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新藤ラボラトリー 7A

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 2段PーK帰還NF型、管球式イコライザーアンプ。入力3系統で、各入力抵抗は50kΩ、100kΩ、150kΩに設定。出力レベルコントロール付き。使用真空管は12AX7×2、6350×2、整流管6CA4×1となっている。往年の銘機マランツ#7管球式プリアンプのフォノ部をベースにしているが、出力にトランスを用いている点が特色。デール、アーレンブラッドレーといった高精度パーツを使用、現代的なアンプにリファインしている。

マイクロ EQ-M1 + PS-M1

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 本体5万円、とりあえずAC電源を使用すると8万円で、今回テストした製品の中では驚くほど割安感がある。ゲインを考えるとこれはMM用と考えるべきで、MCの使用では何らかの昇圧手段が必要だ。
 ということも含め、オプションとして電源にバッテリーが用意されていたり、接続はバランス、アンバラの両方対応できる点など、使いこなしの楽しみも多くあって、CDからオーディオに入り込んで、さらなる一歩をアナログに求めてみようかという人には、これはよい製品ではないかと思う。とくにメーカーも推奨しているように、バッテリー駆動、バランス接続としたときの、情報量の増加、S/Nの改善による透明感の向上などをまのあたりにすると、やはりAC電源、アンバラ接続には戻したくなくなる。基本的には生真面目でやや暗い性格のある響きだが、妙な個性がないだけに安心して使えるホビーツールだろう。

スタックス PS-3 + EMC-1

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 これは強烈な個性をもった製品だ。いい意味で、このソフトな響きは柔らかさを求める人にとっては貴重な存在となり得る。とにかく硬い芯というものが存在しない。まるで圧力釜で長時間煮込んで、骨まで柔らかくしたような響き。蜃気楼のような音場。音像は霞のようにたなびき、あたりの空気まで希薄になったようだ。硬質なメリハリ強調型のカートリッジも、エネルギーが吸い取られ、形骸化するように耳あたりが良くなる。
 そういう点で、たとえば音の骨格、響きの立体的構築性をたっとんだ音楽には不向きな存在かもしれない。
 あくまでも、この漂うような脆弱な繊細感をもった雰囲気たっぷりの響きを活かしたい。脂っぽい感触はなく、むしろ植物的な響きなので、長時間聴いても消化不良をおこすことはまずないだろうが、音楽的空腹感がやや残るかもしれない。

スタックス PS-3 + EMC-1

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 PS3はA級プッシュプル回路をもつ電源部の型番であり、ここにMC用(EMC1)、MM用(EMM1)、コンデンサー型カートリッジ用(ECC1)の3種のイコライザー基板を選択し、組み込んで使用する。非磁性体シャーシの中には、欧米高級機に好んで使用される西独ERO製のケミコンなど、厳選されたパーツが使われ、配線剤はLCーOFC材を採用している。ゲインは64dBと55dBの切替え化。入力インピーダンスは10、30、100Ω切替え化。

ウエスギ UTY-6

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 ウエスギアンプ中、限定生産品を意味するUTYシリーズに属する製品で、200台の製造が予定されている。
 ECC83/12AX7の計4本の真空管を用い、3段NF型イコライザーを構成しているが、一般的な3段KーK/NF型を採らず、2段PーK/NF型を発展させた設計としている。入力は3系統。パワーアンプダイレクト接続が考慮された左右独立レベルコントロールをもち、電源部は独立型としている。

ラックスマン E-06

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 ラックス新シリーズ中、アナログファンにはその中核をなすともいえる製品。伝統のCRイコライザーは1段、2段ともフラットアンプを採用し、かつ入出力アンプに独立した定電圧電源を投入している。新設計のMCトランスはPCーOCC材を巻線に採用。 MC用入力端子は、ピンターミナルのまま切替えでバランス受けも可能としている。ダイレクト出力端子の他、音質を重視した32ポイント固定抵抗型アッテネーターをL/R独立で採用している。

