瀬川冬樹
ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より
S170よりもすべての点でスケールが大きく、音に厚みとゆとりが増してきて、S170で感じられた中域のおさえられた傾向も270ではなくなって、前帯域にわたってバランスがいい。VS270以来の改良のつみ重ねが実って、さすがに完成度の高いシステムに仕上ってきている。VSのころはトゥイーターがホーン型だったのをコーン型に替えているが、これは弦楽器やヴォーカル系では、音の鮮明さを失わずにしかもやかましさやクセの少ない、さわやかに目の前に展開するというコーン型の利点が生かされている。反面、ピアノ及び打楽器の系統での立上りの輪郭がわずかながら甘くなるのは止むをえないことなのだろうか。しかし全体として音のバランスの良さは、あらゆるプログラムソースが一応それなりに聴けることから評価できる。あとは、国産スピーカーに共通に望むことだが、音の艶あるいは思わず聴き惚れさせる魅力、またとの彫りの深さや雰囲気などのいずれかの魅力をこれに加えてゆくことだろう。
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