SME 3009

菅野沖彦

スイングジャーナル 10月号(1968年9月発行)
「ベスト・セラー診断」より

 トーン・アームの最高級品は何かときくと、誰の口からも即座にSMEの3字が帰ってくる。SMEアームは現在のトーン・アームの王座にある。
 SMEアームが英国から日本へ入ってきたのはずい分前のことだ。はっきりした記憶はないが、5年にはなるだろう。その間にオーディオ機器は急速な進歩をとげているし、特にプレーヤー関係パーツは軽針圧の傾向が大きく支配し、多くのカートリッジやアームが改良に改良という形で消えたり変貌したりした。しかし、SMEアームは細部のちょっとした変更以外、形を変えていない。しかも今だに現役として最高の性能を誇っているのである。この製品がいかに高い完成度をもっていたかが分ろうというものであるし、現在のオーディオ技術の水準を数年前に確保していたともいえるのである。現在のどれほど多くのアームがSMEに方向を指示され、SMEのもつ特性を追いかけたことか。そして、SMEが数年前に現れたことによって国産アームに対する一般の要求度が著しくシビアーで高度なものになったのも事実である。数々の新機構、当時として考え得た総てのアクセサリー類、最高の機質と精密な仕上げSMEアームはその完璧で安定した動作と、溢れるばかりの機械美、抜群の耐久性など、すべて私自身でたしかめた優秀製品なのである。価格の高いことも相当なものだが、実際に数年間使ってみると十分それに応えるものであることがわかる。手元の数台のプレーヤーにつけられた他のアームが、あるいはガタになり、あるいは動作が鈍くなって交換されていく中に、SMEのアームだけは全く買った時と同じ状態の外観と性能を維持しているのである。
 SMEアームの特長について簡単にふれておくと、6つのポイントが考えられる。①ナイフ・エッジ方式による高感度、高耐久性の支持、②インサイドフォース・キャンセラー機構、③ラテラル・バランサー、㈬スライドベース方式、④油圧式、アーム・リフタ一機構、⑤ヘッド・アングル可変がそれである。これらの特長は現在では高級アームのほとんどが備えているから今更とも思えるかもしれないが、それらはすべてSMEによって初めて実現されたものといってよいのである。S. M. E. LIMITED, という会社は英国のサセックスにあるらしいが、もともと大変なオーディオ・マニアが自分の理想とする機構をすべて備えたアームを作ろうという夢から生れた製品であり、会社であるという。
 ナイフ・エッジ方式というのは今でもあまり他に類がなく、これはアームの上下動方向の支持が鋭利なカミソリの匁先で支えられているものだ。左右の回転はベアリング式を採用している。この支持方式と精度の高さのためにアームの実効質量はそう軽くはないにもかかわらず、1グラム以下の軽針圧トレース、レコードのソリなどに対する追従性も見事な性能を発揮するのである。そして、それでこそ、かえってアームのマスの大きさが適応カートリッジの範囲を拡げてユニバーサルな特質をもつことに役立っている。トランス内蔵のオルトフォンなどの重いカートリッジから、穴あきの軽量シェルにつけた自重約10グラムの軽いものまでいずれにも優れた低域特性が得られる。インサイドフォース・キャンセラー機構はずい分批判もあびてはいるが、その後の多くのメーカーが踏襲している事実は否定できない。マニア気質の満足度というものを考えると、実害を示す以外に反論はできない。リフターはいまだにどの製品のものより動作確実で実用的。スライドベースはオーバー・ハング調整には絶対に有利。高価なのと扱いの難しさが欠点といえばいえるが、それこそぜいたくな楽しさというものだ。

ヤマハ YM-30

ヤマハのシステムコンポーネントYM30の広告
(スイングジャーナル 1968年10月号掲載)

Yamaha

サンスイ SP-100

サンスイのスピーカーシステムSP100の広告
(スイングジャーナル 1968年10月号掲載)