ウエスギ UTY-6

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 中高域のやわらかなふくらみと細身で緩やかに減衰するハイエンド、軽く控え目な低域の表現、濃厚な色彩表現と縁のないつつましい響き、などがこの製品の個性を形成している。
 アキュフェーズC280Lとは明らかにミスマッチの印象で、ぎりぎりのところで、UTY6が内にもった淡い個性が擦過され傷つけられているように思えた。これは、 U・BROS10と組み合わせて使うべきものなのだろう。とはいえ、鋭い立ち上がりを要求する響きにまったく追従しないということはなく、単に積極性に欠ける傾向があるということだろう。ある種の管球アンプが聴かせるような、長閑な響きが行き過ぎて間延びするようなところはなく、穏やかだが一応芯のある響きを聴かせてくれた。組合せに充分注意し、カートリッジを厳選することによって、このアンプがもつ傷つきやすい長所は、もっと活かされるはずだ。

ヤマハ HX-10000

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 同社創業100年を記念する10000番シリーズの製品。入力2系統。各入力にはL/R独立のヘッドアンプと専用イコライザーアンプを持つ。イコライザーは、初段がデュアルFET差動入力・カスコードブートストラップ回路、終段にはパワーMOSーFETを用いたコンプリメンタリー・プッシュプル回路構成としている。MCハイ/およびMMに、独立して2種、計6ポジションのカートリッジロードセレクターを装備している。

ヤマハ HX-10000

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 端正に引き締まった、あいまいさのない響きは涼しげな空気感、透明感があっていい。じめじめしたウェットな暗さのない、明るい音場には、健康的でクリーンな雰囲気がある。演奏家のコンセントレーションがさらに高まって求心力もついてくる。時に、やや硬質な輝きがつくこともあるが、たとえばMC70のセラミックボディのくせをそれとなく聴かせてしまうあたり、情報処理能力の高さを物語るものだろう。
 パルシヴな響きに付随する余韻の爆風のようなエネルギー感もかなりのもの。しかも、その飛散する響きの方向性を正確に再現し、かつ強い音が重なっても音像の崩れや音場の揺れがないのは立派。強力な電源、不要共振を排除した大袈裟ともいえる凝ったコンストラクションが功を奏しているのだろう。しかし、このチカンカラー、ゴールド、木目の配色や大仰なデザインは個人的にはやや違和感を覚える。

ラックスマン E-06

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 音が出た瞬間、おやっと思わず身をのりだし、音楽を聴く心のテンションが高くなってくる、あるいは音楽そのものに、うっかり聴き惚れてしまう──、そんな響きが、ここにはたしかにあった。ディティール再現の高い精度が、楽器のアコースティックな響きを明確かつ自然に鳴らしわける。特定帯域につっぱりやたるみがなく、つながりが自然。倍音成分が素直な余韻を引きながら、音場の隅々まで自然にひろがる。音楽の立体構築がようやくみえはじめた。パルシヴな響きは凝縮されたエネルギー感をもち、透明な空間に飛散する様がスリリングだ。響きの行間に潜む闇の深さ、沈黙の意味を語りうる数少ない製品の一つといえる。ぎらつきがちな響きさえ、ややくすんだ上品な陰影感でまぶしさを巧みに抑えてくれる良さがあり、厳格なアナログディスク派のみならず、アナログ回帰を考慮中のあなた、これは必聴です。

オーディオクラフト PE-5000

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 独特の外観をもつ同社製ラインアンプPL1000とシリーズをなす製品で、それとの併用が推奨されている。シンプルな抵抗負荷2段差動NF型イコライザーで、初段はデュアルFET構成カスコード接続としている。
ゲイン36dBという数字からもわかるように、入力はMM用端子1系統のみ。一切のセレクター類およびレベルコントロールを省き、回路を単純化することによって、音楽信号の劣化を防いでいる。

