菅野沖彦
ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より
WE308は、トーンアームに情熱をかける一人の男の姿が思い浮かぷような製品として、一流品に挙げることにしたい。トーンアームを振動系という理論大系から眺めた、ユニークなオリジナリティをもつ製品で、軸受け部には、特殊鋼材の精密研磨による無直径、無抵抗といえるダブルナイフエッジ方式が採用されている。このようにかなり精密なトーンアームをつくっているSAECは、小さな専門メーカーで、歴史もまだ浅いが、むしろ将来が楽しみだということで、あえて一流品にとりあげたわけである。
そういう意味では、まだまだ推選したい一流品がある。たとえばオンライフリサーチのダイナベクターDV505やオーディオクラフトのAC300C、AC400Cである。前者は質量分離型のダイナミックバランス型のトーンアームで、アーム内にバネのダンパーを設けるとともに電磁粘性ダンパー使用して、トーンアームのレゾナンスピークを低減しようとした製品である。このアームはもう一つの特徴として、アームボードに穴をあける必要がなく、ボード面据置型であるのもユニークだ。
オーディオクラフトのトーンアームは、基本に忠実につくられた製品で、オイルダンプ方式のオーソドックスなモデルといえる。
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