Category Archives: パワーアンプ - Page 28

サンスイ CA-2000 + BA-2000

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 少し以前のサンスイのアンプは、強いて類型を探すとビクターに一脈通じるような、いくぶん光沢過剰というか、かなり輝かしい派手な音の傾向があった。プリメインのAU707、607以降、次第に大きく変身を試みて成功しはじめているが、時期的にみるとこのCA2000/BA2000はちょうどその転換期にかかっていたためでもあるのだろう、CA2000には従前のサンスイの音がやや残っているし、BA2000の方は新しいナチュラルな音になってからのサンスイの音が入っている、という感じなので、両者の組合せは、互いに相補うところと、長所を相殺しあうところが微妙に入りまじっているように思える。たとえば音に一種独特の明るい艶が乗って音の表情や輪郭をはっきりさせるところは長所といえるし、反面、曲によって少々カン高い感じになったり、華やぎすぎる傾向が聴きとれたりもする。パワーアンプの方が完成度が高いので、右の傾向はCA2000の方に影響されている。

ビクター EQ-7070 + M-7070

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 3030どうしの組合せのところで書いたようなビクターのアンプの二つの傾向の中の、もうひとつの面といえる、明るく輝いた積極的な響きのよさを持ったアンプといえる。音のひと粒ひと粒が、輪郭をきらめかせて輝く感じで、こういう音はもしも基本的なクォリティの低い、音の質感の十分に磨かれていないアンプで鳴らされたとしたらやりきれないのだが、さすがに7070のクラスになれば、緻密で品位の高い質感のよさに支えられて、この明るく張り出す音は、魅力的な個性といえるレベルにまで仕上っていると思う。たとえば「オテロ」の冒頭のトゥッティや、弦楽四重奏、そしてアメリンクの声などクラシック系ではいくぶん派手やかさが目立つけれど、決して不快ではなく、またポップス系ではヴォーカルなど概して若づくりになる傾向もあるが、ともかくかなり楽しませる音がする。いわば自己主張のつよい聴きようによっては押しつけがましさもある音には違いないが、質の良さで聴かせてしまうアンプだ。

パイオニア Exclusive C3 + Exclusive M4

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たとえば入力に対する応答速度とか解像力という面からみれば、ごく最近の優秀な製品には及ばない。が、ここから鳴ってくる音のニュアンスの豊かな繊細なやさしさは、テストソースの一曲ごとに、ついボリュウムを絞りがたい気持にさせてしまう。そのこと自体がすでにきわめて貴重であることを断わった上で細かなことを言えば、それぞれの単体のところでも書いたように、繊細さの反面の線の弱さ、柔らかさの反面の音の密度の濃さや充実感、などの面でわずかとはいえ不満を感じないとはいえない。本質的にウェットな傾向は、曲によっては気分を沈みがちにさせるようなところがなくもない。ただ、そうした面を持っているにもかかわらず、菅野録音のベーゼンドルファーの音を、脂こさはいくぶん不足ながらかなりの魅力で抽き出したし、シェフィールドのダイレクトカットでさえ、意外に力の支えもあって楽しめた。アラ探しをしようという気持にさせない音の品位とバランスの良さが聴き手を納得させてしまう。

ビクター P-3030 + M-3030

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ふりかえってみてビクターの作るアンプの音には、二つの違った傾向があったと思う。ひとつはプリメインアンプのJA−S41に代表される、かなり抑制の利いた、どちらかといえば音楽の表情をおさえてゆく方向の、おとなしい感じの音。そしてもうひとつは、音像の輪郭をきらめかせて総体に良く響くという感じの傾向。この傾向は以前のセパレートアンプJP−S7/JM−S7にもあった。また国産のアンプでは従前までのサンスイなどにもその傾向があった。3030シリーズの組合せは、どちらかといえば前者の傾向で、総体に穏やかでいくらか暗色系の曇りを感じさせる。ただ音像の芯には意外に硬質なところがあるようで、音の密度は一応しっかりしている。反面もう少し立体感が欲しい。あるいは音像と音像とのあいだに空気を送り込みたい、という感じがする。離れて配置された互いに異なる楽器から出た音が、空間で溶けあってハモリ響く感じをもっと出したいという気分にさせる。

