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オーディオクラフト PE-5000

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 ゲイン36dBと、MCダイレクトはやはり厳しく、ウエスギU・BROS5L (ローインピーダンス用)を用いてステップアップした。このトランスをもつ音色や繊細感をきちっと表現しつつ、オルトフォンMC70の個性も出してくるあたり、入力系に対する反応にも鈍さがないと聴けた。
 色彩変化のグラデーションに偏りや過不足も少なく、陰影感も自然で、眩しさや曇りもない。一度に多くの音響要素が重なりあう瞬間での分離はほどほどで、強い音がのってくると音場感の揺れがまだ残る点もやや気になる。しかし、音場の広がりは下位機種に比し、さらに拡大され、前へ向かってくる響きのエネルギー感、奥へ奥へと広がっていく響きや余韻の出方にも、らしさが感じられた。スピード感を要求する音楽への対応も、カートリッジの能力を踏まえた上で充分なものと思う。外来ノイズ対策に充分留意して使いたい。

新藤ラボラトリー 7A

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 2段PーK帰還NF型、管球式イコライザーアンプ。入力3系統で、各入力抵抗は50kΩ、100kΩ、150kΩに設定。出力レベルコントロール付き。使用真空管は12AX7×2、6350×2、整流管6CA4×1となっている。往年の銘機マランツ#7管球式プリアンプのフォノ部をベースにしているが、出力にトランスを用いている点が特色。デール、アーレンブラッドレーといった高精度パーツを使用、現代的なアンプにリファインしている。

マイクロ EQ-M1 + PS-M1

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 本体5万円、とりあえずAC電源を使用すると8万円で、今回テストした製品の中では驚くほど割安感がある。ゲインを考えるとこれはMM用と考えるべきで、MCの使用では何らかの昇圧手段が必要だ。
 ということも含め、オプションとして電源にバッテリーが用意されていたり、接続はバランス、アンバラの両方対応できる点など、使いこなしの楽しみも多くあって、CDからオーディオに入り込んで、さらなる一歩をアナログに求めてみようかという人には、これはよい製品ではないかと思う。とくにメーカーも推奨しているように、バッテリー駆動、バランス接続としたときの、情報量の増加、S/Nの改善による透明感の向上などをまのあたりにすると、やはりAC電源、アンバラ接続には戻したくなくなる。基本的には生真面目でやや暗い性格のある響きだが、妙な個性がないだけに安心して使えるホビーツールだろう。

スタックス PS-3 + EMC-1

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 これは強烈な個性をもった製品だ。いい意味で、このソフトな響きは柔らかさを求める人にとっては貴重な存在となり得る。とにかく硬い芯というものが存在しない。まるで圧力釜で長時間煮込んで、骨まで柔らかくしたような響き。蜃気楼のような音場。音像は霞のようにたなびき、あたりの空気まで希薄になったようだ。硬質なメリハリ強調型のカートリッジも、エネルギーが吸い取られ、形骸化するように耳あたりが良くなる。
 そういう点で、たとえば音の骨格、響きの立体的構築性をたっとんだ音楽には不向きな存在かもしれない。
 あくまでも、この漂うような脆弱な繊細感をもった雰囲気たっぷりの響きを活かしたい。脂っぽい感触はなく、むしろ植物的な響きなので、長時間聴いても消化不良をおこすことはまずないだろうが、音楽的空腹感がやや残るかもしれない。

スタックス PS-3 + EMC-1

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 PS3はA級プッシュプル回路をもつ電源部の型番であり、ここにMC用(EMC1)、MM用(EMM1)、コンデンサー型カートリッジ用(ECC1)の3種のイコライザー基板を選択し、組み込んで使用する。非磁性体シャーシの中には、欧米高級機に好んで使用される西独ERO製のケミコンなど、厳選されたパーツが使われ、配線剤はLCーOFC材を採用している。ゲインは64dBと55dBの切替え化。入力インピーダンスは10、30、100Ω切替え化。

ウエスギ UTY-6

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 ウエスギアンプ中、限定生産品を意味するUTYシリーズに属する製品で、200台の製造が予定されている。
 ECC83/12AX7の計4本の真空管を用い、3段NF型イコライザーを構成しているが、一般的な3段KーK/NF型を採らず、2段PーK/NF型を発展させた設計としている。入力は3系統。パワーアンプダイレクト接続が考慮された左右独立レベルコントロールをもち、電源部は独立型としている。

ラックスマン E-06

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 ラックス新シリーズ中、アナログファンにはその中核をなすともいえる製品。伝統のCRイコライザーは1段、2段ともフラットアンプを採用し、かつ入出力アンプに独立した定電圧電源を投入している。新設計のMCトランスはPCーOCC材を巻線に採用。 MC用入力端子は、ピンターミナルのまま切替えでバランス受けも可能としている。ダイレクト出力端子の他、音質を重視した32ポイント固定抵抗型アッテネーターをL/R独立で採用している。

ウエスギ UTY-6

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 中高域のやわらかなふくらみと細身で緩やかに減衰するハイエンド、軽く控え目な低域の表現、濃厚な色彩表現と縁のないつつましい響き、などがこの製品の個性を形成している。
 アキュフェーズC280Lとは明らかにミスマッチの印象で、ぎりぎりのところで、UTY6が内にもった淡い個性が擦過され傷つけられているように思えた。これは、 U・BROS10と組み合わせて使うべきものなのだろう。とはいえ、鋭い立ち上がりを要求する響きにまったく追従しないということはなく、単に積極性に欠ける傾向があるということだろう。ある種の管球アンプが聴かせるような、長閑な響きが行き過ぎて間延びするようなところはなく、穏やかだが一応芯のある響きを聴かせてくれた。組合せに充分注意し、カートリッジを厳選することによって、このアンプがもつ傷つきやすい長所は、もっと活かされるはずだ。

ヤマハ HX-10000

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 同社創業100年を記念する10000番シリーズの製品。入力2系統。各入力にはL/R独立のヘッドアンプと専用イコライザーアンプを持つ。イコライザーは、初段がデュアルFET差動入力・カスコードブートストラップ回路、終段にはパワーMOSーFETを用いたコンプリメンタリー・プッシュプル回路構成としている。MCハイ/およびMMに、独立して2種、計6ポジションのカートリッジロードセレクターを装備している。

