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インフィニティ Reference Standard 4.5, Reference Standard 2.5, Reference Standard 1.5, Infini Tesimal

インフィニティのスピーカーシステムReference Standard 4.5、Reference Standard 2.5、Reference Standard 1.5、Infini Tesimalの広告(輸入元:赤井商事)
(スイングジャーナル 1980年7月号掲載)

infinity

KEF Model 303

菅野沖彦

スイングジャーナル 5月号(1980年4月発行)
「SJ選定新製品」より

 KEFというスピーカーには、ジャズ・ファンはそれほど馴染みがないかもしれない。クラシック・ファンの間では、古くから親しまれ、高く評価されていたイギリスの製品である。今月の選定新製品として選ばれたMODEL 303は、同社のシリーズ中、もっとも安価な普及タイプではあるが、これを機会にKEFそのものについて紹介をしておこうと思う。
 KENT-ENGINEERING-FOUNDRYのイニシャルをとってKEFと名付けられているイギリスのスピーカー専門メーカーで、創立は1961年である。社長のレイモンド・クック氏は、有名なワーフデルのチーフ・エンジニアでもあった人で、スピーカー一筋の人生を歩んでいる人だ。ワーフデルという名もまた、若い人達にはあまり馴染みがないかもしれないが、スピーカー・エンジニアリングの草分け的存在の故ブリッグス氏が創立したメーカーで、イギリスのスピーカー・メーカーとしては、タンノイやグッドマン、そしてヴァイタヴォックスなどと並ぶ名門であった。私事になるが、私も昔ワーフデル・スピーカーを愛用していて、今でもW12RS/PSTという平板ウーファー(平板スピーカーは決して新しいものではないが)の再生する音の魅力は忘れていない。
 クック氏は、61年にKEFを創立して以来、一貫して優れたモニター・スピーカー、家庭用のハイファイ・スピーカーを製造し、今やワーフデルの壮年の名声に代って、現代第一級のスピーカー・メーカーとして発展させるに至った。数々のユニークな開発をおこなっているが、中でも、スピーカーの測定面で大きな進歩といえるフーリエ・アナライザー・スピーカー解析法の開発技術はスピーカーの技術史に残るものといえる。スピーカーの静特性と動特性の両面を解析することにより、スピーカーの音の実体をより適確に知り得るもので、今では世界中のスピーカー・メーカーが、この測定法を用いているといってもよい。このように、KEFのスピーカーは、すべて社長のクック氏の手から生み出されるといってもよいが、クック氏のスピーカーの考え方は、あくまで、プログラム・ソースを忠実に、誇張することなく、音楽を楽しく聴くことのできるものであって、PA用やディスコ用の特殊スピーカーは絶対に作らないというポリシーを明確にしている。
 さて、このMODEL 303は、先述したように、KEF製品中もっともポピュラーな製品ではあるが、さすがにKEFらしい魅力ある製品である。20cmウーファーとドーム・トゥイーターの2ウェイを、小型ブックシェルフにまとめたもので、エンクロージュアの材質もプラスチック成形を用いるというコスト・ダウン化を計ったものなのだ。62,000円という価格は輸入品として大変に安価であるが、特筆すべきは、その音の品位の高さである。決して、コスト・ダウンが音の品位の低下につながっていないのだ。それどころか、この2倍、3倍の値段のスピーカーでも、これほどバランスのよい、高品位の音の再生が得られるものは少ないといえるだろう。ジャズを聴いても、決してクラシック向きと俗称されるスピーカーにありがちな脆弱な音ではなく、楽器の質感はリアルで、演奏表現の情感や、演奏場のリアリティはよく再現されるのである。このすっきりと透明感の高いプレゼンスはKEFスピーカーの大きな魅力だが、これは、とりもなおさず、クック氏のスピーカーへの主張の現われであるといえるであろう。節度のあるベースは、決してボンボンと量一点張りの鳴り方はしないが、充分に弾み、低音楽器の質感を忠実にイメージ・アップしてくれる。小型には小型の限界があることは否めないが、このサイズのシステムの限界をうまく補う音のまとめ方には、さすがにKEFの腕と耳の冴え、キャリアーが偲ばれる。そして、発音の大らかさは、国産スピーカーにはないもので、エクスプレッションが豊かな海外スピーカーらしい一味ちがった魅力が、解る人には解るはずだ。さり気なく上質の音を居間に流すといった目的には絶好のもので、デザインもシックで、コストダウン製品によくある品の悪さはまったくないところもセンスのなせるわざというべきだろう。

