FMアコースティックス FM810

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

 同社のFM610より即物的な味わいだが、それだけ忠実が高いともいえるだろう。一言にしていえば、透明で力のある充実した音である。精緻といってよい高音域の解像力、締まって迫力のある低域のドライブ感は、400W強のパワーに支えられた高度な安定感と信頼感をもっている「ドゥムキー」の透徹な響きは美しく、ピアノも輝かしく鋭いタッチが見事に生きるし、ヴァイオリンの芯がしっかりした、きりっとした響きには品位の高さが漂う。それだけに、もう少し脂肪っぽい艶が出れば……とも思うのだが、これはFM610の領域だ。このアンプの特徴は、これだけ解像力の良さと力を持ちながら、妙に明るさ一辺倒にならない点だ。彫琢の深さと陰縁を立体的に聴かせるのである。ウィーン・フィルは少々冷たく硬いが美しい。透明な木管、切れ味のシャープな金管、そして弦は繊細でオーバートーンが明瞭。ヘレン・メリルが少々異質で、極端に知的冷静さになった。

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