ヤマハ PX-3

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 ヤマハでは理論的に一般のオフセットアームに比べて性能が高いリニアトラッキングトーンアームに早くから着目し、いち早く超高級プレーヤーシステムにこのタイプのトーンアームを採用したPX1を開発。続いてリニアトラッキングシステムを合理化した第2弾製品PX2を市場に投入しているが、今回、このシリーズの第3弾製品としてPX3を新発売した。
 リニアトラッキング方式で最重要のシステム構造は、基本的にはPX2系のもので、アームベース内に非接触・光学式トラッキングエラーセンサーがあり、DCコアレスサーボモーターが不平衡電圧によりアームベースを駆動する。サーボ回路には±0・5mmの不感帯があり、レコードの偏芯が0・5mm(JISで0・2mm以下)ならレコード内周方向にのみアームは移動する。結果的に、これにより針先偏位は±0・5mm、アーム角度±0・15度以下で動作をし、歪発生を最小に抑えている。
 無共振構造ストレートアームは、材料の吟味、加工精度を始めフィンガーフックもない左右完全対称型設計、アーム基部の二重構造などで実効質量17gに設定されている。この値は、市販MM型20種、MC型10種の重量とコンプライアンスを測定した結果からf0 12Hzを目標に決定。レコードのソリ(1・1Hzが基本成分)、偏芯(0・55Hzが基本成分)の超低域成分と音楽信号成分が約12Hzを分岐点として高低に分かれている測定結果からの値である。
 ターンテーブルは重量1・6kgアルミダイキャスト製。モーターはDC4相8極コアレスホール型で、全周積分FG付のクォーツ制御方式である。キャビネットは高比重BMC製。1・1kgダストカバー付で、ゴム・スプリング複合型インシュレーターが附属する。
 機能は、電子制御フルオートマニュアル盤径選択後、PLAYで動作する方式だ。
 PX3は、豊かで柔らかい低域から中低域をベースとした安定感のあるナチュラルな帯域バランスをもつ。音色は適度に明るく、音の伸びやかさもある。試みに手もとにあったスタビライザーを乗せると、中低域が緻密になり全体に音が引き締って鮮度感が上がる。リニア方式独特の音場感の自然な拡がりと定位のシャープさは現時点でも新鮮な魅力。バランスの優れたシステムだ。

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