Tag Archives: A10(NEC)

NEC A-10 TYPEIII

井上卓也

ステレオサウンド 78号(1986年3月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 NECのプリメインアンプA10は、昭和58年6月に、独自の構想に基づいたリザーブ電源方式を採用し、一躍NECオーディオの実力と魅力を世間に認めさせる、いわば画期的な成功をおさめたモデルである。昭和59年9月には、電源部を新リザーブII方式に発展させ、A10II
に改良されている。今回、二度目の大改良が加えられ、このタイプのファイナルモデルとでもいうべきA10TypeIIIとして発売されることになった。
 シンプル&ストレート思想は、かなり撤底され、イコライザー段はMM型専用。ノーマルの使用状態では、CD、TUNER、AUXなどの入力は、TAPE1/2を含み、セレクタースイッチ、ボリュウム、左右独立のバランス調整を通るのみで、ダイレクトにパワーアンプに送られる設計だ。
 機能面では、モード切替、トーンコントロール、テープモニター系が省略され、TAPE1と2は、ファンクション切替に組み込まれた。
 次に、プリアンプとパワーアンプを独立して使うための切替スイッチが設けられており、この場合のみに利得18dBのフラットアンプが信号系に入り、それを経て、プリアウト端子に送られる。フラットアンプ出力部には、別に利得0dB、位相が180度回る反転アンプがあり、独立した出力端子をもっており、この2種の出力端子とパワーイン端子間を外部接続で使い分ければ、左右チャンネル同相で、入出力の位相を正相にも逆相にもコントロール可能。この面での位相管理が行われることが少ないCDソフトヘの対応や、スピーカーの+端子に電池の+をつなぐとJISとは逆にコーンが引っ込む逆相型スピーカーや、アナログカートリッジでの正相型や逆相型に対応できるという、現状のオーディオの盲点をついた設計が非常にユニ−クである。なお、外部接続でプリアンプとパワーアンプを接続するときのフラットアンプの利得をキャンセルするアッテネーターがパワーアンプ入力にあり、利得は一定である。その他の機能にフォノダイレクトがあるのも、シンプル&ストレイト思想の表われだ。
 パワーアンプは、低負荷時のドライブ能力が向上し、約20%強化された電源部のバックアップで、ダイナミックパワーは8Ωで80W+80W、2Ωで320W+320Wの完全保証は見事な成果である。
 機構設計面では、金属製脚部が通常の4脚式の他、3脚式も可能で、設置場所でのガタや本体のネジレが解消され、音質上で利点は多いとのこと。
 A10TypeIIIは、穏やかであったA10IIと比較して、かつてのA10登場時点での鮮明で密度感があり、質的に高い音を再び現時点で甦らせたようなクォリティの高い音を聴かせてくれる。音質面での見事な成果と比較をすると、デザイン面の特徴は、古くなりすぎた印象だ。

NEC A-10

井上卓也

ステレオサウンド 67号(1983年6月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 昨年のCDプレーヤーCD803の優れた音質で急激に脚光を浴びたNECから、独自の最新技術を採用したプリメインアンプが発売されることになった。
 薄型的なパネルフェイスになりがちなプリメインアンプのなかにあって、オリジナリティのあるデザインが目立つ、このA10は、内容的にも従来にないユニークな発想に基づいた新開発の電源部を採用していることに最大の特徴がある。
 一般的なアンプに使われる電源部は、50/60Hzの100Vをトランスで必要な電圧に変換してから整流器で100/120Hzの脈流に変え、これをコンデンサーに充電、放電させて滑らかにして直流化している。手の指を拡げたように間欠的にコンデンサーに充電する充電波形が従来型とすれば、新開発の電源方式は、両方の掌を重ねて指の間を埋めたように充電時間を増し、放電時の充電電流が途切れた時間を補うという発想が出発点となったものだ。
 このタイプの特徴は、従来型では、充電時以外はコンデンサーの放電にたよっていた部分を、リザープ電源と名付けられた別電源で充電しているため、電源インピーダンスが低下し、電流供給能力を増大できることにある。
 A10の定格を見ると出力は、8Ω/60W+60W、4Ω/120W+120Wとあるように、この新開発の電源方式は、半分の負荷で2倍の出力が得られる理想的電源として動作していることが判かる。
 その他、全増幅段プッシュプル増幅、全段独立シャントレギュレーター電源採用など、オーソドックスな設計方針が特徴だ。
 A10は、量的にも充分に豊かであり、ソリッドに引き締まった質感のよい低域をベースに、明解な中域が目立つ、このクラスとしては見事な音が印象的だ。この下半身はたしかに素晴らしいが、中域の少し上にキャラクターがあり、高域をマスキングし、結果として低域バランスの音に聴こえるのが残念だ。定格出力は8Ω/60W+60Wだが、パワー感は充分にあり、これは新電源方式の成果だろう。ボンネット部分の機械的共振を適度の重量物を載せて抑え、見通しのよい高域とすることが使いこなしのポイント。こうすることで、質的に高い低域が活かされ、相当に聴きごたえがある立派な音が得られる。