エレクトロボイス Interface:AIII

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 このスピーカーのきかせる音をひとことでいうとすれば、生気にとんだサウンドということになるのではないか。まことに積極的な表現力をそなえたスピーカーだ。ただ、誤解のないようにつけ加えておけば、このスピーカーは、たしかに積極的な性格はそなえているが、だからといって音のきかせ方が、ごりおしで、おしつけがましいということではない。あかるく、ヴィヴィッドな音であるために、あくまでもすっきりした印象を与える。音像もふくらまず、くっきりと提示されるが、たとえば❸のレコードできかれるバルツァのはった声などは、いくぶん金属質なものになる。もう少し音にきめこまかさがあれば、このスピーカーの音の魅力は倍加されたのだろうが、その点では多少ものたりない。音量をあげてもすっきりしたところが失われないのは、このスピーカーにたくましいところがあるからだ。

総合採点:9

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

JBL L150

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 少し前までのJBLは、かなり高額にならないと、音の質やバランスに納得のゆかない製品が多かったが、最近はローコストのほうも作り方が巧みで、一本筋が通ってきた。L150も近ごろちょっと感心した。たとえばブルックナー。コンセルトヘボウにしてはちょっと明るいきらいはあるにしても、相当に上質で滑らかで、本もののオーケストラの味わいが確かに鳴る。音量を絞っても音像がくっきりしていて、音の細やかさが損なわれない。ピアニシモでひっそりした印象を与えるのは、相当に優秀なスピーカーである証拠といえる。フォーレのヴァイオリン・ソナタでも、JBLでこんなにしっとりした雰囲気が? と驚きながら、つい聴き惚れてしまう。ここまできてようやく、テスト用以外のレコードを次々と聴きたい気持にさせ、しかもどのレコードを聴いても裏切られないスピーカーが出てきた。一枚一枚について細かく書くスペースのないのがとても残念だ。アンプ、カートリッジも選り好みせずそれぞれの魅力をよく生かす。

総合採点:10

●9項目採点表
音域の広さ:9
バランス:9
質感:9
スケール感:9
ステレオエフェクト:9
耐入力・ダイナミックレンジ:9
音の魅力度:10
組合せ:普通
設置・調整:普通

インフィニティ Reference Standard 1.5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ブックシェルフ型の作りだが、専用の脚が付いているので、最初その状態で試聴してみると、背面を壁にぴったり寄せてもまだ低音の量感が不足で、中〜高域も固く、充実感が出にくい。そして、低、中、高の各音域がそれぞれ勝手に鳴っているように聴こえる。そこで脚を外して、床の上に直接設置してみた。この方がずっと良く、重低音の支えがしっかりしてくるため、充実して聴きごたえする。編成の小さな曲、たとえばフォーレのヴァイオリン・ソナタなどでは、ヴァイオリンの音もかなりそれらしく、ピアノの中域のコードなど意外にいい雰囲気を出す。しかしオーケストラになると、ウーファーの中域と、ミッドレインジの中〜高域とに、それぞれゆるい山が感じられて、音のつながりにもうひと息、スムーズさを望みたくなる。背面のレベルコントロールはいろいろいじょてみたが、これと決まるポジションを探すのは難しく、結局中、高とも中央の位置のままにした。高域の味わいなどなかなか良いところはある。

総合採点:7

●9項目採点表
音域の広さ:7
バランス:7
質感:7
スケール感:7
ステレオエフェクト:7
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:7
組合せ:普通
設置・調整:やや難し要工夫

