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ラックス 5C50

瀬川冬樹

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
特集・「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 ラボラトリー・リファレンス・シリーズと名づけて、ラックスが全面的にイメージチェンジをはかった一連のシリーズの中心をなすものが、この6C50と、パワーアンプの5M21だろう。
 こんにち管球式のアンプになお相当の比重を置いている唯一の国内メーカーだけに、トランジスターアンプに関しては、とちらかといえばや保守的な姿勢をとり続けてきたようにみえた。もちろんトランジスター化は意外に早く、すでに一九六二(昭和37)年に、トランジスタータイプのコントロールアンプPZ11を発表している。これはいまふりかえってみると、こんにちの超小型アンプのはしりとも考えられないことはない。そして翌年にはプリメイン型のSQ11を作っていて、トランジスター化では最も早い時期とされているトリオのTW30にくらべても、そんなに遅れをとっていない。
 その後SQ301で、いわゆる高級プリメインの線を一応完成させたが、しかしラックスのトランジスターアンプが本当の意味で高く評価され広く認められるに至ったのは、SQ505,507の2機種以後のことだ。これはのちに505X、507Xのシリーズでさらに改良されて、当時の他の類機を大きくひき離して注目を浴びた。
 けれど、それからあとのしばらくのあいだは、外野からみるかぎり、ラックスのアンプはあちこちと迷いはじめたようにみえた。いくつもの新製品が発表され、部分的にはラックスらしいユニークさがみられたにせよ、総合的なまとまりという意味では507Xの完成度の高さに及んでいない。
 三年まえ(一九七五年)に、創業五十周年を迎えて発表したハイパワーアンプM6000及びM4000で、ラックスのトランジスター技術は再び注目されはじめた。だが、これとおそらくはペアとして企画されたらしいコントロールアンプC1000は、そのかなり異色のデザインがユーザーを戸惑わせたようだ。ラックスは以前からトーンコントロールをはじめとする音質調整方法には熱心で、コントロールアンプも管球式に関するかぎりCL35シリーズのような佳作を生み出しているが、トランジスターでのコントロールアンプに関しては、多くの人たちを普遍的に説得できるほどの完成の域には、いまひとつ達していなかったと思う。
 その意味では5C50は、ラックスが久々に──というよりトランジスタータイプのコントロールアンプとしては初めて、そしてようやく、だがみごとに──放ったヒットだと思う。おそらく、ラックスの内部で何かがひとつふっ切れたような、迷いのない透明で十二分に美しい質感。とても品の高い、素晴らしく滑らかな音質。現代のアンプに要求される入力に対する応答も早く、音の解像力も、すみずみまで見通せるように優秀だ。そういう音質は、とうぜんの結果としていくらか冷食系のクールな印象を与える。また、ぜい肉の抑えられた感じになるから音がいくらか細い印象を与える。しかしそれは必要な肉までそぎ落すギスギス型ではない。
 ただ私個人は、この5C50は単体としてではなく、トーンコントロールアンプ5F70と一体にした形を基本に考えている。5F70は、音質を劣化させずにトーンバランスをコントロールできる優秀な製品だ。75Hzから150Hzのあいだに任意のディップを作るアコースティックコントロールも、部屋の音響特性によってはきわめて有効でユニークなコントロールだ。未確認の情報だが、QUADがそらく近々発売するコントロールアンプには、ラックス独創のリニアイコライザーに似たコントロールがついているといわれる。本当だとしたら、誇りに思っていいだろう。

ラックス 5C50, 5M21, 5T50, CL36, M-4000, T-110

ラックスのコントロールアンプ5C50、CL36、パワーアンプ5M21、M4000、チューナー5T50、T110の広告
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

5C50

ラックス 5C50

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

周到に練り上げられたという印象の品位の高い、透明で美しい音質。

ラックス 5C50

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスのLNP2Lとくらべてそう聴き劣りしなかったコントロールアンプは少ない。強いていえばLNP2Lがどんなプログラムソースにもどこまでもしなやかに反応してゆくのにくらべると、いくらか真面目で姿勢が固く、音の脂こさが少ないので、たとえばシェフィールドのテルマ・ヒューストンの声など、多少おもしろみを欠くことはあるが、総じて音のバランス、密度、質感、どこをとっても極上のできばえといえる。発売以後、数回に亘って内部が小改良されていると公表されているが、今回のサンプルについていえば、現在入手可能なコントロールアンプの中でもかなり上位にランクされるだろう。個人的にはトーンコントロールアンプの5F50と組み合わせて使いたい。

ラックス 5C50

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の粒子は、全帯域にわたって滑らかで、細かくよく磨かれている。聴感上の周波数レンジは充分に伸びているが、表情がおだやかで、やや間接的な表現をするために、クリアーに伸びた印象とはならない。
 音はやや薄いタイプで、音場感は左右によく広がるが、前後方向のパースペクティブは抑えられ、音場は、左右のスピーカー間の奥に引っ込んで広がる。リニアイコライザーをアップティルトにすると、スケールは小さいが反応の早い、キレイな音になる。4000D/IIIや881Sなどのハイインピーダンス型カートリッジでは、負荷抵抗を100kΩとすると、クリアーさ、シャープさが増して、音の鮮度感が高まる。

ラックス 5C50 + 5M21

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ラックスのトランジスター技術が高く評価されたのは、少し古い話だがプリメイン型のSQ505の時代にさかのぼる。ただそれからあとのしばらくの間、少々低迷ぎみの時期が長く続いたが、今回のこの「ラボラトリー・リファレンス」と名づけられた新シリーズで、ラックスは再びその持てる技術力を出し切って全力投球したという印象だ。このシリーズは、どの製品をとっても、現在の世界の水準からみても相当に高いレベルにあるといえるが、その中心的な存在がこの5C50と5M21の組合せだ。音の品位の高さ、透明な解像力の高さ、そして緻密でしっとりと肌ざわりの滑らかな質感のよさ、とても素晴らしいできばえだ。しいていえば、ラックスというメーカーが体質的にもっている真面目さもまたストレートに出ていて、単体それぞれよりも組み合わせた音の方に、かなり真面目な音を感じてもう少しハメを外してもという気にさせるが、それは私のような不真面目人間の言うことだろう。

ラックス 5C50

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ラックス新しいラボラトリー・リファレンスシリーズのコントロールアンプであり、シリーズの名称が示すように、最新の技術動向を反映して、アンプ系のDCアンプが全面的に採用されている点に特長がある。ペアとなるパワーアンプもDCアンプであるために、入力に直流分が混入しているとスピーカーを破壊しかねないため、完全な保護回路と表示ランプを備えているのは、実用上での大きな利点である。

ラックス 5C50

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 新しいラボラトリー・リファレンスシリーズの音自体、ややクールな傾向だが、ことに5C50の音にその傾向が強く、弦やヴォーカルにはやや冷徹な感じになりがちだが、あとから発売された5E70(トーンコントロールユニット)と組み合わせてバランス的に補正を加えると、音に適度の厚みも出てきて、本来の解像力の良さ、引締って質の高い音質が生きてくる。デザイン的にはレバースイッチの表現がやや大仰だと思うが。