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オンキョー FR-12A(組合せ)

岩崎千明

スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 ’73(1972年秋発行)
「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ28選」より

●組合せ意図及び試聴感
 予算10万円チョット、チューナー、テープ・デッキを加えたとしても20万円までを限度とする組合せということだが、このクラスのコンポーネント・システムを狙うヤングは、オーディオ知識のレベルもかなり高く、決して中途半端な製品では承知しない。つまり年齢こそ若いが、通なのである。マニアではないかもしれせないが、マニア志向のハートの持ち主なのである。そんなキミのためにガッチリと予算を押え、本格派コンポーネント・ステレオを選ぶとしたらこれだ。組合せの中心はテクニクスのアンプ、それで近頃やたらとヤング志向とやらで、低価格のライン・アップに移行しつつある製品群の中から、内容の充実した基本主力製品を選ぶことにしよう。SU3400だ。それひとひねり、SU3400に4チャンネル・コントロールを加え、あとで4チャンネル・ステレオへの移行を前提として、SU3400を決めた。極端におさえられたコストでコンポ・システムを選ぶには、常套手段として一点豪華主義がいわれているが、そうかといって、他のセクションがどうでもいいというわけにはいかない。やはり質的に、あるレベルは保たねばならない。あるレベルというのが、一点豪華主義の組合せの成功のカギなのだ。アンプにテクニクスの主力製品の最強力型を選ぶことから、それに見あった質を秘めている普及型のプレイヤーとスピーカーを市場から物色してみよう。オーディオ・マニアのキミなら、あるいはキミの参謀がいるならプレイヤーにマイクロの製品を選ぶことはまず文句ないところだ。マイクロのMR211がかくて登場する。プレイヤー中の本格派、マイクロの、一番普及価格ながら質的にはもう一万円上のクラスにも匹敵するのが211。カートリッジにM2100という、これまた普及製品中のハイ・パーフォーマンスの傑作がついている。この辺のプレイヤーを選ぶとなると、あとはセミオート機構のついたパイオニアやソニーそれにヤマハなどが浮かぶが、マニア・ライクなマイクロの方に、キミはよりひかれようがそれでいいのだ。残りのもうひとつのセクション、スピーカー。これこそ、テクニクスSU3400を生かす、ひいてはこの組合せ全体の質を決めてしまう重要なポイントだ。ここではオンキョーの12センチ・フルレンジのユニットに白羽の矢を立てよう。「あまり大きな音量でなく」というただひとつの使用条件をつけると、この小さなユニットから引出されるサウンドのクリアーで楽器それぞれの分離のよい音は特筆されるべきだ。この他にフォスターの10センチFE103、コーラルのフラット・シリーズなどが考えられるが、馬力のある低域の迫力さえあまり期待しなければFR12Aは最高だろう。オンキョーの指定の箱は小さく、4チャンネルへのグレード・アップは容易だ。この場合リアのパワー・アンプは今迄のを利用しよう。チューナーはSU3400とコンビのST3400だがもし予算が苦しければその下の新型のST3000でも実用上は何ら変らないことを申しそえておこう。

Lo-D HS-1400WA(組合せ)

岩崎千明

スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 ’73(1972年秋発行)
「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ28選」より

