Monthly Archives: 10月 1972

ヤマハ YP-500

岩崎千明

音楽専科 11月号(1972年10月発行)
「SENKA TEST LISTENING」より

 YAMAHAのマークは、ピアノとバイクで今や世界に鳴り響いており、このマークのもとで作り出されるレジャー・プロダグツは、いずれも一流品と信頼とされ、このマークのついた商品を持つ若者に誇りを持たせる。
 ピアノと共にバイク類の高性能ぶりは業界を寡占する一方の旗頭であることを証明する。さらに最近ほオートバイに次いで海洋レジャーをも目指し、着々と成果を挙げて、若人にもてはやされているのはよく知られている通り。
 かくも好成績を挙げる中で、たったひとつ、オーディオ製品のみは、必らずしもヤマハの意図通りにはいっていない。エレクトーンの技術を駆使し活用した「ステレオ」は、市場での人気も、はかばかしいものではなかったのだ。
エレクトーンからピアノと「楽器のサウンド」を創り上げてきたヤマハの技術もこれを市場では、強力に展開し成功させてさた商業的手腕も、神通力はオーディオ・マニアには効かなかったのであった。
 それは、オーディオ・マニアの眼が、他の分野におけるそれよりも、はるかに厳しく、品質と高性能とを絶対的なものとして追い求め、それに対するメーカーは高品質と高いコスト・パーフォーマンスとをもって応えなければならず、加えて、専門メーカーという強力なライバルが少なくないからである。
 長いあいだ、ヤマハのオーディオ製品は低迷していた。それは、かつて10数年前の高品質ハイファイ製品の数々を、ヤマハ・ブランドのもとに作り上げてきたプライドをもってしても、打ち破ることのできなかった厚い壁なのである。この壁は、しかし、外部の敵ではなく、おそらくかつての誇りが、古びて通用しなくなっていることから眼をそむけてきた内る障書もあったに違いない。
 その根源は、冒頭に挙げた、他の部門での圧倒的な成功であり、その手法である。「ヤマハの創る商品が悪いわけがない」とする自信が先走ったのである。
 だから、この数年前から展開したステレオ時代のヤマハ・オーディオ製品は、あらゆる製品に独創性が盛り込まれ、ユニークな魅力を持つにも拘らず、オーディオ・ファンからうとまれ続けた。カセットの聴けるステレオを初めとし、ピアノから形どったという高能率スピーカーによる新らしい音響再生技術は、こうしてヤマハの理想通りには運ばず、じりじりと後退を余儀なくされていった。
 それはかつて、プロフェショナル志向の優秀製品を市場に送ってきたヤマハ・ブランドの落ち目であり、旧いファンにとってはこの上ない淋しさを感じさせた。
 かくも追い込まれたヤマハのオーディオ・プロダクツ。ギリギリの所で見事な逆転を演じるべきお膳立てが出来上った所で登場したスターが、前にこの欄で紹介したブックシェルフスピーカーNS630であり650である。従来の変形スピーカーに対するこだわりを捨て去って、スピーカー本来の姿に立戻った点からスタートしたヤマハ初の市販ブックシェルフは発売するやたちまち市場に注目され楽器メーカ、ーヤマハのオーディオ・プロダクツの真価を発揮して、ベスト・セラーのひとつに成長している。
 同時に話題になったのはプレイヤーである。スピーカー、チューナーと共に、音楽志向のヤマハらしい魅力が盛り込まれており、ケースの仕上げの美しさと完ぺきなことは、ピアノを手がけるメーカーにふさわしく、ローズウッドの面は鏡のようにみがき上げられている。
 プレイヤーはYP700と500の二種で、アームが大きな違いをみせるだけだ。ベルト・ドライブのターンテーブルはターンテーブル本来の目的を忠実に実現したもので、SNの優れた点と共に、ハウリングに対する強さはこのクラスの愛用者が必らずしも高い知識を持っているとは限らない点を考えると、賞賛できる大きな利点であろう。つまり、コンポーネントの利用者が増えている現状でもっとも多いトラブルは、針先がスピーカーの振動を拾うことに起因する音響きかんが原因の低音共鳴である。これは、プレイヤーとスピーカーの相対位置とか床下の頑丈さで防ぐようにいわれているが根本的にはプレイヤー自体の問題であるべきなのだ。この点を直視した優秀製品が少ない中でマイクロの製品と共に、ヤマハ・プレイヤーの他に秀でる大きな特長であろう。この問題は最近になってやっとメーカーの側でも重要問題と考えるに致ったが、これはコンポ愛用者が多くなったためでありヤマハはそれに一歩先がけているといえよう。
 ヤマハのプレイヤーの最大のポイントはそのカートリッジにある。米国シュア社のM75系の新型がついており、扱いやすい6ミルの針先が着装されている。
 M75の再生ぶりは、安定したトレースとバランスよく歪の少ない品のよい音としてマニアの間で永く定評のあるものだ。市販プレイヤーの最大の弱点は、実は付属カートリッジなのであることは常にいわれているが、ヤマハのシュアに眼をつけた企画性のうまさは驚くべきだ。
 この点だけ考えても、今回のコンポーネントに対するまともな再生への考え方を推察できるというものだ。
 セミオートマチックのアーム動作も、このクラスのプレイヤーを買うお客様の立場をよく考えて作られており、ケースの仕上げの豪華
さと、シンプルでユニークなデザインのアームとターンテーブルの組合せなど心憎いほどで、ベスト・セラーにならなければうそだ。