ラスク R-5430AL

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「アナログプレーヤー徹底試聴 アナログ再生を楽しむプレーヤー4機種を自在に使いこなす」より

 サーフェイスノイズは、粒子が細かく、軽く、さらっとしたタッチとなる。音場の空気はあたかも清浄器を通したごとく、あるいは紫外線殺菌燈を照射したごとく透明感が増し、クリーンで静かな感じだ……つまり、やや人工的なニュアンスを伴う。高域もすっきりして、響きの表面もよく磨かれ、毳立ちも少ない。が、艶やかで質感ゆたかな、あるいは、色彩感豊かな、といった表現は、なぜか思い浮かんでこない。どちらかといえば、やや半艶消的な印象があった。
 総じて醒めた感じの演奏となるのは、アンプの物理特性が一桁良くなったような、高いS/N感によるものだろうか。各パートの動きは、おそろしくよく見え、ピークでも音がからまることもない。バスドラムのアタックの迫力も充分。シンバルのディスパージョンも、その方向が見えるほどだ。
 しかし、しいて言えば、向かってくる響きの勢いよりは、むしろマイナスのエネルギー感とでもいうべきか、スーッとひいていく感じが際立つ。そのせいか、制動感、フラット感はある反面、スピード感、ドライブ感がやや弱まる印象を受けた。全体の機械的強度はヤマハに軍配があがる。個人的には、この漂白されたような清潔な響きは好きだが、いかにして響きに、生命感を注ぎこむかが、使いこなしのひとつのポイントになりそうだ。いっそのこと、スタティックで、ストイックな、ひっそりとした響きを強調して、独特の世界を演出してみたくもなる。

ヤマハ GTR-1B

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「アナログプレーヤー徹底試聴 アナログ再生を楽しむプレーヤー4機種を自在に使いこなす」より

 ヤマハのGTR1Bは、オーディオファイルのスタンダードのラックとして、その使用実績は相当に高いはずだ。しかし、これとて「完璧」ではありえない。盲信しては前進はない。ステレオサウンドの試聴室に常備されたGTR1Bは原則として、試聴時、ラック内には何も収納せず、天板上に試聴機を置くのみとしている。なぜ?
 それは、ラックを含んだ全体の振動モードをできるだけ単純化しようという考えからである。現実の使用では物を入れる。そのとき、いかなる工夫をすべきか、どうしたら効果的な共振の整理ができるか(あるいは響きのコントロールの一手段として「振動」をどう取り込んでしまうか)、そういった、ケースバイケースの思考のヒントを導くためにも、とりあえずラック1台に対して試聴機は1つ、つまり1対1の関係を崩さないことを原則として守る。
 ある程度音量をあげていくと、音圧の影響を受けやすいボックス状の、このラックは見た目以上に共振していることが、手を触れてみるとよくわかる。天板の裏や側板は、音楽の複雑な空気の振動を受けて、あるいは床を伝わってくる振動によってあおられ、驚くほど共振している。こうした分厚く堅い、つまりQ(共振峰)の高い材質は、相対的に「カンカン」したピッチの高い共鳴、共振を起こしやすい。事実、このラックは、機器にそういった付帯音をのせる傾向がある(したがって、本誌の通常の試聴時には、その対策を独自に施している)。

新藤ラボラトリー 7A

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 ゴールドパネルに深みのあるグリーンのケース、それは写真でみるよりずっと美しく、不思議な調和さえみせていた。
 音楽が鳴り始めるや、あるかなきかの記憶を彩るほんのりと甘酸っぱい響きがあたりを満たし、あわてた。
 羊水に浮遊するような非現実的な暖かさと柔らかさ、耳は測定器として作動することを記憶喪失のように忘れはて、ただ流れる音楽に身をゆだねることに誘い込む。現代を生きるものが忘れた何かを呼び戻してくれる響き──。
 ハイフィデリティを第一義とする冷静な視線をもった、先端をいくものたちが、内に隠しもつ空虚。ここには、その虚をつく大切なものがひそんでいた。過去に失われたものたちの残像、現実から離れた速度感をもった時間の流れのなかで、おだやかにみつめようとする作者の柔らかな視線がここにはあった。