パイオニア C-21 + M-25

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 C3とM4を頂点としてプリメインアンプの9900、9800以下のひとつ前のシリーズのパイオニアのアンプの音には、基本的に、ウェットな滑らかさが基本になっていたが、C3/M4をエクスクルーシヴという別ブランドにして、新たにマグニワイド・シリーズになる直前あたりのパイオニアの音は、少しずつ方向転換しはじめて、音の力強さをかなり表面に押し出してきたように思える。あるいは音の力強さを、以前のように柔らかさやウェットな肌ざわりの中に包み込むのではなく、もっと単刀直入にあらわにしはじめた、といった方が当っているのかもしれない。このC21/M25の組合せでは、M25の方が格がずっと上という印象で、M25の方が色濃く持っているしなやかな力とニュアンスの豊かさを、C21では少々抽き出しきれないというよりもむしろ、C21の音の表情の硬い傾向が、M25の大らかな表現力をかなり抑えこんでしまっているように思えた。

パイオニア C-77 + M-75

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 セパレートタイプのアンプの中にも、大きく分類すると、コントロールアンプ、パワーアンプがそれぞれ別のメーカーの製品と組み合わせて使われることをかなり意識した作り方と、互いが相補う型で同じシリーズどうしで組み合わせることを前提とした作り方とがあるが、このC77/M75は後者のタイプで、単体に切り離しての試聴よりも、組み合わせた状態の方がいい。そのことは単体の試聴記の方をあわせて参照して頂きたいが、C77の大づかみでいくぶん反応の鈍い印象の音と、M75のコントラストの強い音がうまく補いあって、トータルにはまとまりのいい音に仕上っている。低音の量感は意識的に多めにしているらしく、またそれとバランスをとるためだろうか。高音域にも多少の強調があって、音をあまり聴き馴れない入門者にもわかりやすく作った、といった感じを受けるが、それだけに、セパレートタイプのアンプの中ではやや異色の、かなり表情過多な味の濃い作り方だと感じた。

スレッショルド 400A Custom

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかで細かく、大人っぽい熟成された、クォリティが高く安定した音である。
 聴感上での周波数レンジはナチュラルに伸びており、バランス的には、低域が柔らかく豊かで適度の芯があり、まろやかさは非常に素晴らしい。音色は、軽く明るく清らかなタイプで、音の粒子は、全帯域にわたり細かく磨き込まれている。
 CAS1カスタムと比較すると、低域は、エネルギー感として感じられる帯域が少し高く、腰高の印象があるが、エネルギー感は格段に異なり、中域の緻密さも一枚上手である。高域もハイパワーアンプとしては粒子が細かく滑らかで、スッキリとしており、この面でもグレイドが一段と勝っている。

トリオ L-07C + L-07M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 同じトリオの製品でいえば、プリメインアンプのKA9300のグレイドアップ版とでもいえるだろうか。ちょうどその時期にトリオの目指していた音は、どちらかといえばいくぶんコントラストを強調した、輪郭の鮮明な、そして低音をかなり引き締めた、ややハードな傾向だった。ただ、その中にたとえば弦楽器のような音にも、しなやかに反応してゆくナイーヴな面をあわせ持っているところが、単に硬い一方のアンプとは明らかに違う良さだ。07C/07Mの組合せにもほぼそのような性格が聴きとれる。それは、プログラムソースでいえば、どちらかといえばポップス系に、また組み合わせるスピーカーでいえば、JBL系よりはヨーロッパ系との相性、が感じとれる。言いかえれば、JBL系でクラシックを鳴らしたりすると、説明過剰というか、音の輪郭の鮮明すぎるところが多少鼻につく結果になりがちともいえる。05Mとの組合せの方で書いたように、最近のトリオは少し方向をかえている。

スレッショルド CAS1 Custom

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、NS10カスタムの場合よりも、中域の緻密さが一段と向上し、音像が引き締り、標準以上にクリアーな定位感となる。
 聴感上の周波数レンジはかなりナチュラルに伸びた印象があり、バランス的には、低域の量感は豊かであるが、やや軟調傾向があり、ウォームトーン系の音色である。中域は量的に充分あり、クォリティが高く、高域は予想よりも粒子が細かくはない。
 音の表情は、伸びやかさがあり、定格出力以上のエネルギー感があって、かなりシャープで活き活きとした、鮮度の高い音を聴かせる。米国系としてはユニークな音である。