SP100

サンスイ SAX-350, SAX-800

サンスイのレシーバーSAX350、SAX800の広告
(スイングジャーナル 1968年10月号掲載)

SAX350

ラックス SQ38F

ラックスのプリメインアンプSQ38Fの広告
(スイングジャーナル 1968年10月号掲載)

SQ38F

オンキョー MAC-2000, MAC-2200

オンキョーのシステムコンポーネントMAC2000、MAC2200の広告
(スイングジャーナル 1968年10月号掲載)

MAC2200

ステレオギャラリーQ 300B/I

瀬川冬樹

ステレオサウンド 8号(1968年9月発行)
「話題の新製品を診断する」より

 大阪は日本橋のオーディオ専門店、「ステレオギャラリーQ」が、WE300Bを大量に入手して、限定生産でアンプを作ってみたからと、本誌宛に現品が送られてきた。かつて八方手を尽してやっとの思いで三本の300Bを手に入れて、ときたまとり出しては撫で廻していた小生如きマニアにとって、これは甚だショックであった。WE300Bがそんなにたくさん、この国にあったという事実が頭に来るし、それを使ったアンプがどしどし組み立てられて日本中にバラ撒かれるというのは(限定予約とはいうものの)マニアの心理としては面白くない。そんなわけで、試聴と紹介を依頼されて我家に運ばれてきたアンプを目の前にしても、内心は少なからず不機嫌だった。ひとがせっかく大切に温めて、同じマニアの朝倉昭氏などと300Bの話が出るたびに、そのうちひとつパートリッジに出力トランスを特注しようや、などと気焔をあげながら夢をふくらませていたのに、俺より先に、しかもこう簡単に作られちゃたまらねェ! という心境である。
 とはいうものの、プッシュプルなら30ワット以上のハイパワーを(Aクラスで)楽々取り出す使いかたもできるところを、あえてシングルで使うという心意気に嬉しさを感じるのは、マニアならではの心理だろう。ただ、このアンプの回路構成はウェスターンのモニター・アンプの原回路にはまったくとらわれずに、12BH7のカソードフォロアを直結ドライブにシリコン整流器の電源回路と、全く現代風である。この点はオールドファンには不満かもしれない。シャシー・コンストラクションにもそれは当てはまる。クロームメッキとブラックの、マッキントッシュばりのコントラストが美しいが、300Bの傍らにWE310Aや274Bが並んでいなくては気の済まないマニアも少なからずある筈だ。
 しかし好き嫌いを別にしてこのシャシーの構成はなかなか立派なものだ。入・出力端子やACソケット・電源コード類が、シャシーの長手方向に二分されているのはコードの接続上扱いにくいことがあるかもしれない。それと、トランス・チョーク類に大きな赤で目立つLUXのマークが入っているのは、二個も並ぶとちょっとうるさい気がしないでもない。しかしメッキの光沢も美しいし、文字の入れ方もなかなかキメが細かくセンスが良い。パワーアンプとしては魅力充分というところである。
 自宅での試聴には、プリアンプにはJBLのSG520及びマランツ7を、スピーカーにはJBLの3ウェイ、タンノイGRFレクタンギュラー(オリジナル・エンクロージュア)、及びアルテック604Eをそれぞれ交互に組み合わせ、カートリッジにはEMTを使った。
 JBL、アルテック、タンノイのいずれのスピーカーでも、ふっくらと暖かく、艶やかに濡れたような瑞々しい音質である。WE300Bともなると、どうしてもある種の先入観をもって聴いてしまうが、常用のJBL・SE400Sに戻して音を確認し、再び300Bを聴いてみても(ふつうこのテストをすると大抵のアンプがボロを出してしまうのだが)、SE400Sのあくまでも澄明に切れ込んでゆく冷たいほどの爽かな解像力とは対照的に、豊かでしっとりやわらかい再生音には、えもいわれない魅力がある。比較のためにQUAD−II型も鳴らしてみたが、300Bは格段に上である。JBLと共に手許に置いて、気分によって使い分けたいという気持を起こさせたのは、昨年我家でテストしたマッキントッシュ275以来のことだ。要するに管球式アンプの最も良い面を十分に発揮した素晴らしいアンプで、特にタンノイやアルテックを良い音で鳴らそうという人には、ぜひ欲しくなるアンプのひとつだろう。この良さは、マランツよりもJBLのプリアンプと組み合わせたときの方が、一層はっきりと現われた。
 このアンプを、別項のテストリポートと同様の基準で採点するとしたら、音質に9・5、デザインに8・5を、わたくしならつける。価格の面では、ステレオ用一組の予価が12万円弱ということになると決して安いとはいえないが、音質や仕上げの美しさを別としても、WE300Bという球の稀少価値と思えば、好事家にとっては必ずしも高価すぎるものではなかろう。それを承知で入手して眺め・音を聴いてみれば、この出費は気持の上で十分報いられるだろうというわけで、コスト・パフォーマンスには7・5ないし8点がつけられる。
 ただ、中小メーカーの製品一般に共通する注意として、アフター・サービスに関しては、十分念を押しておくことは必要である。