BOSE 901 SeriesIV

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 同一の9個のスピーカーユニットのうち、正面の1個を除くとすべて背面に反射した音を聴くという特殊な構造のため、壁面との距離、左右の間隔調整はなかなか微妙だ。極端に近づけると音がこもったり鼻にかかったりする。もうひとつ、専用のアクティヴ・イコライザーをアンプのテープモニター端子に挿入するが、EQなしでも一応の音がするEVなどとくらべると、BOSEはEQなしでは全く音にならない。横スライド式のLOWとHIGHのツマミの調整はおそろしくシビアーだ。試聴室では、どちらも中央目盛よりも左寄り、全目盛の約1/4の附近にきわどいバランスポイントがあった。うまく合わせると、ひろがりと、そして意外に定位の良い独特の効果(エフェクト)から生じるプレゼンスが楽しめる。中域が案外しっかりと張っているから、音が引込まず、明快だ。パワーはびっくりするほど入り、耳がしびれるほどの音量も出せる。ただ、基本的な音の質感は決して上等ではないと私には聴こえる。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:7
バランス:8
質感:7
スケール感:8
ステレオエフェクト:9
耐入力・ダイナミックレンジ:9
音の魅力度:8
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:やや特殊要工夫

JBL 4343BWX

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 本誌所有のリファレンスの旧4343との比較には、何度も置き場所を入れかえて時間をかけた。並べて切替えたのでは、置き場所による音のちがいかそうでないかの判別ができない。さてその結果は、ミッドバスの領域では明らかに改善の効果が聴きとれ、歪が減ってすっきりと滑らかで透明感が増して、音像の輪郭がいっそうクリアーになったと思う。しかし低音に関しては、とくに重低音域では、旧型のキリッと引締って、しかしゆるめるべきところはゆるめて、ブースのアルコの甘いブーミングトーンがいかにも弦の振動しているような実感をともなって感じられる点が私には好ましい。Bタイプでは旧型より暖かみが増していて、総体的には、新型のほうが音のつながりが滑らかだし、ふっくらしている。ある意味では旧型のほうがキリリっと締って潔癖か。音量を絞り込んだときの音像のクリアネスでは、旧型がわずかによいのではないか。しかし厳密な比較をしないで、単独で聴かされたら、ちょっと気がつかないかもしれない。

総合採点:10
●9項目採点表
❶音域の広さ:10
❷バランス:10
❸質感:10
❹スケール感:10
❺ステレオエフェクト:9
❻耐入力・ダイナミックレンジ:10
❼音の魅力度:10
❽組合せ:あまり選ばない
❾設置・調整:やや工夫要

JBL L150

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 JBLの新製品L150は、L220の廉価版と受けとることもできるし、L110のグレードアップ版ともいえる。3ウェイ3スピーカーにドロンコーンを加えて、トールボーイタイプのフロアー型システムにまとめ上げたもの。トゥイーターは2・5cmドーム型、スコーカーは13cmコーン型、ウーファーは30cmコーン型で、ドロンコーンも30cm径だ。明解な音の解像力、現実感のあるシャープな立上り、豊かでいてけっしてたるみの出ない低音に支えられた端正なバランスは、JBL製品中でもかなり出来のいいシステムだと思う。これで、高域の品位がもう一つ高ければ文句なしだが、このドーム型トゥイーターには、弦の高域にやや耳を刺す傾向があるのと、ホーン型トゥイーターほど明晰とはいえないところが残念である。オーケストラのトゥッティの質感にこの傾向が聴かれ、もう一つ落ち着いた滑らかなテクスチュアが聴きたかった。ジャズ系のソースでも、スネアのブラシングに少々不満がつきまとったのもこのせいと思われる。

総合採点:9

ハーベス Monitor HL

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 このスピーカーの流れには、日本で知られている製品ではスペンドールのBCIIが源流としてある。あの渋い、ふわっと柔らかい響きを持った音は、ハーベスになるとぐんとフレッシュで、ぜい肉がおさえられ、中〜高域に明るい張りが出てきて、むろんその明るさはアメリカのたとえば西海岸の手ばなしの明るさよりはもっと知的な抑制が利いているにしても、イギリスには従来あまりなかった新鮮で艶やかな明るさといえる。全体に反応がいかにも早く、よく弾む音がする。中高域がよく張っているため、少し前までのロック、ジャズでも、いくぶん小造りになる点は致し方ないにしても、小気味のよい切れ味で楽しめる。ただ、クラシックのオーケストラの総奏で、わずかにキャンつくスレスレのところで鳴りがちで、カートリッジやアンプはかなり選ぶ。もしかすると、設計者のハーウッドは、クラシックよりポップス愛好家なのかもしれない。

