♯4343をマーク・レビンソンでバイアンプ・ドライブする試み(その1)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「JBL♯4343研究(3)」より

 ♯4343を鳴らすアンプに何がよいかというのが、オーディオファンのあいだで話題になる。少し前までは、コントロールアンプにマーク・レビンソンのLNP2L、パワーアンプにSAEの♯2500というのが、私の常用アンプだった。SAEの♯2500は低音に独特のふくらみがあり、そこを、低音のしまりが弱いと言う人もあるが、以前の私の部屋では低域が不足しがちであったこと、また、聴く曲が主としてクラシックでありしかもあまり大きな音量を出せない環境であったため、あまり低音を引締めないSAEがよかった。そのSAEが、ときとして少しぜい肉のつきすぎる傾向になりがちのところを、コントロールアンプのマーク・レビンソンLNP2Lがうまく抑えて、この組み合わせは悪くなかった。
 いまの部屋ができてみると、壁や床を思い切り頑丈に作ったためか、低音がはるかによく伸びて、また、残響をやや長めにとったせいもあってか、SAEの低音をもう少し引締めたくなった。このいきさつは前号(140ページ)でもすでに書いたが、そうなってみると、以前の部屋では少し音が締りすぎて聴こえたマーク・レビンソンのML2L(パワーアンプ)が、こんどはちょうど良くなってきた。しばらくしてプリアンプがML6×2になって、いっそうナイーヴで繊細な音が鳴りはじめた。それと前後してアキュフェーズのC240とP400の組合せを聴いたが、マーク・レビンソンの音が対象をどこまでもクールに分析してゆく感じなのに対して、アキュフェーズの音にはもう少しくつろいだやわらかさがあって、両者半々ぐらいで鳴らす日が続いた。けれどそのどちらにしても、まだ、♯4343を鳴らし切った、という実感がなかった。おそらくもっと透明な音も出せるスピーカーだろう、あるいはもっと力強さも出せるスピーカーに違いない。惚れた欲目かもしれない。それとも単に無意味な高望みかもしれない。だが、♯4343の音には、これほどのアンプで鳴らしてみてなお、そんなことを思わせるそこの深さが感じとれる。
 ♯4343というスピーカーが果してどこまで鳴るのか、どこまで実力を発揮できるのか、その可能性を追求する方法は無限に近いほどあるにちがいないが、そのひとつに、マルチアンプ(バイアンプ)ドライブがある。
 ♯4343は、背面のスピーカー接続端子のところで、スイッチの切替えによって、ウーファーのみを切り離すことができる。ウーファーとそれ以上とのクロスオーバー周波数は300Hzと発表されている。つまり300Hzを境(クロスオーバーポイント)として、それ以上と以下とを、別々のアンプでドライブしようというのである。
 コンポーネントの接続コードを替えてその音のさを聴き分ける日本のシビアなオーディオ愛好家にとっては、バイアンプ方式は、費用や手間をいとわずに音質の向上を望む確かな手段であるが、JBL♯4343がバイアンプドライブを可能に設計されているその意図は、必ずしも日本の愛好家の期待と同じとはいえないようだ。その証拠をいくつかあげることができる。
 まず第一はJBLの発行している印刷物の中にも、バイアンプ方式は、ハイパワー再生に有利な方式であるという意味あいの解説が載っている。スタジオモニターのプレイバック時のパワーがますます上がっている今日とくにJBLのように低音用のネットワークコイルに鉄芯入りを使っている場合、鉄芯の磁気歪が、非常な高出力の加わった際だけ、問題になる。とくに出力の大きな低音域のみ、アンプ直結で鳴らすメリットを、おそらくJBLはこの点から重視しているらしく思われる。
 第二に、本誌51号の332ページ、つまりこの「♯4343研究」の第一回目で、JBL社のゲイリー・マルゴリスが、バイアンプについての質問に対して「家庭用のシステムとして、それほどの費用をかけるメリットがあるかどうか疑問……」と答え、バイアンプの改善効果は「アンプのパワー不足の場合、またアンプ自身の特性──特に歪率などが──あまり良くない場合は(中略)IM歪を低減するという点で低域と高域の相互干渉がなくなるので、バイアンプのメリットは大きい」というように、必ずしも積極的でない意見を述べている。