ヤマハ HX-10000

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 端正に引き締まった、あいまいさのない響きは涼しげな空気感、透明感があっていい。じめじめしたウェットな暗さのない、明るい音場には、健康的でクリーンな雰囲気がある。演奏家のコンセントレーションがさらに高まって求心力もついてくる。時に、やや硬質な輝きがつくこともあるが、たとえばMC70のセラミックボディのくせをそれとなく聴かせてしまうあたり、情報処理能力の高さを物語るものだろう。
 パルシヴな響きに付随する余韻の爆風のようなエネルギー感もかなりのもの。しかも、その飛散する響きの方向性を正確に再現し、かつ強い音が重なっても音像の崩れや音場の揺れがないのは立派。強力な電源、不要共振を排除した大袈裟ともいえる凝ったコンストラクションが功を奏しているのだろう。しかし、このチカンカラー、ゴールド、木目の配色や大仰なデザインは個人的にはやや違和感を覚える。

ラックスマン E-06

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 音が出た瞬間、おやっと思わず身をのりだし、音楽を聴く心のテンションが高くなってくる、あるいは音楽そのものに、うっかり聴き惚れてしまう──、そんな響きが、ここにはたしかにあった。ディティール再現の高い精度が、楽器のアコースティックな響きを明確かつ自然に鳴らしわける。特定帯域につっぱりやたるみがなく、つながりが自然。倍音成分が素直な余韻を引きながら、音場の隅々まで自然にひろがる。音楽の立体構築がようやくみえはじめた。パルシヴな響きは凝縮されたエネルギー感をもち、透明な空間に飛散する様がスリリングだ。響きの行間に潜む闇の深さ、沈黙の意味を語りうる数少ない製品の一つといえる。ぎらつきがちな響きさえ、ややくすんだ上品な陰影感でまぶしさを巧みに抑えてくれる良さがあり、厳格なアナログディスク派のみならず、アナログ回帰を考慮中のあなた、これは必聴です。

オーディオクラフト PE-5000

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 独特の外観をもつ同社製ラインアンプPL1000とシリーズをなす製品で、それとの併用が推奨されている。シンプルな抵抗負荷2段差動NF型イコライザーで、初段はデュアルFET構成カスコード接続としている。
ゲイン36dBという数字からもわかるように、入力はMM用端子1系統のみ。一切のセレクター類およびレベルコントロールを省き、回路を単純化することによって、音楽信号の劣化を防いでいる。

ラスク R-5430AL

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「アナログプレーヤー徹底試聴 アナログ再生を楽しむプレーヤー4機種を自在に使いこなす」より

 サーフェイスノイズは、粒子が細かく、軽く、さらっとしたタッチとなる。音場の空気はあたかも清浄器を通したごとく、あるいは紫外線殺菌燈を照射したごとく透明感が増し、クリーンで静かな感じだ……つまり、やや人工的なニュアンスを伴う。高域もすっきりして、響きの表面もよく磨かれ、毳立ちも少ない。が、艶やかで質感ゆたかな、あるいは、色彩感豊かな、といった表現は、なぜか思い浮かんでこない。どちらかといえば、やや半艶消的な印象があった。
 総じて醒めた感じの演奏となるのは、アンプの物理特性が一桁良くなったような、高いS/N感によるものだろうか。各パートの動きは、おそろしくよく見え、ピークでも音がからまることもない。バスドラムのアタックの迫力も充分。シンバルのディスパージョンも、その方向が見えるほどだ。
 しかし、しいて言えば、向かってくる響きの勢いよりは、むしろマイナスのエネルギー感とでもいうべきか、スーッとひいていく感じが際立つ。そのせいか、制動感、フラット感はある反面、スピード感、ドライブ感がやや弱まる印象を受けた。全体の機械的強度はヤマハに軍配があがる。個人的には、この漂白されたような清潔な響きは好きだが、いかにして響きに、生命感を注ぎこむかが、使いこなしのひとつのポイントになりそうだ。いっそのこと、スタティックで、ストイックな、ひっそりとした響きを強調して、独特の世界を演出してみたくもなる。

ヤマハ GTR-1B

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「アナログプレーヤー徹底試聴 アナログ再生を楽しむプレーヤー4機種を自在に使いこなす」より

 ヤマハのGTR1Bは、オーディオファイルのスタンダードのラックとして、その使用実績は相当に高いはずだ。しかし、これとて「完璧」ではありえない。盲信しては前進はない。ステレオサウンドの試聴室に常備されたGTR1Bは原則として、試聴時、ラック内には何も収納せず、天板上に試聴機を置くのみとしている。なぜ?
 それは、ラックを含んだ全体の振動モードをできるだけ単純化しようという考えからである。現実の使用では物を入れる。そのとき、いかなる工夫をすべきか、どうしたら効果的な共振の整理ができるか(あるいは響きのコントロールの一手段として「振動」をどう取り込んでしまうか)、そういった、ケースバイケースの思考のヒントを導くためにも、とりあえずラック1台に対して試聴機は1つ、つまり1対1の関係を崩さないことを原則として守る。
 ある程度音量をあげていくと、音圧の影響を受けやすいボックス状の、このラックは見た目以上に共振していることが、手を触れてみるとよくわかる。天板の裏や側板は、音楽の複雑な空気の振動を受けて、あるいは床を伝わってくる振動によってあおられ、驚くほど共振している。こうした分厚く堅い、つまりQ(共振峰)の高い材質は、相対的に「カンカン」したピッチの高い共鳴、共振を起こしやすい。事実、このラックは、機器にそういった付帯音をのせる傾向がある(したがって、本誌の通常の試聴時には、その対策を独自に施している)。

新藤ラボラトリー 7A

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より

 ゴールドパネルに深みのあるグリーンのケース、それは写真でみるよりずっと美しく、不思議な調和さえみせていた。
 音楽が鳴り始めるや、あるかなきかの記憶を彩るほんのりと甘酸っぱい響きがあたりを満たし、あわてた。
 羊水に浮遊するような非現実的な暖かさと柔らかさ、耳は測定器として作動することを記憶喪失のように忘れはて、ただ流れる音楽に身をゆだねることに誘い込む。現代を生きるものが忘れた何かを呼び戻してくれる響き──。
 ハイフィデリティを第一義とする冷静な視線をもった、先端をいくものたちが、内に隠しもつ空虚。ここには、その虚をつく大切なものがひそんでいた。過去に失われたものたちの残像、現実から離れた速度感をもった時間の流れのなかで、おだやかにみつめようとする作者の柔らかな視線がここにはあった。