●組合せ意図及び試聴感
 多くのメーカーから多数のコンポーネント・ステレオ製品が大量に市場にあふれている。世の中、万事多様化し、ワイド・バリエイションの中に自分の個性を生かそうという現代だから、この中からキミのオリジナリティを発揮していくステレオを選ぶことが、オーディオ道楽の醍醐味といえるわけだ。まして20万円からの予算を投じようとすれば、それこそ候補として市場製品の大半がその圏内に入るのだからいかような個性も生み出せるわけだ。しかし趣味の良さ、センスの良さを土台として、その上にユニークなパーソナリティを大きく盛り上げようとなると、やはりむづかしい。ここに掲げた組合せは、①楽器の迫力を間近に感じられる。②品位の高い再生とメカニズム。③コスト・パーフォーマンス、という点から得られる以上のプラス・アルファーのクォリティーと、ぜいたくな要求のもとに、そのいずれもが満足でき得る本格派ジャズ・ファンのための家庭用高級システムだ。この中心は日立のフロア型スピーカー・システム1400WAだ。すでに2年目を迎えているこのユニークな技術に支えられたスピーカーは、数10万円の海外製の超大型システムと変らぬくらいの豊かで迫力に満ちた超低音が魅力だ。ただ従来の1400Wはその超低音に見合った中音域をそなえていなかったことが残念だった製品だ。今回マイナー・チェンジを受け中音がすっかりファインされ、その再生品位は格段と向上した。もっともそれにつれて価格も1万円高くなり49、000円だが、今までのが安すぎたくらいで、音色全体の向上ぶりからいえば、この1万円は補って余りある価値といえよう。この1400WAのバス・ドラムのサウンドは一度接するとなまじっかのブックシェルフではとうてい物足りなくなってしまうに違いないのだ。コンポーネント・システムという言葉からブックシェルフ型スピーカーが直接想定されてきた今までのしきたりも、こうしたフロア型の大型システムの存在に眼を向け直す時機にきているのである。超低域のことばかり触れたが1400WAのサウンド、特に音色のバランスの良さはオレにいわせればかの名高いHS500よりもずっと確かで、ジャズの激しく鳴る楽器の再生には、はるかに優れているのだ。この1400WAを鳴らすべきアンプは日立の新型アンプHA660でもいいが、質の高さと、まともな性能で定評のあるトリオのハイ・アタック・シリーズ中のKA4004を選ぶことにしよう。無色透明の再生ということばがトリオのアンプやチューナーにはまさにピッタリ。これでスピーカーの能力はフルに引出されよう。プレイヤーにはこのところ俄然はりきって、質的向上の著るしいシCECの新型プレイヤーだ。高級な仕様を普及価格で実現したこのプレイヤーを作るCECは国内専門メーカーとして、もっとも歴史とキャリアのあるメーカーで、大手の下請けできたえたコスト・パーフォーマンスの高さはずば抜けている。カートリッジに性能のすごい同社の4ch専用を選びたいところ。チューナーは文句なしに同シリーズのKT4005、デッキは日立のカセットを選んだ。

サンスイ SP-505J(組合せ)

岩崎千明
スイングジャーナル臨時増刊モダン・ジャズ読本 ’73(1972年秋発行)
「理想のジャズ・サウンドを追求するベスト・コンポ・ステレオ28選」より

●組合せ意図及び試聴感
 LE8Tを愛用するハードなジャズ・ファンであるキミのため岩崎千明の名にかけて決定的な組合せをまとめた。
 これだ!! スピーカーにSP505J、つまりサンスイ−JBLが6年ぶりに発表する野心作、SP−LE8Tのハイグレード版がこれだ。
 中味は30センチ・フルレンジD123、つまりLE8Tの大口径ハイ・パワー型のユニットだ。同時に発表した、、おなじみD130のバック・ロードホーン入りの方に、よりなじみと魅力とを感じるが、これは家庭用というには、やや大げさすぎ、よほどのマニアでなければ、というところ。むろん、キミにスペースとふところのゆとりさえあれば、このSP7070Jも推めておく。
 LE8Tを一度、手元において愛用するとジャズを聴くかぎり、もうこれ以外のスピーカーには、ちょっと手を出しにくくなる。そうかといってグレード・アップする場合に、さんざん困っていたはずだ。しかし、もうこれからは解消したのだ。
 スピーカーについて、いろいろ述べることはなかろう。中味はJBLの大口径フルレンジ型で、箱はサンスイの手になりJBLが認めたチューンド・ダクト型だ。
 アンプは、当然このJBLスピーカー・システムを、もっともよく鳴らすべき製品、ということでサンスイの新シリーズAU7500だ。万事控え目のサンスイにふさわしく、あまり目立たぬ存在といわれるが、黒く引き緊ったやや小柄の外形からは想像つかぬほどのハイ・パワーとハイ・パフォーマンスだ。0・1%歪率という値は、実用範囲でおそらくひとけた上の、つまり数倍の価格の海外製にもひけをとらぬ高性能のデータも、使用するうちにうなずけよう。単純にいえば、ずっしりとこのアンプの重いことからも中味の充実ぶりは誰にでも判るのではないか。
 この7500の上にもうひとつ9500が登場するが、一般用と考えれば、JBLシステムの高能率で7500で十分。
 さて、この豪華にしてぜいたくなシステムを、より豊かにするため、4チャンネル・システムを想定した。
 もしLE8Tを持っているのなら、そのままリア用スピーカーとして流用でき、アンプはサンスイ・デコーダーQS100が最適。リア用パワーアンプが内蔵されAU7500のテープ・モニター端子に接ぐだけのことで、完全な4チャンネル・コンポーネント・システムとなる。
 カートリッジはオルトフォンM15スーパーをスペアに、チューナーにはAU7500と同じデザインのTU7500。