井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
ハーマンカードンは、1952年創立のオーディオメーカーだが、’60年初頭に発売された同社のトップモデルで構成するサイテーション・シリーズで、一躍当時のステイタスモデルとして最高の評価が与えられ、国内でもマランツ、マッキントッシュに次ぐ高級機として評価された。この記念すべき製品が、サイテーション1/3プリアンプと2/4パワーアンプだ。当然、管球式の凝った設計の製品で、程よくソリッドで明解な音は、こだわりのないストレートさが魅力で、マランツにもマッキントッシュにもない独特の味わいだった。
ソリッドステート時代になると、早くから半導体化が試みられ、サイテーションAプリアンプとBパワーアンプがソリッドステート時代の頂点に位置づけされるアンプとして開発され、後にキットフォーム化されたような記憶がある。
その後、米国企業によくあるように経営面で紆余曲折があったが、’80年代初頭に動的歪みをテーマとして、過剰なNFは音質を害すると提唱したマッティ・オタラ氏が設計したパワーアンプ、サイテーションXXで高級市場に復活を果した。この製品の開発は、当時の新白砂電気で行なわれ、続いてXXP、XIIプリアンプ、XIパワーアンプがマッティ・オタラ氏の手を離れて発売された。
超高級機ではないが、サイテーションの名は現在でも使われており、現在はホームTHX、ドルビー・プロロジックに加え、独自のAVサラウンドシステムを提唱している。これは、後方に独自のデュアルドライブ・ダイポール・サラウンド・スピーカーを設置し、これをサラウンドロジック・プロセッサーで制御することで、後方中央にファンタム・リアセンター・チャンネルを設け、後方/左/右の3チャンネルと、前方の3チャンネルの合計6本の音軸をもつ、ジム・フォスゲート氏が提唱する6音軸ステアリング方式を特徴とするシステムが、サイテーション7000である。
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