A&D DA-P9500, DA-A9500

井上卓也

’89NEWコンポーネント(ステレオサウンド別冊・1989年1月発行)
「’89注目新製品徹底解剖 Big Audio Compo」より

 デジタルプログラムソースが主流になった時代背景を反映して、次第にプリメインアンプの分野でも、D/Aコンバーターを内蔵したモデルが確実な歩みで増加をしているが、より一段と趣味性の色濃いセパレート型アンプともなると、D/Aコンバーター内蔵型コントロールアンプとして、現在市販モデルとして存在するのは、早くからコントロールアンプのデジタル化を手がけた、ヤマハCX2000、1モデルのみが現状である。
 A&Dブランドにとり、初めて本格的なセパレート型アンプのジャンルに挑戦するモデルとして登場したモデルが、デジタルコントローラー、DA−P9500とデジタルパワーアンプDA−A9500の2機種で構成される新構想に基づく新デジタル・アンプシステムである。
 従来までのセパレート型アンプの概念から考えれば、デジタルコントロールアンプとデジタルパワーアンプのペアと受け取られやすいが、デジタルコントローラーと呼ばれるようにDA−P9500には増幅系がなく、A/Dと録音系用のD/Aコンバーターとデジタルグラフィックイコライザーを備え、パワーアンプをリモートコントロールする大型リモートコントローラーと考えてよいものだ。
 システムの基本構成はデジタル系を主流とし、カセットデッキに代表されるアナログ系プログラムソースが混在するプログラムソース多様化の現状に、デジタル機器の特徴を最大限に活かしたシステムプランは何かを模索して整理した結果、通常のD/Aコンバーター部を、コントロールアンプ側でなくパワーアンプ側にビルトインすることを決定したことが、新システムのユニークなところだ。
 従来からも、電力を扱うパワーアンプとスピーカー間は、可能な限り短いスピーカーケーブルで結ぶことが理想的であり、業務用モニタースピーカーは現在ではパワーアンプ内蔵型がむしろ標準的とさえなっているようだが、それも業務用の600Ωバランスラインの特徴を利用して、初めて可能となったシステム系なのである。
 デジタル系プログラムソースを前提条件とした場合、業務用600Ωバランスラインを、同軸型もしくは光ケーブルに置き換えたシステムを考えれば、デジタル伝送系ならではの延長をしても音質劣化が理論的にない特徴を一括かして、スピーカー近くのパワーアンプに送り、D/A変換後の信号でパワーアンプをドライブし、その出力を近接したスピーカーに加えることで容易に理想に近づけることが可能、ということになる。
 パワーアンプをスピーカーに近く置き、聴取位置から離すことによる副次的なメリットは、電源トランスのウナリや振動による聴感上でのSN比の劣化が少なく、発熱量が大きい熱源としてのパワーアンプが隔離可能になること。また、スピーカーコードが短いことは、超強力な高周波源であるTVやFM電波に対するアンテナとしての働きが抑えられ、バズ妨害に代表される高周波の干渉を少なくできる利点を併せ持つことにもなる。
 DA−P9500は、外観的には一般のコントロールアンプに表示部を付けたという印象を受けるが、コントロールアンプ的な機能は、ビデオ系、デジタル系、アナログ系それぞれの入力を切り替えるスイッチ機能と3バンドデジタルパラメトリックイコライザーにあり、オーディオ系入力は増幅部を持たないため、そのままスルーの状態でパワーアンプのアナログ入力に送られる。
 2種のコンバーター内蔵の目的は、カセットデッキ、FMチューナー、VCRなどのアナログ系入力をA/D変換してパワーアンプにデジタル伝送を行なうためと、デジタル系のCDやDAT、衛星放送などの信号をD/A変換して、カセットデッキなどに録音するためにある。
 外観上ボリユウムと思われる大型ツマミは、実際には、パワーアンプ部にあるパラレル型ディスクリート構成のボリュウムをデジタルコントロールするためのツマミである。このコントロール用信号は、A&D独自のフォーマットによるAADOT型で、EIAJのデジタルI/Oにも対応し、128×128種類の利用が可能である。
 DA−A9500は、18ビット・リニアゼロクロスD/Aコンバーターを採用。原理的にゼロクロス歪み発生がなく、4D/Aコンバーター構成のL/R、±独立プッシュプル構成で、アナログフィルターのON/OFFが可能である。
 パワー段は、スピーカー駆動時の電流リニアリティに着目した初めてのリニアカレントドライブ回路を採用。電流と電圧フィードバックの巧みな組合せで、パワー段の電源変動を受けにくい利点があり、結果的に電源を10倍強化したことと同等のメリットがあるとのことだ。
 構造面では、電源トランスを筐体から分離独立し専用ペデスタルで支える分離トランス方式の採用が最大の特徴。
 機能面は、単体使用時に入力切替や音量調整をする専用リモコンを標準装備。
 単体使用では素直で力強い駆動能力、音場感情報を豊かに出すパワーアンプは、かなり高水準の完成度を聴かせる。コントローラーを加え、試みにDA、AD、DAと3度変換した音も聴いたが、これがアナログ的な魅力で驚かされた。

