ラックス CL32

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 薄刃のカミソリのようなシャープな切れ味はトランジスターアンプでなくては聴けないが、中には刃こぼれしたように切れ味の印象のよくないアンプも少なくない。その意味ではCL32は、あまり鋭く歯を立てない身の厚い刃物でやわらかく削り出してゆくようなところがあって、いわゆる解像力をことさら目立たせないが、鳴らすべき音はすべてきちんとバランスよく整える。ただ、単体の評価ではマランツ510Mとの組合せでは、MB3045との場合のようなあの素敵に暖かく心を包み込む世界にまでは至らず、互いに個性を殺し合うかのように、どこか目づまりしたというか音楽の流れのせきをとめられたようで素気なく表情がおさえられて私には楽しめなかった。

Leave a Comment


NOTE - You can use these HTML tags and attributes:
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください