Category Archives: アンプ関係 - Page 71

ダイヤトーン DA-U850

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 このアンプの音は充実している。細かいところを問題にする前に、この豊かで輝かしい音の質は高く評価したい。ところで、問題は弦楽器の高い音域での一種ヒステリックなキャラクターで、これは、金管や打楽器系の再現では気にならないが、ヴァイオリンでは明らかに癖として出てくる。弦楽四重奏を聴いて、その点を強く感じた。一つ一つの音の彫琢の深さ、音の持っている弾力性のある実感は見事なものだけに、ここがスムーズに出てくれば高級アンプとしても最高の部類に入れられると思う。フィッシャー=ディスカウの越えなどに聴かれる美しく気品にみちた再現、ピアノの芯ががっちりしたタッチ感と、その輝かしい音色の再生は立派であった。ベースもよく弾むし、力感も十分で、定位や空間の再現も申し分ないものだ。残留ノイズは、現在の高級アンプとしてもう一息といったところだろう。実力のあるプリメインアンプだと思う。

ヤマハ CA-R1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 清潔な明るい音。重さとか厚みを嫌って軽やかに仕上げた音。ことさらな色づけや強調感を避けて、無彩色に、白っぽく、若々しい美しさをねらった音。そういう印象は音質ばかりでなく外観にまで一貫している点はみごととさえいえる。たとえばレバースイッチが非常に軽快で、ほとんど力を入れずにコトリという静かな音でポジションが決まる感触まで、出てくる音によく似ている。
 この価格帯の製品には珍しくMCカートリッジ用のヘッドアンプを内蔵している。この部分の音のクォリティは、CA2000等のヘッドアンプには及ばないようだが、SN比の点でも十分実用になる。
 このアンプの音質は、たとえば音の深みや重量感、といった面が弱点のようだ。しっとりと、漂うように聴き手を包み込んでくるような音の色艶を求めるのも無理だ。深刻ぶらずに、からっと明るく音楽を楽しむという聴き方が、このアンプには合っているだろう。

サンスイ AU-10000

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 艶と油気の多い充実したサウンドは、ジャズやポップスには大変魅力的な再生をしてくれる。音のクォリティは高く、ソリッドな密度の高い手応えのあるものだ。アン・バートンは、このアンプが今まで聴いた中ではベストといってよいほど、声の魅力が生き生きとしてくるし、「サイド・バイ・サイド」のピアノの音も大変満足した。演奏の所作とでもいえる、ちょっとしたニュアンスがアンプによってずい分変るのだが、このアンプで聴くといかにも人間味豊かな八城一夫らしいタッチの妙が生かされる。反面、フィッシャー=ディスカウの声は少々粘り、エッシェンバッハのピアノの中低音も不明瞭な感じになる。空間のレゾナンスガ中低域で強調される傾向だ。JBLを鳴らすと、実に巧みにコントロールがきいて中高域がスムーズである。弦楽四重奏には軽妙な味や品のいいデリカシーの再現が少々不満であった。トーン・ディフィートでは大きく音の鮮度が変るアンプだ。

ラックス L-309V

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 楽器や演奏の持つ美しい質感をよく再現するアンプで、ハイセンスの音の品位と風格を持っている。オーケストラの持つヴェルヴェットのようなクォリティ・トーンをよく再現するし、ピアノ一音一音のデリカシー、輝かしい音色を生き生きと再現する。こうした微妙な音色感が得られるか得られないかが、10万円を越えるアンプの評価の分れ道だと思うのだが、このアンプは、はっきりその水準を越えている。もちろん5〜6万円クラスのアンプにもそういうものがあるのだが、10万円以上のアンプでも、その再現をなし得ないものが多いのだ。ただ、文句をいいたくなるのは、ノイズレベルが最新最高の水準に至っていないことで、残留ノイズも少なくないし、ボリュウムを上げた時のノイズの増加も、ゲインに比して多過ぎる。最新の製品ではないのである程度はやむを得ないが少々気になる。見た目の風格も、さすがにベテランの落着きと重厚さで品がいい。

デンオン PMA-701

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 このアンプで一連の試聴レコードをかけると、不思議なキャラクターが加わる。ウッドベースは、エレキベースの表情を持ち始めるし、ピアノの音の抜けも悪く、冴えがない。フィッシャー=ディスカウの声は、気品が一つ落ちるし、アン・バートンの声は、娼婦的になるのである。オーケストラのfffは、コントロールを失うようだ。全体にさわやかさや、雰囲気が再現しきれないようだ。悪いことばかり並べたようだが、これを、そのまま極端に受け取られるとあまりこのアンプがかわいそうなので弁護すると、音の肌ざわりは、とげとげしたところがなくて、なめらかなほうだし、曇りの微妙なニュアンスを問題にしなければ、いわゆる歪み感はない。だから、このアンプだけを聴いていれば、そうしたことに気がつかない人もいるだろう。しかし、全帯域のエネルギー・スペクトラムが、どこか平均していないようなノイズのキャラクターも感じられるのである。