ダイヤトーン DS-V9000

井上卓也

’89NEWコンポーネント(ステレオサウンド別冊・1989年1月発行)
「’89注目新製品徹底解剖 Big Audio Compo」より

 ダイヤトーンのスピーカーシステムには、数字構成のモデルナンバーの末尾にアルファベットを付けた型番を採用することはあったが、今回の新大型システムDS−V9000のように、数字の前にアルファベットを置く型番は、大変に異例ともいうべき印象で受け止められるようである。
 高級機のジャンルで、独自のミッドバス構成と名付けられた4ウェイ方式のシステムを開発する、いわば定石めいた手法を採用することが他に類例のないダイヤトーンスピーカーシステムの特徴であり、4個のユニットで構成する比較的にコンベンショナルなシステムアップの実力を備えたメーカーは、世界的にもさほど多いものではない。
 基本的に40cmウーファーをベースにした4ウェイ方式のフロアー型システムという点では、数年前に開発され、現時点でも日本を代表するフロアー型として活躍をしているDS5000系の流れを受け継いでいるシステムである。
 外観上のイメージは、基本構想が同一であるだけに非常に類似したイメージを受けるが、比較をすれば、中低域ユニットの位置がかなり下側に移動していることと、エンクロージュア両サイドの部分にわずかにカーブがつき、バッフル面より前方にセリ出しているデザインに気がつくであろう。
 音響理論とデザインの一致が、ダイヤトーンスピーカーの基盤であるが、このところのラウンドバッフル流行の原点である2S305の理論に基づいた流麗なラウンドバッフルと、V9000でのサイドブロックに見られる考え方の差には、大変に興味深いものがあるようだ。
 バッフルボード上で、もっとも大きく目立ち、かつ魅力的に思われるのは超大型とも表現できる中高域ユニットだ。
 従来からも独自のボイスコイル巻枠部と振動板を一体化したDUD構造を開発した時点以来、振動板材料にはこれも独自の開発によるボロナイズドチタンが、ボロンの略称でダイヤトーンDUDユニットを推進してきたが、今回の新製品にはそれ以来の画期的な新材料ともいうべきB4C(炭化硼素)が振動板材料として、中高域と高域ユニットに採用されることになった。
 B4Cを実用化するに当り、摂氏2450度という高融点であることがドーム状に成型することを困難にしていたが、プラズマ溶射法による製造条件の確立と熱処理の方法が完成され、実用化された。これはチタンの5倍、ボロン化チタンの2・2倍の物性値を示し、実測値でも1万1000m/secを越える値が得られているが、特に注目したいことは、金属系振動板でありながらほぼ1桁違う内部損失を備えていることで、固有音が極めて少なく、振動減衰が早いことにより、広帯域化と素直なレスポンスが得られるメリットは絶大なものがある。
 中高域と高域のB4Cを支える中低域と低域は、ハニカムコアの両側をアラミッドスキンでサンドイッチ構造とした従来のコーン構造の前面に、カーボン繊維のアラミッド繊維を混繊したイントラプライスキンを加えた、表スキンが2重構造のイントラプライ・ハイブリッド・カーブド・ハニカム振動板を採用したことに特徴がある。
 全ユニットは、DS9Zで採用された球状黒鉛鋳鉄採用の、高剛性で振動減衰特性に優れたフェライト系磁石によるハイピュアリティ防磁構造と、実績のあるDM及びDMM方式を採用している。
 低域と中低域ユニットでは、新開発の新磁気回路方式(ADMC)採用が最大のポイントだ。ボイスコイルで発生する交流磁束の影響が磁気回路の動作を不安定にする問題を、有限要素法により直流磁界解析および交流磁界解析した結果がADMCであり、ユニットの音圧歪みは2次、3次ともに0・1%を達成、ボイスコイルの駆動力が常にボイスコイルの中心に位置する理想の動作状態が保たれる成果は大きい。
 ネットワークは、コイルにコンピューターシミュレーションにより設計をした低歪み、低抵抗型を採用。コア材料は珪素鋼板をラミネート構造とし、エポキシ樹脂でコーティングしたコア鳴きの少ない圧着鉄芯、コイルは1・4mmφのOFC線材採用などの他、素子間の配線は金メッキ処理OFCスリーブによる圧着型という伝統的な手法が見受けられる。
 エンクロージュアはパイプダクトをバッフル面に付けたバスレフ型。バッフルは堅く響きが良いシベリア産カラ松合板の直交張り合せ、他の部分はカナダ産針葉樹材2プライ・パーティクル板で、両面はスワンプアッシュ材突板サンドイッチ張り構造により、高い剛性と耐候性を得ている。バッフル表面には低音用上部にソリッド・スワンプアッシュ材を溝に埋め込んだ表面波に対する隔壁が設けてあり、低域と中低域以上のユニット用の相互干渉を避ける設計だ。また、中低域用内部キャビティは、新しく二つのラウンドコーナーをもつ新設計によるもので、低域に対しても定在波の発生が少なく、高剛性化をも達成している。
 ユニットの不要振動の発生を避ける取付けビス部のゴムキャップ、ハイブリッド構造の中高域ユニット保護ネットなど、徹底した高SN比設計は同社のポリシーの表われでもあるようだ。
 百聞は一聴にしかず、が、このシステムの音であろう。異次元の音でもある。

デンオン DCD-3500G

井上卓也

’89NEWコンポーネント(ステレオサウンド別冊・1989年1月発行)
「’89注目新製品徹底解剖 Big Audio Compo」より

 DCD3500は、従来のDCD3300を受け継ぎ、今年の6月にデンオンから発売された同社のトップモデルCDプレーヤーである。
 このモデルは、従来のDCD3300で外装がブラック仕上げのモデルがまず発売され、続いて、木製ボンネットとシャンペンゴールド系のパネルフェイスを備えたゴールドタイプが加わり、2モデル構成とした特徴を踏襲し、当初からDCD3500GとDCD3500の、ゴールドタイプとブラックタイプが用意されている。
 外観から受ける印象は、パネルフェイスを簡潔に見せる、いわゆる高級機共通のデザイン傾向が採用され、パネル幅全面にわたり、シーリングポケットが設けられ、10キーをはじめ、ヘッドフォンジャックと音量調節、2系統のデジタル出力の選択とOFFポジションをもつ切替スイッチ、ディスプレイ切替などが内部に収められている。
 このディスプレイ切替は、蛍光表示管のON/OFFに伴う微小レベルのノイズ発生や、ドライブ回路からの干渉などが音質に影響を与えるのを避けるためのもので、ディスプレイを消すタイプがパイオニアのモデルに採用されて以来、中高級のジャンルでは、ほぼ標準的な装備になりかけているフィーチェアだ。
 本機に採用されたディスプレイスイッチは、①標準点灯、②ミュージックカレンダー部分の消灯、③全消灯、の3段切替型であるが、全消灯時でも選曲もしくは頭出しなどの操作をすると、一瞬の間だけ曲番のみを表示する。
 PCM録音で世界初のデジタルレコーディングによるディスクを発売した伝統を誇る、デンオンのデジタル業務用機器の開発の成果であるSLC(スーパーリニアコンバーターは、変換誤差補正回路による補正信号を加えてゼロクロス歪を排除するデンオン独自の技術であり、デンオンCDプレーヤーの大きな特徴でもあるわけだ。
 今回採用の新SLCは、米バーブラウン社製の18ビット用IC(PCM64P)に、ディスクリート構成の2ビット分を加え、リアル20ビット化したタイプで、量子化軸方向の分解能で16ビットタイプと比較して16倍の分解能(滑らかと考えてもよい)を得ている。なお、新SLCでは、ゼロクロス歪対策のひとつとして、ラダータイプと呼ばれる標準的な抵抗を数多く使う方式で発生する抵抗誤差によるゼロクロス歪を排除するため、影響の大きい上位4ビットまでを補正していることも特徴だ。
 一方、演算を受け持つデジタルフィルターは、現在の標準型8fSタイプである。
 回路も大切だが、それらを収納する内部構造、配置も、機械的な共振系と考えれば、共振のQが大きいだけに、音質と直接関係がある、いわばCDプレーヤーの勘所でもある。
 基本構想は、正統的なD/A分離左右独立構造であるが、現実にどのように処理されているかが結果を左右する。
 銅メッキ鉄板を採用したシャーシ内部は、左右方向にシールド板で分離され、左側前部にプレーヤー部分、後部に2個のデジタル用とアナログ用の電源トランスが並ぶ。
 シャーシ右側は、前後に大きく2分割された基板配置が目立つ。その後側が左右独立配置のD/Aコンバーターブロックであり、アース回路に、インピーダンスを下げ、高周波の干渉を防ぐ業務用機器用といわれるバスバーラインを採用している。
 プレーヤー部は、剛性が高く、振動減衰付性に優れたBMC製の大型メカシャーシに取り付けてあり、さらにBMC製メカベースは、低反発ゴムとスプリングを組み合わせた支持機構により、金属製メカプレートから吊り下げられている。
 金属製メカプレートは、大型のブロックともいえるBMC製メカシャーシに取り付けてあり、異種材料を組み合せた防振構造体とした設計である。
 構造面でのDCD3500Gの特徴は、上部の天板部分と左右がリアルウッドの光沢仕上げ、パネルフェイスがデンオンでプラチナゴールドと呼ぶ仕上げになっていることだ。天板部分は、結果としてリアルウッドと鋼板の2重構造、底板部分は鋼板2枚貼合せのバイブレスプレートと、厚さ1・6mmの鋼板、銅メッキシャーシの4重構造を採用。脚部は、直径65mm、4個で重量1800gの黄銅削出しインシュレーターを採用。
 一方、DCD3500は、天板部が4mm厚アルミ押出し材、側面が木製サイドボード、鋼板、シャーシの3重構造、底板部は共通の4重構造、脚部は焼結合金をアルミでカバーしたタイプだ。
 なお、出力系は固定、ヘッドフォン出力調整を兼ねた電動ボリユウム採用の可変、バランスの3系統アナログ、光1/同軸2系統のデジタル出力を備える。
 滑らかで、バランスが良く、幅広いプログラムソースに対応する、デンオンならではの安定感のある穏やかな音は、前作ゆずりの魅力である。しかし、中域の密度感の向上で、緻密さの表現や力強さが加わり、デンオンのリファレンス機として充分な格調の高さが出てきたことが、3500シリーズの新しい魅力である。Gタイプは、力を表面に出さない一種の渋さが、高級機ならではの風格だ。

