菅野沖彦
ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より
A級60W/8Ω/chのステレオアンプだが、繊細で明晰な音は美しい。しかし若干、音は軽めの雰囲気で、響きの深みや厚み、音の重厚な質感といった面に不満もある。スピーカーの能率が高ければ60Wのパワーは音量としては十分なはずだが、音の密度感や充実感にやや物足りなさが残るようだ。どちらかというと、重々しい響きを不得意とするアンプという印象。その分、明晰透徹で、緻密繊細な音色の鳴らし分けは魅力的である。肩の力が入りすぎない表情で音楽が美しく軽快に流れるのである。室内楽にはこのようなアンプの特質が生きて好ましかった。ベートーヴェンの「エロイカ」になると、明るく軽快できれいだし、ウィーン・フィルの特徴のある面はよく生かされるのだが、マッシヴなトゥッティの厚みと力に一つ押しと迫力が欠けるのだ。歌手の声の鳴らし分けはひじょうに鋭敏なレスポンスで多彩なのが印象的。どちらかというと小味なアンプだ。
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