A&D DA-P9500, DA-A9500

井上卓也

’89NEWコンポーネント(ステレオサウンド別冊・1989年1月発行)
「’89注目新製品徹底解剖 Big Audio Compo」より

 デジタルプログラムソースが主流になった時代背景を反映して、次第にプリメインアンプの分野でも、D/Aコンバーターを内蔵したモデルが確実な歩みで増加をしているが、より一段と趣味性の色濃いセパレート型アンプともなると、D/Aコンバーター内蔵型コントロールアンプとして、現在市販モデルとして存在するのは、早くからコントロールアンプのデジタル化を手がけた、ヤマハCX2000、1モデルのみが現状である。
 A&Dブランドにとり、初めて本格的なセパレート型アンプのジャンルに挑戦するモデルとして登場したモデルが、デジタルコントローラー、DA−P9500とデジタルパワーアンプDA−A9500の2機種で構成される新構想に基づく新デジタル・アンプシステムである。
 従来までのセパレート型アンプの概念から考えれば、デジタルコントロールアンプとデジタルパワーアンプのペアと受け取られやすいが、デジタルコントローラーと呼ばれるようにDA−P9500には増幅系がなく、A/Dと録音系用のD/Aコンバーターとデジタルグラフィックイコライザーを備え、パワーアンプをリモートコントロールする大型リモートコントローラーと考えてよいものだ。
 システムの基本構成はデジタル系を主流とし、カセットデッキに代表されるアナログ系プログラムソースが混在するプログラムソース多様化の現状に、デジタル機器の特徴を最大限に活かしたシステムプランは何かを模索して整理した結果、通常のD/Aコンバーター部を、コントロールアンプ側でなくパワーアンプ側にビルトインすることを決定したことが、新システムのユニークなところだ。
 従来からも、電力を扱うパワーアンプとスピーカー間は、可能な限り短いスピーカーケーブルで結ぶことが理想的であり、業務用モニタースピーカーは現在ではパワーアンプ内蔵型がむしろ標準的とさえなっているようだが、それも業務用の600Ωバランスラインの特徴を利用して、初めて可能となったシステム系なのである。
 デジタル系プログラムソースを前提条件とした場合、業務用600Ωバランスラインを、同軸型もしくは光ケーブルに置き換えたシステムを考えれば、デジタル伝送系ならではの延長をしても音質劣化が理論的にない特徴を一括かして、スピーカー近くのパワーアンプに送り、D/A変換後の信号でパワーアンプをドライブし、その出力を近接したスピーカーに加えることで容易に理想に近づけることが可能、ということになる。
 パワーアンプをスピーカーに近く置き、聴取位置から離すことによる副次的なメリットは、電源トランスのウナリや振動による聴感上でのSN比の劣化が少なく、発熱量が大きい熱源としてのパワーアンプが隔離可能になること。また、スピーカーコードが短いことは、超強力な高周波源であるTVやFM電波に対するアンテナとしての働きが抑えられ、バズ妨害に代表される高周波の干渉を少なくできる利点を併せ持つことにもなる。
 DA−P9500は、外観的には一般のコントロールアンプに表示部を付けたという印象を受けるが、コントロールアンプ的な機能は、ビデオ系、デジタル系、アナログ系それぞれの入力を切り替えるスイッチ機能と3バンドデジタルパラメトリックイコライザーにあり、オーディオ系入力は増幅部を持たないため、そのままスルーの状態でパワーアンプのアナログ入力に送られる。
 2種のコンバーター内蔵の目的は、カセットデッキ、FMチューナー、VCRなどのアナログ系入力をA/D変換してパワーアンプにデジタル伝送を行なうためと、デジタル系のCDやDAT、衛星放送などの信号をD/A変換して、カセットデッキなどに録音するためにある。
 外観上ボリユウムと思われる大型ツマミは、実際には、パワーアンプ部にあるパラレル型ディスクリート構成のボリュウムをデジタルコントロールするためのツマミである。このコントロール用信号は、A&D独自のフォーマットによるAADOT型で、EIAJのデジタルI/Oにも対応し、128×128種類の利用が可能である。
 DA−A9500は、18ビット・リニアゼロクロスD/Aコンバーターを採用。原理的にゼロクロス歪み発生がなく、4D/Aコンバーター構成のL/R、±独立プッシュプル構成で、アナログフィルターのON/OFFが可能である。
 パワー段は、スピーカー駆動時の電流リニアリティに着目した初めてのリニアカレントドライブ回路を採用。電流と電圧フィードバックの巧みな組合せで、パワー段の電源変動を受けにくい利点があり、結果的に電源を10倍強化したことと同等のメリットがあるとのことだ。
 構造面では、電源トランスを筐体から分離独立し専用ペデスタルで支える分離トランス方式の採用が最大の特徴。
 機能面は、単体使用時に入力切替や音量調整をする専用リモコンを標準装備。
 単体使用では素直で力強い駆動能力、音場感情報を豊かに出すパワーアンプは、かなり高水準の完成度を聴かせる。コントローラーを加え、試みにDA、AD、DAと3度変換した音も聴いたが、これがアナログ的な魅力で驚かされた。

