Monthly Archives: 4月 1978 - Page 8

ラックス C-12 + M-12

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たいそう品位の高い美しさに支えられた、しかしどこか小造りの感じのする、すっきりと整った音だ。ラックスのアンプには一貫してこの上品さがあるのだが、ときとしてそれが少々控え目にすぎると感じられることもある。ものごとをあらわにしない含みのある言いまわしは関西独特の奥ゆかしさでもある反面、少々品の悪いことを承知で腹にあることを言い切らないと気が済まない関東の人間には少々もどかしい感じがあるが、それに似ているのかもしれない。かといって押しつけがましい露骨な音は困るが、音楽を鳴らすための適度のバランスというものを頭に浮かべてみると、この12シリーズの音はやはり少々控え目すぎるように思える。この傾向はおもにC12の方がしはいしているらしい。とにかく磨き込まれた透明感のあるこの美しさは極上の水準だ。その美しさを長所とするには、しかし低音域全体の豊かな支えと、高音にかけての切れ込みが、それぞれもう少し感じとれる方がいいのではなかろうか。

ルボックス A740

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 オーバーオールのまとまりがよく、滑らかで適度のしなやかさのある音を聴かせる。
 聴感上では、ナチュラルに伸びた周波数レンジをもち、ローエンドとハイエンドを巧みにコントロールして抑えている。バランス的には、低域は柔らかく落着き、中域は音の粒子の滑らかさ、細やかさはあるが、密度は少し薄いタイプである。
 音の表情はややパッシブで、ある範囲内でキレイに整理された音を聴かせるが表現力はかなりあるようだ。ステレオフォニックな音場感はスッキリと広がるメリットがあり、音源は少し距離感がある。低域軟調傾向は、4343とのマッチングがよくないせいのようだ。

テクニクス SU-9070II (Technics 70AII) + SE-9060II (Technics 60AII)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マークIIでない方の、いかにも物理データ・オンリィといった感じの、一応の音はするが音楽としてどこかよそよそしさ、素気なさを感じさせる音に対して、II型は一変している。基本的には、おそらく物理特性を重視した正攻法での作り方であるらしく、音のバランスがよく、すべてのプログラムソースに対して欠点の少ない、いわば過不足のない音を聴かせるところはたしかにテクニクスだが、しかし従前までのそれとは思えないほど、音が生きていてほどよい魅力も感じとれて、極上とはいえないまでもかなりの随順でのできばえだ。ひとつひとつのぷろぐらむそーすについて細かいことを言い出せばいろいろ注文もある。たとえば弦楽四重奏では、鳴りはじめた瞬間から聴き手をひきずりこむほどのしっとりした雰囲気までには至ってないし、ベーゼンドルファーの音も基本的な骨格はしっかりしているが、あの独得の艶と色気までは出しきらない。ただそれはこの価格帯のアンプには少し無理な注文だと思う。

QUAD 405

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スケールは小さいが、機敏でシャープな音をもつパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジはかなりワイドレンジ型であるが、バランス的にはローエンドが抑えられ、中域から高域がスムーズに伸びている。低域は軽く、量感が4343に対してはやや不足するが、反面においてブーミーな音とならず、芯のしっかりしたシャープさがメリットになる。
 音の表情は、伸びやかで弾みがあり、軽快さが独得の魅力である。コンパクトにまとめられた、100W+100Wのパワーアンプとしてはトータルのまとまりに優れ、予想よりもゆったりとした音である。音場感はスッキリと広がり、音像はシャープだ。

スタックス SRA-12S + DA-80M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 組み合わせたSRA12Sは、コントロールアンプとしてよりは同社のヘッドフォン(スタックスではイヤースピーカーと呼んでいるが)の専用アンプとしての性格が濃いと思うし、価格的にみてもDA80M(2台)とはかなりバランスが違うようなので、本来は、DA80Mは別のコントロールアンプでとライブすることを考えているのではないだろうか。ただ、この両者の組合せで鳴らしてみると、いかにも屈託のないのびのびとした明るさ、一様にステージ前面に並列にせり出したような独特の音像の並び方、といった音の性格は一貫している。その意味で、音像のひとつひとつに、もう少し引きが欲しい。言いかえれば奥行き方向への立体感をもっと感じとりたい。また、シェフィールドのテルマ・ヒューストンの黒人独特の声の艶とか、ベーゼンドルファーの一種脂っこいトロリとした味わいなどを、どちらかといえば脂気をおさえて鳴らす傾向があった。