 このマルゴリスの意見についての私個人の考えはいま少しあとにして、本題に戻って♯4343がバイアンプ方式を必ずしも音質改善の本質的手段とは考えていないと私が思う第三の証明として、♯4343の内蔵LCネットワークの回路を示す。
 スイッチを EXTERNAL CROSSOVER 側に切替えることによって、ウーファーはLC回路が完全に切り離されて、パワーアンプに直結される。それはよい。問題はミッドバスの回路だ。300Hz以下をカットするためのLCは回路から切り離される。これは当然だ。ところが、LCを通ったあとスピーカーとのあいだに挿入されている固定および可変のアッテネーター(抵抗減衰器)は、回路に入ったままなのだ。この中のR2、R3、R6からなるT型パッドは、あるいはミッドバスユニットのインピーダンス特性の補正を兼ねているようにも思われるので、一概に回路中から外すことがよいかどうか即断しかねるが、R4の可変抵抗、すなわちミッドバスとウーファーのあいだにとりつけられたパネルに顔を出している MID FREQUENCY LEVEL のアッテネーターは、できることなら取去ってしまいたいところだ。ただしそうすることによって、HFおよびUHFユニットとのバランスをとり直す必要が生じる。それせだからJBエルとしてもこの可変抵抗R4を取除きにくかったにはちがいないが、もしもバイアンプドライブによって、根本的に音質の向上を真の目的とJBLが考えるなら、この部分をこのままにしておくわけがない。あるいはまた、そんな細かいところまで問題にするのが、やはり日本のオーディオファイルの感覚というものなのかもしれないが。
 ともかく、右の三つの事実によって、JBLの考えるバイアンプドライブ・システムと、我々の考えるいっそうピュアなバイアンプ・ドライブへの理想とに、ほんのわずかに考えの違いのあることが説明できる。
 しかし今回は、それらの点、とくに右の第三の問題点は一応承知の上で、とりあえずその部分に修整の手を加えることをあえてせずに、JBLの指定の形のままでバイアンプ・ドライブを試みた。しかし、もしもあなたがいっそうのピュアリストで、オリジナルのネットワークにいささかの手を加えることをためらわず、かつ、HFおよびUHFのレベルセッティングを改めて大幅に修整──ということはアッテネーターに表示してあるゼロ・ポジションが意味を持たなくなるために、耳または測定器のみを頼りにレベルセッティングをおこなわなくてはならないが──する手間をいとわなければ、おそらくよりよい結果の得られるだろうことは申し添えてよいだろう。
 ところで、右の第二にあげたマルゴリスの意見の中で、ともすると誤解を招きやすい表現があるので、私から多少の補足を加えておきたい。
 彼は、アンプ自体の歪率等の特性のあまり良くないときにバイアンプはメリットがあるだろう、と言っている。たしかに彼の言う通り、パワーアンプを全帯域で使わずに、低域と高域とに分ければ、IM歪(混変調歪──振幅の小さな高音が大振幅の低音で変調される音のにごり)が軽減される。けれど、♯4343のように鋭敏なスピーカーは、歪のできるかぎり少ない良質なアンプでドライブしなくては、絶対に良い音で鳴らない。ましてバイアンプにするということが、前述のように♯4343の極限の音を追求しようとする手段なのであってみれば、低・高各帯域に、こんにち考えうる限りの最高の水準のアンプを用意するのでなければ、わざわざ費用と手間をかけて2台のパワーアンプを含む複雑なシステムを構成する意味が薄れてしまう。
 いまから十数年まえの一時期、日本のアマチュアのあいだでバイアンプリファイアー方式(日本ではマルチチャンネルアンプという独自の呼び方が一般化しているが)がかなり広まったことがあった。そのころ、スピーカーのユニットやアンプにあまり性能のよくないものを使っても、帯域を分割して使えばその悪さが出にくい、という説明を信じて実験した人々は、ほとんど失敗している。やってみればわかることだが、マルチスピーカーのマルチアンプドライブは、それぞれのユニットやアンプによほど良いものを使わなくては、結局うまくゆかないのだ。