総合採点:9

●9項目採点表
音域の広さ:8
バランス:9
質感:9
スケール感:7
ステレオエフェクト:9
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:9
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:普通

フィリップス AH484

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 音の輪郭を、あたかも縁どりしたかのように、くっきり示す音のきかせ方は、なかなか特徴的だ。このような音のきかせ方をするスピーカーは、これなりのものとしてうけとるよりはないだろう。微妙なサウンドのあじわいとか、あるいはきめこまかさとか、さらには軽やかさといったものは、このスピーカーに求めるべきではないようだ。しかし、このスピーカーは、強い音のエネルギー感とでもいうべきものを、せいいっぱいあきらかにしようとする。したがって、たとえば❷のレコードできかれる強くキーをうたれたピアノの音への反応のしかたなどは、なかなかこのしまい。しかし、その一方で、❶のレコードできかれるようなさまざまなサウンドの入りまじった音楽では、きこえ方がどうしても単調になる。しっかり基本をおさえた音とはいえなくもないが、その音は、やはりなかなか特徴的だ。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(物足りない)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

インフィニティ Reference Standard 1.5

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 同社のリファレンス・スタンダード・シリーズは、EMIT、EMIMと呼ばれる独特なトゥイーターとスコーカー、そしてポリプロピレン・コーンのウーファー使った、いかにもアメリカの新生メーカーらしい製品だ。本機は、シリーズ中最もポピュラーなブックシェルフ型で、3ウェイ3スピーカーの構成をとり、トゥイーターにEMIT、スコーカーにコーン型を使っている。EMITとはエレクトロ・マグネティック・インダクション・トゥイーターの略名で、薄いプラスティックフィルムのダイアフラムにエッチングされたボイスコイルにより全面駆動され、高域特性は大変優れている。軽く明るい高域は独特なユニットにふさわしい繊細さで、楽器の倍音をよく再生する。したがって、ヴァイオリン・ソロや編成の小さなアンサンブルなどは、スムーズできめの細かいサウンドが美しい。重厚な音の再生に難があり、どちらかというと弦や木管のデリカアーに向いている。ユニークなデザイン、高い仕上げとともに品位も高い。

総合採点:8

KEF Model 303

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ともかくひびきのあかるくさわやかなのがいい。その点では、このランクのスピーカーとしては、ひときわぬきんでている。ひびきの力感の提示ということでは、たしかにものたりない。しかし、❸のレコードでの、オーケストラのフォルテによる総奏、あるいはブラスの鋭いつっこみなども、一応、その音楽的特徴をそこなわずあきらかにしているのは、見事だ。❷のレコードでのグルダのピアノが、やはりどうしてもこあじ、こつぶになるのは、いかんともしがたいが、その一方で、そこできかれる声のなまなましさはなかなかのものだ。当然のことに、重量級の音楽を、大音量できくスピーカーとはいいがたい。インティメイトな表情をもった音楽を、おさえめの音量でしずかにきくききてには、おそらく、うってつけのスピーカーといえるのではないか。❶のレコードできけるような今様な音楽への対応もすぐれている。

総合採点:9

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

BOSE 901 SeriesIV

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 このユニークなスピーカーも長年に亘って着実な改良が施され、IV型に至ってユニットイコライザーの改善が高い水準に達したという感がある。今までは独特な音響放射の理論面に力が片寄り、再生音の洗練度については力が及ばなかったという傾向があった。このIV型では、性能もさることながら音色がすべての音楽を生き生きと、その本質を損ねることなく十分に味わい深い魅力を聴かせるようになった。独特の音色というとすぐ癖とかよけいな色づけと決めつける浅薄なオーディオ屋が多いが、認識不足と体験不足という他はない。オーディオは音楽を楽しむわれわれの感覚の対象として存在するという事実に立って、現実を見つめ、素直に科学技術の力と限界を認識すればわかるはずだ。固有の音色を持たないものは実在しない。それは作る人間の意識とは無関係だ。ボーズはこの音を意識して創ったはずはない。この独創的なシステムを洗練させた努力が、このスピーカーの魅力をもたらしたと私は思う。

