井上卓也
ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より
目覚しい発達を遂げたプリメインアンプに代表されるオーディオアンプに匹敵する高度な進歩をしたにもかかわらず、むしろ注目されないのがFMチューナーである。
現状の県域放送をタテマエとするNHK・FM放送を中心に、コマーシャルに徹して音楽放送のプログラムソースをレコードにほとんどを依存する民放FM局が特別な地域で受信可能という、貧しい状況下では、FM放送の高い音質をもつ特徴も活かされていないわけだ。したがって、特別な要求がないかぎり、プリメインアンプのペアチューナーの選択が巻本と考えたいため、ベストバイの対象外としている。
普及価格帯のモデルの性能の向上、機能の充実も見事であるが、シンセサイザーチューナーの性能を向上させ、アナログタイプの高音質にまで接近させた、ケンウッドKT3030の音場感情報の豊かさと、FM放送の魅力を再認識させた音は凄い成果だ。
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