井上卓也
ステレオサウンド 76号(1985年9月発行)
「BEST PRODUCTS」より
マッキントッシュでCDプレーヤーが開発中であるとの噂は、一部で知られていたことであるが、今回、そのベールを脱いでコンパクトディスクプレーヤーMCD7000として新発売されることになった。
マッキントッシュの製品は、つねに時代の最先端をゆく技術と背景に、高い性能とクォリティを備え、長期間にわたり安定して、高度な音楽性を保ちつづけることに特徴があるが、このMCD7000も、音質的なクォリティはスタジオサウンドを目指して開発されたという。
外観は、マッキントッシュ独特の、筐体をケースなどに固定するパンロックシステムを採用した、いかにもらしい外観をもつが、パネル両側のゴールドと金属部分の色調がやや薄くシャンペンゴールド調になり、漆黒のパネルフェイスやグリーンに浮出るレタリングなども、全体に抑えた印象となり、独特の華麗さがかなり抑えられ、むしろマットなイメージになっているように見受けられる。
内容的には、光学系は機械的精度を向上し、外部振動の影響を避ける目的でアルミダイキャスト製の構造材に組込まれており、レンズ系はスイングアームで保持され、ディスクドライブモーターは交流モーター採用で、セルフ・センタリング・サポート・スピンドル方式と呼ばれる構造をもつために、CDのセンタリング精度は高く、優れた光学系のサーボ方式とともに読取精度の向上に寄与している。
音質と直接関係の深いフィルターには、音質重視の設計ではオーソドックスな手法であるデジタルフィルターが採用され、マッキントッシュでは、ダブルデジタルフィルター方式と呼ばれているものだ。
機能面で興味深いのは、フロントパネルに、標準型のステレオフォーンジャックと独立した音量調整ボリュウムを備えており、このような機能は日本独自の要求かと思っていたが、米国でも個人的なプライベート・コンパクトディスクサウンドとして、ヘッドフォンで楽しまれるというのは、少からず驚かされた次第である。その他機能面では、各種のリピート機能、任意の20曲プログラム選曲、バーグラフ式のトラックナンバー表示、3スピードのミュージックスキャン機能などを備え、ワイヤレスのリモートコントローラ付属である。なお、一部では出力系にトランスが採用してあるとの情報もあったが、この点は不明。
本機の音は、適度に帯域をコントロールした、安定感があるバランスとアナログディスク的なイメージのサウンドキャラクターが特徴である。出力コードは、純銅線が好ましく、置台の影響も平均的に受けるため、セッティングにはかなりの注意が必要であろう。マッキントッシュファンの反応が興味深いCDプレーヤーの第1作だ。
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