ラックス SQ707, SQ700XD, WL717, WL700D

ラックスのプリメインアンプSQ707、SQ700XD、チューナーWL717、WL700Dの広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

アルテック DIG

アルテックのスピーカーシステムDIGの広告(輸入元:エレクトリ)
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

サンスイ QD-5500S, SD-3030

サンスイのオープンリールデッキQD5500S、SD3030の広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

ローテル RX-150, RX-200A

ローテルのレシーバーRX150、RX200Aの広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

ビクター CCR-666, CCR-667, CCR-668, JX-51

ビクターのカセットデッキCCR666、CCR667、CCR668、アクセサリーJX51の広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

Lo-D HS-1400WA

Lo-DのスピーカーシステムHS1400WAの広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

マッキントッシュ C22, C28, MC275, MC2105

マッキントッシュのコントロールアンプC22、C28、パワーアンプMC275、MC2105の広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

TDK SD

TDKのカセットテープSDの広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

ヤマハ CA-700

ヤマハのプリメインアンプCA700の広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

JBL Lancer 55

JBLのスピーカーシステムLancer 55の広告(輸入元:山水電気)
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

オルトフォン M15E Super

岩崎千明

スイングジャーナル 11月号(1972年10月発行)
「SJ選定新製品」より

「オルトフォン」の名声が世界に轟き始めたのは1960年ごろである。まもなく、1962年の春ごろだと記憶するが、米国版〝暮しの手帖〟として有名な〟コンシューマリー・リポート〟のステレオ・カートリッジのテスト・リポートでSPU−GTがベスト・ワンに選ばれたのがきっかけとなり、文字通り世界のオーディオ界を席巻し、最高峰のステレオ・カートリッジとしての座をゆるぎなきものとしたのだった。
 ステレオ初期以来、多くのメーカーにより次々に試みられた高性能カートリッジの群がる中で、デンマーク製のコイル型のSPU−GTが選ばれたことは、決してまぐれの幸運ではない。
 ステレオ・ディスクの誕生のときおおいに力あずかったウェストレックスのカッティング・マシンに付属するテスト・ヒアリング用プレイヤーにつく伝説的、歴史的ステレオ・カートリッジWE10Aと、多くの点で等しい構造を備え、性能そのままで10Aの4g以上という針圧を軽針圧化したと考えられるのがSPU−GTなのである。
 こうした名作の出現は、それが他の多くのライバル製品に比べてあまりに高い座標を獲得したときから、メーカーとしてのオルトフォンに大きな負担となる悲劇を見越すものはいなかった。
