デンオン DCD-3500G

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 DCD3500GとDCD3500の2モデルのCDプレーヤーは、従来のデンオンのトップモデルであるDCD3300シリーズを受け継ぐモデルである。
 外観上からは、DCD3500Gがゴールドタイプ、DCD3500がブラックタイプとして区別されるが、筐体のトップ部分の仕上げと脚部の2点が異なっている。
 Gタイプは、サイド部分と一体化したリアルウッドと内側の鋼板の2重構成、脚部は直径65mm、重量450gの黄銅削り出し製である。ブラックタイプは、4mm厚アルミ押し出し材のトップ部と、焼結合金をアルミで覆った2重構造の脚部となっており、当然のことながら、筐体構造の違いによる音質の差もあることになる。
 筐体構造をはじめとするメカニズムの設計は、無振動構造(バイブレス構造)が最大のテーマである。
 筐体関係は、サイド部分にサイドウッド、鋼板、シャーシの3重構造、底板部分は2枚の鋼板を張り合わせたバイブレスプレート、肉厚鋼板、銅メッキシャーシなどの4重ている。
 光ピックアップ部のメカニズムベースは、高剛性で、しかも内部損失が大きく振動吸収効果の高いBMC(バルク・モールド・コンパウンド)で作られ、鋼板のメカニズムベースプレートに、低反発粘弾性ゴムとコイルスプリングを組み合わせたサスペンション機構により吊りさげられ、フローティングマウント構造としている。さらにピックアップ部は、大型BMC製メカニズムシャーシに上部から組み込まれ、金属とBMCを2段に使い、振動遮断効果を追求したダブルBMCベースは、3500シリーズのみの最大の特徴である。
 筐体内部は、振動発生源であるメカニズム部分と電源トランスを左側に、振動の影響を受け音質が変化する回路系を右側に2分割する、2ボックス構造である。またデジタル回路が空間に放射する電波性雑音や磁気歪対策として、シャーシはすべて銅メッキ処理がされている。
 回路系は、アナログ・デジタル完全独立分離設計の基本で、2トランス構成による電源部の独立分離をはじめ、回路基板そのものも徹底して分離させている。アナログ部では業務用機器に多く採用されるバスパーラインを使い、インピーダンスを下げ、高周波の飛び込みを防止している。
 デジタルフィルターは、20ビット8倍オーバーサンプリング型で、量子化で標準16ビットの16倍、時間軸で44・1kHzの8倍と、小刻みなデジタル信号をD/Aコンバーターに送り出す。
 リアル20ビット・スーパーリニアコンバーター部は、業務用デジタル録音機開発での成果であるD/A変換器に、変換誤差補正回路による補正信号を加えてゼロクロス歪を排除する方式を採用したものである。本機では、デンオン独自の変換誤差補正を定評あるバーブラウン社製D/Aコンバーターに加えて使っている。また、高域の鮮明さと関係がある左右チャンネル間の時間誤差を解消するため、左右2組のコンバーターが採用されている。
 機能面では、時間指定と2点繰り返し演奏を可能とした新タイムサーチ機能、標準点灯、ミュージックカレンダーの消灯、全表示消灯のディスプレイの3段切り替え、電源を切っても約2ヵ月間、指定の曲からタイマープレイができるメモリーバックアップ機能などがある。なお、出力部は、デジタル3系統、アナログが、固定、可変の2系統に、3300シリーズの可変型から固定型となった600?バランス出力を備えている。
 試聴機は十分に予熱をしておき、ディスクを入れ音を出し、ウォームアップ時の音の変化を調べる。
 演奏開始時には、音の輪郭がクッキリとした、やや硬調の鋭角的な音を聴かせるが、2分間ほどで音に滑らかさが加わり、情報量も充分に豊かでありながら、音の芯がしっかりしてくる点に注目したい。
 音場感は、基本的に情報量が多いタイプだけに、奥行き方向のパースペクティブな再現性でも、オーソドックスな前後感を聴かせ、音像の立ち方、定位感も見事だ。
 プログラムソースに対する対応はスムースなタイプで、アナログ録音のCDではテープヒスなどのバックグラウンドノイズをサラッと聴かせるが、録音年代の新旧にあまり過敏にならないのが好ましい。
 音質、音場感ともに、従来のデンオンらしさの枠を超えた、本格派のリファレンス機としても使える実力は注目すべき点だ。
 試聴機では、フロントパネルの一番の切断面にシャープなエッジが残っていたことと、クランパーの装着音が少し気になった。

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