オンキョー Integra P-303 + Integra M-505

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 大づかみにウェット型そしてどこか女性的なやさしさ。しかしLo−Dの7500や7300のところで書いたような、線の細い感じとは少し違う。決して音がひょろひょろしたり頼りなくなったりしない充実感も密度も、そして低音のしっかりした支えもほどよく持っていて、音域の中での欠落感のようなものがなく、バランスもよく整っている。その上で、音楽している演奏者の表情というか、表現上のニュアンスがとてもよく感じとれ、さらに空間にひろがってゆく音の余韻の響きと溶けあいの繊細な美しさも十分に再現できる。たいそう滑らかで上質の音といえる。弦や女声はもちろん、ベーゼンドルファーの艶や弾みもよく出るアンプはこれ以外には少ない。欲をいえば、こういう柔らかな音を鳴らしながらも、もうひとつピシッと引き締った冷徹な切れ込みも聴かせてくれれば満点なのだが、それはぜいたくというものだろう。しかしこのアンプくらい、鳴ってくる音と見た目の印象のちぐはぐなのも少ない。

トリオ L-07C + L-05M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 07C+07Mのところで書いたと同じたとえを持ち出すが、同じ07Cでも05Mとの組合せになると、KA9300よりもむしろKA7300Dの方に近くなる。9300のは愛、というよりその時期にトリオが作っていた音は、輪郭の鮮明さの強調が、プログラムソースや組合わせるスピーカーによってはいくぶん鼻につくようなところがあった。しかし、KA7300Dのあたりからは、そのいわばアクの強い面がすっかりこなれてきて、自己主張が抑えられ、プログラムソースに柔軟に反応してゆくナイーヴな面がいっそうよく聴きとれるようになってきた。それでいて、従前から持っていた音の構築のたしかさを失っていないから、たとえば「オテロ」の冒頭でも、このクラスのアンプとしてはかなりドラマティックな表情も再現することができる。ただ、細かいことをいえば低音でも07Cの個性(その項参照)が出てきてしまうし、いくぶん骨細に張り出す傾向もある。が、総合的にはかなりの音だ。

スチューダー A68

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 業務用のパワーアンプであるだけに、コンシュマー用のルボックスA740とはやや異なった音である。聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドをカットしたフラットレスポンス型で、中域は緻密さがあり、かなりクッキリと粒立つ。
 音の表情は、ややスタティックな面があり、一種独得のリファインされたような端正さがあり、冷たさが感じられるが、表現力はかなりナチュラルで、プログラムソースに対して正確さがある。音色は、フワッと明るく軽いタイプでキメ細かい。
 ステレオフォニックな音場感は、空間がやや狭く感じられるが、クッキリと箱庭的に広がり、一種の精緻さがある。

ラックス 5C50 + 5M21

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ラックスのトランジスター技術が高く評価されたのは、少し古い話だがプリメイン型のSQ505の時代にさかのぼる。ただそれからあとのしばらくの間、少々低迷ぎみの時期が長く続いたが、今回のこの「ラボラトリー・リファレンス」と名づけられた新シリーズで、ラックスは再びその持てる技術力を出し切って全力投球したという印象だ。このシリーズは、どの製品をとっても、現在の世界の水準からみても相当に高いレベルにあるといえるが、その中心的な存在がこの5C50と5M21の組合せだ。音の品位の高さ、透明な解像力の高さ、そして緻密でしっとりと肌ざわりの滑らかな質感のよさ、とても素晴らしいできばえだ。しいていえば、ラックスというメーカーが体質的にもっている真面目さもまたストレートに出ていて、単体それぞれよりも組み合わせた音の方に、かなり真面目な音を感じてもう少しハメを外してもという気にさせるが、それは私のような不真面目人間の言うことだろう。

スペクトロ・アコースティック Model 202

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプ♯217とほどよく似たキャラクターとクォリティをもったパワーアンプである。
 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、♯217の場合よりもクォリティが高く、緻密さが加わるが、さほど大きな変化ではない。バランス的には、低域は重量感、力感は抑え気味だが安定したベーシックトーンであり、中域は量的に充分あり、緻密さはいま一歩ではあるが、高域にかけて適度に粒立った印象があって、反応が早そうに聴こえる特長がある。ステレオフォニックな音場感は、左右のスピーカー間のすこし奥に広がり、音源が遠く感じられるが、鮮明さを失わないメリットは大きい。

ラックス CL32 + MB3045

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ラボラトリー・リファレンス・シリーズでトランジスター技術の粋をみせたラックスが、それでもあえて管球アンプを残しているのは、やはりトランジスターでは得られない何らかのメリットを認めているからに違いない。そのことは、音を聴いてみるとすぐにわかる。音楽が鳴り始めた瞬間から、ふっと肩の力が抜けてゆく感じで、テストしようなどという気負いを取り去ってくつろがせてしまうようなこの暖かい鳴り方はいったいどこからくる魅力なのだろう。解像力も甘いし、決して音を引き締めないから曲によっては少々手綱をゆるめすぎる傾向もなくはない。ただ、管球というイメージから想像されるような古めかしさはない。新しい傾向の音楽や新録音の魅力を十分に抽き出すだけの能力は持っていて、弦や声など、思わず、あ、いいなあ! と言いたくなるような親密感というのか、無機質でない暖かさに、ついひきこまれてしまう。こういう音を良いと感じるのは、こちらの年齢のせいなのだろうか。