QUAD 303

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ソリッドで硬質な音をもつパワーアンプである。聴感上での周波数レンジは、現在の水準からすればややナローレンジ型だが、トータルのまとまりがよい。バランス的には、低域はゆるやかにレスポンスが下降し、中域は量的には適度であり、高域もハイエンドが抑えられているように聴き取れる。
 電源電圧は定格110V使用となっているために、100Vでも関係ないと思いがちであるが、音の姿・型がやや崩れた、かなりナローレンジ型の、張りがない反応の鈍い古風な音となるために、110V使用が条件となる。この場合は、いわゆるQUADらしい、硬質な魅力をもった、シャープでクッキリとした独得の音である。

ソニー TA-E88 + TA-N7B

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ソニーにかぎらずどのメーカーの製品でも、概してパワーアンプよりもコントロールアンプの方に、そのメーカーの音が色濃く反映される傾向がある。この組合せでも、それぞれの単体のところでも書いたことだが、いくぶんアクの強さ、あるいは押しの強さを感じさせる音の傾向はE88の方に多く感じられ、N7Bの方は基本的にそれと似ているがE88よりはナイーヴな面を持っている。この両者を組み合わせた音は、やはりE88の個性が支配的になり、たとえば菅野録音の「サイド・バイ・サイド3」のピアノトリオを例にあげると、ピアノの打鍵音をかっきりと際立たせ、ベースのピツィカート、そして前半をコードで支えるギターの音などを、ひとつひとつ、目鼻立ちをはっきりさせながら楽器の存在を強調する感じで聴こえる。これに限らず、録音されている音の姿をひとつひとつあらわにしてゆく傾向があって、そのことが、曲によって少々分析的にすぎるようなイメージを抱かせる場合もあった。

マッキントッシュ MC2205

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、予想よりもソリッドで硬質な面が顔を出し、マッキントッシュらしい、豊かさ、力強さが充分に音として出ているとは思われないようだ。
 聴感上での周波数レンジはかなりナチュラルに伸びており、バランス的には、低域は量感があるが、重く、鈍さもあり、中域は量的にはタップリとし、厚みもあり密度も濃いが、やや硬質な面があり、音の粒子が少し粗粒子型である。コントラストは充分につくが、細部をクリアーに引き出せず、やや大柄な印象となる。ステレオフォニックな音場管は適度に広がり、音像はかなりクッキリと定位をするが、輪郭は粗いタイプだ。

マークレビンソン ML-2L

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 定格パワーからすると想像のできないパワー感があり、引き締った緻密な音をもつパワーアンプである。少なくとも、データ的なパワーと聴感上のパワーがこれほど大きく異なった例はなく、パワーとは何かをあらためて考えざるをえない。このモデルの特長は、スピーカーシステムに対して非常に強力な働きかけをすることであり、低出力アンプでは暗く、重く、鈍くなる4343の低域をキリッと締め上げて、タイトで反応のシャープな素晴らしい音に一変させてしまうには驚かされる。しかし、LNP2Lを一般的な仕様で使うと、中低域あたりの量感が抑えられ、反応が少し遅くなることだけが、唯一のパワー不足を感じさせる面である。

ソニー TA-E86 + TA-N86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 名作と謳われたプリメインアンプTA1120の頃から、ソニーのソリッドステート・アンプの音には、本質的にかなり冷徹というか、やや無機質的な、整ってはいるがどこか突き放した冷たさを私は感じていて好きになれなかった。新しい製品になるにつれて、それもごく最近になって、かなり大幅に変身を試みはじめたようで、中でもこの86シリーズは、とてもバランスがよく滑らかで柔らかな肌ざわりを持っていて、一聴した印象では少し前までのソニー製品とは思えないほどだ。だが、柔らかいといっても決して女性的な弱腰の音ではなく、むしろ一見柔らかな音の中に、意外にコントラストのきつい芯の強さがくるみこまれていると感じとれる。そのことは、たとえばシェフィールドのレコードで、一見ウォームな丸みのある、しかし現代ふうの反応の鋭い音でリズムセクションのきちんと整った中から、テルマ・ヒューストンの声がぐっと張り出してきこえるという一例からも聴きとれた。

