瀬川冬樹
ステレオサウンド 18号(1971年3月発行)
特集・「FMチューナー最新33機種のテストリポート」より
C22(プリアンプ)と同じく、上半分が漆黒のガラス、下半分が金色に分割されたマッキントッシュ独自の伝統的なパターンで、スイッチを入れると実効長約20センチのダイアルスケールがグリーンに美しく輝く。最近の製品でないだけに、目盛はリニアー(同感覚)でもないし、レタリングも少々古めかしいが、文字の輪郭が鮮明だし、指針もはっきりしているから、同調のとりやすさは格別である。同調ツマミの滑らかな感触は、それだけで高級感がある。こういう手触りが、どうしてもまだ国産品には求めることができないのは残念だ。
音質については不思議な体験をした。同時に比較する他のチューナーと、メーターで出力レベルをぴったり揃えておくのに、マッキントッシュだけは音が引込んで、レンジもせまく音像が小さく感じられる。そこで念のため、こんどは聴感で音量を合わせて比較すると、あの典型的な──豊かでゴージャスな──マッキントッシュ・トーンを響かせるのだ。うまく作られた音だと、しゃくにさわりながらもつい聴かされてしまう。狡猾さを感じるほどのうまい音づくりである。
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