Daily Archives: 1976年6月12日

パイオニア C-21, M-22

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 パイオニアが驚くべきシリーズの新製品を出した。M−22パワーアンプ、C−21コントロールアンプ。それにディバイダーアンプも加わっている。最近流行の薄型プリアンプC−21は、内容の方もフォノイコライザー回路を独立させたもので、パネルにはボリュームコントロールのつまみが左右別々に出ているだけだ。つまり外観通りに簡略化された回路設計を基本として、その部品を最上級のものでかため、プリント回路のパターンも完成度の高いものだ。こうした傾向は信号の純粋性を保ち、歪をおさえSN比を究めるという基本姿勢をそのまま製品に反映させた点で、車でいうなら、走るために徹底したレーシングマシーンみたいなものだ。ひとつの目的にぴたりとねらいを定めて、他を一切排除した設計。アクセサリーや余分の回路、スイッチを省いた設計である。だからC−21のSNは驚くほどで、例のマークレビンソンのプリアンプを上まわるほど優れている。歪特性も同様だ。最新の設計思想で貫かれているのだ。
 個の思想がオーディオに入ってきたのは、まだ最近の1年程度だが、パイオニアのようなもっともポピュラーと見做されていたメーカーから、こうしたハードな姿勢の製品がシリーズ20として出されたことは注目に価しよう。驚くべきことだ。M−22はC−21と同様に、質的な良さを純粋に求め、製品化したわけだ。つまりエクスクルーシブシリーズ中、もっとも好評のM4をそのまま、ひとまわりパワーダウンして価格を1/3に下げて達した驚異的製品だ。30/30ワットという出力は、今日のハイパワー時代には逆行する小出力ぶりだ。ブックシェルフ型隆盛の今日の平均的なスピーカー商品に対して、M−22はその実力を発揮することはあるまい。しかしスピーカーが良質であって質的に高級であれば、必ず今までのアンプとは格段に質が高いことを知らされよう。M−22は、だから本当に良いものを求め、しかし余りあるほどの資力のないマニアにとって、この上ないアンプとなるに違いない。このシリーズにディバイディングアンプが加えられており、M−22を中高音用にも使えるのは+αだ。

GAS Ampzilla

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 米国の新進アンプ・メーカーにグレート・アメリカン・サウンド社という特異な高級製品を作るメーカーがある。いかにも大げさな社名だが、作るアンプの製品名が「アンプジラ」。まるでゴジラみたいなアンプだが、’76年中には出力300ワットの物すごいのを作るといい、その名はズバリ「ゴジラ」。特異な体質のメーカーという理由は、こうした名づけ方からも推察されるのだが、こんな名前をつけられた製品は、どんなにかハッタリに満ちたものかといぶかしい眼でみられてしまうに違いない。特に日本のマニアのように、かなりまじめでオーソドックスな感覚の持ち主には、あまり好ましい先入観念は持てっこない。ところが、である。これらのどぎつい名前のアンプは、その名前からの印象とはまったく違って、きわめて正統的な設計をされ周到に作られており、そのサウンドもまた驚くほどすばらしいもだ。日本に入ってまだ半年も経たないのに、その優秀性がきわめて短時間に轟きわたり金にゆとりある高級ファンの間にちょっとしたブームさえまき起こしている。
 その中をみると、回路設計の簡潔なこと。使われている部品が重点的に最高品質を用いることに徹底している。アースは太い線ではなく、ぶ厚い銅帯を用い、ハンダ付けだけでなくボルト締めを重ねている。放熱には細心の留意をされ作られているが放熱版材料はぜいたくではない。さて、この「アンプジラ」を設計したボンジョルノ氏は多くの高級アンプを設計したキャリアもあり、初めて自尽のブランドで商品化しただけに最高を狙ったという。だがこのアンプは今回の選択から意識的に外した。理由は、間もなくより優れた設計のサーボ・ループ方式に変更されるといわれるからだ。現在、A級ドライバーを含むDCアンプだが、もっと良くなってからにしよう。ただ、アンプジラの持つ特長の数々は、現代アンプの技術的な象徴といえることは確かだ。