テクニクス SU-8080 (80A)

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 高い技術レベルに支えられたアンプだということが聴いてもよくわかる。プリメインアンプとしてユニークな構成で、インプットのイコライザーからダイレクトにパワーに入れるトーンディフィートなどの発想は新しい。音は、いかにも端正で立派である。品位が高く、色づけのない素直なもので好感がもてるけれど、豊潤なソノリティを出し切れないのが、もう一つ、このアンプの魅力に欠けるところだと感じられた。クヮルテート・イタリアーノのベートーヴェンの初期の弦楽四重奏など、フィリップスの華麗な音色をコントロールして格調の高い響きで聴かせてくれるが、オーケストラの中低域のニュアンスや、ピアノの巻線領域の豊かさなどの抑揚に、もう一つ血が通わない再生音になる。自分の作ったレコードにしか自信を持っていえないが、試聴に使った一枚では、明らかに意図したリズムの豊かな躍動に不足を感じた。客観的に素晴らしいアンプだと思うのだが……。

「テスト結果から 私の推選するプリメインアンプ」

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 個人的に推選できる機種をあげよ、というテーマなので、その基準または根拠をはっきりさせておきたい。
 前回参加した27号でも書いたことだが(27号144ページ)、一流の音楽家が心をこめて唱い演奏した音楽が聴き手を心の底から感動させるのなら、それを正確に録音し再生できれば、レコードからでも感動を味わえる筈だ。筈、などという必要もなく現に私が永いレコード歴の中で、何度もそういう感動をこの身で体験している。そういう良いレコードと、そこから音楽のエッセンスを確かに拾い上げてくれるカートリッジと、それを可及的に正しく再現してくれるスピーカーとがあれば、その中間に置かれたアンプの良否がはっきりと聴き分けられる。物理特性がいかに優秀だと説明されても、音楽の感動、少なくとも演奏会の息づかいや気配のような人間臭さを、伝えてくれないアンプを、私は正確な増幅器だとは思えない。良いアンプは必ず、音楽を聴く喜びをもたらしてくれる。
 仮にどれほど歪みの少ない、きれいな立派な音がしても、どこか無感動に、よそよそしく、あるいは気配を少しも聴かせてくれないアンプは、私は使う気になれない、……そう、この「自分で使う気になれるアンプ」だけを、推選機種としてあげたい。価格の高い方から、ただし同一メーカーはひとつにまとめて書くと──、
■マランツ ♯1250 キリッとしまったブライトな音の魅力。これで柔らかい音の味わいがあれば申し分ない。
■ラックス 5L15 低域の量感があればさらに良いが現代的な解像力の良いクールな音が魅力。
■ラックス SQ38FD/II 5L15と対照的な、しかしそれだから存在理由のある暖かい音の魅力。
■ラックス L309V 新しさはないが安心して聴けるバランスの良さとソフトな耳ざわりの良さ。
■ローテル RA1412 上質の滑らかな音とバランスの良さ。音とデザインが少しちぐはぐだが。
■ヤマハ CA2000 上品ですっきり型だが、明るく美しい。こまやかでクールな音質。
■トリオ KA9300、KA7300D いくらか硬質の音だが、表彰の豊かさが独特。
■オンキョー A722/nII 音密度と力では最新型にわずかに及ばないが、ウェットで表情のこまやかな艶のある音色は類のない魅力。
■サンスイ AU707、AU607 607の方が表情に張りがあって若々しい。707はウェルバランスともいうべき安定感のある音質。
■デンオン PMA501 6万円を切るランクで、音の彫りの深さが魅力。ただし試聴記でふれたように、ノイズの不安定なところは? として残るが。
         ※
 次点としてはテクニクス80AとソニーTA5650があげられる。80Aは表情の豊かさまたは味わいの深さがもう少しあればよいと思ったが、やや薄味ながら歪み感のない美しい音は特筆すべき魅力。ソニーはバランスの良さと明るい力強さが良い点だが、反面、もうひとつ細やかな繊細感が出せれば素晴らしいアンプになる。また、パイオニアの各製品は、どのランクをとっても、全く美事といってよいほど中庸のバランスに仕上っていて、アンプの音にとくに個性的な音色を求めないユーザーには、むしろ安心して推められる製品だ。試聴記でも書いたことだが、音質ばかりでなくデザインや操作機能を含めて、およそこれくらい、あらゆる角度からみて中道精神で統一された製品をつくるというのは、実はかなりたいへんなことだと思う。
 それら以外にも、ダイヤトーンDA−U850、ソニーTA3650、トリオKA7100D、オンキョーA5等が、私の好みとは違うがそれぞれに良いところを持った製品だと思った。

