アキュフェーズ C-280V

菅野沖彦

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 アンプリファイアー篇」より

 アキュフェーズは高級アンプ専門メーカーとして1972年に設立された。来年で20周年を迎える。旧トリオ株式会社(現ケンウッド)の事実上の創立者である春日仲一、二郎兄弟がトリオと別れて組織した純オーディオ企業である。現社長の出原眞澄氏も創業時に参加した一人で、個人的にもオーディオを愛するエンスージアストである。創業時には社名がケンソニック株式会社で、商標がアキュフェーズであったが、10年後にアキュフェーズに統一された。高級セパレートアンプ群を中心にブリメインアンプやチューナー、CDプレーヤー、グラフィックイコライザー、チャンネルディヴァイダーなどのエレクトロニクスとサウンドテクノロジーの専門技術集団としてソリッドな体質に徹し、いたずらに営業規模の拡大に走ることを戒めてきた企業である。当然、その体質は製品に反映して多くのファンの支持と信頼を得ている一流品であり、ブランドである。C280Vは、現在同社の最新最高級のプリアンプであるが、その原器は1982年発売のC280である。その後、C280Lを経て、3世代目のこの製品に発展した。オリジナC280において実現した基本構成はそのままに、細部の改良リファインを行なってきたものだ。電源部からすべてを完全にツインモノーラル・コンストラクションとした内部のレイアウトはメカニカルビューティと呼ぶにふさわしい魅力をもつ。各ブロックをシールドケースに収納した美しい造形である。全段A級プッシュプルDCサーボアンプ方式で、入力は安定性の高いカスコード・ソースフォロア。出力段はコンプリメンタリー・ダーリントン・プッシュプルである。本機で最も大きなリファインはCP抵抗素子による4連動ボリュウムコントローラーの採用だろう。この低歪率ボリュウムが象徴するかのように、一際透明でシャープな音像への迫真が鮮かに実感される音が得られている。

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