井上卓也
ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
テクニクスのプリメインアンプの新世代は、インテグレーテッドDCシリーズのSU8080と8075の2機種の開発から始まったと考えられる。
今回発売されたSU8099/8088/8077の3機種の新プリメインアンプは、インテグレーテッドDC&3DAシリーズと名付けられているように、インテグレーテッドDCシリーズを一段と発展させた内容をもつ製品である。ここでは、新シリーズ中SU8099/8088についてリポートすることにしたい。
インテグレーテッドDC&3DAシリーズの名称のなかで3DAという文字の意味は、アンプの音質を決定づける3要素──歪、周波数特性、ダイナミックレンジを互いに関連づけて解析する3DA(3次元解析法)の意味である。これと音楽信号を使ってアンプの歪分析を可能としたI/Oディストーションアナライザーを使用し、ヒアリングテストの結果を科学的に裏付けながら理想の音質を追求して開発されたものが、この新シリーズのプリメインアンプとのことである。
テクニクスによれば、先に述べたアンプの3要素と、最近話題になっているスルーレートの関連性では、まずスルーレートについては、いかに高い周波数まで歪なく出力が取り出せるかの意味からは、最大出力対周波数特性というデーターそのものがスルーレートを表現していることになり、ライズタイムでは、信号の立上がりの速さを示すことから、周波数特性が高域まで伸びていればライズタイムが良好ということになる。また、話題のTIM歪については、現在発生の要因が明確にされておらず、アンプという伝送系には高い周波数での伝送時間の遅れ(位相の遅れ)があるために、過度的な入力にたいしてNFが追いつかず、それが原因でTIM歪が発生するという理論では説明ができない。結論として、TIM歪こそ動的歪の代表といわれるが、実はアンプ内部でのクリップによる歪と判断せざるをえず、これを解決するためには、アンプの最大出力対周波数特性と再生周波数特性の両方をある条件に設定する必要がある。したがって動的歪の代表といわれるTIM歪も、周波数特性と出力という静特性を関連づけ管理すればその発生を防止できる、というが、その論旨の骨子である。このアンプの3要素を関連づけて管理する方法が3DAということになる。
SU8099は、パワーアンプ部には高周波トランジスターの技術を活かして開発されたSLPT(スーパー・リニア・パワートランジスター)を採用し、大電流が配線中を流れるときに発生する磁界に起因する高域歪を防止するため、パワー段と電源をブロック化した新方式を採用している。出力は、120W+120Wで、テクニクスA2で開発したアクティブサーマルサーボ回路を採用している。
機能面では、MCカートリッジ用プリプリアンプ、録音信号系をインプットセレクターから独立させたレコーディングセレクター、純電子式で応答性の速いFLパワーメーターなどがあり、入力セレクター、レコーディング、スピーカースイッチなどは配線の引廻しを短くするリモートアクションスイッチを採用している。
なお、SU8088は基本構想をSU8099に置いたモデルで、出力は78W+78W。
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