独特の魅力がある。全体に従来より幾らか穏やかになった印象のタイプP/PP/Sに比較して、クォリティの高さは格段に優れる。
 MC20IIは、暖色系の柔らかく豊かな低域をベースとした美しい音を聴かせる。この音は、ハイファイというよりは音楽を長時間聴くに相応しいタイプで、独特の抑えた光沢はコッターならではの魅力だろう。
 FR7fにすると帯域も一段と広く、力強く伸びやかな分解能が優れた音になる。音源は少し遠いが、カートリッジの性能差をかなり明瞭に聴かせるのは見事。

コッター Mark2/TypeP, Mark2/TypePP, Mark2/TypeS

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 タイプPがオルトフォンなどの低インピーダンス用、タイプPPがEMT用、それにタイプSがデンオンなどの高インピーダンス用となっている。基本トランスは完全に同じもので、トランスの多重巻線の接続を変更して使用を変えているために、3タイプ間の変換は後からでも可能である。
 タイプPにはMC20IIを使う。聴感上のf特は高域と低域をわずかに抑えた、トランスとしては標準的なタイプだ。柔らかに低域は安定感があり、中高域に独特のわずかのキラメキがある。音の分離は優れるが、ソーによれば今一歩の印象もある。音色はほぼニュートラルで、各プログラムを平均してそれなりのクォリティで聴かせる。
 タイプPPにはTSD15を使う。スケールが大きく、暖色系の豊かな音で、適度にスムーズさをもつが、TSDの本来の音を少し滑らかに角をとって聴かせるタイプである。
 タイプSにはDL305を組み合わせる。ナチュラルに伸びたf特と、耳あたりがよく抑えた光沢を感じさせる音は、大変にキレイであるが、峰純子は少しマイルドになりすぎ、カシオペアもムード音楽的になる。試みにMC20IIを使ったが、総合的にこれがベストである。

コーラル T-100

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 今回の特集に集めた唯一の一万円未満のトランス。
 3Ω専用モデルでMC20IIとFR7fを使う。全般的にはFR7fのスケールの大きな音がマッチするようだ。聴感上のf特は少しナローレンジ型で適度にコントラストをつけて、やや硬質の音を聴かせる。ロッシーニは生硬さがあるが雰囲気をひととおり聴かせる。低域が不足するためか演奏の店舗が少し速くなる。この点は、中高域にクッキリ輪郭をつけるMC20IIの方が、スケールは小さいが小粒にまとまりバランスよく聴ける。ドボルザークはFR7f、MC20IIともに硬質になりすぎる。峰純子、カシオペアは平均的に聴かせるが、カートリッジの個性を引出すには至らない。SN比を稼ぎ、小粒にカリッとまとまる音が特長だ。

トーレンス Reference

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 EMTの927Dstと、偶然のように殆ど同じ価格だが、EMTは、同社のTSDシリーズのカートリッジ専用であるのに対して、こちらは、好みのアームやカートリッジをとりつけられるユニバーサル・ターンテーブルシステム。レコードの音溝を針先でたどるという、メカ的なプリミティヴな方式を守るかぎり、メカニズムに十二分の手を尽したプレーヤーシステムは、それ相応の素晴らしい音質を抽き出してくれるという証明。

オーディオテクニカ AT-650

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 3段切替スイッチ付のユニバーサル型トランスだ。
 MC20IIは、少し高質さはあるがスッキリとした爽やかな音で、聴感上のf特もスムーズに伸び、キャラクターの少ない穏やかな音である。プログラムソースとの対応の幅も広く、音をキレイに聴かせるのが特徴となる。
 DL305は、やや細部の描写が不足気味で、線が太く、本来のシャープさが出難い。
 AT34IIにすると中高域に少し硬いキャラクターが付くが、バランスの良さは、当然のことながらベストである。このトランスも付属コードを交換するとかなり音質が変化するため、使用にあたっては、コードを変えて使用システムに最適のバランスに調整するのが好ましい使用法と思う。

EMT 927Dst

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 いまは消えてしまった16インチ(40cm)ディスクを再生するための大型プレーヤーデッキだが、標準の30センチLPをプレイバックしてみても、他に類のない緻密でおそろしく安定感のある音質の良さが注目されて、生き残っている。大型のダイキャストターンテーブルの上にガラス製サブターンテーブルを乗せたのが927Dst。プラスチック製はただの927st。しかし音質面では、ガラス製のDstにこそ、存在価値がある。

オーディオテクニカ AT-630

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 中間インピーダンスをもつオーディオテクニカのMC型カートリッジ用の昇圧トランス。
 ややミスマッチにはなるが、MC20IIを使うと、トランスとしては適度の帯域バランスと少し細身の滑らかな音となる。ロッシーニは程良く鳴るがドボルザークは音源が遠く、大ホールの後の席で聴く感じだ。峰純子は少し細身の穏やかなボーカルとなり、雰囲気はアルが少し実体感不足だ。カシオペアは小柄になるが、一応楽しくは聴ける。
 AT34IIを組み合わせると、やはり、f特をはじめトータルバランスは一段と向上し、ややラフな面もあるが、価格から考えれば、充分な昇圧トランスらしい安定した落着いて聴ける音が得られる。この意味でも専用トランスと考えたい。

