瀬川冬樹
ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より
『磨きあげたガラスのような硬質のクリアーな質感、張りつめた緻密な音、ショッキングなほど……』と表現した以前のシリーズ(本誌29号その他参照)のイメージを頭に置いて試聴をはじめて、しばらくのあいだは拍子抜けするほどがっかりした。全然変ってしまった。あの、爽快なほど気持の良い辛口の最右翼だったヘコーが、なんでこうも、ふつうの音に変ってしまったのか。こんな音ならなにもヘコーである必要がないじゃないか……。そういう感想が一応おさまってから改めてよく聴きこんでみたさすがに、クラシックのオーケストラを鳴らしても、音楽的なバランスは見事に整っている。ただ、くり返しに鳴るが以前のヘコーとは正反対のように、高域は丸くおさえこまれて、総体に甘口の、耳あたりのいい音に仕上がっている。小型、ローコストだから、低音の量感などは、使いこなしでカヴァーする必要がある。というわけでこの製品自体決して悪くないが、かつてのあのヘコー・サウンドを満喫したい向きは旧製品P4001を探すこと。
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