パイオニア C-90a, M-90a

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 AVプログラムソースに対応したセパレート型アンプとして企画されたパイオニアのC90、M90のペアは、この種のアンプとして最初に成功を収めた意義深い製品であった。今回、本来の意味で内容が見直され、改良によって第2世代のC90a、M90aとして発売された。
 C90aは、もともとAVソース対応で、かつ高クォリティの音質を狙ったモデルであるだけに、新しく映像系入出力に輝度信号と色信号のY/C分離接続用のS端子を備え、S−VHSやEDベータなどの高画質VTR対応化を図っている。付属のリモコンは、従来の同社用のシステムリモコンから、最大154キーの学習型リモコンに発展し、多数のリモコンを使い分けざるを得ない煩雑さが解消された。
 視覚的には、外観上の変化は少ないように見受けられるが、筐体関係の改良、強化も、高音質が要求されるコントロールアンプでは、重要な部分である。
 筐体のトッププレート部は、C90の板厚1・2mm鉄板から、合計8個の止めネジにより振動が発生しないようにリジッドに止められた板厚1・6mmのアルミ板に改良された。ボトムプレート部もタテ長の通気孔パターンが、パイオニア独自のハニカム型に変わり、ボトムプレートの振動モードをコントロールし、共振を制動している。脚部は、釣り鐘断面状の一般的なタイプから、ハニカム断面に特殊な樹脂を充填した、一段と大型なタイプに変わっている。
 エレクトロニクス系は、ビデオ信号とオーディオ信号の完全分離、独立をポイントとし、①オーディオ左右チャンネルとビデオ系に専用電源トランス採用、②オーディオ部とビデオ部のアース回路を伝わる干渉を避けるためアースの独立化とビデオ系のフローティング化、③オーディオ系とビデオ系の電気的、機械的な飛びつき防止用アイソレーション、④アナログ使用時のビデオ電源オートOFF機能採用などのベーシックな部分を抑えた対策がとられている。
 C90をベースとしたアドバンスモデルだけに、表面に出ないノウハウの投入は、かなりのものと思われる。
 音質最優先設計のために、部品関係はEXCLUSIVEの流れを受継いだ無酸素銅配線材料、黄銅キャップ抵抗、シールデッドコンデンサーなどが全面的に採用されている。アナログオーディオの中心ともいうべきフォノイコライザーアンプには、MC再生のクォリティを保つためハイブリッドMCトランス方式を採用している点も見逃せないポイントである。
 M90aは、外観上のモディファイは、筐体トッププレート部の材料が、鉄板からアルミに変更、取りつけ方法もC90a同様の8本+1本のネジ止め、ボトムプレートの通風孔の形状変更と脚部の大型化、さらにトランスフレーム下側にある5本目の脚は、M90では他の脚と同じタイプが採用されていたが、今回は鋳鉄製で制振効果の高いキャステッドインシュレーターに変わっている。
 電源トランスは、鉄心をバンドで締めるシンプルなタイプから、パイオニア独自の制振構造鋳鉄ケースに収めたキャステッドパワートランスにグレードアップしている。これに伴い、トランスフレームも強度を向上し、電源トランスの振動対策を一段と強化している。また、放熱板のハニカム構造チムニー型化も、パワーステージトータルの振動コントロールを狙ったものだ。
 これらの大幅な改良の結果、重量はM90の20・9kgから28kgと増加した。
 機能面は、コントロール入力の他に2系統のボリュウムコントロールができる入力を備え、CDプレーヤーなどのパワーアンプダイレクト使用が可能など、単体でも使える機能を持つパワーアンプとして開発されたM90の構想を全て受け継いでいる。
 C90aとM90aは、堂々とした押し出しのよいナチュラルな音を持つアンプである。価格的には、高級プリメインアンプとも競合する位置にあり、セパレート型の名を取るか、プリメインアンプならではのまとまりのよい音、という実を取るかで悩むところであるが、このペアは、そんな枠を超えたセパレート型アンプならではの納得のできる音をもつ点が魅力である。
 基本的には、柔らかく、豊かで、幅広いプログラムソースや組合せにフレキシブルに対応を示すパイオニアならではの音を受け継いではいるが、前作の、やや受け身的な意味を含めての良いアンプから、立派なアンプ、大人っぼい充実した内容と十分に説得力のある音を聴かせるアンプに成長している。久し振りの聴きごたえのあるアンプである