テクニクス SU-A2 (Technics A2) + SE-A1 (Technics A1)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 単体のところでも書いたようにコントロールアンプA2を二台聴いたが少しずつ音が違うので少々不安だが、良かった方の組合せの音について書く。まず大づかみには、たいへん透明感の高い、どちらかといえばウェットで線の細い繊細でしかし決して力の弱さのない緻密な音がする。バランス的には、中〜高域にわずかにエネルギーが片寄る感じがあって、たとえば「オテロ」のトゥッティではときに音が部分的に張り出しすぎることもあるが、低域での支えがしっかりしていて、音の基本的なクォリティが十分に高いために、それは欠点ではなく特色として受けとれる。総体に音の過剰な肉づきを抑えてゆく傾向があるので、ふつうの音量で聴くかぎり、どちらかといえばやせ型の音といえる。音はとても美しいのだが、そこにどこか人工臭というのか、楽器の自然の音に対してもう少し作りあげた美しさのようなものを感じさせる。しかし、音量を上げるにつれて、骨格の強い力があらわになってくる。

SAE Mark 2600

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スケール感をタップリに、充分なゆとりをもった、豊かで力強い音を聴かせる。
 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、2100Lとの場合よりは一段とクォリティが高くなり、ハイパワーアンプならではの、おおらかで伸びやかな音になる。バランス的には、低域が豊かで柔らかく、力感があり、中域は予想よりも密度が薄く、中高域は粗粒子型で、粒立ちはやや甘いタイプである。
 音の表情は、豊かさがあるが反応はむしろ遅いタイプで、音量を上げると包み込まれるようなパワー感があるが、インパクトの強烈なガツンとくるパンチ力はない。コントラストは少し薄く、網目の粗い表現である。

ラックス C-12 + M-12

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たいそう品位の高い美しさに支えられた、しかしどこか小造りの感じのする、すっきりと整った音だ。ラックスのアンプには一貫してこの上品さがあるのだが、ときとしてそれが少々控え目にすぎると感じられることもある。ものごとをあらわにしない含みのある言いまわしは関西独特の奥ゆかしさでもある反面、少々品の悪いことを承知で腹にあることを言い切らないと気が済まない関東の人間には少々もどかしい感じがあるが、それに似ているのかもしれない。かといって押しつけがましい露骨な音は困るが、音楽を鳴らすための適度のバランスというものを頭に浮かべてみると、この12シリーズの音はやはり少々控え目すぎるように思える。この傾向はおもにC12の方がしはいしているらしい。とにかく磨き込まれた透明感のあるこの美しさは極上の水準だ。その美しさを長所とするには、しかし低音域全体の豊かな支えと、高音にかけての切れ込みが、それぞれもう少し感じとれる方がいいのではなかろうか。

ルボックス A740

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 オーバーオールのまとまりがよく、滑らかで適度のしなやかさのある音を聴かせる。
 聴感上では、ナチュラルに伸びた周波数レンジをもち、ローエンドとハイエンドを巧みにコントロールして抑えている。バランス的には、低域は柔らかく落着き、中域は音の粒子の滑らかさ、細やかさはあるが、密度は少し薄いタイプである。
 音の表情はややパッシブで、ある範囲内でキレイに整理された音を聴かせるが表現力はかなりあるようだ。ステレオフォニックな音場感はスッキリと広がるメリットがあり、音源は少し距離感がある。低域軟調傾向は、4343とのマッチングがよくないせいのようだ。

テクニクス SU-9070II (Technics 70AII) + SE-9060II (Technics 60AII)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マークIIでない方の、いかにも物理データ・オンリィといった感じの、一応の音はするが音楽としてどこかよそよそしさ、素気なさを感じさせる音に対して、II型は一変している。基本的には、おそらく物理特性を重視した正攻法での作り方であるらしく、音のバランスがよく、すべてのプログラムソースに対して欠点の少ない、いわば過不足のない音を聴かせるところはたしかにテクニクスだが、しかし従前までのそれとは思えないほど、音が生きていてほどよい魅力も感じとれて、極上とはいえないまでもかなりの随順でのできばえだ。ひとつひとつのぷろぐらむそーすについて細かいことを言い出せばいろいろ注文もある。たとえば弦楽四重奏では、鳴りはじめた瞬間から聴き手をひきずりこむほどのしっとりした雰囲気までには至ってないし、ベーゼンドルファーの音も基本的な骨格はしっかりしているが、あの独得の艶と色気までは出しきらない。ただそれはこの価格帯のアンプには少し無理な注文だと思う。

