瀬川冬樹
ステレオサウンド 18号(1971年3月発行)
特集・「FMチューナー最新33機種のテストリポート」より
ぶ厚い金色のアルミ・パネルの両端に天然木ウォールナットを配した、パイオニアUAシリーズの中のローコスト・チューナーである。同じファミリーにはちがいないが、TX70や、TX90とくらべると、印象としては何となく可愛らしさが先に立つ。
ダイアルスケールは有効長約10センチと、小型ローコストだけにさすがに短かい。目盛も等間隔ではない。TX70や90のような光る指針もついていないが、目盛や文字の書体がすっきりと明快で、指針も割合に読みとりやすい。メーターはシグナル強さの指示一コだけ。すべてが簡潔に、必要最小限の機能しかついていないところがいかにもローコスト製品だが、パネルの仕上げやツマミの感触にあまり安っぽさのない点は立派である。
TX100以下すべて共通のパイオニア・トーンで、高域の甘い、おとなしく聴きやすい音質にまとめてある。ただ、同社の上のクラスの製品と比較すると、ステレオの広がりがややせばまる感じになるが、この辺がローコストとしての限界だろうか。安いからといって音が粗くなったりよごれた感じになったりしないところが良い。
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