ビクター IM-10S

瀬川冬樹

ステレオサウンド 12号(1969年9月発行)
特集・「最新カートリッジ40機種のブラインド試聴」より

 ブラインドテストNo.27(ピカリング V15/AM3)あたりと一脈通じる、中域から低域の厚い特徴のある音質だ。高域の特性があまり延びていない印象で、そのためか音が重い傾向だが、中低域の豊かさをとるべき音なのだろう。しかしスクラッチノイズの性質は、スペクトラムが低く楽音にまつわりつく感じで、多少耳ざわりである。ピアノのソロは中域の厚みと高域の丸さのために腰のつよい太い音質になるが、ジャズではこの強さが好ましい。ロスアンヘレスの声が明るく、伴奏との距離感の出るのもよい。弦合奏もよくハモる。しかしやはりヴェルディあたりになると、強奏で何となく安っぽいハイファイ調になり、音ばなれのよくないところが気になってしまうあたり、中級品と思われる音質である。

オーケストラ:☆☆☆☆
ピアノ:☆☆☆☆
弦楽器:☆☆☆★
声楽:☆☆☆☆
コーラス:☆☆☆★
ジャズ:☆☆☆★
ムード:☆☆☆★
打楽器:☆☆☆★
総合評価:75
コストパフォーマンス:80

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