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ラックス L-48A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 まず大掴みにいえば、音のバランスがよく整い、耳ざわりな音を注意深く抑えた、上品な音質。複雑な編成のオーケストラ曲をうまくハモらせ、フォルティシモからピアニシモにかけての、音のバランスがくずれるようなこともなく十分納得させる響きで、クラシックファンをかなり堪能させてくれる。この点、マランツPm4が新しいポップスの方向にピントを合わせているのとはまったく対照的。
 さすがにこの価格帯になると、音の基本的性質がよく磨かれてくることが納得できる。
●カートリッジへの適応性 オルトフォンVMS30/IIとの組合せが特によく、このカートリッジのもっている、いく分ソフトな肌ざわり、滑らかでトロリとした味わいをかなり楽しませてくれる。ベートーヴェン第九(ヨッフム)やアイーダ(カラヤン)のような、きわどいフォルティシモのある曲でも十分楽しめる音がする。表示パワー(70W)は必ずしも大きくはないが、たとえばエムパイア4000DIIIで「ニュー・ベイビィ」や「サンチェスの子供たち」などをかなりのハイパワーで再生しても、音の美は十分。ただし、ポップスでの鳴り方は、いくぶんソフトで、もうひとつ打音がピシッと決まりにくい部分があり、この点、衝撃的な音を求めるむきには、少し物足りないかもしれず、あくまでラックス流の上品な音にまとめる傾向がある。エラック794Eで傷んだレコードをプレイバックした場合に、レコードの傷みや歪がわりあいに露呈されてしまうタイプで、前述の音の印象からは、やや意外。
 MCポジションは、オルトフォンMC30でも、ゲインは実用上ギリギリだが、音質は案外よい。軽いハムが混入する傾向のノイズはあるものの、耳につきにくいタイプなので、このクラスのアンプの中では、オルトフォンが楽しめる方。外附のトランスを併用すれば、いっそう緻密さが増し、ノイズはほとんど耳につかず、オルトフォンの持ち味をよく生かして楽しませる。デンオンDL303の場合には、303自体の中域から低域にかけての音の細い性質がわずかの弱点となり、アンプの方で低域を補整して聴きたくなる。中~高域にかけての繊細な味わいはL48Aの持っている性質とよく合うようで、なかなか楽しめる。
●スピーカーへの適応性 さすがにこのクラスになると、アルテック620Bカスタムのような気難しいスピーカーが、わりあい、良い感じで鳴りはじめ、アンプ基本的な性質がかなりよいということが想像できる。スピーカーの選り好みはかなり少ない方だ。
●ファンクションおよび操作性 ボリュウムを上げたままスイッチ類を操作しても、クリックノイズはよく抑えられている。フォノ聴取時に(特にMMポジションでは)チューナーからの音がかなり明瞭に混入し、ボリュウムを上げると、盛大に聴こえる。再検討を要望したい。
●総合的に FMの混入は問題だが、その点を除けば、音質、操作性ともよくこなれ、パネル面もラックス独特のエレガントな雰囲気をたたえ、なかなか魅力的な製品。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:中
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):2+
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):1+
5. TUNERの音洩れ:あり(かなり明瞭、盛大)
6. ヘッドフォン端子での音質:2-
7. スピーカーの特性を生かすか:2
8. ファンクションスイッチのフィーリング:2
9. ACプラグの極性による音の差:中

ラックス L-48A

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックス独自のデュオベータ回路を採用したアンプ群に、新しくL48Aプリメインアンプが加わることになった。
 デュオベータ回路は、パワー部では全帯域にわたって音質的に最適量のNFBをかけ、可聴周波数帯域外の超低域についてはDCサーボ回路によりダンピング特性を向上している。プリアンプ部は、低域と中高域に2つのNFBを組み合わせ、全帯域にわたりバランスのよい再生音が得られる特長がある。また、パワーアンプ出力段は、高域特性が優れたパワートランジスターに充分なアイドリング電流を流し、スイッチング歪を低減し、デュオベータ回路を効果的としている。イコライザーアンプはハイゲインタイプで、MCカートリッジがダイレクトに使えるタイプである。トーンコントロールは、湾曲点切替周波数2段切替のLUX方式NF型。その他、フィルムコンデンサーには機械振動を抑えるため、両端子間に直流バイアスをかけ、電気的に振動を抑えて使っているのが注目される。外観は、薄型プロポーションのリアルローズウッド木箱入り。10素子のLEDピーク指示パワーインジケーターが特長である。
 音色は、明るく滑らかなタイプだ。デュオベータ方式を完全に消化した、いかにもラックスらしい特長がよく出た好ましい音である。音場感プレゼンスも自然で、トータルバランスの優れた製品だ。