マランツ Model P510M

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーンアンプ♯510Mとは、デザイン面で異なるラックマウント仕様のパワーアンプであるが、同一ロットではPタイプから先にセレクトされているということで、聴感上での音質も少し異なっている。
 ここで試聴したモデルは、リファレンス用の♯510Mよりも余裕のあるスケール感タップリの音であり、ソリッドさ、タイトさの面では不足気味かもしれない。低域から中低域の量感の豊かさは充分にあり、音色が暖かく、適度の重量感があり、安定したベーシックトーンとなっているため、中域のソリッドさがあまり目立たず、トータルの音の姿・型がやや異なって聴こえる。エネルギー感が充満したクォリティの高い音である。

マランツ Model 170DC

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スケールは小さいが、滑らかで伸びやかな音をもつ、軽快な印象のパワーアンプである。
 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、♯3250との場合ほどワイドレンジに伸びた印象は薄らぐが、中域の音の密度は一段と向上して、小型のパワーアンプとしては、現代アンプらしいキャラクターをもったまとまりをみせる。バランス的にはかなりフラットレスポンス型で、低域は柔らかく甘いタイプであり、中域はこのクラスとしては活気があり、量的にも不足感が少ない。4343をドライブするにはややパワー不足の面があるが、音の鮮度はかなり感じられる音である。

ジェニングス・リサーチ The Amp

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 色付けが少なく、オーソドックスな音を聴かせるパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジはかなりナチュラルに伸びたタイプで、低域、中域、高域の音色はよくコントロールされ、明るく軽い。音の表情は、伸びやかで鮮度がかなり高く、ピークののびも充分にあり、ストレートに音を出す、ややドライな魅力がある。米国系のアンプとしては、中低域の量感が抑え気味で、中域の緻密さもわずかに不足気味であるが、国内製品よりは充分なエネルギー感があるのが特長である。ステレオフォニックな音場感はよく広がるタイプで、空間の広さを充分に感じさせ、左右のスピーカー間の少し奥にスッキリと広がる。

スレッショルド NS10 Custom + 400A Custom

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 最初に発表された800Aが、あまりに手がかかって採算がとれないという理由で製造中止になってしまったことを残念に思う。というのはそれがかなり良い音のパワーアンプだったからで、国産でいえばラックス5M21やヤマハB3のような、決してハメを外さない慎重に練り上げられた、たいへん滑らかで美しい、そしてアメリカのアンプにしては静的な感じさえする音を聴かせた。400Aも基本的にはその方向をそのまま受け継いでいる。くわしくは単体の項をご参照頂きたいが、それをNS10と組合せると、本質的にこのメーカーの持っている真面目さがかなり際立ってくる。どこか禁欲的な雰囲気さえ感じさせるよそよそしいほどの慎重さ。粗っぽい音を全く感じさせない滑らかな、そしていくぶん冷たい肌ざわり。しかし音量を上げるとかなりの充実感も力もあって、やはり国産とはひと味違う。ここにもう少しヴァイタリティや音の表情の自在さが増してくるとさらに素晴らしい。

スレッショルド NS10 Custom + CAS1 Custom

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 GASの三兄弟(というのか、または祖父から孫までの三世代というのか)の関係とある意味で似ていて、惜しくも製造中止になった800Aが素晴らしい出来栄えで、次の400Aはメーカーとして少し固くなって作ったという印象のあるのに対して、末っ子のCAS1になると、メーカー側もわりあい伸び伸びと作ったというイメージが音の上にはっきりとあらわれて、そのことは単体のところにくわしく欠いたのでご参照頂くとして、コントロールアンプNS10との組合せでもその長所は発揮され、NS10/400Aの組合せよりは、たしかに音のスケール感や緻密さ等でわずかに聴き劣りする反面、音の鳴ったあとの響きあるいは余韻のひろがりかたは好ましい。どこか響きに暖かささえ感じさせ、400Aのまじめな鳴り方よりも私にはこちらの方が嬉しい気分になれる。生真面目な姉貴よりもやや茶目気のある妹の方が魅力的というところか。むろん似た性格の中での話だが。