サンスイ AU-607

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 価格順に下からずっと聴いてきて、ここから一拠にランクが7万円に近づいたためばかりでなく、やっと本格的に聴き込める音のアンプが出てきた、というのが第一印象だ。まず、くっきりと彫りの深い美しい艶の乗った音が、とても新鮮な印象で聴き手を惹きつける。ジャズのベースの低音弦でも、土台のしっかりした、うわついたところのない豊かな音が聴ける。オーケストラのトゥッティで、エネルギー・バランスがいくらか中〜高域に集まりがちな傾向が聴きとれたが音の空間的な広がりと奥行きをしっかりと鳴らす点、これまで出てきた製品の中では明らかにひと味違う再現能力を持っている。音楽の表情がとても生き生きと豊かに聴こえるが、従来のサンスイの製品のような華やいだ派手さは抑えられ、どこかしっとりと潤いを感じさせる。音の土台を支える中低音域に、もうひと息の密度があれば申し分ないが、この価格帯ではとくに目立つ新製品だ。

ソニー TA-3650

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 これは良くできたアンプだ。いろいろなプログラムソースを通して聴いて、違ったタイプのスピーカーを組合せてみて、どの場合にも破綻をみせないし、それが単に平均点的優等生であるところを越えて、もっと音楽を充実して聴かせる密度の濃い音を持っている。この製品が6万円そこそこの価格であることを忘れさせるまでには至らないにしても、あ、いい音がするな、とつい聴き込んでしまう程度の良さがある。ただ、音の力と緻密さを大切にしたことはわかるにしても、弦の高域や声楽で、いくらか芯を太く、多少強引に、音を硬めに鳴らす傾向はあるが、音の基本的な質が良いせいか、それが弱点とは感じられず、むしろパーカッションなどで、腰のくだけないクリアーな鳴り方を印象に残す。しかしトーンコントロールをONにすると、右の特徴が失われて、曇り空のような冴えのない音になってしまう。この部分の磨きあげがもう一歩、という感じだった。

サンスイ AU-607, AU-707

岩崎千明

音楽専科 1月号(1976年12月発行)
「YOUNG AUDIO 新製品テスト」より

 サンスイのアンプが、この秋大きく変った。変ったといってもその特長たるブラック・パネルはそのまま踏襲され重量級の風格は変ることがない。しかしよくみると、その仕上げは、艶消しのソフトな感触に変り、今までの鋭どさがぐっとやわらいだ。つまみも角を丸くおとしてまろやかなタッチで、つまみの数も、いままでにくらべてずっと抑えて、全体にシンプルだ。こうした一段とソフトな感じがこの新シリーズ、607、707の大きな特長であることは、その音を聴くと、一層はっきりすることになる。従来、サンスイのアンプは「中音が充実し、やや華麗な中に、鮮明な迫力一ぱい」として受けとられて来た。
 人気絶頂の米国JBL・スピーカーの総代理店たるサンスイの特典が、アンプにいかんなく発揮されている、ともいえそうな鮮度の高い迫力ある音がブラックパネルのサンスイのアンプの共通的な特長であり、さらに中音から中高音にかけてのクリアーな力強さが感じられてきた。
 ところが、今度の新シリーズは今までのこうした特長からははっきりと変化を知らされる。路線が変ったというよりも、今までのすべてを突き破ったといえる。鮮明さは少しも失わずに、しかも、全体に受ける印象は、まろやかな音だ。どぎつさが全然なく、すべてに落ち着きとゆとりを感じさせる、高い水準の完成度が見事なほどだ。
 外観のイメージから受けることのできる、大人っぽい高級感は、音の方にもはっきりと感じることができるのが、今度の新シリーズ、607、707なのである。
 サンスイのアンプは今までもハイクラスのマニアの愛用者が多い。逆にいえば、高価格のアンプがよく売れる。1年前のAU7700といい、2年前のAU9500といい価格的には一般的平均よりもずっと高い高級品であった。こうした高価なアンプであれば、内容的には当然優れているわけで、それを十分使いきり、生かせることのできるファンが、サンスイの愛用者に多いといえる。
 新シリーズはこうした点をもっとはっきりと意識して、製品の企画に反映した、といえるだろう。初心者やレベルの低いファンにとっては今までのサンスイのアンプにくらべ物足りないと思われるほど、おとなしい音、おとなしいデザインにまとめられているのは、実はこいうした、大人のファンのための高級品だからであろう。
 607は65/65Wの、家庭用としては十分にして無駄のないパワーをもち、機能面でも、余り使うことのないものを整理し、しかも、若いファンのための必要なアクセサリーともいうべきテープ録音再生の端子は2台分を用意してあり、その使いやすい切換つまみでまとめたパネルつまみは、新製品にふさわしく、便利で有効だ。
 707は出力を一段と上げて80/80Wと強力でしかも機能面はマニア、音楽ファンの愛用者のあらゆる望みをかなえてくれるに違いないほどいっぱいだ。
 最近のアンプはかなり技術志向が強くて、「DCアンプ」「電源左右独立」といったアンプの内部を理解していないとつかみにくい面が強調されることが多い。サンスイの新シリーズもむ論、この面で同様の新技術を採用しているが、要はそうした技術が、サウンドにいかに生かせるか、である。サンスイの707、607、デビュー早々若い音楽ファンが熱いまなざしをもって迎えられているというのも本当の理由は、こうした実質的な、真の良さのためだろう。

