Monthly Archives: 9月 1975 - Page 2

ダイヤトーン DS-28B

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 ダイヤトーンと聞くとまず中域のよく張った硬質な音を思いえがく。過去の一連の製品がそういう路線で作られていた。ところがこの287Bから、このメーカーにしては異色といいたいほど、中域をおさえて、新しいバランスを作りはじめた。初期のロットと比較しても、さらに中域をフラットにコントロールしはじめたような傾向が聴きとれる。また高域のレインジもよくのびてきて、したがって以前のダイヤトーンにくらべると、音に爽やかさが増して、キメのこまかな、楽器の音色や奏法上の音のニュアンスの変化がより正しく聴きとれるようになった。アンプやカートリッジの音色の差やグレイドの差をそのままさらけ出してしまう点、物理特性も相当に良いことが想像される。もちろんSX551のところでも書いたように、本質はやはりダイヤトーンである。国産のスピーカーのこの価格帯で、先発のヤマハのNS670やビクターのSX5/IIを追って、SX551と並んで好敵手あらわる、という印象。

オットー SX-551

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 注目すべき製品が現われた。失礼ながらオットーといえば、スピーカーの方ではまず三流以下、という印象が否めなかったが、今回のこのシリーズは、海外のスピーカーとならべて比較しても聴き劣りしない立派な作品だ。国産品の水準がここまで上ったのかと、感無量である。決してほめすぎではないだろう。第一に帯域バランスが非常によい。中域がややおさえかげんで、やかましさや圧迫感のない、力強さよりも細身で繊細な美しさを聴かせるタイプで、その意味ではヨーロッパ系の音に似ている。SX661よりは中域が張っているが、たとえばダイヤトーンの28Bとくらべるとずいぶん中域をおさえているなと思う。したがって圧迫感のない、軽やかな美しい音質に仕上がっている。パワーを上げてゆくと中~高域にややこなれない硬質の音が軽微ながら聴きとれ、そこが今後の改良のポイントになりそうだが、中程度以下の音量では品位の高い、質感の良い、聴き惚れさせるスピーカーである。音の品位に重点を置いてアンプやカートリッジを選ぶべきだ。

パイオニア CS-T66

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 音のバランス、という点ではこの価格帯の製品としては欠点が指摘しにくいほどよくまとまっている。芯の強い、中味の濃い音質ともいえる。むろんキャビネットの大きさやユニットの構成から考えても、スケール感など十分とはいいかねるが、あくまでも価格とのかねあいで点数の上がるうまい作り方だ。しかし、総体には表情がやや硬い。音の余韻あるいは響きをややおさえすぎたような感じがあって、良くいえば抑制が利いているが、しかしもう少し柔らかく楽しい表情が生きてきてもよさそうに思う。たとえば金管など太さも腰の強さも適度に漂う感じが出にくい。総じてクラシック系の場合、目の前に幕を一枚引いたようなもどかしさがあり、たとえばダイヤトーン28Bと比較すると、28Bは突然眼の前がひらけたように爽やかに感じられる。レベルコントロールをパイオニアの指定よりも、高音で一目盛上げ、中音で一~二目盛おさえる方が、クラシック系では好ましかった。

Lo-D HS-340MKII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 日立のスピーカーは、従前の製品には一種弱々しい感じがあったが、新しい製品は一変して、硬質の、線の太い、力強い音を鳴らしはじめた。例えばHS500の高音には、金属の細い弦がピンと張りつめて振動しているのがわかる、というような、爽やかな濃やかこさが聴きとれたが、新シリーズのトゥイーターの音は、それより表情が固くいわば清涼感のような要素が出にくいし、ことに肉声の唇のぬれた感じ、声の艶、あるいは空間にひろがってゆくような又は漂うようなひろがりや繊細なニュアンスを、一切断ち切ってしまうような鳴り方をする。低音はたしかに以前のような薄手の弱々しい感じではなくなったが、しかし聴感上の低音の豊かさが不足している。このクラスとしてはファンダメンタルがよく出ているのだが、おそらく低音楽器の低次の倍音領域のエネルギーが不足しているのだろう、楽器の弾みや豊かな表情が出にくいタイプである。全域を通して歪みっぽい音をよく抑えているのはさすがローディストーションの命名に恥じない。