ヤマハ CX-2000, MX-2000

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 世界初のデジタルコントロールアンプとして脚光を浴びたCX10000を中心とするヤマハ10000シリーズは、見事なデザインと仕上げ、極限の性能に裏付けられた音質など、ヤマハ創業100周年記念の限定量産モデルとして高い評価を与えられた。今回、既発売のCDプレーヤーCDX2000、D/Aコンバーター内蔵プリメインアンプAX2000に続き、新製品として、デジタルAVコントロールアンプCX2000とパワーアンプMX2000、それにFM/AMチューナーTX2000が加わり、事実上のヤマハオーディオのトップランクを担う2000シリーズのラインナップが完成した。
 CX2000は、時代の要求に応えて、高いクォリティで、デジタル信号処理能力と映像信号処理能力を含め、ピュアオーディオのコントロールアンプとしての性能、音質を追求した新世代のコントロールセンターである。
 デジタル、AV信号も扱うコントロールアンプとして最大のポイントは、高いSN比を維持することにつきるだろう。そのためには、まず筐体関係で高周波や測定器に準ずるレベルで、シールドを施し分離しなければならない。
 全面的に銅メッキを施したフレーム、シャーシは、デジタル部、マイコン部、フォノイコライザー部、電源部、トーンアンプ部とフラットアンプ部を、それぞれ独立したBOXに分割収納する高剛性6BOXシャーシ構造が採用されている。この構造により、耐振性を向上させて、機械的振動による変調ノイズの発生による音質劣化も排除する設計だ。なおデジタル部は、パルス性雑音対策として銅メッキ製トップカバーで全体を覆い、厳重なシールド対策を施している。
 信号系は、MCヘッドアンプ付6ポジション負荷抵抗切替型フォノイコライザー部、高入力レベルのチューナーなどのアナログソース、8倍オーバーサンプリング18ビット・デジタルフィルターと、従来比でSN比を10dB向上した18ビット・ツインD/Aコンバーターを採用したデジタルソース、それにビデオソースの3ブロックで、これらのプログラムソースは、内部配線が短くできる半導体セレクタースイッチ、リモコン対応の4連ボリュウムを通り、20dBのフラットアンプ部に送られる。
 ソースダイレクトスイッチをONとすれば、フラットアンプ出力は、入力に4連ボリュウムの2連を使った0dBバッファーアンプを通り出力端子に送られる。次にスイッチをOFFにすれば、バランス詞整、モード、サブソニック、高・中・低音調整、連続可変ラウドネス調整を経由してバッファー入力に送られる。
 電源部は、デジタル・ビデオ部、アナログ部、マイコン部の独立3電源トランス採用。ビデオ電源は単独にON/OFF可能。デジタル電源は、アナログ入力選択時にデ
ーター復調回路のIC動作をとめる設計である。
 MX2000は、低インピーダンス駆動能力を重視したA級動作のステレオパワーアンプである。
 パワー段は、MX10000で開発されたHCA(双曲線変換増幅)回路により全負荷、全パワー領域でA級動作を可能としたHCA・A級増幅に特徴がある。ちなみに1Ω負荷のA級動作ダイナミックパワー600W+600Wを得ている。
 筐体構造は、銅メッキシャーシとフレーム採用の左右シンメトリー配置で、出力メーターを含むフロントパネル部、電源部、左右パワーアンプ部、電圧アンプ部、それにスピーカーリレー、出力コイルなどを収める出力ブロックの6ブロック構成である。
 注目したい点は、チムニー型ヒートシンクの配置が一般とは逆に内側に置き、パワーアンプ基板と電源トランスの干渉を避けた細心のコンストラクションである。
 電源部は、EI型コアの420VA電源トランスと、低箔倍率φ76mm、20000μF×2電解コンデンサーのペアである。
 CX2000とMX2000のペアは、音の粒子が細かく、滑らかに磨かれており、スムーズに延びたワイドレンジ型の帯域レスポンス、しなやかな表現力などは、従来のヤマハのセパレートアンプにはない、新しい音である。傾向として、十分にエージングに時間をかけたAX2000に近い。
 MC入力時には、ノイズ的な環境の悪いSS試聴室でも十分にSN比が高く保たれ、アナログならではの音が楽しめる。このことは、この種のアンプの重要なチェックポイントだ。
 デジタル入出力時は、光、同軸の差を素直に出し、銘柄、グレードの差が楽しめる。また各種CDのデジタル出力を使い、個々の音が楽しめるのも新しい魅力の展開だ。

イケダ IKEDA 9EMPL

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 アナログディスク用のカートリッジは、音溝の凹凸を電気信号に変換するトランスデューサーであるため、変換方式、つまり発電するメカニズムそのものが音色、音質を直接的に支配することになる。この部分に魅せられたファンにとっては、これならではの奥深い楽しみの存在するジャンルである。
 一種の理想の発電方式ともいえるものに、一般的なカンチレバーを介さず、スタイラスそのものが、直接、発電コイルを駆動するダイレクトカップリング型がある。
 従来からも、この方式の可能性は追求されていたが、実用化の上で困難を極めたのは、振動系を安定に支持するサスペンション方式の開発であったわけだ。
 MC型で、しかもダイレクトカップリング方式のカートリッジを、コンシュマー用として世界初に完成させた記念すべきモデルが、イケダ9である。
 左右チャンネル用の2組のコイルの結合部に直接スタイラスを取りつけたシンプルな振動系は、2個の特殊形状ダンパーと糸による支持機構と組み合わせたメカニズムからスタートした。その後も、細部の改良と熟成期間をかけ、現時点での完成度は十分に高い。
 今回、新製品として登場したイケダ9EMPLは、シェル一体型ではなくて、単体のカートリッジとして発売された9EMをベースに、磁気回路のヨーク材に高磁束密度のパーメンダーを採用し、発電効率と磁気制動を高めた9EMPをさらにグレードアップしたモデルである。
 型番末尾のLは、ラージの意味であるとのことで、磁気回路は、カートリッジボディの内容積に対して最大限にまで大型化され、パーメンダーの使用量も50%アップとなっている。数値的には発表されていないが、磁束密度も、それなりに向上しているはずだ。なお、スタイラスは、9EMPと共通のムクダイヤの特殊長短円針付で、標準針圧は2・5gである。
 SS誌リファレンスプレーヤーで音を聴いてみよう。使用アームはSME3012Rプロであるが、9EMPLの発電機構から考えれば、オイルダンプ型のシリーズVが、現状ではベストであろう。
 針が音溝に触れたときのポップノイズ、音溝をトレースしているスクラッチノイズが、カートリッジの本質を聴くためのスリリングな瞬間である。制動が効き、パシッと決まるポップノイズ、カンチレバーによる揺れが皆無で、音溝にダイレクトに反応しているスクラッチノイズを聴いただけで、これはただものではないという実感がする。
 基本的には、やや硬質で、情報量を堂々と押し出すように聴かせる。9EMPは完成度の高さが特徴であったが、音溝に直接反応する厳しさが、新型のイケダ9EMPL最大の魅力だ。