デンオン POA-1001

岩崎千明

スイングジャーナル 1月号(1976年12月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 76年秋、デンオンはトランジスタ・アンプらしからざるマイルドな音色のソリッドステート型高級アンプとして、コントロール・アンプPRA1001、パワーアンプPOA1001を発表した。ちょうど1年前の秋には、同じデンオンが真空管アンプらしからざる透明感あふれる音色の、管球式高級アンプ1000シリーズを発表しているが、外観的にはこの1年前の管球式1000シリーズとはっきりした共通点が認められる。今回の1001シリーズは、こうした外観的な特長からも、またこの型番からも、1000シリーズのアンプの技術を土台にして、その上に結実した結果ということができよう。
 ところで、オーディオ界におけるデンオン・コロムビアのブランドは、ビクターと並んで、最も古くからその中核をなしその企業組織内にレコードを主とした音楽産業を併せ持つ、音楽的色彩の強いオーディオ・メーカーであることはよく知られているだから、デンオン・ブランドのオーディオ機器は、一般に他社とははっきりとした違いを持ち、受け手の側が音楽との関わりを深めていくにつれて、「デンオン」の製品のこうした音楽的特長に気付いてくるに違いない。
 ひとくちに言って、デンオンの製品は、スピーカーにしろアンプにしろ、あるいは、プロフェショナルに永く問わりを持ち、業務用という言い方で誰をも納得させてしまうデッキやプレイヤー関係の機器に至るまでのすべてにおいて、他とは違うサウンド上の特質ともいうべき「いきいきとした生命感ある音」を大変はっきりと示してくれている。
 このため、デンオンのプリメイン・アンプは数あるライバル製品の中にあって、どちらかというと割高の傾向をみせながらもなおその愛用者が少なくない。プロ用機器の技術を土台としたデッキやプレイヤーに比べて、サウンド感覚そのものが大きく判断を支配してしまうスピーカーやアンプにおいての成功は、デンオンのオーディオ機器の優れた本質を示してくれる裏付けであると言ってよいだろう。
 だから、デンオン・ブランドのプリメイン・アンプは、最近ますます音にうるさい愛用者の用うべき高級品だと評判も高い。
 当然のことながら、こうしたプリメイン型アンプのより高級なる地位を占めるべきセパレート型に対しての期待が大きかったわけだ。しかし、一般に、期待の大きい場合にはその大き過ぎたがゆえに、期待外れの失望感を味わいやすいものだ。
 ところが、今回発表された1001シリーズは、こうした危倶をまったく感じさせない。すっきりとした外観は、見るからに高級品然とした高い品位の風格を示し、プリメイン・アンプの高級品とも格段の相違をはっきりと示す。確かに、プリアンプ、パワーアンプあわせて30万を上まわるのだから、これは当然の配慮というべきだが、それが、一見して感じられるところも商品作りのうまい点だ。こうしたことは、最近のようにデザイン重視の傾向が進めば進むほど、意外にも見逃されがちのようである。例えばほとんど同じ系列の製品群に対して同一デザインを踏襲してしまい、仕上げまでも同一程度のため、安いものほど高級感が出てきて、高価なものではその逆にその高級感が物足りなくなってくることがままある。パワーアンプのような実質本位な製品は、デザインが軽視されがちだ。
 デンオンPOA1001は、ごくあっさりとした外観ながら、実はきわめて緻密な配慮のもとにデザインされていて、サブ・パネルの下に使用頻度の少ないツマミを収め、扱いやすさと風格とをあわせ持つ。スイッチを入れると、そのスピーカー保護回路が働くのも、高級アンプにふさわしいタイム・ラグを感じさせる。
 あくまで澄みきったサウンドのうえに、切れこみの良さと、耳になじんだ快さは、マイルドで芳醇なコーヒーの味にも似て、じっくりと味わうにつれ、その深みを増していくようである。