総合採点:9

エレクトロボイス Interface:AIII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 奥行きの浅い、壁かけ型的作り方に見みえるが、実際、鳴らしてもみても背面は硬い壁にぴったりつける必要がありそうで、そうしないと低音の量感が不足する。台の高さは、部屋の特性と床面の材質や表面処理に応じて調整するべきだが、試聴室では約20センチの高さにした。専用のアクティヴ・イコライザーをアンプのテープモニター端子に挿入する指定がある。高域を0、−3、−6……とスイッチ切替で絞れるが、それとは別に低域をやや補正してあるように聴きとれる。相対にからっと乾いた硬質な音がする。輪郭はしっかりしているが、しかしときとして骨張る傾向もあり、必ずしも質の良い音とはいいにくい。MCカートリッジ(DL303、MC20II)があまりよく鳴らない。というよりスピーカーがMCの情報量をこなしきれない印象で、MM系のエラックは中〜高域の張りが少々やかましく、結局エンパイア4000DIII/LACあたりでまあまあのまとまりになる。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:7
バランス:7
質感:6
スケール感:7
ステレオエフェクト:8
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:6
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:やや難し

ロジャース LS5/8

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 しっかりした、力のある音をきかせる。ただ、音色としては、いくぶん暗めだ。音が積極的に前にでてくるところに、このスピーカーシステムのよさがあると思う。気になったところを先に書いておけば、音像がいくぶん大きめなことと、高い方のひびきに輝きが不足していることだ。逆に、低い方のひびきの腰のすわった、あいまいにならないきこえ方は、このスピーカーシステムの質的高さをものがたっている。それに、ひびきに、独自の風格があるということもいえるかもしれない。それにしても、いかにも音色的に暗い。その暗さがなければ、たとえば❶のレコードなどは、効果的にきこえるのだろうが、そうではないので、しめった感じになってしまう。❶のようなレコードは、このスピーカーにはあっていないと考えるべきかもしれない。❷あるいは❸のレコードの方が、はるかにこのましくきこえた。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

ハーベス Monitor HL

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 20cm径のポリプロピレン・コーンのウーファーにソフトドーム型トゥイーターを加えた2ウェイ2スピーカーのバスレフ型で、地味ながら堅実なキャリアをバックグラウンドにもつエンジニアリングが感じられる。イギリスのスピーカーらしい渋く、スマートな音が印象的である。ヴァイオリンは、高域にやや細身のきつい響きがのった切れ味の鋭さを聴かせるところが、好みによっては気になるかもしれないが、細部を繊細に浮き彫りにするところや、やさしく奏でられるソノリティの美しさは、いかにも品がいい。ヴァイオリンの音のエッジがたつわりには、ピアノの角が少々丸くなりがちで、もう一つ歯切れがよくてもいいと感じられた。私の好みからいくと、中音から高音にかけて、もう一つ豊潤さがほしい気もするが、オーケストラのハーモニーや質感は大変自然で品格のある響きだ。質が高いから、ジャズを聴いても楽器の質感や演奏表現がよく再現されるが、大音量の力感には、今一歩物足りなさが残るのが残念である。

総合採点:9

ロジャース PM110

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 同じロジャース・ブランドでも、従来から定評のあるLS3/5Aとは系列が異なり、チャートウェルの工場を買収してからの新製品なので、ウーファーには例のポリプロピレン振動板が採用されていて、そのためかどこかキリッと引締った艶やかな音が聴きとれる。中域が張り出さないようよくおさえられ、エンクロージュアの小さいせいもあってか、どちらかといえば線の細い、小造りな音といえる。ただしロジャースの一般製品に共通の、よく弾み唱う響きの良さはこの製品も受け継いでいるから、聴いていてなかなか楽しめる。アンプやカートリッジは、音色の特徴をそれぞれに生かし、選り好みは少ない。ただこのサイズでは、たしかに見た目以上の音量もパワー感もあるにしても、しかしどうしても小型スピーカーという枠を出ることはできないようだ。何か良いメインスピーカー持っているという前提の上で、セカンドシステムとして楽しむという使用目的をはっきりさせることなら、ちょっと目をつけたい製品だと思う。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:7
バランス:8
質感:8
スケール感:6
ステレオエフェクト:7
耐入力・ダイナミックレンジ:5
音の魅力度:8
組合せ:普通
設置・調整:普通

