ラックス L-570

菅野沖彦

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 アンプリファイアー篇」より

 ラックスマンは、伝統のラックス・ブランドを継承するクォリティ・プロダクツにつけられる名称である。普及品にはアルパイン/ラックスマンというブランドが使われる。メーカーはどちらもラックス株式会社だ。錦水堂がラックス・ブランドでラジオを発売したのがこのメーカーの起源とすれば、実に76年の歴史をもつ老舗である。世界的にオーディオブランドの伝統的な名門といえるであろう。現在の社長である早川斉氏で3代目の世襲である。高周波チューナーからスタートしたが、その後のラックスは、トランス、高級アンプリファイアーなどオーディオプロダクツの専門メーカーとして定着した。現在の製品をみても、オーディオアンプにはマニア気質の強い主張と情熱が感じられてうれしい。〝こだわり〟のラックスマンとして本当にオーディオを愛する人から信頼され支持されているメーカーだ。こうした姿勢が現在のオーディオ界には最も大切であり、マニアの夢を満たしてくれる製品が誕生する背景として必須の条件ともいえるフィロソフィである。多くの日本のメーカーはこのところ、このようなフィロソフィから転向してしまった結果、今日のオーディオ不況を生み出したのである。過去20〜30年の経済発展に伴うマスプロ・マスセールのフィロソフィが今揺らぎ始めている。
 この一流ブランドを冠せられたL570は、まさにプリメインアンプの一級品として光り輝く存在である。プリメインアンプという形態は本来かくあるべきものであったのだが、今や1台3万円の安物からあって、35万円のこの製品は最高級のランクである。ピュアA級の50W+50Wの品位の高い音の風情は、まさに本格オーディオの醍醐味を味わえる魅力の探みを感じさせるに十分である。鳴らすスピーカーには高能率のものを推めたいが、公称パワーよりドライブ力があってスピーカー負けがしない。情感が濃やかである。

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