QUAD 405

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スケールは小さいが、機敏でシャープな音をもつパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジはかなりワイドレンジ型であるが、バランス的にはローエンドが抑えられ、中域から高域がスムーズに伸びている。低域は軽く、量感が4343に対してはやや不足するが、反面においてブーミーな音とならず、芯のしっかりしたシャープさがメリットになる。
 音の表情は、伸びやかで弾みがあり、軽快さが独得の魅力である。コンパクトにまとめられた、100W+100Wのパワーアンプとしてはトータルのまとまりに優れ、予想よりもゆったりとした音である。音場感はスッキリと広がり、音像はシャープだ。

スタックス SRA-12S + DA-80M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 組み合わせたSRA12Sは、コントロールアンプとしてよりは同社のヘッドフォン(スタックスではイヤースピーカーと呼んでいるが)の専用アンプとしての性格が濃いと思うし、価格的にみてもDA80M(2台)とはかなりバランスが違うようなので、本来は、DA80Mは別のコントロールアンプでとライブすることを考えているのではないだろうか。ただ、この両者の組合せで鳴らしてみると、いかにも屈託のないのびのびとした明るさ、一様にステージ前面に並列にせり出したような独特の音像の並び方、といった音の性格は一貫している。その意味で、音像のひとつひとつに、もう少し引きが欲しい。言いかえれば奥行き方向への立体感をもっと感じとりたい。また、シェフィールドのテルマ・ヒューストンの黒人独特の声の艶とか、ベーゼンドルファーの一種脂っこいトロリとした味わいなどを、どちらかといえば脂気をおさえて鳴らす傾向があった。

QUAD 303

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ソリッドで硬質な音をもつパワーアンプである。聴感上での周波数レンジは、現在の水準からすればややナローレンジ型だが、トータルのまとまりがよい。バランス的には、低域はゆるやかにレスポンスが下降し、中域は量的には適度であり、高域もハイエンドが抑えられているように聴き取れる。
 電源電圧は定格110V使用となっているために、100Vでも関係ないと思いがちであるが、音の姿・型がやや崩れた、かなりナローレンジ型の、張りがない反応の鈍い古風な音となるために、110V使用が条件となる。この場合は、いわゆるQUADらしい、硬質な魅力をもった、シャープでクッキリとした独得の音である。

ソニー TA-E88 + TA-N7B

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ソニーにかぎらずどのメーカーの製品でも、概してパワーアンプよりもコントロールアンプの方に、そのメーカーの音が色濃く反映される傾向がある。この組合せでも、それぞれの単体のところでも書いたことだが、いくぶんアクの強さ、あるいは押しの強さを感じさせる音の傾向はE88の方に多く感じられ、N7Bの方は基本的にそれと似ているがE88よりはナイーヴな面を持っている。この両者を組み合わせた音は、やはりE88の個性が支配的になり、たとえば菅野録音の「サイド・バイ・サイド3」のピアノトリオを例にあげると、ピアノの打鍵音をかっきりと際立たせ、ベースのピツィカート、そして前半をコードで支えるギターの音などを、ひとつひとつ、目鼻立ちをはっきりさせながら楽器の存在を強調する感じで聴こえる。これに限らず、録音されている音の姿をひとつひとつあらわにしてゆく傾向があって、そのことが、曲によって少々分析的にすぎるようなイメージを抱かせる場合もあった。

マッキントッシュ MC2205

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、予想よりもソリッドで硬質な面が顔を出し、マッキントッシュらしい、豊かさ、力強さが充分に音として出ているとは思われないようだ。
 聴感上での周波数レンジはかなりナチュラルに伸びており、バランス的には、低域は量感があるが、重く、鈍さもあり、中域は量的にはタップリとし、厚みもあり密度も濃いが、やや硬質な面があり、音の粒子が少し粗粒子型である。コントラストは充分につくが、細部をクリアーに引き出せず、やや大柄な印象となる。ステレオフォニックな音場管は適度に広がり、音像はかなりクッキリと定位をするが、輪郭は粗いタイプだ。