ラックス L-48A

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 ラックスの新しいシリーズがL58Aという、いわゆる高級プリメインアンプで、このアンプによってラックスの新しい側面が発揮された。そのL58Aを聴いた印象は、おそろしく音が滑らかで、透明で、上質で、聴き手を幸せな気分で満たしてくれる。それがこのL48Aにそっくり受け継がれているということを聴くことができて、私は聴き終わって非常に満足している。
音質 総合的に言って、これは質の高いアンプだと言っていいと思う。このアンプの音というのは、いまいったように滑らかさ、美しさということがまず第一だが、音にじめじめしたところがなく、とても明るく、クリアーで、すべての音が見事にハモってくれる。音楽を聴いていてすべて納得ができる。耳あたりは決して荒くない。そのくらい美しく磨かれている。アラを探してやろうというような意地の悪い聴き方を何度してみても、けってはなかなか見つからない。決してやせたり、細くギスギスしたりということがなく、量感はたっぷりしていながら、美しく、そして充実した音を聴かせてくれる。それから音はしっとりしているが、それが変に湿ったり、暗くなったりしない。明るさを保ったままで、しっとりしている。ベタぼめのようだが、このアンプの音というのは、この値段を考えると信じられないぐらい質の高い、本当の高級アンプで聴くことのできる音に近いものだと思う。
 もう一つ、このアンプまできて、初めてブルックナーのシンフォニーの第一楽章から本気で聴いてみようという気になった。実はこれは大切なことで、この一つ前のマランツPm4というのは、大変いい面を持ったアンプだが、そのマランツではブルックナーを聴こうという気には、ちょっとなれなかった。つまり、ラックスもマランツも両方とも大変優れたアンプだが、マランツはポピュラー志向であるのに対して、ラックスはクラシック志向ではないかという気がする。
 それではポップスはまるでだめかというというと、そんなことは全然ない。例えばマランツなどよりも少し甘口、ソフトタッチになるという違いはあっても、しかし決して露骨に柔らかくなったり、ふやけたりするわけではない。力は十分持ちながら柔らかく、滑らかに表現してくれるわけで、ポピュラーでも十分楽しめる。何しろ音質がずば抜けていいアンプだったという印象だ。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプはオルトフォンMC20MKIIではちょっとかわいそうという気がした。ノイズの質は悪くないけれども、ノイズの量が決して少なくないので、MC20MKIIで十分な音量で聴こうとすると、ノイズがかなり耳につく。デンオンの103D、これは十分使用できる。MCヘッドアンプ自体の音質はよかった。
トーン&ラウドネス トーン・コントロールはターンオーバー切り替えのついている本格的なもので、問題なくよく効く。特にトレブルの方をターンオーバー4kHzにして強調したときの音の上がり具合というのは、音を強調してみてなおさらこのアンプが基本的に持っている質がすばらしくいいものだったということを感じさせた。高音を上げても鋭くならないで、量だけがきちんと上がってくる。ターンオーバー切り替えのスイッチをうんとゆっくり切り替えようとすると、途中で途切れる部分があって、そこに妙なハムが出る。これは回路構成上仕方がないのだが、あるいは改善できるのかメーカーにただしてみたい。
ヘッドホン ヘッドホン端子は、スピーカーで聴いた時に比べるとちょっと音の出方が低い。音は決して悪くはないが、もう少し鳴りっぷりがよくてもいいのではないかと思う。ラックスのアンプは従来から、ヘッドホン端子の出力を少し低く取りすぎる傾向がある。その点、このアンプはかなり改善されてはいるが……。

★★★