ダイナコ A-35XS

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 A25の場合と同じくスキャンダイナのA30とどう違うかという興味が大きかったが、結果はA25の場合よりも違いが大きい。総体にいえることはA30(スキャンダイナ)にくらべるとA35XSの方が中低域がよく抑えられて、その点では、A30よりもはるかにA25ににている。ネットを外してみたら、A30はダクトのあるいわゆる位相反転型であるのに対し、A35は密閉型で、低域の鳴り方のちがいもそれで納得がいった。A30よりも中~低域が抑えられているということは、抑制を利かせて音をことさらふくらませたりしないという長所である反面、全体の鳴り方がA25より枯れていて声に張りが不足するし、あまりにも難点をおさえこみすぎて、よく言われるように平均的優等生になりすぎて、かえっておもしろみに欠けてしまったように感じられる。さすがにパワーを上げてもあまり音がくずれないし、絞ってもバランスが変わるようなこともなく立派だが、やや平面的に上づらをなでる感じで彫り込みが足りず、もちろんこれでも国産の平均的水準がこれにさえ及ばないのがもどかしいくらいだが、聴き終えて印象に残る魅力がない。こういうくせのない鳴り方が逆に特徴なのかもしれない。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆

総合評価:☆☆☆★

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