サンスイ AU-X11

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 サンスイのプリメインアンプは、現在のシリーズの出発点であるAU607、707から第2世代のAU−D607、D707、D907を経て、現在はAU−D607F、D707F、D907Fの第3世代に進化しているが、それぞれの特長として第1世代はDCアンプ構成、第2世代がダイヤモンド差動増幅方式採用、第3世代のスーパー・フィードフォワード方式が技術的な特長になっている。
 今回発売されたAU−X11は、従来サンスイプリメインアンプのスペシャリティモデルとして第2世代のプリメインアンプの時期に登場したAU−X1の後継モデルとして開発された製品である。
 基本的なデザインはAU−X1と同じだが、新しくヴィンテージの名称が付けられ、パネルサイドに木製サイドボードが加えられたのが異なった点だ。
 基本的構成は、ゲインと負荷抵抗切替可能なMCヘッドアンプ、イコライザーアンプ、フラットアンプとパワーアンプの4ブロック構成で、トーンコントロール回路はない。イコライザーアンプのダイヤモンド差動増幅DCサーボ回路、パワーアンプ部のダイヤモンド増幅スーパー・フィードフォワード方式に特長がある。
 電源部は伝統的な協力電源採用のポリシーを感じさせるもので、MCヘッドアンプ、イコライザー、フラットアンプ、それにパワーアンプがそれぞれ独立した左右独立型を採用。電源トランスはパワー段専用に左右独立巻線の大型トロイダル型、プリドライブ以前の回路用に左右独立の大型EIトランスを使う2電源トランス方式である。
 機能面は、イコライザー付パワーアンプともいえるシンプルなタイプで、左右独立のレベルコントロールをバランサーの代りに使う方式。イコライザー出力を直接パワーアンプに結ぶジャンプスイッチをもち、この場合にはゲインは−14dBとなる。また、サブソニックフィルターは、16Hz−3dB、6dB/oct型だ。
 コンストラクションは、オーディオアンプでその性能と音質を決定的に支配するところだが、AU−X1に比べAU−X11は、かなり大幅な変更が行なわれた。従来はパワートランジスター用左右チャンネルのヒートシンクが中央部に位置し、それをはさんで横一列に左右チャンネル各4個使用の電解コンデンサーが配置されていたが、今回は、この配置が入れ代り、8この電解コンデンサーを中央部に集中配置コンデンサーのタイプもより高性能型に変更されている。最近ではヒートシンクにヒートパイプを採用する例が多く、サンスイのFシリーズもこのタイプになったが、AU−X11のみは従来型の重量級ヒートシンクを採用している点は注目したいところだ。
 シャーシは、マグネティック歪対策としてAU−D907LIMITEDで採用した銅メッキが施され、ボンネットはアルミ製、サイドはローズウッドの木製に変っている。
 マイクロSX8000とMC20+AC3000MC及びDL305+DA401をプレーヤーに、JBL4343Bを使いAU−X11を聴く。AU−X1が、一般のアンプより1octほど伸びたように感じるソリッドな低域をベースに非常に押し出しの良いエネルギッシュなサウンドを特長としていたことに比べると、AU−X11は全体に音の粒子が細かくリファインされ、適度に力強い低域をベースとしたナチュラルな帯域バランスをもち、ディフィニションが優れた音場感の拡がりが加わった音になった。MC20、DL305ともに特長は素直に音となるが、MM型使用時の方がX1のイメージを強く持つようだ。ヴィンテージの名称の如く、パワーで押す若者が年月を経て余裕のある大人の魅力を備えた印象。

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