マランツ Model 510M

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 わが家には、いつでもスイッチさえ入れれば動作してくれるアンプが何台もあって、その多くは何んらかのスピーカー・システムが接続されている。スイッチさえ入れ、プリアンプをつないでボリュームを上げれば、すぐ音が出る。ところで、こうしたアンプのうちで、もっともスイッチを入れるチャンスの多いのはマランツのモデル2というパワーアンプだ。これは6CA7というフィリップス系のパワー管のプッシュプル接続パワー段で40ワット出力のモノーラルアンプであって、後にこれを2台結合して同じ寸法のシャーシーに収めるため出力トランスを少々小さくして35W/35Wとしたのが、有名なステレオ用モデル8Bである。さて、この管球アンプは多くの管球アンプ海外製品の中でも、もっとも音の良いアンプだ。堂々たる量感あふれるこの低音は、一度聴くと手離せなくなる。これに匹敵する製品はいくら探しても見当らず、マッキントッシュのアンプですら、300/300Wの超出力MC2300以外ない。
 永い間、このアンプに相当するものがなくて、これに近いのが同じマランツが昔作ったソリッドステートのモデル15とそのパワーアップ型、モデル16であった。モデル15の方が、かなりおとなしい中音でオーソドックスなマニア好みはするだろう。共に低音の力強さはマランツ独特のものだ。特にモデル16は今日的な意味でのクリアーな透明感があって、ある意味ではモデル2よりも好みの音である。パワー80/80が、あとから100/100ワットにパワーアップされたとはいえ、現代のアンプとしては少々力不足はいなめない。音マイク録音のすさまじい立上がりの最新録音では、クリアーな音も越しくだけになってしまうのだ。
 マランツの最新型510Mは265/265Wの超出力で、その割にコンパクトなサイズ。それは100/100ワットのモデル16の50%増程度、重量も2倍ぐらいなものだ。クォリティーは、まさにモデル16をはるかに上まわる電気特性で、より透明で鮮明なサウンドがいかにも最新型だ。

テクニクス SE-9060 (60A), SU-9070 (70A)

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 2年ほど前から、米国の新しい小さな電子メーカー、マークレビンソンのプリアンプの優秀性が話題となっている。プリアンプといっても、フォノイコライザー回路を独立させて、それに左右独立の音量調整用ボリュームをつけた形の、純粋にディスク再生のための文字通りのプリ(補助)アンプであって、トーンコントロールやフィルターさえ付いていないが、雑音発生量が極度に抑えられていて、いわゆるSN比は今までの常識よりはるかによい。そのために小さなレベルでの再生がきわだってクリアーでスッキリしている。こまやかなニュアンスもよく出る。こうした点が、高級マニアの注目するところとなった。ただ、あまりに高価で、VUメーターのついたのが90万円を軽く越し、メーターなしの超薄型のでも50万円を越すという驚くほどの価格だ。誰にでも買えるものではないが、この高価格なのが又、新たな話題となって、ますます注目されるという2重のプラス(?)を生んでいる。ただし、うまい商品であるし、商売でもあろう。
 商品としての巧妙さは、また逆にその裏をかかれることにもなるが、持ち前の電子技術を誇る日本のメーカーが黙ってみているはずがない。この半年に、マークレビンソンのフォノイコライザー・アンプを狙った製品がいくつか出てきた。その一番バッターがテクニクスの70Aだ。外観的にはよく似たアンプで、SNもかなりよく、性能的にはテープモニターを2系統プラスしている。音の方も、より暖か味ある日本のマニア好みの音だ。肝腎のSNの点で、もう一歩という所だが、7万円という価格からは止むを得ないのだろう。プリント回路の質的な面で、もう少し良ければなあと望むのは欲ばりすぎかも知れないが、パワーアンプ60Aの出来具合のすばらしさにくらべて、プリの内側はちょっと淋しい。パワーアンプ60Aは、8万円という価格の中で外観、内容とももっともユニークかつ魅力を持ったアイディアと個性にあふれた製品だ。組合わせて聴くと、おとなしい音は大人のマニア向けという感じで生々しく、自然な響きが質の高さを示す。