デンオン S-170MKII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 きわめて大掴みに言えばビクターSX3IIと同じ傾向の音質。しかし細かく聴いてゆけばその性格には対照的といえるほどの違いがあり、その意味でSX3IIと比較しながらの方が説明がしやすい。第一にSX3よりも音の線が細い。たとえばオーケストラ曲で、SX3が音を渾然と溶合させて聴かせるのに対してS170は各パートあるいは各音を分解、あるいは分析的に聴かせる。中域をおさえぎみにバランスをとっているためか、やかましさや圧迫感のない、しかもよくひろがり、耳あたりの柔らかな割には音の鮮度を落さずに、明晰な鳴り方をする。オーケストラでもジャズでも、低音の土台となるベースや低音楽器のファンダメンタル領域の鳴り方では、SX3の方がピッチが低いように聴こえ、シンバルのような楽器でも170の方が帯域が上に寄る感じである。あまり高くない台に乗せ、場合によってはトーンで低音をやや補う方がよいと思う。ただ、このランクにしては聴感上の能率が非常に低いのはデメリットだろう。

サンスイ LM-033

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 011、022と聴きくらべると、さすがに大型になっただけのことはあって、低域の豊かさが格段に向上してくる。もちろん低音だけでなく全体のスケール感が大型になって、011が小型の割には朗々とよく鳴るという感じであるのに対して、033はもっと楽々と音が出てくる感じになる。中音域は011のやや抜けた感じよりも022のどちらかといえば張り出す印象に近く、022ほどではないにしてもクラシックのオーケストラの強奏でむずかにキャンつく傾向が聴きとれる。やはり本質的にポピュラー系の音感でまとめられたスピーカーであることを感じる。ただし中域から高域にかけての音のバランスや質感が改善されれば、クラシック系もこなせるだけの素質は持っている。この製品はあまり高くない(30~40センチの)台に乗せ、背面を壁に密着させて置く方がバランスがよかった。011との価格差を考えあわせると、022よりは033の方が、あきらかに高価になっただけの値打があると思う。

ビクター SX-3II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 良きライバルであるダイヤトーンのDS251/IIが中域のよく張った鮮明さで売っているのに対し、SX3/IIはどちらかといえばヨーロッパ的な柔らかな響きを大切にした作り方で、耳あたりよくソフトなバランスに仕上がっているので、ちょっと聴くとこもったような感じもするが、長い時間聴きこんでゆくにつれて、柔らかな中にも適度の解像力があって、ことにクラシック系の弦や声を主体としたプログラムに対しては、しっくり聴き込むに耐える完成度の高い音質だといえる。本誌28号でテストしたSX3に望んだ注文がほとんどかなえられて、以前の製品に比較して、中域の密度も増してきたし、やや抑えられているとはいうものの渋い艶も聴きとれる。この価格帯では内外を通じて眺めても、注目製品のひとつと言っていい。背面や側面を部屋の壁からなるべく離す方が音質の生きるタイプ。床の上に直接置いたり出窓や床の間に置いたりすると、音がこもってしまい、せっかくの音質が生かされにくい。

ヘコー SM625

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

『磨きあげたガラスのような硬質のクリアーな質感、張りつめた緻密な音、ショッキングなほど……』と表現した以前のシリーズ(本誌29号その他参照)のイメージを頭に置いて試聴をはじめて、しばらくのあいだは拍子抜けするほどがっかりした。全然変ってしまった。あの、爽快なほど気持の良い辛口の最右翼だったヘコーが、なんでこうも、ふつうの音に変ってしまったのか。こんな音ならなにもヘコーである必要がないじゃないか……。そういう感想が一応おさまってから改めてよく聴きこんでみたさすがに、クラシックのオーケストラを鳴らしても、音楽的なバランスは見事に整っている。ただ、くり返しに鳴るが以前のヘコーとは正反対のように、高域は丸くおさえこまれて、総体に甘口の、耳あたりのいい音に仕上がっている。小型、ローコストだから、低音の量感などは、使いこなしでカヴァーする必要がある。というわけでこの製品自体決して悪くないが、かつてのあのヘコー・サウンドを満喫したい向きは旧製品P4001を探すこと。

アドヴェント ADVENT2

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 明るくよく弾む音。以前のアドヴェントのような変に乾いた音色でなく、適度にツヤの乗った、輪郭の鮮明な音がフレッシュな印象を与える。とても楽しい音質で、ポピュラー、クラシックの別なくクリアーで分離のよい音を聴かせる。デザインはどことなくブラウン、ヘコーばりだが、白いキャビネットの外装はプラスチック製とユニークだが、むろん共振は注意ぶかくおさえられ、箱鳴り的なクセはほとんど感じられない。小音量から大音量まで、音色がよく統一されている点もよい。たたじ極端なパワーは入れられない。いわゆるパワーに強いというタイプではないようだ。レベルコントロールがないので、置き方のくふうで良いバランスを探すことが必要。シュアーV15/IIIの品のない音を露骨に鳴らしてしまう。オルトフォンVMS20にすると、格段に品位の良い音質を聴かせる。したがってアンプもグレイドの高いものが必要。構成の割には高価という輸入品のハンディを考えても、一聴に値する注目製品、といってよいだろう。