パートリッジ TH7834

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 この製品もTH7559同様に、キットとトランス単体が用意されている。本機は入力対出力の位相は同相で、一般の製品と等しい。
 MC20IIでは豊かで柔らかく、力強さのある低音をベースに、適度にコントラストをつける中高域がバランスをとった押し出しのよい華麗な音を聴かせる。ロッシーニ、ドボルザークを容易にこなし、カシオペアの強力なパンチも見事だ。これならSPUを使ってみたいところである。
 DL305では全体に線が太くなり、MC20IIとの本来のキャラクターの差が縮むようだが、音としては全体に力強くなったDL305、といった印象で、低域ベースで少し高域を抑えた安定感のある堂々としたタイプだ。
 TSD15では、ややオーバーゲインで使い難い。

オーディオニックス ADN-III

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 左右独立電源採用の利得切替なしのヘッドアンプで、入力と出力の位相が逆になる反転アンプである。
 聴感上のf特はワイドレンジ型で、音の粒子は細かく、適度にしなやかな反応と特定のキャラクターが少なく、基本的クォリティは相当に高い。
 MC20IIは水準以上のクォリティの高い音になるが、低域が少し軟調で甘くなり、中高域に少しキャラクターが聴きとれる。音像は少し引込み気味で、音場がスピーカーの奥に広がるタイプ。
 DL305は、帯域感は広いが高域の分離が今一歩不足気味で、これは中高域の硬質なキャラクターによるマスキングのせいであろう。全般的にみれば、MC20IIよりも音にフレキシビリティがあり、音を整理してキチンと聴かせるタイプだ。

パートリッジ TH7559

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 英国パートリッジ社のトランスを使った製品で、別に配線材で有名なベルデン社のコード付オールキット、および単体トランスも用意されている。
 このTH7559は,一次側入力に対して二次側出力が位相反転する、反転トランスであるのが特徴。
 聴感上の帯域バランスはナチュラルに伸びたタイプで、音の芯がクッキリと再現される少し硬質なリアリティのある音が目立つ点だ。MC20II、DL305ともに低域が安定し、ソリッドに引締まり、音に躍動感がある。この音は大変気持よく、ダイレクトディスクの峰純子のリアリティは試聴製品中でベスト3に入る見事さだ。
 TSD15はスケールは大きいが音の輪郭が甘く、少しソフトに過ぎる。これは位相関係が原因であろう。

オーディオインターフェイス CST-80E40

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 40Ω程度の高インピーダンスMC用トランスで、二次側の負荷条件は47kΩ/50pFが標準である。
E03と比較して、滑らかでキメ細かい音とナチュラルに伸びたスムーズなf特がこのE40の特徴である。プレゼンスを感じさせる中低域の残響成分を充分に聴かせるのが、このブランド共通の特徴だろう。
 DL305では、各プログラムソースを平均的にこなすが、音を美しくキレイに聴かせる特徴はE03と同じで、TSD15は全体に音が鋭角的で力強い特徴を少し抑えた誇張感の少ない音になる。試みにMC20IIを使ってみるとf特バランスが大変に優れたクッキリとコントラストのついた適度にシャープで安定した音で、これがベストだ。

オーディオインターフェイス CST-80E03

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 米国オーディオインターフェイス社の3Ωの低インピーダンスMC用昇圧トランスである。したがって、MC20IIとFR7fを使ったが、結果としては少しFR7fのほうがトータルバランスの優れた音であった。
 このトランスは、ゆったりとした余裕の低域から中低域をベースとした暖色系の豊かで滑らかな音が特徴である。音の表情は穏やかなタイプであるため、ロッシーニやドボルザークのようなプログラムソースをゆったり楽しむのに好適なタイプである。
 このトランスの豊かな中低域の残響成分はコンサートホールのプレゼンスを美しく再現し、音像は少し距離をおいてナチュラルに拡がる。しかし、カシオペアのようなプログラムソースは不得手なタイプである。

オーディオデバイス HA-1000

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 MC型の出力電流100%利用する特殊回路設計のヘッドアンプである。
 利得切替はなくMC20IIとDL305を使ったが、低インピーダンスでは表情を抑えた緻密な音であるのに比べ、高インピーダンスでは明るく伸びやかで活気のある音と2通りに変化する。
 ロッシーニは、音場感が拡がり明るい華やかさでDL305が楽しく、MC20IIは精密で小さくまとまった格調の高さがあり対照的だ。
 このアンプの特長を聴かせるのはMC20IIの峰純子で、音色は暗いがソリッドさがあり、引締ったSPUといった音である。反応はさして速くはないが、適度にダンプされた印象はまさしくトランス的で、メモにもトランス的アンプとある。基本的なクォリティは高く個性的なアンプだ。