サンスイ AU-222, AU-555, TU-555

サンスイのプリメインアンプAU222、AU555、チューナーTU555の広告
(スイングジャーナル 1968年9月号掲載)

AU555

ソニー PS-1200

ソニーのアナログプレーヤーPS1200の広告
(スイングジャーナル 1968年9月号掲載)

PS1200

トリオ MT-45

トリオのシステムコンポーネントMT45の広告
(スイングジャーナル 1968年9月号掲載)

MT45

パイオニア IS-70, IS-80

パイオニアのスピーカーシステムIS70、IS80の広告
(スイングジャーナル 1968年9月号掲載)

IS80

パイオニア IS-31, IS-32

パイオニアのチューナー付きアナログプレーヤーIS31、IS32の広告
(スイングジャーナル 1968年9月号掲載)

IS31

ラックス 25C43, 25C44, 30C74

ラックスのスピーカーシステム25C43、25C44、30C74の広告
(スイングジャーナル 1968年9月号掲載)

30C74

マランツ Model 7T

岩崎千明

スイングジャーナル 9月号(1968年8月発行)
「オーディオ・コーナー ベスト・セラー診断」より

 米国系商社に本国から派遣されてくる米人技術者たちと私はよもやま話をすることがときどきある。しかし、いつも感じることだが、ハイ・ファイ・パーツに関する限り、彼らよりも、日本のマニアの方が、はるかにくわしく知っている。ただ米国内における事情とは無関係に、その製品だけについてであり、それは多くの場合、物を正しく判断する基準を狂わしていることも確かである。
 米人技術者に、マランツという名をぶつけてみると、この事情がはっきりする。多くの場合、こういう答が返ってくる。「マランツ! オウッあれは一般商品ではない。高級ハイ・ファイ・パーツの範囲を超えたもので、性能の良否をうんぬんするようなレベルからはるか高い地位にあり、一般のファンが使うことはないと断言できる。マランツが見られるのはスタジオぐらいなものだ。」
 そういう返事を、何回となし聞かされてきて、つくづく日本のマニアはめぐまれていると思うのである。ハイ・ファイに関係している米本国の技術者でさえ、業務用ということで、あまり身近にないマランツの製品、それが日本のハイ・ファイ市場では高価であるかも知れないが、いつでも自分の装置に加え得る身近な存在にあるという点についてである。
 これは日本のハイ・ファイ・マニアのレベルが、米国内におけるそれよりずっと高いことを意味しておりその点で、日本のマニアは大いに自信を深めてよかろう。おそらく、マランツの真価を本当に知り尽し、その高性能を100%活用することができるのは日本のマニア以外にはいないのではないかとさえ思うのである。マランツの製品は、本来業務用としてのみ作られた。モノーラル時代の大型プリアンプが「コンソレット」と名付けられていた。これはスタジオ用のミクサー・パネルをコントロール・パネルと呼び馴わしていたので、その小型化した便利な卓上用という意味からであった。ステレオ用になってステレオ・コンソールと改められ、業務用のモニター用主要製品として米国内のスタジオ内のラックに多くみられるようになってマランツの名はプロの間で有名になってきた。そして60年頃から二本でもマランツの名は、すでに最高級プリアンプとして紹介された。