マランツ Marantz 4GII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 エレクトロ・リサーチと価格が近く、しかも生まれが同じカリフォルニアだから、つい比較してしまうことになる。能率はE-Rよりも聴感上で4~5dB高く、組み合わせるアンプはパワーの面で楽になる。E-Rが中域をやや抑えぎみだったのに対し、こちらは中域がよく張っている。輸入品を国産の同価格製品とくらべるのは少し気の毒かもしれないが、E-Rと同様にパワーにやや弱い傾向を示し、アン・バートンのバックのベースの音で、裏蓋ごとビリつくような音がで出たので、音量をおさえかげんで聴いた。総体にダウンタウン的イメージ、要するに音に品格が欠ける。音楽の大づかみな印象を的確にとらえて元気に鮮明によく鳴るが、いくらか手綱を緩めすぎたという感じ。もうひと息、磨かれた品位が加われば抜群の音質に仕上がるのに、と言いたくなるスピーカー。したがって細かなことにこだわらずに気楽に鳴らすという目的ならそれなりに十分楽しめる音、といえる。ただし、この値段であえてこれを選ぶ理由はやや希薄。

オンキョー E-213A OAK

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 音の輪郭をすべて太く鳴らす傾向があるが、低音から高音までのバランスがわりあい良く、なかなかよく練り上げられたスピーカーであることが感じられる。音量の強弱にもよく追従し、音色に統一感がある点はよい。クラシックのオーケストラを鳴らしても、やかましさや圧迫感を感じさせず、いやな音を出さないようよくコントロールされていることがわかる。オーケストラの厚みは出にくいにもかかわらず、弦のソロでも繊細さあるいはシャープなイメージがやや出にくく、総体に音を大づかみに、弦の一本一本が太いという感じで鳴る。この価格で多くを望むのは無理な注文だとは思うが、音の質に磨きをかけて、もっと光沢のある洗練された質感が出せるようになれば第一級のスピーカーになると思う。小型のスピーカーに共通の注意だが、低音の量感を補うため、背面は固い壁に近接させた方がいいタイプ。OAKシリーズになってから、以前の製品よりデザインも垢ぬけて、しゃれたイメージが出てきたのは長所。

オーレックス SS-350W

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 耳ざわりなピークや歪みなどの成分を、注意深くとり除きあるいは抑えこんだという印象で、低音から高音にかけて目立ったでっぱりもなく、とうぜん中域がキャンついたりせず、低音のボンつきもなく、高域のシリつきもない、というように、ともかく欠点はできるだけ耳につかないように作ろうという意図は明瞭にくみとれる。その意味で優等生的、といってよいと思う。ただしこの優等生、私見私見でいためつけられた青白い坊やみたいに、どことなく生気に乏しい。演奏の熱っぽさ、魂の燃焼、そういう精神の高揚が、どんなレコードからも感じられない。ベルリン・フィルの演奏も、できの悪いときのN響のような、よそよそしい印象になり、ベートーヴェンを聴くよりも学習しましょうという鳴り方をする。心で感動するよりも頭の方が悪働きしてしまう感じだ。音に若々しさ、躍動感、生気がない。といって老成した円熟という音でもなく、試験勉強の坊やと書いたが、それよりも無気力な万年係長とでもいう方がふさわしいのかもしれない。

エレクトロリサーチ Model300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 ローコストグループの中では、条件つきながらクラシックを一応楽しめるスピーカー。というのは第一に、演奏上のテクニックや楽器の音色の変化や各パートの動きなどのニュアンスをわりあいよく聴かせるからで、これは国産のローコストスピーカーには望みにくい長所である。低音は本もののファンダメンタルはむろん出ないにしてもオルガンなどでもけっこう感じはよく出るし、高音のレンジも広い。中音はややおさえぎみで薄手の感じ。したがってヴォーカルなどハスキーすれすれの鳴り方、あるいは弦合奏も倍音の上澄みが強調されるような傾向があるが、総体に柔らかくよく広がり定位も奥行きもあまり難点がつけにくい。能率が低くハイパワーに弱い(たとえばカラヤン/エグモント序曲のオーボエが変にビリついたりした)ので、サブスピーカー的、バックグラウンド的に使うのが本来の生かし方だろう。つい聴き惚れさせるといった魅力があり、輸入品のローコストスピーカーとしては音のまとめのセンスがいい。