 スピーカーユニットとドライブアンプに、最高の質のものを用意しなくてはうまくいかないという現実。それに対して、♯4343という優れたスピーカーシステムを、一度でよいから極限まで鳴らしてみたいという夢のような期待。それは個人の力ではなかなか実現できる問題ではないが、幸いなことに、たとえば専門誌の企画や、別項にも書いたサンスイオーディオセンターでの「チャレンジオーディオ」またはそれに類する全国各地での愛好家の集い、などで、いままでに何度か、♯4343あるいは♯4350のバイアンプ・ドライブを実験させて頂いた。そして、バイアンプ化することによって♯4343が一層高度な音で鳴ることを、、そのたびごとに確認させられた。中でも白眉は、マーク・レビンソンのモノーラル・パワーアンプ6台を使っての二度の実験で、ひとつは「スイングジャーナル」誌別冊での企画、もうひとつは前記サンスイ「チャレンジオーディオ」で、数十名の愛好家の前での公開実験で、いずれの場合も、そのあとしばらくのあいだはほかの音を聴くのが嫌になってしまうなどの、おそるべき音を体験した。
 その音を、一度ぐらい私の部屋で鳴らしてみたい。そんなことを口走ったのがきっかけになって、本誌およびマーク・レビンソンの輸入元RFエンタープライゼスの好意ある協力によって、今回の実験記が誕生した次第である。以下にその詳細を御報告する。
 ♯4343を、単にバイアンプ・ドライブするというだけなら、通常のシステムに1台のパワーアンプと1台のエレクトロニック・クロスオーバーアンプを追加すればそれでよい。追加したアンプが水準以上の良質な製品であるかぎり、それだけで、♯4343の音質にはいっそうの力強さと繊細さ、加えて音の鮮度の向上という、明らかな改善効果があらわれる。しかし今回の実験は、それとは少しばかり規模が違う。いや、このシステムに「少しばかり」などという表現はかえって嫌味にきこえる。なにしろ気狂いじみたおそろしい構成になった。それは、どうせやるのなら、マーク・レビンソンのアンプを、入り口のMCヘッドアンプから出口まですべて、完全なダブル・モノーラルで構成してみよう、というに加えて、パワーアンプのML2Lを低音域で2台ブリッジ接続にして、出力の増大と音質のいっそうの改善をはかろう、という、なんともおそろしいようなプランにふくれ上ったからだ。
 レビンソンのアンプは、パワーアンプのML2Lと最新作のプリアンプML6を除いては、すべてステレオ構成、つまりステレオの左右のチャンネルが一台にまとめられている。これはこんにちではむしろ当り前の作り方だ。
 しかし最近になって、アンプの音質の極限に挑むメーカーのあちこちから、モノーラル構成のアンプがいくつか発表されはじめた。
 パワーアンプに関するかぎり、近年のハイパワー化と、音質の追求にともなう各部の大型化によって、ステレオ用として組んだのでは、大きさや重量の点からひどく扱いにくい超弩級化しがちになることを避けて、モノーラルとして組むことが異例ではなくなりつつある。
 けれど、モノーラル化してみると、単にサイズやウェイトの低減という扱いやすさのメリットばかりでなく、同じアンプをそのままモノーラルタイプに組みかえるだけでも、明らかに音質の向上することが認められ、指摘されはじめた。その理由は簡単で、電源および信号回路を完全に切り離すことによって、ステレオの左右チャンネルの干渉がなくなり、クロスモジュレーション(ステレオの一方のチャンネルの信号が他方の信号によって変調される音の歪)が解消し、クロストークのなくなることも加わって、音像がしっかりと定位し、音のひと粒ひと粒の形がいっそう明確に聴きとれるようになる。
 おそらくレビンソンは、パワーアンプのML2Lを作った時点では、単に大型化を避ける意図からモノーラル化したのだと思われるが、プリアンプML6以降は、はっきりと前述の問題に気づいたようだ。そして、少し前から日本のマニアのあいだでも、レビンソンのMCヘッドアンプJC1ACを、一方のチャンネルを遊ばせてモノーラルで2台使うと、右に述べたような音質の改善のできることが、誰からとなく言われはじめた。
 こういう、いわばゼイタクな、もったいない、言いようによっては気狂いじみた一見無駄の多い使い方をして、費用を倍加してまで、おそろしく微妙な音質の向上に嬉々とするのは、、まあ、相当にクレイジーな人種だと、ここではっきり言っておいたほうがよさそうだ。そいういう音きちがいが、♯4343をオール・レビンソンで、ともかく極限まで鳴らしてみようというのが今回の試みだ。
 どうせそこまでやるのなら、MCヘッドアンプばかりではなく、エレクトロニック・クロスオーバーアンプのLNC2Lも、片チャンネル遊ばせて2台使わなくては意味がないだろう、と、ともかく入り口から出口までを、完全なモノーラル構成で徹底させてしまうことになった。