ダイヤトーン DS-V9000

井上卓也

’89NEWコンポーネント(ステレオサウンド別冊・1989年1月発行)
「’89注目新製品徹底解剖 Big Audio Compo」より

 ダイヤトーンのスピーカーシステムには、数字構成のモデルナンバーの末尾にアルファベットを付けた型番を採用することはあったが、今回の新大型システムDS−V9000のように、数字の前にアルファベットを置く型番は、大変に異例ともいうべき印象で受け止められるようである。
 高級機のジャンルで、独自のミッドバス構成と名付けられた4ウェイ方式のシステムを開発する、いわば定石めいた手法を採用することが他に類例のないダイヤトーンスピーカーシステムの特徴であり、4個のユニットで構成する比較的にコンベンショナルなシステムアップの実力を備えたメーカーは、世界的にもさほど多いものではない。
 基本的に40cmウーファーをベースにした4ウェイ方式のフロアー型システムという点では、数年前に開発され、現時点でも日本を代表するフロアー型として活躍をしているDS5000系の流れを受け継いでいるシステムである。
 外観上のイメージは、基本構想が同一であるだけに非常に類似したイメージを受けるが、比較をすれば、中低域ユニットの位置がかなり下側に移動していることと、エンクロージュア両サイドの部分にわずかにカーブがつき、バッフル面より前方にセリ出しているデザインに気がつくであろう。
 音響理論とデザインの一致が、ダイヤトーンスピーカーの基盤であるが、このところのラウンドバッフル流行の原点である2S305の理論に基づいた流麗なラウンドバッフルと、V9000でのサイドブロックに見られる考え方の差には、大変に興味深いものがあるようだ。
 バッフルボード上で、もっとも大きく目立ち、かつ魅力的に思われるのは超大型とも表現できる中高域ユニットだ。
 従来からも独自のボイスコイル巻枠部と振動板を一体化したDUD構造を開発した時点以来、振動板材料にはこれも独自の開発によるボロナイズドチタンが、ボロンの略称でダイヤトーンDUDユニットを推進してきたが、今回の新製品にはそれ以来の画期的な新材料ともいうべきB4C(炭化硼素)が振動板材料として、中高域と高域ユニットに採用されることになった。
 B4Cを実用化するに当り、摂氏2450度という高融点であることがドーム状に成型することを困難にしていたが、プラズマ溶射法による製造条件の確立と熱処理の方法が完成され、実用化された。これはチタンの5倍、ボロン化チタンの2・2倍の物性値を示し、実測値でも1万1000m/secを越える値が得られているが、特に注目したいことは、金属系振動板でありながらほぼ1桁違う内部損失を備えていることで、固有音が極めて少なく、振動減衰が早いことにより、広帯域化と素直なレスポンスが得られるメリットは絶大なものがある。
 中高域と高域のB4Cを支える中低域と低域は、ハニカムコアの両側をアラミッドスキンでサンドイッチ構造とした従来のコーン構造の前面に、カーボン繊維のアラミッド繊維を混繊したイントラプライスキンを加えた、表スキンが2重構造のイントラプライ・ハイブリッド・カーブド・ハニカム振動板を採用したことに特徴がある。
 全ユニットは、DS9Zで採用された球状黒鉛鋳鉄採用の、高剛性で振動減衰特性に優れたフェライト系磁石によるハイピュアリティ防磁構造と、実績のあるDM及びDMM方式を採用している。
 低域と中低域ユニットでは、新開発の新磁気回路方式(ADMC)採用が最大のポイントだ。ボイスコイルで発生する交流磁束の影響が磁気回路の動作を不安定にする問題を、有限要素法により直流磁界解析および交流磁界解析した結果がADMCであり、ユニットの音圧歪みは2次、3次ともに0・1%を達成、ボイスコイルの駆動力が常にボイスコイルの中心に位置する理想の動作状態が保たれる成果は大きい。
 ネットワークは、コイルにコンピューターシミュレーションにより設計をした低歪み、低抵抗型を採用。コア材料は珪素鋼板をラミネート構造とし、エポキシ樹脂でコーティングしたコア鳴きの少ない圧着鉄芯、コイルは1・4mmφのOFC線材採用などの他、素子間の配線は金メッキ処理OFCスリーブによる圧着型という伝統的な手法が見受けられる。
 エンクロージュアはパイプダクトをバッフル面に付けたバスレフ型。バッフルは堅く響きが良いシベリア産カラ松合板の直交張り合せ、他の部分はカナダ産針葉樹材2プライ・パーティクル板で、両面はスワンプアッシュ材突板サンドイッチ張り構造により、高い剛性と耐候性を得ている。バッフル表面には低音用上部にソリッド・スワンプアッシュ材を溝に埋め込んだ表面波に対する隔壁が設けてあり、低域と中低域以上のユニット用の相互干渉を避ける設計だ。また、中低域用内部キャビティは、新しく二つのラウンドコーナーをもつ新設計によるもので、低域に対しても定在波の発生が少なく、高剛性化をも達成している。
 ユニットの不要振動の発生を避ける取付けビス部のゴムキャップ、ハイブリッド構造の中高域ユニット保護ネットなど、徹底した高SN比設計は同社のポリシーの表われでもあるようだ。
 百聞は一聴にしかず、が、このシステムの音であろう。異次元の音でもある。