サンスイ LM-022

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 011とくらべると、第一に低音の迫力が増したために全体にスケールがひとまわり大きくなって聴こえる。第二に、011では中音域をややおさえすぎた感じで、聴感上では、プログラムによっては中域が少々不足の感じではあったのが、022ではその点がよく埋まってきた。この二点が、6千円アップのメリットである。反面、クラシック系のソースでは中~高域がキャンつく感じが強く、またトゥイーターから鳴ってくるスクラッチノイズを聴いても011より質が粗くやや耳ざわりの傾向があって、総じて音のとらえ方では011の方がすぐれているのではないかと思われる。製品の企画自体、本質的にポピュラー系の再生に焦点を合わせていると思われるが、そうしたプログラムについても、011とくらべて全面的にこちらがいいとは言いきれない。ペアで1万2千円の差は、このクラスでは無視できない価格差だが、それだけの値打があるか、と聞き直られれば、さあ、どうももう一息なのだが、と言いたい感じ。

オンキョー Quart Lam-III

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 上方の、ことに下町のおばはんの会話に、一種鼻にかかったような発声を聴きとることがある。この製品が関西生まれだからなどとこじつけるつもりは全然ないが、音を聴いていると、その関西ことば特有のおもしろさのような音色が聴きとれるように思えるところが、何とも妙だ。こじつけだと言われれば右の表現は撤回してもいいが、しかしいわゆる物理尺度をあてはめて評価するには、このスピーカーの音はやや特殊な部類に入る。おそらく製品の規格のねらいが、オーソドックスな音とは逆の個性を強調する方向を目ざしているのだろうと思う。箱の独特の構造のゆえか、低音はとても豊かに鳴りひびく。楽器の鳴らす本当の低音とは違うおもしろさだ。中~高音域は、そういう低音の鳴り方に負けないよう、鮮明な鳴り方をする。スピーカーが作り出す音色を楽しむと言う製品だから、使いこなしも各自の創意を加えて独特であってよい。聴感能率はかなり高いから、小出力のアンプでも十分な量感を出せる点が大きなメリット。

ダイヤトーン DS-22BR

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 中域のよく張った、ダイヤトーン製品に共通のバランスがこのスピーカーにも一貫して聴きとれる。ローコストの製品の中には、中~高音のやかましさを抑えるために適度に中域を抜くという手の使われる場合があるが、このスピーカーの場合は全くオーソドックスに、低音から高音まで、中身のいっぱい詰ったゴマ化しのない音がする。聴感上の周波数レインジは必ずしも広いとはいえないが、この価格でよくここまで本格的にとりくんだものだと感心させられる。したがって、カートリッジやアンプの音色の違いを正直に鳴らし分ける。これと対照的なエレクトロリサーチの300と聴きくらべると、ダイヤトーン独特の張りつめたような音質がことさら硬質に感じられて、音楽の柔らかな表情をどこか一本調子で鳴らすという傾向が少し気になるので、そうした面を少しでも補うには、アンプやカートリッジに、音の表情の豊かな、ニュアンスの濃やかな製品を組み合わせるように工夫したい。やや高めの頑丈な台にのせる。背面は固い壁がよい。

サンスイ LM-011

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 ポピュラー系の音楽、ことにヴォーカルに焦点を合わせた作り方らしく、この系統のプログラムの場合には、のびのびと元気のよい、芯のしっかりした音で、なかなか魅力的に鳴ってくれる。いわゆる「音離れのいい」タイプで、左右にひろげたキャビネットのあいだに音像がよくひろがる。定位もわるくない。聴感上の能率は中の上。あまりパワーの大きくないアンプと組み合わせても、音量感の不足は一応感じない。クラシック系のソースはややニガ手のタイプのようで、弦や声の滑らかさ、緻密さ、あるいは溶け合う和音の柔らかな響きが出にくい。こうした面は、このスピーカーの価格や性格を考えあわせればもちろん無理な注文だと思うので、あくまでも前記の長所を生かして使う製品なのだろう。箱が小型だから低音の厚みを補うために、背面を固い壁面に近づけて設置する方がいい。音離れのよさを生かすにはやや高めの台、音に落ちつきを求めるなら逆に低めの台にのせる。カートリッジはシュアーのV15/IIIの系統がよく合う。