クワドエイト LM6200R

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 いま、わが家でもっとも多く使っているプリアンプが、この米国の業務用メーカーのクォードエイト社の作る本格的なプロフェッショナル用ポータブルミクサーLM6200にフォノイコライザーのプリント基板を組み込んだ特別型LM−6200Rだ。
 本来それぞれにレベルコントロールを独立にそなえている6回路のマイクミクサー回路と、バッファーアンプを内蔵し、マスターコントロールをつけたもので、VUメーターを別のパネルで備えて、全体をキャリングケース(可搬型)に収めてある。価格は76万円と、かなり高価だが、本来プロ用のミクサーだから高くて当り前。大型の36回路コントロール・テーブルは1千万円もするくらいで、そのミニチュア型なのだから。ところで、このLM−6200Rはマイク回路はマッチング用入力トランスが入っているが、フォノ回路はそれがないのでSNはまあまあで、おなじみのマークレビンソン並みだ。でもMC型カートリッジをヘッドアンプやトランスなしでストレートで使えることは、もちろん。その時でも、ノイズは大して気にならないほどだ。
 さてこのクォードエイトLM−6200Rは、トーンコントロールはむろん、フィルターも一切ついていないから、実質的にイコライザー回路だけの単純な構成だ。それだけに音質の方は、きわめてストレートで、一切の変形も歪もない。このアンプの堂々とした力強さでクリアーな透明感は、マランツの幻の名器といわれたプリアンプ、モデル7を、もっと澄み切った音としたものといえば、もっとも近い。だから、今までモデル7を使っていたのに、LM−6200Rを使い出したとたん、モデル7はめったに使わなくなってしまった。
 最近接したプリアンプの中で、もっとも印象的だったのはアンプジラと、ペアとなるべきプリアンプ「テドラ」だが、テドラはそのパネルのデザインが独特で扱い難い。いわゆる美的感覚にのっとった所産ではなく、マニア好み一辺倒だ。LM−6200Rは実用一点張りだが、それなりの合理性が信頼感につながる。ただフィルターがないので、パワーアンプのスイッチを低域に入れる前に、プリアンプをONにしておくこと。

QUAD 33, 303

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 このアンプだけは、他のものと違って少々くつろいだ選択基準にのっとっている。つまり、朝に夕に、息を抜いたひとときに気軽にスイッチを入れてレコードを楽しむためのアンプとでもいえようか。特に、そうしたときに「音に対決する」といった息づまるような聴き方でなく、音楽を楽しめるコンデンサー・スピーカーを選んで、これを実用的に鳴らすことを考慮した時に必ず浮上するのが英国のアコースティック・インダストリー・マヌファクチャー社のコンデンサー・スピーカーQUAD(クォード)ESLであり、それをドライブするためのアンプとしてのクォード・トランジスタ・プリアンプ33、パワーアンプ303なのだ。
 ごく一般的な音楽の高級ファンの場合「永く聴いても疲れることのない装置」が強く望まれるものだ。QUADのシステムはこうした要求にぴったりであろう。聴く位置は固定されるが音像の確かさもすばらしいし、その品質は価格からは想像できない。まして最近のポンド下落の折で、日本での価格はこれからも高くなることはあるまい。
 クォードのアンプとして、オーディオマニアであれば、管球式のステレオ用プリアンプ・モデル22とパワーアンプ・モデル2を2台というのが、いつわらざる本音だろうし、今日、やや骨董的な価値も出てきて、マニアであればあるほど大いに気になるアンプであろう。
 ただ、今ではこれを探すのは労多く、価格的に割高のはずだ。トランジスターで間に合わせようというわけではないが、303と33でもいい。内容を見れば米国製の同価格の製品とくらべてみるとよく判ろうが、驚くほど綿密に、精緻に作られ、まるで高級測定器なみだ。プリント板の差換えでフォノイコライザーやテープイコライザーを変えられるようになっている所もいい。アンプの再生クォリティーは、今日の水準からは決して優れているというわけではないが、しかしESLを鳴らすには、この303の出力は手頃だし、最新パワーアンプ100/100ワットの405のお世話になることもあるまい。価格対内容では世界有数の製品だ。

パイオニア Exclusive M4

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 良いアンプとは、いったいなんだろう。「良い」という意味は多くある。電気的特性の良さはアンプにとって最低条件だとよくいわれる。電気的特性が良くないのでは、良い音がするわけないともいわれる。しかし、逆に良い音のアンプなのに電気的特性は現代の最新普及価格帯の総合アンプに劣るものもある。いや最近の5万円台のアンプは歪0.1%を下まわり、海外製のひとけた上の優秀なアンプよりも性能表示は優れている。しかし、音は必ずしも電気的特性に伴わない。今日のアンプの音が悪いというわけではないが、電気諸特性がずっと良いのに音を聴くと大したことないのも少なくないのである。
 ところで、こうして記していると結論が出なくなってしまいそうだが、ただアンプをみつめるのでなくて、スピーカーを接続して初めてシステムとして動作することに目をつけて、スピーカーの方から逆に見た方がよいのではないかと思われる。つまりスピーカーをよく鳴らすことが、よいアンプの条件として判断しようというわけだ。
 ところで、アンプ以上に良い悪いの判断が難しいのがスピーカーだが、高価な高級品ほどよく鳴らすのがむずかしいものである。わが家には昔作られた、昔の価格で1000ドル級の海外製高級システムから、今日3000ドルもする超大型システムまで、いくつもの大型スピーカーシステムがある。こうした大型システムは中々いい音で鳴ってくれない。トーンコントロールをあれこれ動かしたり、スピーカーの位置を変えたり。ところが、不思議なのは本当に優れた良いアンプで鳴らすと、ぴたりと良くなる。この良いアンプの筆頭がパイオニアのM4だ。このアンプをつなぐと本当に生まれかわったように深々とした落ちつきと風格のある音で、どんなスピーカーも鳴ってくれる。その違いは、高級スピーカーほど著しくどうにも鳴らなかったのが俄然すばらしく鳴る。昔の管球式であるものは、こうした良いアンプだが、現代の製品で求めるとしたらM4だ。A級アンプがなぜ良いか判らないが、M4だけは確かにずばぬけて良い。

