早瀬文雄
ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
「Music Consolette 偶然の結晶を求めて」より
知的洗練で無駄を削ぎおとし、自らの希求する世界にストイックによりそわせた装置の音は、無造作に高価な物ばかりを寄せ集めた表面的な超弩級システムからは聴くことができない独自の世界をかもし出すものだ。自分の音やそれにまつわる話を、照れながらぽつりぽつりと語ってくれた言葉には、語り尽くせないもどかしさの余韻というものがある一方、言葉にしてしまえばその瞬間から致命的にそこなわれてしまうようなとてもデリケートなニュアンスが、そこで鳴った音楽の中に染み込んでいたような気もしている。個人的によく知ってる人から初対面の方まで、その音を僕が分析的に聴いて勝手なレッテルを貼るのではなく、ちょっとした文学的作品のページをめくっていくような気持ちで接した。それはなにかのテストリポートを書くときの意識をとどめたままでは感じることができないような、貴重な体験だった。そうした私的空間で素敵な音に接する機会を与えてくださったことを、この場を借りて一言お礼を言っておきたいと思う。
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