ヤマハ HP-1

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 基本的にはHP2の音の延長線上にあることが容易に聴きとれて、強調感のない穏やかで品位の高い、しっとりした再生音がどんなプログラムソースにも一貫して好感を与える。HP2よりも音のスケール感がひとまわり向上し、音の密度も増し、音像がいっそう明確に姿をあらわしてくる。ただ、たとえばテストソースの中のベーゼンドルファーやスタインウェイの音色でさえ、どこかヤマハピアノの音色に近寄ってしまうように聴こえるというのは、ひと言でいえば音の艶を少しおさえすぎているためではないかと思う。そのことと関連して、ステレオで鳴った音が広い空間にひろがり、漂い、余韻をひいて消えてゆくあのデリカシーがいまひとつ物足りない。ユニットの径がHP2より大きいため、パッドもひとまわり大きく、ユニットの重量も増しているが、ヤマハ三機種の中ではこれが最もかけ心地が優れていると感じた。

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