ハーマンカードン Citation 16A

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかで、かなりスケールの大きな音をもつパワーアンプである。
 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、聴感上でかなりナチュラルに伸びた周波数レンジをもち、低域は柔らかいが、音色は暗くならず、適度の量感があり、中域は厚さはあるも粒立ちが甘い面があり、中高域はやや硬質さがあって、弦のトゥッティがクリアーに分離しないようだ。
 音の表情はおだやかだが、反応も適度にあり、この面では♯17を上まわる。音をマクロ的に外側から掴み、細部にこだわらずまとめ、破綻なくまとめる、ふところの深さが特長である。

ハーマンカードン Citation 17 + Citation 16A

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 国産でいえばビクター7070の中〜高域の華やかさと、パイオニアC77の身振りの大きさを合わせて、そこにアメリカふかのスケールを加えたという印象の、相当に特徴のある音がする。饒舌ともいえるし、説明過剰、あるいはハイコントラスト、硬調……そうした表現を使いたくなる音で、その傾向は、単体のところでも書いたようにコントロールアンプ、パワーアンプの両方にあるが、しかしどちらかといえば16A(パワーアンプ)の方が全体の音色を支配していそうだ。たとえば「オテロ」の冒頭のトゥッティのところでも、いかにも大見栄を切っているという感じ、大上段にふりかぶった感じがあって、大舞台でのドラマがきわめて劇的に進行してゆくかの観がある。なんともおもしろい個性ともいえるし、やはりこれはアメリカのアンプでなくては鳴らせないスケール感だともいえる。ただ、変に厚着した音でないことは、弦楽四重奏などでは意外に線の細い表現もできることからも聴きとれる。

スペクトロ・アコースティック Model 217 + Model 202

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプ、パワーアンプ双方とも、見た目がずいぶんユニークだ。デザインや仕上げやコントロール機能の整理のしかたなども含めて、どこかアマチュアの手づくりのセットというイメージが残っている。こういう作り方は、ほかにもDBシステムズやハフラーなど、アメリカで最近誕生しはじめた新顔のメーカーによく見受けられ、たとえていえば少し改まった会合へもジーンズで出かけるというような、良くいえば虚飾を排した気取りのなさ、いわば実質本位の作り方で、共通しているのは見た目や価格から想像するよりもはるかにしっかりしたグレイドの高い音が鳴ってくること。ただ、コントロールアンプ単体のところで書いたように、ボリュウムを絞ったポイントでは精彩を欠いた音になってしまうので注意が要るように、必ずしも上質のパーツが使われているとは思えない。スイッチ類の感触なども含めて、アメリカでもかなりローコストの製品であることを頭に置いて評価したい。

GAS Thaedra II + Ampzilla II

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプ、パワーアンプ、それぞれの単体のところでほとんどその特徴を言いつくしてしまった。言いかえればそれぞれ単体で聴いたときと、それを互いに組み合わせたときの音の傾向がほとんど一致していて、それだけ個性がはっきりしているし、また、完成度の低いセパレートアンプが往々にして単独の試聴の際と組み合わせてのそれとで印象の違うことがあるのに対して、さすがに十分に練り上げられたアンプであることが聴きとれる。音の質感が本質的には乾いた傾向であること、堂々と立派で男性的であることなど、これ以外のメーカーではアムクロンの組合せが一見似ているが、アムクロンの方にむしろ力を抑制した好ましさを私は感じた。GASの音にはその力をやや誇示する傾向が聴きとれる。初期の製品だけが持っていた、素直さが魅力につながるような、控え目ゆえの好ましさが薄れたともいえる。しかし客観的にはこのアンプの音はやはり水準以上のみごとなできばえというべきなのだろう。

ガリエン=クルーガー 1000-1S

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、おだやかで落着いた音となる。
 聴感上での周波数レンジはローエンドとハイエンドを抑えた平均的なレスポンスをもち、バランス的にはナチュラルであるが、低域の質感が甘くこもり気味となり、ドロンとして音色の変化が不明瞭となる。中域はおだやかで厚みは適度にあるが、中高域から高域にかけて音の粒子が粗く、ソフトであるために聴きやすさはあるが、スッキリとした分離のよさは望めない。ステレオフォニックな音場感は、全体に音源が遠く、左右のスピーカー間の奥に広がるタイプである。やはり専用のコントロールアンプが欲しい。

