テクニクス EAH-320

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 テストソースの中から、ブラームスのピアノ協奏曲第一(ギレリス/ヨッフム)をまずかけてみて、冒頭のベルリン・フィルの斉奏が、まるで笛のような妙に鼻にかかった音色に変形してきこえてびっくりして、あわてて他のレコードをいろいろかけてみたが、そのどれもが、鼻をつまんだような或いは波の欠けたような音色になる。グラフィックイコライザーでいろいろ探ってゆくと、だいたい3kHzあたりを6dB以上も大幅にダウンさせると、この独特の音色の大半は除くことのできることがわかったが、これはどう考えても妙だ。ただ、テストソースを国内録音の歌謡曲やフォークなどにすると、右に書いたほどには異和感を感じさせなかったのは不思議だった。デザイン上では、ヘッドバンドの部分に耳への当りを細かく調整できる(そのわりには大げさでない)くふうがしてあって、かけ心地はなかなか良い。重量のある割には重さを意識させないのはその辺のうまさだと思う。

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