デンオン DCD-3500G

井上卓也

’89NEWコンポーネント(ステレオサウンド別冊・1989年1月発行)
「’89注目新製品徹底解剖 Big Audio Compo」より

 DCD3500は、従来のDCD3300を受け継ぎ、今年の6月にデンオンから発売された同社のトップモデルCDプレーヤーである。
 このモデルは、従来のDCD3300で外装がブラック仕上げのモデルがまず発売され、続いて、木製ボンネットとシャンペンゴールド系のパネルフェイスを備えたゴールドタイプが加わり、2モデル構成とした特徴を踏襲し、当初からDCD3500GとDCD3500の、ゴールドタイプとブラックタイプが用意されている。
 外観から受ける印象は、パネルフェイスを簡潔に見せる、いわゆる高級機共通のデザイン傾向が採用され、パネル幅全面にわたり、シーリングポケットが設けられ、10キーをはじめ、ヘッドフォンジャックと音量調節、2系統のデジタル出力の選択とOFFポジションをもつ切替スイッチ、ディスプレイ切替などが内部に収められている。
 このディスプレイ切替は、蛍光表示管のON/OFFに伴う微小レベルのノイズ発生や、ドライブ回路からの干渉などが音質に影響を与えるのを避けるためのもので、ディスプレイを消すタイプがパイオニアのモデルに採用されて以来、中高級のジャンルでは、ほぼ標準的な装備になりかけているフィーチェアだ。
 本機に採用されたディスプレイスイッチは、①標準点灯、②ミュージックカレンダー部分の消灯、③全消灯、の3段切替型であるが、全消灯時でも選曲もしくは頭出しなどの操作をすると、一瞬の間だけ曲番のみを表示する。
 PCM録音で世界初のデジタルレコーディングによるディスクを発売した伝統を誇る、デンオンのデジタル業務用機器の開発の成果であるSLC(スーパーリニアコンバーターは、変換誤差補正回路による補正信号を加えてゼロクロス歪を排除するデンオン独自の技術であり、デンオンCDプレーヤーの大きな特徴でもあるわけだ。
 今回採用の新SLCは、米バーブラウン社製の18ビット用IC(PCM64P)に、ディスクリート構成の2ビット分を加え、リアル20ビット化したタイプで、量子化軸方向の分解能で16ビットタイプと比較して16倍の分解能(滑らかと考えてもよい)を得ている。なお、新SLCでは、ゼロクロス歪対策のひとつとして、ラダータイプと呼ばれる標準的な抵抗を数多く使う方式で発生する抵抗誤差によるゼロクロス歪を排除するため、影響の大きい上位4ビットまでを補正していることも特徴だ。