 世界のメーカーがいっせいにオルトフォンのカートリッジをめざしたのはもちろんであるし、それに対するオルトフォンの新型による巻返しから生ずる熾烈な戦いが60年代を通じてずっと続いた。シュアのダイナ・マグネット型と呼ぶムーヴィング・マグネット型の出現、ADCの驚異的軽針圧化技術……そうした多くの挑戦に、オルトフォン初の軽針圧型S15もいささかたじろぎ気味で、米国勢はここぞとばかりオルトフォンの牙城に迫り、世界市場になだれ出たのだった。
 70年代を迎え、4チャンネル・ディスクの開発でカートリッジに対する要求は格段と厳しく、それにこたえて技術は進歩し、クォリティーも飛躍的に向上してきた。
 70年、オルトフォンはその崇高な面子にかけて、ついに群がる米国勢を受けて立ったのである。
 M15Eがそれである。発売以来、その優秀性はたちまちマニアのすべての認めるところとなり、加えて米国市場においてSPU−GT以来築かれた拠点から再び強力に打ちこまれた。
 そして、さらにこのM15Eに新らたな精密工作技術を加えて超軽針圧化を図り、Superと名づけて戦列に加えたのである。
 ここにヨーロッパ各国におけるそのM15E Superの評価よりの一端を披露しよう。
 フランス”Harmonie”1971年12月号……試聴の結果はすばらしいものであった。われわれが賞賛するのはその値段でなく、その性能である。
 ドイツ”HiFi Stereophonie”1971年2月号……トラッカビリティーは抜群である。特に高音での性能が抜群。
 英国”Records And Reeordings”1970年6月号……世間一般に通用しているHi−Fiとは異なり、ほんとうの音をエンジョイさせてくれる。トーン・コントロールの調整など不必要にするカートリッジだ。
 SJ試聴室においてM15E Superを装着したプレイヤーに、コルトレーンの「ライヴ・イン・シアトル」がおかれ、音溝にM15E Superの針先がすべリこんだ。
 レコードのほんのちょっぴりのスペースに、こんなにも大きなエネルギーが秘められているなんて、と日頃感じていたことだが、その音のすさまじいまでのアタック、力強さはなんと表現すべきか。ここには、今は亡きコルトレーンの熱い血が、生々しい息吹きが、爆発的というにふさわしく再現された。従来の豊麗なサウンドに加え、アタックの切れ込みが鋭どく、激しいまでの迫力。
 オルトフォンは、若いエネルギーを加えて再び世界のオーディオ市場に再登場したのである。行く手にはシュアやADCや、さらにオーソドックスな手法で確実に歩を進めるデッカ、B&Oなどヨーロッパの群雄もある。だが、オルトフォンの新型は、おそらく、世界中のマニアのカートリッジ・ケースに加えられるに違いない。この上なく豊かな音楽性をたたえて……。

マイクロ MR-211, MR-411, MR-611, MR-711

マイクロのアナログプレーヤーMR211、MR411、MR611、MR711の広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

ニッコー R-2000, TRM-300, FAM-300

ニッコーのレシーバーR2000、プリメインアンプTRM300、チューナーFAM300の広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

フォスター GZ-75 SK, GZ-75 BK

フォスターのスピーカーシステムキットGZ75 SK、GZ75 BKの広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

トリオ KL-30, KR-4200, KP-3021

トリオのスピーカーシステムKL30、レシーバーKR4200、アナログプレーヤーKP3021の広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