マランツ Model 1150MKII

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来の♯1150を基本に、細部の改良が加えられた新製品である。外観、機能などからは、従来のモデルとさして変化はなくいわばMKIIらしいMKIIといえる。
 音質的には、全体に従来のモデルに比較して、音が一段と鮮明になり、とくに、低域の安定度が増して、むしろ、上級機♯1250に近づいた感じが強い。また、一般にドライブし難い、静電型やダイナミックタイプ平板型スピーカーに表示パワー以上のパワーが送り込めるのも、ひとつの特長である。パルシブな音の再生は見事であり、反応が早い音を聴かせるのは、この♯1150IIの魅力であろう。

ラックス CL30

瀬川冬樹

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 マランツのモデル7(セブン)が名器と呼ばれるのは単に音の良さばかりでなく、そのデザインと仕上げの素晴らしさが大いに預っていることはいうまでもない。そしてそのデザインや回路構成の全体あるいは部分が、国産のアンプに相当に大きな影響を及ばしたことは、たとえばラックスのPL45(CL35およびII型の原形)などにも顕われている。
 高級プリアンプとしての性能で、CL35などは相当に優れていたことは従来までの評価の高かったことで知られているものの、デザインを含めてラックスが完全にオリジナリティを表現しはじめたのは、このCL30以降だといってよいだろう。高級プリアンプに要求される各種のファンクションを、扱いやすく見た目にも美しく整理することが容易でないことは、国の内外を問わずこの種の製品に成功例のきわめて少ないことを見ても明らかだ。願わくは回路構成等にもう一段の磨きをかけて、いっそう完成度の高いプリアンプに成長させて欲しいものだ。

マークレビンソン LNP-2, JC-2, LNC-2

瀬川冬樹

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 設計者兼社長のマーク・レビンソンは、まだ30才前の若いエンジニアだが、ジャズのベイシストとして名前の載ったレコードも出ている。非常に個性の強い、しかし極めて繊細で神経質なパーフェクショニストだ。たとえば測定器で最高のデータまで追いつめた段階から、自分の装置で音を聴きながらディテールの修整に少なくとも一年から二年の時間をかけて一台のプロトモデルを完成する。また彼はマルチアンプで聴いているので、とうぜんパワーアンプの試作もしているが、まだ満足のゆく性能が得られないので市販しないという。完璧主義者ぶりがよくあらわれている話だ。
 こうして作られたプリアンプLNP2は、いかにも新世代のエレクトロニクスの成果を思わせる。緻密でクリアーで、どんな微細な音をも忠実に増幅してくるような、そして歪みっぽい音や雑音をあくまでも注意深くとり除いた音質に、マーク・レビンソンの繊細な神経が通っているようだ。これを聴いたあとで聴くほかのプリアンプでは、何か大切な信号を増幅し損ねているような気さえする。
 増幅素子をはじめあらゆるパーツ類には、現在望みうる最高クラスが採用され、それがこのアンプを高価にしている大きな理由だが、たとえば最近の可変抵抗器に新型が採用されたLNP2やJC2では、従来の製品よりもいっそう歪みが減少し解像力が向上し、音がよりニュートラルになっていることが明らかに聴きとれ、パーツ一個といえども音質に大きな影響を及ぼすことがわかる。レベルコントロールのツマミの向う側に何もついてないかのようにきわめて軽く廻ることで見分けがつく。
 JC2はLNPからトーンコントロールやメーター回路および常用しないコントロールを除いて、最少限必要な増幅素子だけを内蔵した簡潔なアンプで、測定データはLNPより良いぐらいだというマークの言い分だが、音楽の表現力の幅と深さでLNPはやはり価格が倍だけのことはあると思う。しかもJC2の怖ろしいほどの解像力の良さに大半のプリアンプが遠く及ばないことからも、LNPがいっそうただものでないことがわかる。
 LNC2は、マルチアンプを愛好するレビンソンらしい新型のチャンネルデバイダー。チャンネル・レベルコントロールに0・1dB刻みの目盛りのついた精密級が使われているあたりにも、マークのパーフェクショニストぶりが読みとれるが、デバイダーだけでプリアンプと同じ価格という点でも、回路にいかに凝っているか、その音質追求の執念のすごさが伺い知れる。やがておそらく、ものすごいパワーアンプが発表されるにちがいない。
 レビンソンのアンプは、本体と電源ユニットは別のケースになっている。それはSN比を最良に保つためであることはいうまでもないが、そのどれも電源スイッチを持っていない。マークに言わせれば、LNPもJCも消費電力がきわめて僅かだし、電源は常時入れっぱなしにしておく方が働作も安定するから、スイッチを切る必要がない、というのである。