 一方、演算を受け持つデジタルフィルターは、現在の標準型8fSタイプである。
 回路も大切だが、それらを収納する内部構造、配置も、機械的な共振系と考えれば、共振のQが大きいだけに、音質と直接関係がある、いわばCDプレーヤーの勘所でもある。
 基本構想は、正統的なD/A分離左右独立構造であるが、現実にどのように処理されているかが結果を左右する。
 銅メッキ鉄板を採用したシャーシ内部は、左右方向にシールド板で分離され、左側前部にプレーヤー部分、後部に2個のデジタル用とアナログ用の電源トランスが並ぶ。
 シャーシ右側は、前後に大きく2分割された基板配置が目立つ。その後側が左右独立配置のD/Aコンバーターブロックであり、アース回路に、インピーダンスを下げ、高周波の干渉を防ぐ業務用機器用といわれるバスバーラインを採用している。
 プレーヤー部は、剛性が高く、振動減衰付性に優れたBMC製の大型メカシャーシに取り付けてあり、さらにBMC製メカベースは、低反発ゴムとスプリングを組み合わせた支持機構により、金属製メカプレートから吊り下げられている。
 金属製メカプレートは、大型のブロックともいえるBMC製メカシャーシに取り付けてあり、異種材料を組み合せた防振構造体とした設計である。
 構造面でのDCD3500Gの特徴は、上部の天板部分と左右がリアルウッドの光沢仕上げ、パネルフェイスがデンオンでプラチナゴールドと呼ぶ仕上げになっていることだ。天板部分は、結果としてリアルウッドと鋼板の2重構造、底板部分は鋼板2枚貼合せのバイブレスプレートと、厚さ1・6mmの鋼板、銅メッキシャーシの4重構造を採用。脚部は、直径65mm、4個で重量1800gの黄銅削出しインシュレーターを採用。
 一方、DCD3500は、天板部が4mm厚アルミ押出し材、側面が木製サイドボード、鋼板、シャーシの3重構造、底板部は共通の4重構造、脚部は焼結合金をアルミでカバーしたタイプだ。
 なお、出力系は固定、ヘッドフォン出力調整を兼ねた電動ボリユウム採用の可変、バランスの3系統アナログ、光1/同軸2系統のデジタル出力を備える。
 滑らかで、バランスが良く、幅広いプログラムソースに対応する、デンオンならではの安定感のある穏やかな音は、前作ゆずりの魅力である。しかし、中域の密度感の向上で、緻密さの表現や力強さが加わり、デンオンのリファレンス機として充分な格調の高さが出てきたことが、3500シリーズの新しい魅力である。Gタイプは、力を表面に出さない一種の渋さが、高級機ならではの風格だ。