SAE Mark 2100L + Mark 2600

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 セパレートアンプを作るメーカーの中にも、どちらかといえばコントロールアンプの方に手腕を発揮するメーカーと、パワーアンプの方がうまいメーカーとがあることを前にもどこかに書いたつもりだが、SAEはこの分類にしたがえば、どちらかといえばパワーアンプの方に妙味をみせるメーカーだと思う。ことにこの♯2600と、この前のモデル♯2500とは、現代の最尖端をゆく恐るべき能力を持ったパワーアンプなので、♯2100Lというコントロールアンプもそれ単体としてみれば決して悪いアンプではないが、しかし格の上でややカンロク負けの感じがあって、♯2600の良さを生かすのはやはりマークレビンソンのように私は思う。SAEどうしの組合せでは、弦の音などやや金属質の傾向が増してコントラストが強くなり、どちらかといえばアクの強い音に仕上ってくる。なお♯2600の方は、実際に鳴らしはじめてから2〜3時間を経過しないと本調子が出てきにくい性質がある。

GAS Ampzilla II

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、オリジナルな組合せとはかなり異なったキャラクターの音となる。
 大変に滑らかで豊かな音で、低域から中域にかけてのベーシックトーンが、オリジナルペアにくらべると柔らかく軟調傾向が増え、中域のエネルギー感が少し薄らぐようだ。音の粒子は、ハイパワーアンプとしては細かくよく磨かれたタイプで、滑らかさ、細やかさ、表情のゆったりとしたキャラクターは、パワーアンプのほうにかなりあることがわかる。基本的なクォリティは充分に高く、ステレオフォニックな音場感は、パースペクティブをかなり感じさせるタイプだ。

GAS Thoebe + Son of Ampzilla

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 サリアとグランドサンの組合せが、全体として音のナイーヴなやわらかさを特徴として、どちらかといえばクラシックに良さを聴かせる(しかしポップスにもそのナイーヴな音は十分に優れていると思うが)のに対して、こちらの場合には総体に硬調でコントラストを強めて、クラシックよりはポップス系にその特質を発揮する。ただ硬調とはいっても、国産の一部にあるようなあからさまなに硬く金属的な音は違って、それはあくまでもGASのファミリィの中で、の話であって、これを単独に国産の硬質型のアンプと比較すれば、ずいぶんおだやかに聴こえるはずだ。たとえば弦楽四重奏のようなプログラムソースでも、弦の音自体は確かに硬い傾向に鳴らすが四つの声部のバランスにも難点は少なく、ましてボウイングにともなう音のニュアンスがよく聴き分けられ、やはり音楽をよく知った設計の手になることは十分に聴きとれる。ただヴォーカルなどではもう少ししなやかさが欲しく思える。

QUAD 33 + 405

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 33と303の組合せのところでも書いたことの繰り返しになるが、アンプを(に限らずものを)作る態度に、その時点での最新・最高の技術を惜しみなく投入する方向と、ひとつの限定された枠を設定してその中で最善を尽くそうという方向との両極があるが、QUADはもちろんその後者として、長い年月をかけて目立たないながら改良を加えて洗練の度を増してゆくという作り方に、私は好ましさを感じている。405というアンプは、オーディオの周辺機器やレコードの録音技術の発展と、それにともなう聴き手の側の感覚の変化に対応して、かつて設定したひとつの枠をほんの少し拡大したことの具現というふうに受けとれる。音質そのものは、単体のところで書いたように、もっと能力のあるコントロールアンプと組合せれば、相当に水準の高いフレッシュな音を鳴らす可能性を持っているのに、あえて33以外のアンプ(今のところは)発売しない頑固さは、微笑ましくもあるがしかしいささかものたりない。

GAS Son of Ampzilla

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、アンプジラIIと比較して、比較的に寒色系のソリッドで引き締った音になる。
 聴感上での周波数レンジは、ローエンドが抑えられたフラットレスポンス型であり、バランス的には、低域が引き締り中域の粒立ちがクッキリとしているために、アンプジラIIとくらべると反応の早さや音の鮮度の高さでは勝るが、スケール感の大きな安定した力強さではかなりの開きがある。しかし、その比較さえしなければ、定格出力から予想するよりはるかにパワフルであり、4343を充分にドライブするだけのエネルギー感があるのは見事である。