スチューダー A68

瀬川冬樹

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 ヨーロッパのオーディオ機器の中で、アンプだけはアメリカや日本より一歩遅れている、と感じていたが、スチューダーA68の出現で、ヨーロッパ製のアンプもついに世界の水準を越えた、と実感した。このアンプの音質は、アメリカの最新機のような一聴していかにもハイパワーだとかワイドレインジだというような凄みは感じられない。けれどじっくり聴き込んでゆくにつれて、どこにもあいまいさのない解像力の良さ、ひ弱さのない腰の坐った上質で安定な音が、聴き手をじわりと包んで満足感に浸らせてくれる。トランジスターアンプでは概して、弦楽器の胴の木質の感じに、ほんのわずかとはいえ金属質の感じがまじりがちで、それを嫌って管球アンプを愛好するファンが多いのだが、A68はその意味で、管球アンプの良い面を内包しながら、管球では表現不可能な繊細な切れこみをも聴かせてくれる優秀なトランジスターアンプといえる。100V電源で使える点はレギュレーションの点で有利だ。

オンキョー Integra A-722nII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 優秀なセパレートアンプの音を聴き馴れた後でいきなりプリメインアンプを聴くと、同じレコードの音が何か欠落したような物足りなさを感じるのはしかたがない。が、そういう方法でプリメインアンプのテストを毎日のように繰り返していると、聴いていて永続きするアンプと、じきに脱落してゆくアンプとに分かれてくる。A722/nIIは、そうして私の家で最も永続きのしているプリメインアンプである。
 この音質はいくらか線が細くウェットだが、何よりも優れているのは音楽のフィーリングを細やかに伝えてくれること。たとえば唱い手の感情をしっとりと情感豊かに、生き生きと蘇えらせるところを、私は高く評価している。ファンクション類も、ラウドネスの利き方を除けば実用的によく整理されていて申し分ない。デザインや仕上げもていねいだが、わずかに陰気で野暮な感じが残念。基本をくずさないことを条件にマークIIIの出現を希望したい製品。

パイオニア Exclusive C3, Exclusive M4

瀬川冬樹

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 EXCLUSIVEのシリーズには、このほかにパワーアンプのM3と、チューナーのF3があるが、M3はハイパワーのアンプとしては他の製品と比較してデザインと仕上げの良さを除いてはとりたてて優れているとはいい難い。チューナーの方は、性能は第一級品だと思う。が、デザインがC3、M3、M4の域に達していない。結局、性能と仕上げの両面のバランスのとれているものはC3とM4、ということになる。
 C3とM4の組合せの良さは第一に、その音質にある。滑らかで質が高い。音楽的な表現力が優れている。家庭でふつうにレコードを鑑賞するときのパワーはせいぜい1ワット近辺あるいはそれ以下だが、C3、M4の組合せはそういう常識的な音量レベル、あるいはさらに音量を絞り込んだときの弱音がいっそう見事である。弦楽器やヴォーカルの柔らかさを、単に歪みが少ないという感じで鳴らすアンプならいまや珍しくない。が、C3、M4はそこに息の通った暖かさ、声の湿りを感じさせるほどの身近さで、しかし決して音をむき出しに荒々しくすることなく、あくまでも品の良さを失わずに聴かせる。
 そうした柔らかさ、滑らかさは当然半面の弱点を内包している。たとえばパーカッションの音離れの良さ、中でもスネアドラムのスキンのピンと張って乾いた音、のような感じがやや出にくい。ほんらい荒々しい音をも、どこか上品にヴェールをかけて聴かせる。大胆さや迫力よりも、優しさを大切にした音、といえる。最新の、ことにアメリカの一流アンプの隅々までクリアーに見通しのよい音とは違って、それが国産アンプに共通のある特色であるにしてもいくぶんウェットな表現をするアンプだ。そういう特色を知って使いこなすかぎり、この上品で繊細な音は得がたい魅力である。
 ただM4の換気ファンの音は、よくおさえられているとはいうものの、深夜、音量を落して聴きたいときには少々耳障りで、アンプの置き場所には少々くふうが必要だろう。

SAE Mark 2500

瀬川冬樹

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 高級アンプのメーカーには、大別してプリアンプのうまいメーカーと、パワーアンプの方にいっそうの能力を発揮するメーカーとがある。たとえぱかつてのマランツはプリアンプ型のメーカーだし、マッキントッシュはパワーアンプの方がうまいメーカーだった。ロサンジェルスに本拠を置くSAEは、パワーアンプ型のメーカーといえる。パネルをプラックフェイスに統一しはじめてからのこの社の一連の製品は、一段とグレイドが上がったが、中でも300W×2のMARK2500は、動作の安定なことはもちろんだが、その音質がすばらしく、出力の大小を問わず現代の第一級のパワーアンプである。重量感と深みのある悠揚迫らぬ音質は他に類がない。しかもこのアンプは繊細な表現力も見事で、どんなにハイパワーで鳴っているときでも音のディテールを失わず、また音量をぐんと絞り込んだときのローレベルでも少しもよごれのない歪みの少ない音を聴かせる。ただしこういう特長は、プリアンプにマーク・レビンソンLNP2を組み合わせたときに最もよく発揮される。そして良いカートリッジやスピーカーを組み合わせると、LNP2+MARK2500というアンプは、鳴らしはじめて2〜3時間後に本当の調子が出てきて、音の艶と滑らかさを一段と増して、トロリと豊潤に仕上がってくるこ上が聴き分けられる。高容量でレギュレーションの良い117V電源の用意が必要だ。難をいえば換気ファンの音が非常にうるさいこと。置き場所にくふうが要ると思う。