サンスイ FR-3060

サンスイのアナログプレーヤーFR3060の広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

ビクター SX-3

菅野沖彦

スイングジャーナル 11月号(1972年10月発行)
「SJ推選ベスト・バイ・ステレオ」より

 SX3というスピーカー・システムは今オーディオ界で大きな話題となっている。あれこれとスピーカー・システムをつくり続けて来たビクターの初のヒットといっても過言ではないだろう。音響機器専門メーカーとしてのビクターの伝統と実力が実ったという観が強い。もっとも、今の話題の半分はこの製品の優秀性で、あとの半分は製品が足りなくてオーダーして数ヶ月も待たされるといった不満である……。こうなると、ますます欲しくなるのが人情で、SX3を渇望するマニアの数はどんどん増えているらしい。
 SX3の生産が追いつかないということは、このスピーカー・システムの本質と、あえてそうした製品をビクターのような大きなメーカーがつくった意義とを説明することにつながるのである。つまり、このシステムは、たいへん手のこんだ作業を要する手造りの性格が強いのである。オーディオ機器が通り一辺の理論と設計技術と生産技術では、最高の製品たりえないということは私が常々いっていることなのだが、このシステムはそうした常識を超えた製作者の音への執念と情熱、そこから発した多くのアイディアと実験に裏づけされた試行錯誤、それを一つの完成度の高い製品にまとめる、高い技術が生きているようである。このスピーカー・システムの生みの親は同社のスピーカー技術の中核である林正道氏だが、林氏のスピーカーづくりへの情熱は並々ならぬものである。しかし、今までは、正直なところ、氏の情熱と探求の努力、技術の蓄積は多とするが、それがスピーカーの音として私たちを説得するまでには至らなかった。氏の独得のねばりは、今までの不評によく耐えて、謙虚にそして入念に、幾度かスタート・ラインへもどって音響変換器としてのスピーカー、音楽を奏でるスピーカーという二つの性格を正しく把握して、このSX3を生みだしたといえるだろう。と同時に、こういう人間の自由な創造性を暖かく保護し、開発に余裕を与えたビクターという会社もほめられてしかるべきであろう。こういう体質がなくてはオーディオ・メーカーとして、これからの時勢を乗り切っていくことはできないといっても過言ではない。技術は人間の積み重ねてきた体系的所産であるが、それは常に発想に触発されて前進すべきものである。発想は創意という、人間が神から与えられた偶発的な要素の濃いもので、すべての創造の基盤となる。すばらしい発想は優れた才能と、その才能を開花させる環境から生れるものだと思うのだ。音そのものはもとより、人間のつくり出したスピーカーという変換器ですら、そのすべてが解析されてはいない複雑な要素からなるものだから、これに既成の理論と技術だけで当っていては、できる製品はたかがしれているというものである。
 SX3の随所に見られるアイディア、豊富な実験から得られた新しい前向きのオリジナリティは、こうした私の考え方からして高く評価できるものなのである。しかし、そうした姿勢があるだけで、よいものができるわけでもないし、またSX3が最高のスピーカー・システムというつもりはない。
 SX3はやはり、メーカーに利益をもたらす商品として生み出されたものだから、そこには多くの制約も妥協もある。小型(実際上は中型といえるが)ブックシェルフ・システムという市場でもっとも人気のある形態、3万円を切る小売価格などという商品としての条件の中でつくられたものであることは当然で、その結果、強烈な音響再現を可能にする大型システムや、そうした音を要求する音楽には自ずから限界はある。しかし、この範囲での製品としてトップ・クラスのものであることは保証する。25cmウーファーとソフト・ドーム・ツィーターの2ウェイ。手のこんだ材料と工作によるシステムとしての念入りなアッセンブルは非常に豊かでリアリティのある低音をベースに、スムースで奥行のある中高域とステレオフォニックなプレゼンスを再現してくれるのである。

ラックス SQ503X, SQ505X, SQ507X, WL500

ラックスのプリメインアンプSQ503X、SQ505X、SQ507X、チューナーWL500の広告
(ステレオ 1972年11月号掲載)

Lux1

オーディオテクニカ AT-VM35, AT-VM35F, AT-1009

オーディオテクニカのカートリッジAT-VM35、AT-VM35F、トーンアームAT1009の広告
(ステレオ 1972年11月号掲載)

AT-VM35

マランツ Model 3300, Model 500

マランツのコントロールアンプModel 3300、パワーアンプModel 500の広告
(ステレオ 1972年11月号掲載)

marantz

東芝 PT-490

東芝のカセットデッキPT490の広告
(ステレオ 1972年11月号掲載)

PT490

ダイヤトーン DS-24B

ダイヤトーンのスピーカーシステムDS24Bの広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

パイオニア SA-910

パイオニアのプリメインアンプSA910の広告
(スイングジャーナル 1972年11月号掲載)

パイオニア SA-910

パイオニアのプリメインアンプSA910の広告
(ステレオ 1972年11月号掲載)

SA910