アルテック Model 6041

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 この開放的な音は、なんともいえず魅力的だ。ききての心をはればれとさせる。のびのびと音がでてくる。ききてを神経質にさせるようなところがまるでない。とりわけ❶のレコードの示すひろびろとした音場感は、まことにチャーミングだ。ただ、まるで問題がないということではない。総じて音像が大きくなること、それと、それと、レコードのノイズが比較的低くでてくるのでいくぶん耳ざわりなことだ。そういう欠点はあるものの、このスピーカーできいていると、不思議なもので、そんなこまかいことはいいっこなしにしようよというような気持になる。もっとも、このスピーカーシステムのきかせる音は、たしかに開放的だし、ききてをのびのびさせはするが、決して野放図ではない。新しい時代のアルテックの音といった印象が強い。この魅力を失わず、もう少しみがきあげることは不可能だろうか。

総合採点:9

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

グルンディッヒ Professional 2500

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 最近の内外スピーカーをひととおり聴いた耳で、いきなりこれを聴くと、ちょっと聴き馴れない音で戸惑うかもしれない。古めかしいと言うと少し言いすぎだが、どこか懐かしさのこもった、素朴で暖かい音がする。しばらくこの音に耳を馴染ませて、この独特の音をもしも魅力と感じはじめるなら、これはかけがえのない製品となる。たとえばオーケストラの中でふと浮かび上るチェロのユニゾンの、チェロ特有の倍音の豊かで艶やかに漂うような響きの美しさ、むろんヴォーカルもピアノも、自然で、暖かく、何ともしっとりした味わいだ。あまり高く持ち上げず、せいぜい台は20センチ前後。背面は壁に近寄せた方がよさそう。左右にあまり広げると、ステレオの中央の音がちょっと薄れる傾向がある。たとえばロック系のパーカッションの音の力がやや弱く、そして何となくしなっとウェットに聴こえるから、その種の音楽の愛好家の評価はよくないと思う。アンプはケンウッドL01Aがこの音をうまく生かした。

総合採点:9

●9項目採点表
音域の広さ:7
バランス:9
質感:9
スケール感:8
ステレオエフェクト:7
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:9
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:やや難し

メリディアン M1

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 まとまりのいい音をきかせるスピーカーだ。JBL4343BWXなどとはあきらかに性格がちがう。JBL4343BWXのようなスピーカーは、レコードに入っている音のすべてをあきらかにしようとする。したがって、そこで、検聴=モニターも、可能になる。それはそれですばらしいことだが、このスピーカーは、本来、そういうことを目的としてはつくられていないようだ。つかわれる場所を家庭の中と限定して、もともとつくりだされたのではなかったろうか。ほどほどのスケール感、ほどほどの迫力、ほどほどのなまなましさを示す。それをむしろこのスピーカーの美点と考えるべきなのだろうが、やはり、この価格帯のスピーカーとしては、いくぶんものたりないといわなければならないのが、残念だ。個々の音のクォリティは決して低くないが、ききてをうきうきさせるとはいいがたい。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

JBL 4343BWX

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 これはすばらしい。JBL4343の旧タイプにはない魅力が、ここにはある。個々の音が充分にみがきあげられているということでは、旧タイプと同じだが、旧タイプにはなかった一種の開放感がここにはある。別のいい方をすれば、音色面で、旧タイプの音よりあかるくなっているということになるだろう。旧タイプの音に多少のつめたさを感じていた人は、このスピーカーの音の、旧タイプのそれに比べればあきらかにふっくらとした音にひかれるにちがいない。旧タイプとの一対一比較で試聴したが、その結果、旧タイプの音にいささかの暗さがあったということを認めざるをえなくなる。しかし、だからといって、旧タイプの音の魅力になっていたあの精緻な表現力が失われているというわけではない。さまざまな面から考えて、旧タイプの音より、音の魅力ということでこっちの方が一枚上だと、認めざるをえなかった。