サンスイ SP-100i

井上卓也

ステレオサウンド 89号(1988年12月発行)
特集・「ジャンル別価格帯別 ザ・ベストバイ・コンポーネント436選」より

重量級を思わせる外観から予想できるように18.5kgのヘビーウェイトは、その内容の凄さを物語る以外の何者でもない。ややキャラクターも強いが、腕に自信のある向きはぜひ挑戦してみたい硬派のシステムだ。
★

オーディオテクニカ AT-SP500

菅野沖彦

ステレオサウンド 89号(1988年12月発行)
特集・「ジャンル別価格帯別 ザ・ベストバイ・コンポーネント436選」より

カートリッジメーカーの作ったスピーカーだが、期待以上の出来栄えである。小型軽量級の限界はやむを得ないが、よくまとまっている。気軽に使えるシステムでありながら、音楽のバランスや造形をきちんと伝える。
★★

ヤマハ AST-1

井上卓也

ステレオサウンド 89号(1988年12月発行)
特集・「ジャンル別価格帯別 ザ・ベストバイ・コンポーネント436選」より

バスレフ型などに利用されているヘルムホルツの共鳴箱を効率高く使うために考え出された画期的な新方式に基づく第一弾製品。まさに驚異的に量感タップリの低音が簡単に手に入ることになったが、使いこなしは大変。
★★

ヤマハ AST-1

菅野沖彦

ステレオサウンド 89号(1988年12月発行)
特集・「ジャンル別価格帯別 ザ・ベストバイ・コンポーネント436選」より

このサイズで驚異的にのびる低音の素晴らしさ、アンプと一緒で動作するユニークなシステムで、今後の発展に大いに期待が持てる。スピーカーよりアンプに特徴があるほどで、採点はシステムとしての評価である。
★★★

ヤマハ NS-05(G)

菅野沖彦

ステレオサウンド 89号(1988年12月発行)
特集・「ジャンル別価格帯別 ザ・ベストバイ・コンポーネント436選」より

中域に印象が強く、よく鳴るスピーカーだが、専用台はいかにも低すぎて、部屋と場所の影響を受けやすいのが難だろう。気軽に使うシステムらしい肌ざわりのよい音の質感が好ましく、中途半端に気張ってないよさがある。
★

ソニー SS-G333ES

菅野沖彦

ステレオサウンド 89号(1988年12月発行)
特集・「ジャンル別価格帯別 ザ・ベストバイ・コンポーネント436選」より

高分子繊維によるウーファーとスコーカーながら、あまり無機的な音を感じない。トゥイーターはファインセラミックでやや硬質だが、3ウェイのバランスはよくとれている。しかし、柔軟でしなやかとはいかない。
★★

ダイヤトーン DS-500

井上卓也

ステレオサウンド 89号(1988年12月発行)
特集・「ジャンル別価格帯別 ザ・ベストバイ・コンポーネント436選」より

点音源に近い小型2ウェイならではの優れた音場感の拡がり、音像定位のシャープさを活かすための新素材が、低域と高域ともに採用された液晶ポリマーだ。同じ音色、同じ物理的特性を基盤に完成度の高さは一聴に値する。
★★★

パイオニア S-55 TwinSD

菅野沖彦

ステレオサウンド 89号(1988年12月発行)
特集・「ジャンル別価格帯別 ザ・ベストバイ・コンポーネント436選」より

S77の弟分で、基本構成は同じく、トゥイーターを2つのウーファーで挟んだトールボーイ。このシリーズの姿態は、家庭用のシステムとして美しく部屋に適応し、かつ音の点からもブックシェルフのような難しさがない。
★★