EMT XSD15

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 EMTのカートリッジTSDシリーズは、ほんらい、同社のプレーヤーデッキに組合わされるいわばプレーヤーシステムの系の中のパーツであり、単売のカートリッジだと考えないほうがいいが、それでもTSDの魅力の半面なりを味わいたいという向きのために、オルトフォン/SME型のコネクターに代えたXSDが用意されている。この音の魅力を生かすには、アームやプレーヤーシステムの選び方が相当に制限される。

デンオン DL-303

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 永く続いた103シリーズのあと、最近のカートリッジ設計の主流ともいえるローマス化をはかって企画されたのが303のシリーズで、現在、301、303、305の三機種が揃っているが、DL−301はヤング層の好みをことさら意識しすぎ、DL−305は303の繊細さに何とか力を加えようと力みすぎ、みたいに(私には)思えて、ことさらの音作り意識の加わっていないDL−303が、やはり最良の出来栄えだと思う。国産MCのベストに推す。

デンオン DL-103

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 おそらくオルトフォンのSPUに次いで寿命の長いカートリッジだろうか。永いあいだ1万6千円、その後1万9千円に改訂されたものの、FM放送用として入念に設計され、長期間作り続けられた安定性と信頼性は、その後数多く出現したいわゆる1万9千円MCカートリッジの攻勢を寄せつけない。最新型と比較すれば、音がやや太く重いが、MCとしては出力が大きく扱いやすく、良いアームと組合せれば、この音は立派にひとつの個性だ。

トーレンス TD126MKIIIBC

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 スイス・トーレンス社のターンテーブルは、TD125以来、150、160などすべて、亜鉛ダイキャストの重いターンテーブルをベルトドライブで廻すという方式で一貫している。同社ではS/N比の向上の点でのメリットを強調しているが、DDを聴き馴れた耳でTD126の音を聴くと、同じレコードが、あれ? なんでこんなに音が良いのだろう! と驚かされる。音の良さの理由は私には正確には判らないが、ともかくこれが事実なのだ。

フィデリティ・リサーチ FR-64fx

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 FR−64S/66Sのコンセプトを支軸にして、よりコンベンショナルで使いやすいユニバーサルなアームがこの64fxである。アーム材料はステンレスからアルミに変り、表面層を熱処理によりQダンプしている。中心部質量集中思想で作られ、総重量は重く実効質量は軽くというアーム設計になっている。全体はブラックフィニッシュで質感も美しく、加工精度も高い。精度の高いスプリングにより針圧をかけるダイナミック型。

EMT TSD15

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 このカートリッジでは、EMT独自のコネクター規格によるものだから、一般のトーンアームには取付けて使うことが出来ない。その場合にはXSD15を選ぶようになっている。同社のトーンアーム929か997と共に使うカートリッジだ。豊潤剛健な音質で、バランスは重厚で安定したものだ。デリカシーや透明度といった、軽量のコンプライアンス型では得られない充実したサウンドが好みの分れるところだろう。高貴な風格だ。

テクニクス SL-15

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 テクニクスが開発したSL−10を基盤に、さらに充実させ使いよくしたフルオート・プレーヤーシステムで、プレーヤーの世界に新しい一つの分野を開拓した、イージーハンドリングでハイパフォーマンスを狙ったもの。自動選曲は10曲までプログラム可能である。何から何までオートマティックに動作してくれる(レコード反転はしないが)便利さと、各パーツのクォリティがよくバランスした画期的なシステムである。

ビクター QL-Y7

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プレーヤーシステムとしては、ビクターの現シリーズ中の最高モデルである。カートリッジはついていない。メカニズムはセミオートタイプで、電子コントロールのダイナミックバランスタイプのトーんー無をもつ。一種のサーボコントロールにより、アームの受ける機械的な不安定要素を制御して、安定したトレース能力と音質を得ている。FGサーボのコアレスDCモーターによるクォーツロック・ダイレクトドライブ方式。

ビクター UA-7045

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 トーンアーム単体は、使用カートリッジの種類によって簡単には決めかねるものだ。軽針圧型から重針圧型まで幅広く対応させるためには、軸受構造もオイルダンプやナイフエッジよりは一般的なジンバルが好ましく、慣性質量も中庸をえたタイプがよい。この点ではUA7045は、長期にわたる使用経験上も各種カートリッジの特長を、それなりに素直に引出すのが最大の美点であり、明るく伸びやかな音は使いやすい現代的な魅力である。

エンパイア 4000D/III LAC

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 カンチレバー内部に特殊構造を施した現在のダイナミック・インターフェース・シリーズはエンパイアの最新モデルであるが、スタンダードなカンチレバー採用の製品のトップモデルが、この4000DIII/LACである。ワイドレンジ型で、音の粒子が微粒子型であるため、ソフトでスムーズな音とシステムによっては誤解されるが、高度なシステムでは、非常にシャープで繊細な音でMC型以上となり、現在でもリファレンスの位置づけを持つ。