 その結果が、12台のレビンソンのアンプ群、そしてプリアンプとクロスオーバーアンプ用の6台の電源ユニット、という物凄いアンプシステムである。価格は合計¥8、300、000。この辺になると、いくら気狂いを自称する私も、ちょっと個人では買い切れない。
 物凄いのはしかしアンプの数と金額ばかりではない。消費電力が、ちょっと無視できない。その大半はパワーアンプのML2Lだ。
 ML2Lは、公称出力たった25ワット。そして純Aクラスだから効率はきわめて低く、消費電力は一台約400ワット。これがしかも常時なのだ。400ワットの電力を喰わせれば、Bクラスなら出力200ないし250ワットは軽く出る。しかもBクラスなら、消費電力は平均50ワット以下だ。だがML2Lとなると、電源スイッチをONした瞬間から、ボリュウムを絞ったままでも常時400ワットを喰い続ける。これが6台。合計2・4キロワット。プリアンプのほうはこれにくらべればはるかに少ない。新しい電源ユニットPLS153Lが、一台30ワット以下と発表されているから、6台でもせいぜい150ワット強というところだろう。
 それにしても合計約2・5キロワット強。30アンペア契約の一般家庭では、ほかの電源をほとんど切らなくては難しい。また、コンセントは一ヵ所1キロワットまでとされているから、少なくとも配線の互いに独立した3ヵ所から分散させてとらなくてはならない。というより、もしも個人でこのシステムを常用しようと計画する場合には、別に新規契約で配電線を引き直さなくては無理が生じる。エアコンだって、ふつうの型はせいぜい1・5キロワットどまりだというのに、ましてエネルギー危機の叫ばれるこんにち、いったい何という浪費なのだろう。全く空恐ろしくなる。
(もし新規に契約アンペアを増す場合は、ML2L1台あたり5アンペアを見込んでおいたほうが──ラッシュカレントも考えあわせて──安全で、コンセントは一ヵ所10アンペアまでだから、6台のアンプに3ヵ所のコンセントと、30アンペアの新規増設が必要になる)
 アンプとスピーカー以外のパーツ、といえば殆どプレーヤーだけだが、少々くわしく書いておきたい。
 ターンテーブルはマイクロ精機のリモートドライブ・ユニットRX5000+RY5500。直径31cm、重量16kgの砲金製のターンテーブルを、別シャーシのサーボモーターから糸(アラミッド繊維)をかけてドライブする。2月(79年)のはじめ、たまたま別冊FMfan誌の取材でこのターンテーブルの音を聴いて以来、私はすっかりいかれてしまった。たとえば今回の組合せのように、アンプ以降がおそろしいほどに音のディテールをくっきりと増幅する、いわば解像力のよい装置であれば、なおのこと、プレーヤーシステムにもむしろそれを上回るほどの高解像力が要求されるというのは当然すぎる話だろう。その意味でこんにち得られる製品の中でも、このマイクロ糸ドライブに、オーディオクラフトのAC3000(または4000)MC型アームの組合せ以外を、私はちょっと思いつかない。
 ところで、解像力の高さ、という表現についてぜひとも補足しておきたいことがある。音のひとつひとつが、くっきりと、鮮明に、ディテールがどこまでも見通せるほど澄み切って、しかも圧倒的なフォルティシモでも音が濁らない……そういう音を解像力が良いあるいは解像力が高い、ということは間違っていない。けれど、その面ばかり着目すると、ついうっかりして、音の輪郭鮮明であることだけが、解像力の良さであるかのように思い違いしやすい。音楽の音には、重量感もあればあくまで軽やかに柔らかく漂う響きもあり、暗い音もあればどこまでも沈潜してゆくかのような深い渋い味わいの音もある。また多くの複雑な音のひとつひとつは、互いに独立しているが、しかし全体としては美しく溶け合い響き合う。
 一見鮮明、一見粒立ちの良い、いかにもカリカリと硬い音のするばかりを、解像力が高いと誤解しているのではないかと思えるパーツが、少ないとはいえない。
 音の響きと溶け合いの美しさ。その中にくるみこまれた解像力とは、要するに楽器の精妙な色あいを最もそれらしく聴かせてくれることであり、その意味で、マイクロ+オーディオクラフトが、いつのまにか手離すことのできないプレーヤーシステムとなってしまった。ここに組合わされるカートリッジは、最近ではオルトフォンMC30が最も多く、次いでエレクトロアクースティック/エラックESG794E、それにEMTのTSD(またはXSD)15。