 私自身が、マランツの真価を知らされたのは、かなり後になってからである。米国市場の主要アンプを、同じ条件のもとで聞きくらべたのは64年の夏の夜。アコースティックのI型II型の組合せ、サイテーションのI型II型なと当時の最高級アンプとくらべて、マランツのプリ・メインの組合せはもっとも目立たないおとなしい静かな音でARやタンノイを鳴らしたのであった。それは、輝きも迫力も華やかさもなく、しかしそれでいてもっともひずみの少なさを感じさせた。広い音声帯域を感じさせるのは他のアンプだったが、抵抗のない自然さはマランツの組合せが一番であった。
 私はそれからいくばくもなくしてマランツのプリアンプを自分のアンプの中に加えた。
 時代は変る。電子業界の進歩は1日ですべてが変革してしまう。
 マランツが真空管をトランジスタに切換えたというニュースは真空管にこだわってきたマニアにショックを与えた。しかしその最初の製品プリアンプ7Tはマランツの名声をさらに一段と輝かす傑作であった。旧型になかったえぐるような繊細さが清澄な再生能力に一段と冴えをみせていた。管球のそれはソフトだが、なにかぬぐい切れない膜がかんじられたが、7Tでは解消していた。初期の製品はフルボリューム時のノイズが問題とされたこともあったが、パワーアンプ・モデル15が出た今日、この組合せは世界一を断言するのにためらうことはない。
 私は経済的なゆとりがあるのならマランツ7Tこそもっとも買得のプリアンプであることを疑わない。
 その使用者のレベルが高くなればなるほど、それに応えてくれる高性能を秘めているという点を指摘したい。そして今日、日本市場における売行きが、立派にそれを物語ろう。

トリオ TW-61

トリオのプリメインアンプTW61の広告
(スイングジャーナル 1968年10月号掲載)

TW61

ソニー Hi-Fidelity

ソニーのオープンリールテープHi-Fidelityの広告
(スイングジャーナル 1968年9月号掲載)

Sony-tape

ナショナル RS-266U

ナショナルのカセットデッキRS266Uの広告
(スイングジャーナル 1968年9月号掲載)

RS266

ナショナル SA-53

ナショナルのレシーバーSA53の広告
(スイングジャーナル 1968年9月号掲載)

SA53

トリオ TW-510

トリオのレシーバーTW510の広告
(スイングジャーナル 1968年8月号掲載)

TW510

トリオ PC-400

トリオのアナログプレーヤーPC400の広告
(スイングジャーナル 1968年9月号掲載)

PC400

ソニー TA-2000, TC-666D

ソニーのコントロールアンプTA2000、オープンリールデッキTC666Dの広告
(スイングジャーナル 1968年8月号掲載)

TA2000

アイワ TPR-101

アイワのラジオカセットTPR101の広告
(スイングジャーナル 1968年8月号掲載)

TPR101

トリオ MT-65

トリオのシステムコンポーネントMT65の広告
(スイングジャーナル 1968年8月号掲載)

MT65

ナショナル SA-53

ナショナルのレシーバーSA53の広告
(スイングジャーナル 1968年8月号掲載)

SA53

ティアック A-2050

ティアックのオープンリールデッキA2050の広告
(スイングジャーナル 1968年8月号掲載)

A2050