マランツ Model 510M

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 わが家には、いつでもスイッチさえ入れれば動作してくれるアンプが何台もあって、その多くは何んらかのスピーカー・システムが接続されている。スイッチさえ入れ、プリアンプをつないでボリュームを上げれば、すぐ音が出る。ところで、こうしたアンプのうちで、もっともスイッチを入れるチャンスの多いのはマランツのモデル2というパワーアンプだ。これは6CA7というフィリップス系のパワー管のプッシュプル接続パワー段で40ワット出力のモノーラルアンプであって、後にこれを2台結合して同じ寸法のシャーシーに収めるため出力トランスを少々小さくして35W/35Wとしたのが、有名なステレオ用モデル8Bである。さて、この管球アンプは多くの管球アンプ海外製品の中でも、もっとも音の良いアンプだ。堂々たる量感あふれるこの低音は、一度聴くと手離せなくなる。これに匹敵する製品はいくら探しても見当らず、マッキントッシュのアンプですら、300/300Wの超出力MC2300以外ない。
 永い間、このアンプに相当するものがなくて、これに近いのが同じマランツが昔作ったソリッドステートのモデル15とそのパワーアップ型、モデル16であった。モデル15の方が、かなりおとなしい中音でオーソドックスなマニア好みはするだろう。共に低音の力強さはマランツ独特のものだ。特にモデル16は今日的な意味でのクリアーな透明感があって、ある意味ではモデル2よりも好みの音である。パワー80/80が、あとから100/100ワットにパワーアップされたとはいえ、現代のアンプとしては少々力不足はいなめない。音マイク録音のすさまじい立上がりの最新録音では、クリアーな音も越しくだけになってしまうのだ。
 マランツの最新型510Mは265/265Wの超出力で、その割にコンパクトなサイズ。それは100/100ワットのモデル16の50%増程度、重量も2倍ぐらいなものだ。クォリティーは、まさにモデル16をはるかに上まわる電気特性で、より透明で鮮明なサウンドがいかにも最新型だ。

  1. 岩崎千明氏が愛用していたmarantz model 16にmodel 3300を繋げてオリジナルのJBLのスピーカーシステムでJAZZやROCKを楽しんでおります。40年前のパワーアンプとは思えないほど素晴らしい音がします。岩崎氏はこのパワーアンプでどんな音楽を聴いていたんだろう?と想像したりする今日この頃です。

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