スタックス QUATTRO II

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 オーディオ専業メーカーならではの独創的な製品開発で知られるスタックスから、CDPに続く第2弾の高級CDプレーヤーCDP QUATTROIIが発売された。
 今回の新製品はQUATTROIIと名付けられているが、第1弾製品のCDPが、QUATTROとも呼ばれていたとのことであり、名称の由来は不明であるが、おそらく4本の特徴的な脚部に支えられたユニークなデザインからきたものであろう。
 CDプレーヤーとしての筐体関係の構成は、前作CDPと基本的には同様である。筐体上部にディスクをドライブするプレーヤー部分があり、下部にD/Aコンバーター部分を収めた上下2分割のセミ・セパレート構成が特徴的だ。
 4本の大型な脚部は、外部振動およびCDプレーヤー自体で発生する、主にディスクドライブ系や電源トランスなどの振動対策として、ティップトゥの思想を導入した大型アルミ製脚を採用し、振動を防止する設計だ。
 エレクトロニクスは、最近のCDプレーヤーの動向であるハイビット化の路線にそった設計で、18ビット8倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターを採用し、CDPと同様にアナログフィルターを通さずにオーディオ信号を取り出すダイレクトアウト端子を備えている。
 このところ、CDプレーヤーの音質改善テーマのひとつとされている時間軸的歪であるジッタ一対策としては、システムコントロール用の水晶発振器をD/Aコンバーター部に置く設計で、ジッターの低減を図っている。
 電源部は、アナログ部とデジタル部に専用ACコードを使う3電源トランス方式である。アナログ部は、シームレスコア型電源トランスと、内容は不明だが、スタックス・オリジナルのプッシュプル型電源を採用しているとのことだ。
 機能面は、デジタル回路で位相を切り替えるアブソリュートフェイズスイッチを備える。逆位相で記録されているCDを正しい位相で再生することにより、音質、音場感を含めて、最善の結果が得られるのはよく知られたことだが、これは音質最優先の高級CDプレーヤーに相応しい機能である。
 音質対策部品には、CDPで採用されたリードレス・タンタル抵抗、西独製ポリプロピレンコンデンサー、PCOCC線材、アナログ部の木製シャーシ採用など、スタックスのノウハウが導入されている。
 ウォームアップは、約1分間で、モヤが晴れたようなすっきりした音を聴かせる。帯域感は広帯域型で、低域は少し線が太いが、中域から高域は細身で抜けがよい。安定感のある抑場の効いた音の出方は、アナログディスク的なイメージもあり、力感もそれなりに十分だ。CDPに比べ、完成度の高さが感じられる個性派のCDプレーヤーだ。

マランツ DAC-1

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 DAC1は、デジタル・オーディオ・コントロールアンプの頭文字をモデルナンバーにもつ、ユニークなコンセプトにより開発されたマランツの新製品だ。
 CD、DATに代表されるデジタル系のプログラムソースは、オーディオ信号とするためにD/Aコンバーターを使うことになるが、変換後のアナログ信号に、いわゆるデジタルノイズと呼ばれる、可聴帯域外におよぷ高い周波数成分をもつノイズが、程度の差こそあれ混入することが、重要な問題点のひとつである。
 一般的に、従来のコントロールアンプでは、広帯域型の設計が基本である。そのため、音にはならないが、高い周波数成分のノイズも、信号と一緒に増幅するために、混変調歪などが発生し、オーディオ信号を劣化させることになりやすい。
 DAC1の信号の流れは、入力切替スイッチ、テープ入出力スイッチ、バッファーアンプ、ボリュウムコントロール、14dBの利得をもつ出力アンプで増幅される。
 第一の特徴は、バッファーアンプには、裸特性が下降しはじめる700kHzに時定数をもつハイカットフィルターを設け、混変調歪の発生を防止したことである。
 第二の特徴は、出力アンプにフィリップスLHH2000で採用されている、定評の高いトランス結合マルチフィードバック回路を採用していることだ。出力トランスは、アンプ負荷用、フィードバックアンプ用の2系統の一次巻線と、同じ巻線比の、+位相と−位相の2系統の二次巻線を備えており、完全に同条件でアブソリュートフェイズの切替えができるほかに、2系続の出力を同時に使えば、BTL接続にも使用可能である。
 この回路の特徴は、二次導線が、基本的にフローティングされているために、アースや筐体に流れるノイズと信号が分離され、またバンドパスフィルターとして働くトランスの利点により、デジタルノイズに強い設計となつていることにある。
 8mm厚アルミ製シャーシ、シャンペンゴールドのフロントパネル、LHH1000系統の片側1・3kgのダイキャストサイドパネル、4mm厚トップパネルに見られるように、筐体は共振を抑えた剛体構造である。使用部品を含め、高密度に凝縮された構成は、オーディオ的な魅力を備えたものだ。
 DAC1は、中低域から中域の量感がたっぷりとあり、密度感を伴った安定度の高い音が特徴。オーケストラの空間の拡がりを感じさせるホールトーンの豊かな響き、素直なパースペクティブとディフィニションは、デジタル系プログラムソースの利点を充分に引き出したものである。しかも、無機的な冷たさにならないところが、本棟の魅力である。高密度設計だけに、置き場所の影響がダイレクトに現れる点は要注意だ。