マランツ Model 1250

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 最近の多様化したセパレート型アンプの登場によって、プリメインアンプはその本来の意味を問われることになり、とくに高級プリメインアンプにともすればプリメインアンプとセパレート型の境界線に位置するだけに、かなり苦しい立場に立たされているように感じられる。マランツ#1250は、基本型をコントロールアンプ#3600とパワーアンプ#250Mにとり、一段とリフアインされた内容をもっているために、質的にも量的にも、はるかに価格が高いセパレート型アンプに匹敵するものがある。機能面は、とくにテープ関係が#3600より一段と実戦的なものに発展し、使いやすく、大型フロアースピーカーを充分にドライブするプリメインアンプの本格派である。

デンオン PRA-1000B, POA-1000B

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 ソリッドステートアンプ全盛とも思われる米国でも、一部では真空管アンプの要望は絶えることがなく、新設計のモデルが新しい世代の真空管アンプとして登場している。デンオンのセパレート型アンプのトップモデルとして開発されたコントロールアンプPRA1000BとパワーアンプPOA1000Bも、昔なつかしい、管球アンプではなく、現代のソリッドステートアンプの技術を、独得な性格をもった増幅素子である真空管に導入してつくられた新世代の真空管アンプである。
 コントロールアンプPRA1000Bは、フロントパネル下側にヒンジつきパネルをもつシーリングポケットをもち、常用するコントロール以外は、この内部に収納した簡潔なデザインに特長がある。性能面では、SN比が高く、フォノ入力およびAUX入力などのハイレベル入力部分の許容入力が大変に高く、それでいて左右チャンネルのクロストークが非常に少ない、いわば真空管の特長を活かし、欠点を抑えた、現代的な設計である。
 パワーアンプPOA1000Bは、かつてのマランツの名器として定評高かった#9Bを、現代的にモディファイした印象を受ける、管球アンプらしい素晴らしいデザインと仕上げが魅力である。出力管には、東芝の6G−8Bをプッシュプルとし、カソードNF巻線付の広帯域型出力トランスとのコンビで、100W+100Wのパワーを得ている。いわゆる並列接続でない、シングルプッシュプルのパワーアンプとしては、もっとも大きなパワーであろう。
 パネル面の2個の大型メーターは、ピーク指示型で、高域は、50kHzまで平坦な指示が可能であり、指針の動きも大変に良い。このアンプは、いわゆる管球アンプらしい情趣のある音はまったくなく、ストレートで力強く、充分に拡がった音場感タップリの音を聴かせるあたりが、新世代の管球アンプらしい独得な魅力である。デザイン、性能、音質ともに、世界の一流品である。

デイトンライト SPS MK3

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 このモデルは、AGI#511と同じ性格をもったカナダのデイトンライト社製のシンプルなプリアンプである。一般的なネジを使わずに、独得なクランパー1個を外せば、簡単に内部の一枚基板構成のアンプが取出せるユニークな構造が斬新である。SPS MK3は、AGIにくらべると表情が穏やかで、スッキリと滑らかな音をもち、洗練されたディスクらしい音の出し方が興味深い。

パイオニア Exclusive F3

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 FMチューナー、とくに高級チューナーは、基本的な性能もさることながら、デザイン、仕上げの面でも、セパレート型コントロールアンプやパワーアンプと同格のウェイトをもつことが要求される。この意味においては、F3はもっとも貫禄のあるデザインをもった一流品と呼ぶに応わしいものがある。
 豪華という感じそのものの木製キャビネットは、この部分だけの価格を考えてみても普及型チューナー1台分に相当するだろう。FMフロントエンドは、パイオニアが先鞭をつけたPLL採用のロック同調方式を採用し、受信周波数は100kHzごとにロックされ、ステップ的に指示をするチューニングメーターで選局は容易に、しかも確実にできる特長がある。またダイアル系のメカニズムが滑らかで、同調のフィーリングは、適度の重さがあり、いかにも同調をしたという実感が得られるタイプである。

