スペンドール BCII

菅野沖彦

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 イギリスのスペンドール・オーディオ・システム社は、英国のBBC放送局のモニター仕様によるスピーカーBCIを開発して以来、それを基礎にしてさらに改良を加えたBCII、BCIIIという、家庭用のハイファイ・スピーカーを製品化してきた、比較的新しいメーカーである。しかし、これらのシステムは一聴すればわかることだが、まさに英国の伝統的なスピーカー技術をしっかりと受け継いでいる。
 同社のスピーカーシステムの中で、最も家庭で使いやすい製品、私自身が最も音が充実していてバランスのいいシステムと考えているのは、BCIIである。このスピーカーが持つ素晴らしいハイフィデリティ・リプロダクションと、魅力とあえていってもいいような、素晴らしい品位を持った音楽的な音とが、巧みに結びついて、まさにソフィスティケィテッドなヨーロッパサウンドを醸し出してくれる。いかにも音楽好きな英国人らしい、レコード音楽の再生を熟知した音のバランスが聴ける。もともと英国は、音楽の市場として世界一であり、英国の演奏会でデビューすることが、世界の檜舞台といわれているように、音楽を聴くマーケットとして、英国の歴史は大変に古く、それに呼応してハイファイ・リプロダクション・システムの歴史もかなり長い。そういう英国の長年の伝統をバックグラウンドに持つスペンドールを一流品として推したい。
 社長スペンサーと夫人ドロシーの名をとって〝スペンドール〟というブランド名を冠しているところも、心にくいところである。

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