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パイオニア S-933

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 ブックシェルフとしては高級大型システムに属する。32cmウーファー、6.5cmドーム型スコーカー、リボン型トゥイーターの3ウェイ・3ユニット構成をとり、エンクロージュアはバスレフタイプである。朗々とした明るい響き中にも、緻密な音像のエッジが明快に再生される。コーン、ドーム、リボンと各ユニットの構造のちがいを、巧みに調和させ、質感もよく統一されているのが見事である。

パイオニア S-933

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 パイオニアS933は、S955の普及モデルと見れるが、最高級ブックシェルフとして同社のプレスティッジといってよい力作である。リボン・トゥイーター、ドーム・スコーカーに32cm口径ウーファーという3ウェイ構成のバランス、全体のトーンクォリティの品位の高さは第一級品である。

パイオニア S-933

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 これはいいスピーカーだ。どのようにいいかというと、まろやかなひびきにこのましく対応しながら、硬質な、ひきしまった音の特徴もはっきりと示すからだ。たとえば、❷のレコードでのグルダのかすれたような声をそれなりに示し、その一方で❸のレコードでバルツァのはった声を金属的になることなく示しているあたりに、このスピーカーの守備範囲の広さが認められる。しかも、このスピーカーは、妙に誇張したような、わざとらしい音をきかせない。❶のレコードにおさめられているような音楽では、もう少し軽快さがほしいと思ったりしなくもないが、そこでききてにきかせるべき音は、一応つつがなくきかせる。その辺に、このスピーカーの、敢て言えば素性のよさ、周到さを認めるべきかもしれない。これでさらにきらりと光るところがあればいうことないのだが、それは多分、望みすぎというものだろう。

総合採点:9

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

パイオニア S-933

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 低・中・高、それぞれのユニットが、全く違った素材で個性されていて、質感や音色のバランスをとることは相当に難しいと思うが、かなりよくまとめあげた製品だと思う。中ではメタルドームの音域が、多少張っていて、リボントゥイーターのレヴェルもそれとバランスを採るためか、かなり張っているで、相対にいくぶん金属質の輝きのある音に仕上っている。その音にくらべると低音は少し重い。というようにこまかく言えば音のつながりに注文はあるにしても、中音域のレヴェルをほんのわずかおさえて使うと、設置や組合せにあまり神経質にならなくとも、ひととおりの音がして、一応の出来栄えといってよいだろう。パワーにも強い。高域がよく伸びているせいか、実況録音盤での音場のひろがりはよく出るほうだ。ただ、中〜高域の硬さと質感はクラシックには不満。ことにフォーレのソナタでは、ちょっと人工的な響きがありすぎて、フォーレの世界にはならないのはやむをえないのか。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:8
バランス:7
質感:7
スケール感:7
ステレオエフェクト:8
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:7
組合せ:普通
設置・調整:普通

パイオニア S-933

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 高級ブックシェルフ型スピーカーとしての面目躍如たる製品。3ウェイ3スピーカーをバスレフ型エンクロージュアにまとめているが、各ユニットのクォリティは大変に高い。そして、その三つのユニットがそれぞれ異なった構造のものながら、全体の音のまとめが巧みで完成度の高いシステムとなっている。欲をいうと、もう一つ明るく澄み切ってほしいところもあるが、楽音の固有の質感をよく鳴らし分けるし、余韻や空間の再現もかなり満足のいくものだ。まろやかな楽器の質感の再生は見事で、音に暖かみと幅がある。ヴァイオリンも倍音成分のバランスがナチュラルでスムーズだし、ピアノもよく歌ってくれる。オーケストラのハーモニーも重厚なテクスチュアがよく再生されるが、やや中低音が重い気もしなくはない。この帯域がもう少し軽やかになればもっといい。ハイレベル再生も安心して聴けるのでポピュラー系の音楽のスポーティな聴き方にも十分対応する。充実したジャズやロックのサウンドを浴びることができた。

総合採点:10

パイオニア S-933

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

S955のトーンポリシーを受け継いだ標準的なサイズのブックシェルフ型3ウェイ。新開発ベリリウム振動板のドーム型中音とリボン型高音ユニットはつながりがよく、滑らかで美しい音が特長。