エアータイト ATM-2

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 管球式のアンプは、真空管という優れた増幅素子のおかげで、少ない増幅段数でそれなりに優れたアンプを完成することができる。そのため、趣味的な製品をこつこつと手作りでつくるタイプの作り方が、もっとも相応しいように思われる。
 ソリッドステートアンプのように構成部品数が莫大な量になれば、安定度の高いアンプを作るとなれば、生産性を考えなくても、必然的にプリント基板のお世話にならなければならない。けれども、プリント基板そのものが、優れたアンプを作るうえで、音質上での足を引っ張る存在にもなっている。
 一般的にプリント基板の問題点として直流抵抗があげられるが、銅箔の厚みを30ミクロンとしても、パターン幅を6・5mm程度とすれば、φ0・5mmの銅線の断面積と等しくなり、70ミクロンなら3mm強の幅で等価的になるわけで、想像ほどに悪くはないのである。
 むしろ、振動と音質の相関性から考えれば、ある程度の面積があるプリント基板そのものが、内外の振動により共振することのほうが問題であるはずだ。この振動が基板上に取りつけられた多数の部品を動かしたら、かなりのデメリットが出ることが予想されるだろう。この点、管球式なら基板レスの配線は手数をかければ可能であり、充分に厚みがあるベーク板などに配線用ポストを立てて基板的な特徴を活かすことも可能だ。
 エアータイトは、6CA7プッシュプルのATM1を第一弾製品としたメーカーであるが、今回の製品も管球アンプで一世を風靡したメーカーで活躍した実績のあるオーナーの体験を活かした開発によるもの。管球アンプならではの音が楽しめながら、それなりの価格に抑えた製品づくりは、すでにある種の定評を獲得しているように思われる。
 今回第二弾のパワーアンプとして開発されたATM2は、パワーステージにKT88をプッシュブルで採用したステレオ構成の新製品である。フロント側シャーシ前面と背面に2系統の入力端子を備え、入力切替スイッチとボリュウムコントロールで、パワーアンプ単体でも使える最低の機能を持たせ、単独使用ができる基本構成は、ATM1と変わらぬポリシーの現れだ。
 SS試聴室のリファレンスCDプレーヤー、ソニーR1の出力をATM2の前面入力に入れる。試聴前にスタティックには予熱を充分にしてあるが、信号を加えるとダイナミックなウォームアップが始まり、ほぼ30分間もすれば安定状態になり、ATM2本来の音が次第に聴きとれるようになる。
 柔らかく、豊かな雰囲気を管球アンプの音としがちだが、ATM2は、やや線は太いが、力感に裏付けされた押し出しのよい、ざっくりした音を聴かせる。最新アンプの音をナイロン的な滑らかさとすれば、ATM2の音は、いわば麻ならではの粗い質感がたいへん魅力的である。

ラックス DP-07 + DA-07

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 ラックスの超弩級CDプレーヤーシステムは、すでに昨年中にほぼ試作が完了していたために、その存在は誰でも知るところであったが、最終的なツメと熟成期間を経て、今回発売されることになった。
 基本構成の出発点は、音楽再生を目的とするD/Aコンバーターは、連続サインウェーブの再現以上に、パルス成分の再現性であるインパルス応答性を重要視すべきであるという、いわばオーディオ再生の原点ともいえるところからのものである。
 巨大なパワーアンプに匹敵する雄姿を誇るD/AコンバーターDA07は、重量も、実に27kgという文句なしの超弩級で、本システムの基本構想が実現できるか否かは、本機の内容に関わってくるわけだ。
 本機のD/Aコンバーターには、インパルス応答性に優れたD/Aコンバーター理論として筑波大学で発明されたフルエンシーセオリーに基づいたフルエンシーD/Aコンバーター(F・E・DAC=特許出願中)を採用している。
 F・E・DACは、従来のタイプのように、デジタル符号を、抵抗素子などを使い階段状にしてからアナログ変換をする方法ではなく、新補間関数により、デジタル符号をダイレクトに曲選でつないでアナログにする方式であるとのことだ。
 従来型のD/Aコンバーターでは、動作理論上で、パルス成分の再生時には多くの付加振動を発生し、原波形は損なわれる。現実にテストディスクでパルス再生をして、スコープでチェックすれば、パルスに数個の付加振動が発生していることを容易に確認できるだろう。この点、F・E・DACでは、付加振動の発生はひじょうに少なく無視できるレベルにあるという。
 まF・E・DACは、その変換方式の特徴から、原理的に波形振動を発生するデジタルフィルターや、位相を変化させるアナログフィルターなどを完全に追放できる利点にも注目したい。
 筐体構造は、基本的に上下2段構成としてデジタル部とアナログ部を分離し、さらに各ブロックをトータル10個のチャンバーに分け、完全にシールドを施し、相互干渉の排除を図っている。なお、シャーシ全体に銅メッキ処理が施され、高剛性、大質量の特殊FRPボトムシャーシをベースに、18mm厚押し出し材のフロントパネルなどで、全体を無共振構造としている。
 アナログ部は、最大出力まで一定のバイアス電流を供給する純A級方式と、低インピーダンス伝送アナログ回路を中心に、デジタルとアナログ独立の2電源トランスと11
分割独立レギュレーターがバックアップしている。
 入出力系は、同軸入力3系続、標準光入力2系統に、伝送レートが従来の数10倍という超高速ラックス型光入力1系続。アナログ出力端子は、固定と可変の標準出力とバランス型出力の3系統を備えている。
 プレーヤー部のDP07は、トップローディング型で、音質面で有害なトレイがないのがうれしい。
 筐体構造は、セラミック入りFRPによる重量級シャーシ、12層厚アルミムク材のトッププレート、銅メッキ処理シャーシを組み合わせ、前面傾斜パネル内側のマイコン部、その後ろを上下2段構造とし、下段に電源部、上段前半部にピックアップ部とデジタル出力部をさらに上下に分け、上段後半部に電源トランスを収めた多重構造により、全重量は20kgとヘビー級だ。
 信号処理部と駆動系に独立22トランスを使い、各ステージ用に独立10レギュレーター採用で、電源部を介した相互干渉は、ほぼ完全にシャットアウトする徹底した設計が見受けられる。なお、基板関係はOFCの70ミクロン厚、PCOCC線材の全面採用、金メッキキャップ抵抗にピュアフォーカスコンデンサーなど、音質向上のための素材は豊富に投入されている。
 システムのウォームアップは、平均的な約2分弱で、安定があり、情報量の多い、一応水準と思われる音に変わる。
 聴感上での帯域バランスは、とくにワイドレンジを感じさせないナチュラルなタイプであるが、やや線は太いが、豪快に物凄いパワー感を伴って押し出す低音のでかたは、CDの常識を越えた異次元の世界である。密度感のある中域は、力感も十分にあり、やや輝かしいキャラクターを内蔵している印象がある。高域は穏やかで、むしろ抑え気味でもあるようだ。
 音場感は標準的だが素直で、ヴォーカルなどの音像はグッと前に出るタイプだ。この程度の性能ともなれば、ディスクの固定機構の精度がすこし不満であり、ディスクの出し入れによる音の変化は大きい。しかし凄い製品だ。