デンオン PRA-1000B, POA-1000B

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 デンオンはこの数年来、高級プリメインアンプでもっとも成功しているブランドだ。昨今話題となっているステレオ右、左のクロストーク特性においても、製品の新型に2電源トランスを用いてアピールしている他のメーカーのような処置は何んらとっていないのだが、実際にはデンオン・ブランドのプリメインアンプのクロストーク特性ほど優れて、2電源の他社製をはるかにしのぐ。ステレオ初期から「ステレオ」用としての基本特性である左右セパレーションを重視しているから当り前であって、何をいまさらというのが、デンオンを作る日本コロムビアのメーカー側の言い分だ。当然である。
 コロムビアの昔の製品に「ステレオ・ブレンド・コントロール」というつまみが付いていたが、左右を混ぜてステレオからモノーラルの間を可変にし、2つのスピーカーの間の拡がりを変えているわけだが、こうしたステレオコントロールを付けるには、始めからステレオのクロストークを十分良くしておかなければならず、それがデンオンアンプのステレオ用としての優秀性を築いてきたのだろう。
 このように基本特性の優秀性はデータの上にはすぐ出てこないけれど、本当のアンプの良さを示すものといえよう。話題になって初めて、ある部分がクローズアップされる。本当に良い製品は、こうした部分的な面が解析されると、すでに手を打ってあって、いつの時代でも優秀性がくずれない。デンオンの新しい管球アンプ1000シリーズは、管球という昔ながらのディバイスを再認識して現代の技術で作り上げた高級品といわれる。つまり、トランジスタ技術を活用した新しい時代の管球アンプなのである。
 だから6GB8という超高性能高能率パワー管を採用し、100ワットという驚くべき出力をとり出し、しかも最新トランジスタアンプ並みの高い電気的特性を保っているだろう。その音は、無機的といるほど透明感があふれ、常識的な管球アンプの生あたたかい音では決してない。プリアンプを含め、いかにもフラット特性の無歪の道のサウンドスペースを創っているといえそうだ。

アキュフェーズ M-60

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 ケンソニックは、トリオのトップクラスの技術者がグループを作って始めた新進メーカーだ。高級品を選んで作るという姿勢がとても好ましく、いかにもハイファイメーカーとしての基本姿勢そのものをメーカーの体臭として感じとれる。最新に作った製品P−300を始め、すべてのパワーアンプ、プリアンプがすべて海外市場で最高の賛辞を受けた実力ぶりも高く評価できる。特に日本での高級アンプが、価格的にベラボーな高価格が多かった2年前の初期から、他社とは違って実質的価格を打ち出しており、これがまたハッタリのない実力を感じさせるゆえんだ。それというのも、ケンソニックは当初から海外市場を大きなマーケットとしてこそ成り立つことを考えていたためであろう。価格的に、日本市場で極端な割高な海外製品の価格を相手とせず、その本国での価格、つまり実質価格を相手として、ケンソニックのすべての製品価格の基準としている。この辺が内容にふさわしく、海外ライバル製品に対してはるかに割安で、高級製品としても高い商品価値をそなえている理由だ。
 ケンソニックの最新製品はM60と呼ばれる300ワットのモノラルアンプだ。1台28万円、従ってステレオで56万円となるが、300Wのステレオ用となると製品は海外製を見わたしても多くない。マッキントッシュMC2300を始めSAEの2500、マランツ510など250ワット・ステレオが多い。国内製品でもラックスのM6000が唯一で、山水BA5000も250ワット・ステレオだ。M60は、だから300ワットのステレオ用でも、これでももっとも低価格アンプということになる。M60はこうした大出力なのに、驚くほど静かな音が特長だ。静かといっても、一たんボリュームを上げるとフォルテでは床を鳴らし、家をゆるがせるだけのすごいエネルギーを出せるのは、もちろんだ。しかし普段は、これで300ワットかと思うほど静かなのである。とても自然でその音はナイーブですらある。ちょっと女性的なほどだ。しかし、その芯はむろんケンソニックのすべてのアンプのように、ガッチリした力強い筋金入りで、それはここぞというときにのみ、頭をもたげるのだ。