瀬川冬樹
ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より
カセットテープの実験的な限界を極めるというような目的には、大形で大仕掛けのデッキも必要かもしれない。カセットにオープンなみの特性を要求する人なら、デッキの大きさや費用も気にならないかもしれない。が私自身は、カセットはあくまでも日常音楽を楽しむ生活の中で、気軽に扱えて実用上十分な音質で満足できればいいと思う。
そうした目的でデッキを探してみても、市販の製品のほとんどが画一的で、しかも店頭効果のみをねらったギラギラと自己主張の強い、あるいはヤング好みのメタリックなアクの強いデザインで、とうてい手元に置く気になれない。
ヤマハTC800GLは、その意味で毎日眺め触れ使う気になれるほとんど唯一の製品だ。その形があまりにも個性的なために、性能が犠牲になっているかのようにいわれているがそれは正しくない。実際に音楽を録・再してみれば、内容もまた手がたく練り上げられた一級品であることが理解できる。
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