菅野沖彦
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
カートリッジを選ぶ視点は大別して二つあると思う。一つは、再生の安定性。つまりトレーシング能力である。それも、大振幅のトレーシング能力が優れているといった局部的なものだけではなく、一枚のレコードの実用的な安定再生とでもいうべきものが大切だ。やたらにホコリの影響を受けやすかったり、デリケートな針圧のものは実用的見地からは選びたくない。他の視点としては、音色の魅力である。なんといってもレコードがいい音で鳴ってくれると、少々の物理特性上の欠点があってもすて切れないものだからである。
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