デンオン DL-103

瀬川冬樹

ステレオサウンド 12号(1969年9月発行)
特集・「最新カートリッジ40機種のブラインド試聴」より

 総体的に上の部に入るカートリッジであろう。物理特性も良さそうだし、聴感上もなかなか好ましい。オーケストラでは音が柔らかくキメ細かで、バランス良く、フォルティシモでの音の伸びも充分だし、歪みも少ない。立体感の再現も良く、楽器の距離感や奥行きの描写に優れている。ピアノもバランス良く、腰のすわった見事な音。弦合奏はやや強さに欠けるが圧迫感がなくハーモニーが美しい。ロスアンヘレスの声もまるくつやっぽいが、声と伴奏との距離感がやや不足。ヴェルディはオケと声部が安定してよく拡がって、やや細いが分離良く澄んだ音で、特に男声が美しい。ジャズも臨場感を伴なって音像が良く浮き上がる。スクラッチノイズは僅かに耳につくが、総じて優れた製品のようだ。

オーケストラ:☆☆☆☆☆
ピアノ:☆☆☆☆☆
弦楽器:☆☆☆☆★
声楽:☆☆☆☆★
コーラス:☆☆☆☆☆
ジャズ:☆☆☆☆
ムード:☆☆☆☆★
打楽器:☆☆☆☆★
総合評価:90
コストパフォーマンス:95

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