総合採点:10

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

タンノイ Super Red Monitor

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 声のまろやかさ、ホルンのひびきののびやかさ、あるいは弦楽器のなめらかなひびきといった点で、あじわいぶかいところがある。破綻のない、まとまりのいい音をきかせるスピーカーシステムといういい方も、多分、できるにちがいない。音像が適度にふくらむようなこともなく、くっきり定位するあたりも、このスピーカーのよさのひとつとしてあげられる。ただ、重量級のサウンドというべきか、重く、しかも力にみちた音の提示ということになると、かならずしも充分とはいいかたい。声でも、❸できける強いはった声などは、硬くなる。❷でのピアノの音にも、力にみちたものであってほしいと思う。しなやかな、あるいはつややかなひびきは、本当にすばらしいし、全体としてのまとまりもわるくないが、ダイナミックな表現力という点では、どうしてもものたりなさを感じないではいられない。

総合採点:8

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(物足りない)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

ESS PS-8A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 背面にパッシヴラジエーターがついているため、壁面(硬い壁が必要)との間隔、及びエンクロージュアの高さの調整が必要だ。レベルコントロールはノーマルの指定がないが、試聴した条件ではほぼ中央でよかった。独特のトゥイーターの音が素直で質が高く、やかましさや不自然さを殆ど感じさせない。ウーファーとのつながりも以前の製品よりずっと改善されている。低音の鳴り方に、一種独特の脂の乗った粘りあるいはヴァイタリティ、加えて重量感があるので、重心の低い、つまり浮わついたところのない腰の坐りのよい音がする。パワーには相当に強いようで、かなり放り込んでもやかましくなったりきつくなったりしない。ヴォーカル、ポップス、ロック等にも好ましいことはもちろんだが、ヴァイオリンの倍音もかなり美しく弦特有の音色が自然で、十分に楽しめる。低音がややドスンという感じになりやすいので、そこをどう使いこなすかが、生かし方の鍵といえそうだ。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:7
バランス:8
質感:7
スケール感:7
ステレオエフェクト:7
耐入力・ダイナミックレンジ:8
音の魅力度:7
組合せ:普通
設置・調整:やや難し

インフィニティ Reference Standard 2.5

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ❶のレコードの、すっきりしてもたつかず、さわやかでべとつかないきこえ方は、実にすばらしかった。トランペットの音が、中央奥の方からすっとのびてきてきこえ、ききてをうきうきさせた。まさに軽快という言葉がぴったりの音のきこえ方だった。ところが、❷のレコードになると、低い方の音がしまりきれていないということだろうが、グルダによってうちならされたピアノの強い音が、あきらかになりにくい。声のかすれ、あるいはその語りかけるような表情は、申し分なくあきらかにされていた。以上のようなことから、重より軽、暗より明、硬より軟の提示にひいでているということがいえそうだ。❸のレコードでのオーケストラのひびきのひろがりはすばらしいが、フォルテによるアタックは、本来の迫力を示しきれなかった。魅力にとんだスピーカーシステムだが、もう少し力強さに反応できるとなおこのましい。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

ESS PS-8A

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ハイルドライバーというユニークな高域ユニットを使ったESSのシステムは、当初から幾多の改良がなされ、最新の製品では非常に洗練された音になった。このPS8Aは、シリーズ中の最もポピュラーな製品で、20cmウーファーとの2ウェイでこれを25cm径のドロンコーン付エンクロージュアに収めている。全体によくコントロールされたウェルバランスな音で、音色には艶やかな魅力と弾むようなしなやかさがある。といって、決して全体に強いトーンキャラクターがあるわけではなく、ごくハイエンドの癖と感じられる部分を除けば、おおむね音楽的効果としてプラスする範囲の色づきだ。ピアノの響きは美しく演奏の表現がよく生きる。一音一音がとぎれるようなことがなく、よく歌いよく和して聴こえる。ヴァイオリンは、ごく高い倍音領域に癖と感じられるキャラクターがあるが、それ故にか繊細で美しい印象ともなる。かなりのハイレベル再生でも安定で、ジャズ系ソースにも力感のある再現が可能。質的にも立派なものだった。

総合採点:9