 EMTは専用のヘッドシェルマウントだが、エラックおよびオルトフォン用のヘッドシェルは、アームと同じくオーディオクラフトのAS4PL。とくに、オルトフォンのMCシリーズをシェルにいっそう確かに固定するためのアダプター(OF2)を併用すると、たいへんクリアーな音が得られる。これを併用すると、ヘッドシェル+カートリッジの自重は相当に大きくなるため、ほかのアームではバランスがとりにくくなるが、AC3000MCに関するかぎり大丈夫。また、このアームにはストレートパイプアームが付属しているが、こちらにとりつけたほうが、もっと音が素直になり、音質本位に考えるなら゛ストレートパイプのほうがいっそう良い。
 レビンソンのマルチドライブのように、おそろしくキメのこまかな装置に対しては、たとえばデンオンDL303のような音も、案外よく合う。性格的によく似た面を持っているからかもしれない。少なくとも、おおかたのMM型やIM型は、こういう装置では音が寝ぼけて聴こえてとても駄目だ。
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 ところでこのプレーヤーシステムは、意外にハウリングに弱い。私の場合、ターンテーブルユニットが乗る大きさの板を用意して、市販のインシュレーターを下に入れている。ただし、マイクロのユニットだけで合計約55キログラム弱。これにアームおよびその取付ベース、それに後述のターンテーブルシートやスタビライザーを含めると、ゆうに60キロを越える。たとえばオーディオテクニカのAT605Jは、一個あたりの耐荷重が4キロだから、ざっと15個以上必要という計算になる。
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 もうひとつ、マイクロは、砲金製のターンテーブルにレコードを直接乗せるように指示しているが、私の場合、これにトリオのTS10というセラミック製のシートを乗せたほうが、音に落ちつきが出てよいと感じている。この場合、適当なスタビライザーを併用するほうが良いようだ。しかしこの辺のところは、使用条件や聴き手の主観で大きく左右されるだろう。
 プレーヤーからアンプまで、そしてアンプ相互間のシールド線や、アンプとスピーカーを接続するコードについては、諸説入りみだれているが、まず原則としてすべてオリジナルの製品からはじめた。つまりプレーヤー(アーム)からの出力ケーブルは、AC3000MCに付属しているMC用低抵抗型(ARR-T)。これは標準型備品で長さ1・5mだが、もしもプレーヤーとヘッドアンプのあいだを短くできるなら、長さ1mのARR-T10(別売)のほうがいいと思う。
 アンプ相互の接続ケーブルは、レビンソンのアンプがスイスLEMO社の特殊なコネクターで統一されていて、一般に普及しているRCA型ピンプラグは、専用のアダプターが余分に必要になる。そこで最初はともかくレビンソン専用の(輸入元のRFエンタープライゼスでアセンブリーしている)、芯線に銀を使ったLEMO←→LEMOコードをすべて使った。一般市販のシールドワイアにくらべると、ずいぶん細く、何となく頼りなくみえるが、その結果はあとで書く。
 スピーカーコードのほうは、79年春、レビンソンが来日した折にサンプルを持参した、芯線が何と2500本入りの特殊コードが、同じく供給されている。2500芯といっても、一本ずつの線は髪の毛ほどに細く、被覆をはがした先端部は、毛の剛(こわ)い筆といった印象だ。これがちょうどTVのフィーダーのような並行コードに作られている。1mあたり4千円という驚異的価格だが、今回とは別の機会にスピーカーコードをあれこれ試聴した際、私はこれが最も気に入って、数ヵ月前から自家用として採用していた。ただ、末端処理がなかなかスマートにゆきにくい。専用のラグが3種類用意されている。また強電用のラグの中に一応使えそうなのがあるので併用するアンプおよびスピーカーの端子の形に合わせるように、いろいろ工夫しなくてはならない。なお最近では、パワーアンプML2Lを購入すると、末端処理ずみのコード3m(HF10C)が1ペア付属してくるとのことだ。
 このほかに、ML2Lを2台ブリッジ接続するためのT型LEMOコネクターと、二台のML2Lを接ぐ短いLEMOコネクターが必要になる。

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