AGI Model 511

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 セパレート型アンプのジャンルは、プリメインアンプにくらべれば、制限や制約がない、いわば無差別級の分野であり、最近では、ことに多様化、多角化した製品が数多く登場している。
 AGI#511は、セパレート型アンプとしては、業務用アンプに採用されることが多い、いわゆるユニットアンプ形式のプリアンプで、多機能を誇る高級コントロールアンプから、最少必要限度の機能を残して単純化した、シンプルな構成が特長である。
 デザインは、現在のこの種のモデルの流行である薄型ではなく、標準的なコントロールアンプのパネルサイズの左右を短縮したタイプであり、コントローラーは、ボリュウム、バランス以外は、2系統のプッシュボタンスイッチだけというシンプルなものだ。構造は、増幅部分、電源部分を一枚の基板上に構成するタイプであるが、使用部品、材料は厳選された高度なものが採用され、外側の金属製ケースの板金加工の精度は、海外製品としては異例に高いものである。
 この#511は、米国系の最近のアンプの傾向であるスルーレイトを高める基本設計を採用しているが、音質は大変にクリアーで、力強く、音づくりというような虚飾がまったく感じられない。反応は非常に早く、思い切りの良い音を出すために、ディスク的な意味での良い音というよりは、テープでの38センチ・2トラックデッキの音に似た鮮度の高さが、他のアンプにない独得の魅力である。

テクニクス SU-8080

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 機能的に整理されたパネルフェイスは、類型的なパネルをもつ例が多いプリメインアンプとしては際立った印象を受けるが、本機は、内容としてもハイレベルインプット以後は、完全にDCアンプ化が可能という、いわば挑戦的な新しさがある。
 回路構成上のポイントとなっているのは、DCアンプ構成のパワーアンプ部である。通例とは異なって、初段の差動増幅用にFETではなく、デュアルトランジスターを採用したパワーアンプ部は、フロントパネルのメインアンプ・インプットスイッチをダイレクトにすると利得が42dBというハイゲインアンプとなり、AUXなどのハイレベル入力は直接パワー部に入り、結合コンデンサーレスのDCアンプとなる。セレクターがヴィア・トーンコントロールの場合には、ハイレベル入力は、トーンコントロール回路を通りパワー部に入るが、このときには、パワーアンプゲインは28dBとなり、トーンコントロール段の利得は14dBと加算してトータルで42dBとなる。また、オーディオミューティングも、パワー部のNF量を14dB変化していっていることも特長である。この構成が、テクニクスでプリメインアンプならではのDC化といっている理由である。
 機能面では、イコライザー段に内蔵されたサブソニックフィルター、カートリッジ負荷抵抗と容量の各2段切替、DCアンプ構成時に、ハイレベル入力に接続された機器からの直流成分の洩れからスピーカーを保護する、カットオフ2Hzの直流カットスイッチなどがある。
 SU8080は、色付けが感じられないストレートな音をもっている。従来のテクニクスアンプよりも粒立ちが明確で、聴感上で、力強さが加わっている。

ソニー TA-F7B

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 全般的にプリメインアンプの焦点は、パワー対価格に絞られているようであるが、ソニーから新発売されたプリメインアンプTA−F7Bは、価格的にもプリメインアンプトップエンドにあるだけに、量的なグレイドアップというよりは、むしろ本質的な質的向上にポイントをおいた、いわばプリメインアンプの形態をとってはいるが、質的にはセパレート型アンプの内容をもった製品と考えることができる。
 外観上は、まずパネルフェイスの色調がソニーのアンプとしては、はじめてのブラック系に仕上げてあることが特長であり、型番末尾のBは、ブラックを意味している。
 回路構成上の特長は、プリアンプ部の各ユニットアンプが初段FETを使うDCアンプ構成であり、パワーアンプ部もDCアンプ構成で、初段がデュアルFETによる差動増幅、出力段は、ユニークなV−FETと高周波トランジスターをカスコード接続にしたパラレルプッシュプル回路を使う純コンプリメンタリーSEPP・OCLである。ユニットアンプ間の結合コンデンサーは、トーンやフィルターをOFFの状態では、フォノ入力からSP出力まで2箇所、AUXからは1箇所と大幅に減少し、低い周波数での位相特性が優れた設計である。電源部は、パワーアンプ電圧増幅段とプリアンプ用、パワーアンプ電力増幅段用が左右チャンネル独立型で、3トランス方式である。また、信号経路を単純化する目的で、フォノ入力切替、スピーカー切替は、リレーを使うリモートコントロールであることに注目したい。
 TA−F7Bは、歪感がまったく感じられない、滑らかで粒立ちが細やかな音をもっている。聴感上の帯域は、かなりワイドレンジだが、ちょっと聴きには、広さを感じさせない良さがある。音色は軽く、明るいタイプで、中低域の豊かさ、ナチュラルで透明感のある中高域が魅力的である。